駅長猫に看板猫……。全国各地には観光客をもてなす案内人ならぬ「案内猫」がいます。そんな案内猫に会いに行く旅をしてみませんか? この記事では、猫写真家の石原さくらさんが全国各地の猫に会いに行き、旅先の土地やスポットの魅力を猫目線で紹介します。

今回訪れるのは、山形県米沢市、開湯は約1200年前といわれる古式ゆかしい小野川温泉にある「亀屋万年閣」。この宿の招き猫のような11歳のふくさん、3歳のななちゃん、はちくんの3匹に会いに行きました。猫に旅案内をしてもらえるような記事をごゆるりとお楽しみください。

画像1: 猫に会いに行く旅のススメ。小野川温泉・亀屋万年閣を守る3匹の招き猫

今回の旅人:石原さくらさん

猫写真家で愛玩動物飼養管理士。雑誌での写真連載や、写真教室を定期的に開催する。デボンレックスという猫種のブリーダーや猫カフェの運営における知識と経験を生かしてキャット・ファーストな撮影を心がける。世界中の愛猫家とのつながりを通して、猫を愛するすべての人に猫と人とのより良いあり方を提案することをライフワークとしている。

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小野川温泉・亀屋万年閣に到着。旅人をさっそく出迎えてくれる猫たち

山形県の米沢からほど近い小野川温泉という温泉街。

そこに評判の看板猫たちがいると聞いて、ある夏の日、私は猫を訪ねてひとり北へ向かう。

小野川温泉に到着すると、温泉旅館と共同浴場が立ち並び、街にはほのかに心地よい硫黄の香りが漂う。ここは、古式ゆかしい趣のある温泉街なのであった。

香りから察するに、きっとこれは私の好きな泉質だなどと温泉への思いも馳せつつ旅館への道を行き、今回の目的地、亀屋万年閣に到着。

画像: 創業120年の歴史ある建物ながらどこか奥ゆかしい。

創業120年の歴史ある建物ながらどこか奥ゆかしい。

窓の格子の向こうに猫さんのお姿が。

画像: あなた、どちらさま?

あなた、どちらさま?

