ウユニ塩湖のような絶景の「SUIDEN TERRASSE」にサウナが新設
「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」は、2018年9月、地方創生のモデルとして注目を集める鶴岡サイエンスパークの敷地内にオープンした宿泊滞在施設。山形県庄内地方は出羽三山から庄内平野、そして日本海へ循環する美しい水に育まれた場所であり、それを象徴する水田から着想を得たのだといいます。
このホテルの設計を手掛けたのは世界的建築家・坂 茂氏。館内は木のぬくもりを活かしたシンプルで居心地のよい空間で、どこに身を置いても田んぼの気配が感じられるようになっています。
2021年4月29日、そんな同ホテルのスパ棟がリニューアルオープンし、サウナが新設。設計はホテル同様に坂さんが、サウナの監修はサウナー専門ブランドを手掛けるTTNEが担当しました。
美しい景色を目で楽しみ、全身で体感しながら“ととのう”
それでは、さっそくサウナを体験。サウナを楽しむ前に、まずはスパ棟にある内湯で身体を温めます。スパ棟に入って左側には、内湯と露天風呂・サウナを備えた「天色(あまいろ)の湯」、右側には内湯のみの「朱鷺色(ときいろ)の湯」があり、毎日男女で入れ替え制になります。さらに離れにも、露天風呂とサウナを設えた「月白(げっぱく)の湯」が。この日は、「朱鷺色の湯」と「月白の湯」が女性専用です。
朱鷺色の湯に入ってみると、光が差し込む設計の天窓が目に入りました。さらに、その光を受けて、内湯を囲むタイルがキラキラと輝いているのが印象的。地下1,200メートルから汲み上げた天然温泉はちょうどよい湯加減で、少し入っているだけでしっかりと身体を温めてくれました。
体が温まったことを確認し、一度館内着に身を包んだうえで、いよいよサウナのある月白の湯へ。朱鷺色の湯と月白の湯は入り口が異なり、つながっていません。そのため、もしお湯から上がってすぐにサウナに入りたいという人は、月白の湯の露天風呂で身体を温めてもよいでしょう。
新設されたサウナは、セルフロウリュが完備されている本格的なフィンランド式サウナ。サウナストーンにアロマ水をかけるたびに、配合されたヒバの香りと心地のよい水蒸気に包まれる極上の体験ができました。
大きな窓からは露天風呂と空を眺められ、開放感を演出してくれます。
坂氏の建築のアイコンでもある紙管を模した木のベンチは、長時間座っていても痛くなることはない仕様。サウナに入っていると、いつもより感覚が研ぎ澄まされますが、こちらのベンチでは違和感なく、心地よく過ごせました。
また、サウナに入って気になったのは、サウナ室内に温度計も、入浴時間の目安にする12分計もないこと。これについて、TTNEの“ととのえ親方”こと松尾大さんに聞いてみると「温度計や湿度計、時計を置かないのは、サウナのなかで数値と向き合ってほしくないから。数値ではなく、自分の心と身体でサウナを楽しんでほしいんです」とコメント。昨今のサウナブームの中、「一番ととのうサウナの入り方」などが次々とハック化されていますが、サウナとはあくまでも自由に、自分のペースで楽しめる場所だということを思い出させてくれました。
サウナから上がったあとは、お待ちかねの水風呂。水風呂は露天風呂に隣接して配置されており、まるで水田と一体になったかのような感覚を味わえました。温度は13度前後とのこと。通常の女性用サウナの水風呂よりは低めの温度設定ですが、自然に包まれていることもあり、心地よく浸かっていることができました。
その後、同じく露天風呂エリアにあるベンチでととのい、露天風呂で体を温め、2周目、3周目……。何度も繰り返し入りたくなるサウナに「絶対にまた来よう」と思いました。
さらに今回は特別に、この日は男性用だった天色の湯のサウナも体験。
こちらのサウナ室は、坂氏を象徴するモチーフのひとつである六角形を基調としたデザインが印象的です。ベンチは六角柱を組み合わせた蜂の巣のような構造で、椅子の一部は可動式となっているのもポイント。好みの位置に移動させて調整できるのだそうです。
天色の湯のサウナにも、もちろんロウリュは完備。また、横長の窓を配置したことで、庄内の山並みを眺望できるようにしたのは坂氏のこだわりだといいます。景色を楽しみたい人は、一番低い位置で。サウナに集中したい人は、一番上の段で景色を見ることなく。そのときの気分に合わせて楽しめるよう、空間がデザインされているのです。
こちらは水風呂も六角形、さらにその上には六角形の天窓が設置されていました。実はこの六角形は、リニューアル前からあったこの彫り込みの天窓に合わせたもの。
ととのえ親方は、このサウナのおすすめポイントを「建築・デザインにぜひ注目してほしい。著名な建築家がサウナ室のデザインに関わったというだけでも、世界初かもしれません。サウナは“苦しい”から“美しい”へ」と語ってくれました。
水風呂のあとは、しっかりと外気浴スペースで休憩。斜めになった壁が特徴的なベンチに座ってみると、天井の無垢な木目や、天窓から入り込む光が目に入ります。その向こうに広がるのは、美しく連なる山々。モダンなデザインの建築と美しい自然が溶けあう、素晴らしい眺めに心が洗われます。サウナ=耐え抜く、我慢といったイメージを、もっと心地よく、豊かなものに変えてくれそうです。
サウナのあとのお楽しみ、SAKE BARへ。県産の地ビールや、地酒やワイン、フルーツジュース、ジェラートなど多種多様なメニューがありました。
サウナ上がりにはビールという方もいれば、オロナミンCとポカリを合わせたサウナー御用達のドリンク「オロポ」が飲みたいという方、フルーツや野菜を使用したスムージーなど健康的なものを身体に入れたいという方など、好みはさまざま。バーでは今後、多様なドリンクメニューを展開予定とのことなので、サウナ後の身体が一番欲しているものを、そのときの気分に合わせて飲むのがおすすめです。
また、宿泊者限定のライブラリも併設。ライブラリには、ブックディレクター幅 允孝氏監修のもと、「一冊一献」「整える」など、7つのテーマに沿った約1,000冊の本が並んでいました。椅子やソファの種類も豊富なので、自分の一番楽な体勢でゆっくりと寛いではいかがでしょう。
客室は、白を基調したカラーと木の素材が温かなデザイン。さらさらとした水の音で、常に自然を身近に感じられます。
サウナに入ったあとということもあり、体が芯からしっかりと温かくなり、自然と眠気が出てきました。日付を跨ぐ前に就寝し、朝日が顔を出した5時ごろに起床。前日、ライブラリから借りてきた本を読み、お腹が空いたらご飯を食べ、自由気ままな過ごし方を。
普段は気づいていないような疲れが、少しずつ癒されていくのを実感しました。
山脈に囲まれた土地、一面に広がる水田のなかに佇む「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」。木が醸し出すぬくもりと、モダンでスタイリッシュなデザインが調和するこの場所で、自然に包まれながら、あえて計画を決めず、そのとき、感じたままに過ごす。コロナ禍の心配がなくなったころには、日頃の疲れを水の美しい庄内という地でリフレッシュしてはいかがでしょうか。
※2022年5月16日に一部内容を更新しました
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