招き猫で有名なお寺「豪徳寺」とは
高円寺、泉岳寺、祐天寺、護国寺など、東京には寺の名前がそのまま駅名になっているところが意外と多いのですが、小田急線沿線の豪徳寺駅もそのひとつ。風情ある路面電車・東急世田谷線の山下駅もすぐ近くにあります。駅前には懐かしい雰囲気が漂う魅力的な商店街があり、その周りには閑静な住宅街が広がっています。駅名にもなっている地元の名刹・豪徳寺は、台東区にある今戸神社とともに「招き猫発祥の地」として知られています。
500年以上続く豪徳寺の歴史と、招き猫との関係
豪徳寺の正式名称は、大谿山(だいけいざん)豪徳寺。文明12年(1480年)に、世田谷城主の吉良政忠が亡くなった伯母のために創建した臨済宗の弘徳院が前身とされ、その後、曹洞宗に改められます。寛永10年(1633年)には寛永10年(1633年)には当地を含む「世田谷領」と呼ばれる地域が彦根藩の支配となり、彦根藩主・井伊家の江戸における菩提寺に。2代藩主・井伊直孝の戒名「久昌院殿豪徳天英大居士」にちなんで、豪徳寺と改号されたそうです。
気になる招き猫発祥の地とされる由来も、井伊直孝と深い関係があります。鷹狩りに出かけた帰り道、小さな寺の前を通りかかると、門前で一匹の猫が手招きをしていたそう。直孝は猫に導かれて寺の中に入って休憩すると、たちまち空が曇って雷雨に。住職の愛猫「たま」のおかげで落雷の難を逃れ、説法を聞けたことに仏の因果を感じた直孝は、荒れていた寺を改築。この出来事が縁となり、井伊家の菩提寺になったと伝えられています。
駅からの徒歩が楽しい、豪徳寺へのアクセス
アクセスは、小田急小田原線「豪徳寺」駅から徒歩約10分、東急世田谷線「宮の坂」駅から徒歩5分ほどで到着できます。豪徳寺駅の改札を抜けると、早速出迎えてくれる招き猫。駅から寺までの商店街には、猫をモチーフにした看板やイラスト、置き物なども多く、招き猫で街を盛り上げていることがうかがえます。
また車であれば、首都高速「永福」ランプから約15分で、駐車場は約20台分あり、参拝者は無料で利用できます。
見どころが多彩な豪徳寺の境内へ
ゆったりとした境内には、釈迦如来坐像、阿弥陀如来坐像、弥勒菩薩坐像などが安置された仏殿、本堂、また延宝7年(1679年)に造られた貴重な梵鐘など見どころが点在しています。
ひときわ目立つ、高さ22.5メートルの三重塔には、十二支の彫刻が一周するかたちで施されているのですが、注目すべきはネズミの部分。主役であるネズミよりも猫が大きくなっているところは、さすが猫寺です。
絵馬にも招き猫が描かれていて、飼い猫の健康を祈るような願い事が多いのも、豪徳寺ならではといえるでしょう。
そして豪徳寺の招き猫信仰を存分に感じさせてくれるスポットが、たまを招福猫児(まねきねこ)として祀っている招福殿。
お堂の横に隙間もないほどずらりと並ぶ、大小さまざまな招福猫児は圧巻! ここは招福猫児の奉納所で、願いが成就したあとに返納すると、さらに御利益がいただけるといわれているのです。つまり、ひしめき合っている招福猫児の数だけ願いが叶っているわけなので、それだけでも縁起のいいスポットといえそうです。
招き猫といえば、小判を持っている姿をイメージする人も多いのではないでしょうか。豪徳寺の招福猫児は小判を持たず、右前足をすっと上げた上品でかわいらしい佇まい。小判を持ったよく見るあの招き猫は、現在の一大生産地である愛知県常滑市の“常滑系”と呼ばれるスタイルなのです。招福猫児が小判を持っていないことにもきちんとした理由があって、招き猫は機会を与えてくれるものの、福そのものを与えてくれるわけではなく、機会を生かせるか否かは本人次第……という思いが込められているそう。もうひとつの小ネタとして、一般的に右前足を上げている招き猫と左前足を上げている招き猫がいますが、右前足は金運を招き、左前足は人を招くといわれています。
豪徳寺での御朱印のもらい方
招福猫児の置き物は寺務所で購入することが可能で、2センチほどの豆サイズから30センチほどの特大サイズまで、いろんな大きさが揃っています。絵馬やお札、お守りも購入できるほか、御朱印もいただけます。御朱印の受付時間は8:00~16:30で、300円です。
また寺務所のガラス扉に、彦根のマスコットキャラクター・ひこにゃんの絵が飾られているのですが、ひこにゃんのモデルは招福猫児なのだとか。こんなところでも、彦根藩・井伊家とのつながりを発見できたのでした。