到着するなり、お目見えしたのは、モフモフ女子のななちゃん3歳。

この窓辺から外を眺めるのがななちゃんの日課のようである。

画像: なな「いらっしゃい、今日のお客さんね」

なな「いらっしゃい、今日のお客さんね」

亀屋万年閣の若女将によると、ななちゃんはお姉ちゃん気質で面倒見の良い性格をしており、若女将のお子さんの遊びにも辛抱強く付き合ってくれるそう。

宿泊のお客さんにも数名お子さんがいたのだが、動じない様子で佇んでいる。

画像: はち「いらっしゃい、僕もそろそろ出動するけどまだちょっと眠いんだ」

はち「いらっしゃい、僕もそろそろ出動するけどまだちょっと眠いんだ」

お部屋に荷物を置いて廊下に出ると、キジトラ男子のはちくん登場。

ななちゃんとはちくんは姉弟一緒にこの旅館の猫として迎え入れられた。よってはちくんも3歳、旅館の若手猫たちである。

画像: 吹き抜けが気持ちいいロビーでスタンバイ。なな「今日のお客さんはどんな人たちかしらね」

吹き抜けが気持ちいいロビーでスタンバイ。なな「今日のお客さんはどんな人たちかしらね」

画像: なな「ほらほら、はちくん目を覚ますのよ」

なな「ほらほら、はちくん目を覚ますのよ」

夕食後には、お客さんへの挨拶まわりも欠かさない

チェックイン後は、周囲を散策したり、猫たちと戯れたり、そしてやはり温泉を楽しんだりと、思い思いに過ごしているうちに、ゆったりとした時間の流れに包まれていく。

小野川温泉の日が暮れていく夕食時、猫たちもそれぞれのお気に入りの場所へ行き思い思いに過ごしているが、人の食事に興味を示すこともない。

旅館のルールをちゃんとわきまえているところに感心しきりなのであった。

日が暮れても、まだまだ目が覚めない様子のはちくんは、かわいいポーズを決めながら眠り続けている。

画像: はち「食事の時間は静かに眠るべし……ZZZ」

はち「食事の時間は静かに眠るべし……ZZZ」

画像: はち「そろそろ起きるからねー」

はち「そろそろ起きるからねー」

夕食の終わりを察知すると、いよいよ目を覚ましたはちくんはお客さんに挨拶にまわっていく。ちゃんと自分の出番をわかってるんだねぇ。

画像: はち「うちのごはんおいしかったでしょー」

はち「うちのごはんおいしかったでしょー」

夕食が終わる頃になると、ふくさんが登場。

画像: 長年の時を経た柱や家具が趣深い館内。ふく「いらっしゃいませ、ごゆっくり」

長年の時を経た柱や家具が趣深い館内。ふく「いらっしゃいませ、ごゆっくり」

と思ったら自分で扉を開けて玄関へ。

画像: ふく「ごめんあそばせ、私はちょっと用事がありますので」

ふく「ごめんあそばせ、私はちょっと用事がありますので」

美しい翠色の瞳とふわふわの被毛を纏い、猫の女将さんの風格を漂わせる。

ふくさんは現在11歳、朝と夕方に旅館の周辺をパトロールすることが彼女のルーティンのようだ。

画像: 自分で扉を開けられるものの、一旦待ってみるのがふくさん流。ふく「ただいま、どなたか開けてくださいません?」

自分で扉を開けられるものの、一旦待ってみるのがふくさん流。ふく「ただいま、どなたか開けてくださいません?」

亀屋万年閣では、若女将が幼少の頃から代々猫と暮らしているそうで、創業120年ともなると昔からこうして、小野川温泉には猫たちが暮らしていたのかもしれない。

猫たちと人々の暮らしが今も脈々と続いていること、それってなんて素敵なことでしょうなどと物思いに耽りつつ、夜は静かに更けていく。

画像: ふく「仕方ないわね、自分で開けますわよ」

ふく「仕方ないわね、自分で開けますわよ」

宿泊客のチェックアウトの時間に合わせて待機する、3匹のホスピタリティに脱帽

猫たちと戯れた後、やさしいお湯なのにお肌ツルツルの温泉につかって部屋へと戻る。至福の時間の中、いつの間にか眠りに落ちて気がつくと朝になっていたのであった。

朝食は8時に始まる。猫たちは夕食時同様に、食事時は各々のお気に入りの場所で過ごしているようだ。

画像: 地元の食材が並ぶ亀屋万年閣の食事メニュー

地元の食材が並ぶ亀屋万年閣の食事メニュー

昨晩の夕食にも朝食にも、山形産「つや姫」とともに地元のおいしい食材がずらりと並ぶ。若女将が自家栽培している採れたてのお野菜のお料理も何から何までおいしくてモリモリいただいてしまった。夕食の米沢牛のすき焼き、岩魚の塩焼きも絶品だったよなぁ。山形名産の食べ物っておいしいもののオンパレードじゃない? なんて密かに興奮のお食事時間を過ごしたのだった。

画像: 岩塩が輝く岩魚の塩焼き

岩塩が輝く岩魚の塩焼き

朝食の時間が終わる頃になると、猫たちが何やらいそいそと玄関先に集まっている。

猫の女将、ふくさんがフロントに横たわり、入念に毛繕い。

画像: ふく「あなた、昨夜はよく眠れたようね」

ふく「あなた、昨夜はよく眠れたようね」

画像: ふく「ワタクシ、朝はしっかり洗顔する派よ」

ふく「ワタクシ、朝はしっかり洗顔する派よ」

画像: ふく「まずはここから外を眺めるのよ」

ふく「まずはここから外を眺めるのよ」

画像: はち「おはよう~。温泉は気持ちよかった?」

はち「おはよう~。温泉は気持ちよかった?」

画像: はち「小野川温泉のお湯は、昔から“美人の湯”って言われてるんだって(えっへん)」

はち「小野川温泉のお湯は、昔から“美人の湯”って言われてるんだって(えっへん)」

画像: はち「女将さん、おはようございます」、ふく「いつまで寝てるの、ちょっと遅い気がするわ」

はち「女将さん、おはようございます」、ふく「いつまで寝てるの、ちょっと遅い気がするわ」

画像: はち「お見送りが僕の仕事さ(キリッ)」

はち「お見送りが僕の仕事さ(キリッ)」

画像: はち「ふわわわぁ~、本当はまだ眠いんだけどね」

はち「ふわわわぁ~、本当はまだ眠いんだけどね」

驚いたことに、宿泊客のチェックアウトの時間に合わせて猫たちはお見送りのために待機しているようだ。猫たちのホスピタリティ精神にただただ脱帽なのであった。

宿泊のお客さんには毎年猫に会うのを楽しみにして来る方も多いそう。私の滞在中にも夏休みには毎年泊まりに来ているという猫好きのご家族がいらっしゃった。

「猫の女将」のふくさん、「猫の若女将」ななちゃん、そして「猫の若旦那」はちくんからこんなおもてなしを受けたら、心を掴まれてしまうのも納得である。

画像: はち・ふく「スタンバイ、オッケー!」

はち・ふく「スタンバイ、オッケー!」

画像: はち「またお越しくださいませー。僕もやるときはやるんだってばー」

はち「またお越しくださいませー。僕もやるときはやるんだってばー」

チェックアウト後も、猫に導かれ小野川温泉周辺を散策する楽しみ

ひとしきり宿泊客の見送りを済ませると、ここからは猫たちのオフタイムなのだろう。

ふくさんはパトロールがてらお気に入りの涼しいスポットでお昼寝に。

画像: ふく「それではワタクシはちょっと休憩してきますわね」

ふく「それではワタクシはちょっと休憩してきますわね」

画像: ふく「ここが最近のお気に入りですの」

ふく「ここが最近のお気に入りですの」

寝坊助をしていたはちくんが、お見送りのお仕事の後には頼もしい若旦那と化して「こっちにおいでよ」と誘うように私を案内してくれた。

今日のはちくんは昨日の寝坊助とは打って変わってイケメン風情。何回もスリスリされちゃって私は、ときめかずにはいられない。

画像: はち「ついてきて、こっちこっちー」

はち「ついてきて、こっちこっちー」

画像: 「薬師如来尊堂」での一枚。はち「ここにもお参りして行ってねー。蝉もいっぱいいるし」

「薬師如来尊堂」での一枚。はち「ここにもお参りして行ってねー。蝉もいっぱいいるし」

はちくんに案内されたのは亀屋万年閣から目と鼻の先にある、「薬師如来尊堂」。

小野川温泉の由来となった小野小町が温泉の神、薬師如来像を祀ったという伝説がある神社である。

はちくんに誘われるがまま、私も神社を参拝しこの旅に感謝をし、後ろ髪を引かれながらも亀屋万年閣を後にした。

猫好きにとっては至れり尽くせりのお宿、小野川温泉亀屋万年閣。

それぞれの季節での楽しみがあるようで、ぜひまた違う季節にも猫たちに会いに行きたいと純粋に思える素晴らしい場所なのであった。

画像: 小野川温泉は、温泉街や田んぼアート、ホタル祭などの楽しみも。亀屋万年閣の猫たちは、この地を訪れた旅人の守り神のような存在なのかもしれません。なな「またのお越しを一同お待ち申し上げております」

小野川温泉は、温泉街や田んぼアート、ホタル祭などの楽しみも。亀屋万年閣の猫たちは、この地を訪れた旅人の守り神のような存在なのかもしれません。なな「またのお越しを一同お待ち申し上げております」

亀屋万年閣

住所山形県米沢市小野川町2481
アクセス山形空港からリムジンバス山形空港線で山形駅前(約35分)→山形駅から新幹線で米沢駅(約36分)→米沢駅前からバスで小野川温泉(約24分)→徒歩で亀谷万年閣(約2分)
電話0238-32-2011
webhttp://www.kameya-m.jp/

この記事に登場する猫たち

亀屋万年閣を守っている猫たちをご紹介。

・ふく(11歳)
フワフワの毛が特徴。

画像2: 猫に会いに行く旅のススメ。小野川温泉・亀屋万年閣を守る3匹の招き猫

・なな(3歳)
2019年生まれの姉弟。面倒見が良くて優しい女の子。

画像3: 猫に会いに行く旅のススメ。小野川温泉・亀屋万年閣を守る3匹の招き猫

・はち(3歳)
2019年生まれの姉弟。うっかりおとぼけで朗らかな性格の男の子。

画像4: 猫に会いに行く旅のススメ。小野川温泉・亀屋万年閣を守る3匹の招き猫

この3匹の他にも、豹のような顔立ちが凛々しい「りん」(享年11)もこの場所で長年愛されていました。

web:http://www.kameya-m.jp/sightseeing/cats/

猫たちに会うのを毎年楽しみにしている常連さんも多いという亀屋万年閣。猫たちが思い思いにくつろぎ、のびのびと暮らしている場所は、きっと人間にとっても過ごしやすい場所なのでしょう。猫好きの人はもちろん、最近少し癒やされたいな……と思っている人は、亀屋万年閣を訪れてみてはいかがでしょう? ホスピタリティ精神抜群の亀屋万年閣の猫たちと触れ合い、小野川温泉のお湯に浸かれば、いつもの温泉旅がより一層、心ほぐれる旅の思い出に変わるはずです。

画像5: 猫に会いに行く旅のススメ。小野川温泉・亀屋万年閣を守る3匹の招き猫

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