周辺を散策すれば、猫みやげ&猫グルメに出合えます
冒頭でも触れたように、招き猫に出会えるのは境内だけではありません。寺の周辺にあるお店では、招き猫をモチーフにしたユニークな商品を見つけることができます。
まほろ堂蒼月
豪徳寺にほど近く、さらには奉納相撲で知られる世田谷八幡宮も近い、世田谷線の線路沿いにある「まほろ堂蒼月」は、カフェスペースもあるモダンな和菓子店。上品な味わいの青豆大福や芋ようかんなどが定番商品として人気です。招き猫が焼印された「まねきねこどら」は、油ではなくバターで皮を焼いているので、ほんのり洋風な味わいが特徴。甘さ控えめの自家製餡とマッチしています。
まほろ堂蒼月
住所 | : | 東京都世田谷区宮坂1-38-19 ウィンザーパレス 103 |
---|---|---|
電話 | : | 03-6320-4898 |
営業時間 | : | 10:00~18:00 |
定休日 | : | 月曜(月曜が祝日の場合は火曜、不定休あり) |
web | : | http://www.mahorodou-sougetsu.com/ |
ペンギンペストリー
豪徳寺駅徒歩1分の「ペンギンペストリー」は、水色の建物が目印のかわいらしいケーキ屋さん。ショーケースには、阿寒湖産の生クリームを卵たっぷりの生地で巻いた「ペンギンロール」や、旬のフルーツを贅沢に使ったケーキなどが。おみやげに人気の「豪徳寺にゃんこ鈴」は、猫の鈴の形をイメージした、一口サイズの焼き菓子です。
ペンギンペストリー
住所 | : | 東京都世田谷区豪徳寺1-23-14 |
---|---|---|
電話 | : | 03-6413-5128 |
営業時間 | : | 平日 11:30~18:00 土・日・祝日 10:30〜18:00 |
定休日 | : | 水曜(不定休あり) |
web | : | http://penguin-pastry.com/ |
うつわのわ田
2018年4月にオープンした「うつわのわ田」は、沖縄・九州の窯元を中心に日本各地の陶磁器を扱っています。アパレル業界から器の世界へ転身したという店主は、器のプロではなかったからこそ、見た目だけでなく使い勝手のよさにこだわってセレクトしています。「招き猫の箸置き」は小代焼瑞穂窯を経て独立した、福岡にある桜秋窯の衛藤秋久さんが作ったオリジナル商品。手描きの表情がなんともいえずそそられます。
うつわのわ田
住所 | : | 東京都世田谷区豪徳寺1-49-2 1F |
---|---|---|
電話 | : | 090-6654-1492 |
営業時間 | : | 11:00~18:00 |
定休日 | : | 水曜(不定休あり) |
web | : | https://utsuwanowada.jp/ |
「たまにゃん祭り」&「沖縄祭り」。豪徳寺が盛り上がるお祭りにもご注目を
豪徳寺の周辺では、年に2回、豪徳寺商店街たまにゃん通りでお祭りが行われます。まず5月に行われるのが「たまにゃん祭り」。模擬店やゲームコーナー、イベントステージなどがあり、毎年多くの観光客で賑わいます。
また「あきさみよ豪徳寺沖縄祭り」は、豪徳寺商店街たまにゃん通りで毎年秋に行われている沖縄のお祭りです。豪徳寺には沖縄県の学生寮「沖英寮」があり、そのことをキッカケに始まったそうです。沖縄特産品の販売やグルメの模擬店、エイサーのパレードなどが催され、秋の豪徳寺が南国色に染まります。
招き猫尽くし……のみならず、実は見どころが少なくない豪徳寺。癒やされるうえに縁起のよい猫たちを詣でに来れば、きっと発見があるはずです。一度、足を運んでみてはいかがでしょうか?
大谿山豪徳寺
住所 | : | 東京都世田谷区豪徳寺2-24-7 |
---|---|---|
電話 | : | 03-3426-1437 |
拝観時間 | : | 【3月下旬〜】6:00~18:00(寺務所受付は8:00~17:00) 【9月下旬〜】6:00~17:00(寺務所受付は8:00~16:30) |
web | : | https://gotokuji.jp/ |
撮影:石井孝典
※2022年10月3日に一部内容を更新いたしました
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