日本ではまるで苦行のようなイメージが強いサウナですが、実はそんなことはありません。その魅力を十分にお伝えすべく、女性でも温泉旅行のように楽しめるサウナの旅を提案しましょう。
ナビゲーターは、2019年の国内サウナブームを牽引した「サウナー」のひとりであり、フィンランドサウナアンバサダーでもあるプロサウナー、“サウナ師匠”こと秋山大輔さん。フィンランドのサウナの魅力とともに、現地の注目サウナやホテル、グルメ、観光情報などを教えてもらいました。
文:中山秀明
フィンランドがサウナの聖地である理由
まずは、フィンランドのサウナについて基本を押さえましょう。なぜフィンランドがサウナの聖地とされているのでしょうか。そこにはきっと、現地ならではの特徴があるはず。
「そもそもサウナはフィンランド式の蒸し風呂のことで、発祥もフィンランドとされているんです。そして、圧倒的な普及率の高さを誇ります。人口が約550万に対して、サウナの数は約300万ですから。これは、施設の多さはもちろん自宅にサウナを設置する世帯が多いからでしょう。日本でいうところの体を温めるための湯船が、フィンランドの場合はサウナになっているだけ。体を洗うのはシャワー、その後の温浴はサウナというスタイルが一般的なんです」(秋山さん、以下同)
また、日本の銭湯に併設されているサウナは、一般的にドライサウナであることも、本場と大きく異なる点です。日本は、空間全体を暑くした部屋で汗をかく乾式で、フィンランドは、熱した石に水をかけることで発生した蒸気浴を楽しむ湿式になるのだそう。
「この『ロウリュ』と呼ばれるフィンランドスタイルが、昨今の日本におけるサウナブームに火をつけている大きなポイント。ドライサウナ同様に汗をかけますが、我慢して耐えるようなキツさがないんです。しっとりとして心地よく、ミストサウナや岩盤浴に近いですね」
秋山さんは、フィンランドのサウナ施設の豊かさにも言及。水着着用の上、混浴で入れる施設が多かったり、エンターテイメント要素の際立ったサウナがあったり、クールなデザインだったり。観光面でもサウナを楽しめるのがフィンランドなのです。
「たとえば一室がサウナになっている観覧車や、サウナ空間で飲食を楽しめる『バーガーキング』があるんですよ。これらは特に尖った例ですけど、電気やガスを使わずに自然素材で焚くアウトドアサウナや、併設された湖に水風呂としてダイブする施設など、サウナを通じた自然体験が楽しめるのもフィンランドの魅力です」
フィンランドでおすすめのサウナを厳選して紹介
そんなフィンランドには、どんなサウナスポットがあるのでしょうか。ここからは、秋山さんが体験したフィンランド国内、特にヘルシンキのサウナを、カテゴリー別に4店レコメンドしてもらいました。(以下コメント、すべて秋山さん)
1. ヘルシンキのサウナと言えばここ!観光者向けのメジャーなサウナ KotiharjunSauna
ここはヘルシンキで2番目に古い公衆サウナ。伝統的なフィンランド版の銭湯(サウナ)文化を実体験できるのが魅力です。
サウナ室内のひな壇(腰掛けるスペース)に高低差があり、開放的な空間。外気浴は屋外の路上スペースで、バスタオルをまいて休憩するんですよ。すごくフリーダムで、『これが本場のザ・サウナか!』と思いました。
地元の人の中に観光客も混じって、クラフトビールやジントニックなどを飲みながら交流できるのもイイですね。
Kotiharjun Sauna(コティハルユ サウナ) | ||
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住所 | : | Harjutorinkatu 1, 00500 Helsinki |
web | : | https://www.kotiharjunsauna.fi/ |
2. フィンランドらしい、湖畔にダイブできるサウナ Kuusijärvi
空港とヘルシンキの中間にあり、どちらからも比較的に近くてアクセス至便。現地に到着してすぐ、もしくは最終日に行く人が多いですね。
特徴はやっぱり、森の中にあって目の前の湖に飛び込めるという雄大なロケーション。あと、スモークサウナがあるのも魅力です。これは石を8時間ぐらい焚火で熱して、1時間かけて煙を抜いてロウリュで楽しむサウナのこと。余熱が心地よく、温度がすごくまろやかなんです。
サウナの熱源って、スモーク、薪、電気とあるんですけど、一番やわらかいのがスモーク。煙の残り香もまた味わい深いんですよ。カフェも併設されていて、ここでハイボールを頼めば、スモーキーな香りとのマリアージュが最高です!
Kuusijärvi(クーシヤルヴィ) | ||
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住所 | : | Kuusijärventie 3, 01260 Vantaa |
web | : | https://www.cafekuusijarvi.fi/ |
3. プロサウナ―も驚いた!ヘルシンキの最新サウナ Uusi Sauna
「ウーシ」はフィンランド語で「新しい」という意味。ここはヘルシンキ最古のサウナのオーナーが新たなコンセプトで作った、最新スポットです。
新しさのひとつが、バーレストランとサウナの融合。サウナ利用客がバスタオル姿でレストランを楽しめる一方、飲食だけの目的でも利用できるので、服を着ている人と着ていない人が共存しているんです。
スタイリッシュなカフェのような雰囲気で、料理も絶品。ソーセージとかサーモンスープとか、郷土の定番フードが中心ですね。ナチュールワインをはじめドリンクも豊富で、名実ともに新感覚のサウナといえるでしょう。
Uusi Sauna(ウーシ・サウナ) | ||
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住所 | : | Välimerenkatu 10, Jätkäsaari, 00220 Helsinki |
web | : | https://uusisauna.fi/ |
女性にも人気のラグジュアリーなサウナ Loyly
特に最近、フィンランドの建築って世界的に注目されているんですけど、そのハイセンスなデザインで人気なのがこのサウナ。その名も「ロウリュ」といいます。
設備的にも充実していて、サウナはスモークと薪がある自然派仕様。また、オーシャンビューの景観も魅力なうえ、すぐ外はバルト海。そう、“バルト海に飛び込む”という体験が楽しめるんです。しかも夏の時季なら白夜なので、いっそうロマンティックに。
レストランやバーもあり、ラグジュアリーな雰囲気でサウナを楽しむならここですね。
Loyly(ロウリュ) | ||
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住所 | : | Hernesaarenranta 4, 00150 Helsinki |
web | : | https://www.loylyhelsinki.fi/ |
秋山さんがおすすめしたいその他のヘルシンキ情報
フィンランドの首都・ヘルシンキに行ったら、サウナはもちろんその他の情報も抑えておきたいところです。そこで秋山さんに、おすすめのホテル、グルメ、観光スポットも教えてもらいました。(以下コメント、すべて秋山さん)
1. 美しい北国の世界観を楽しめるホテル Lapland Hotels Bulevardi
フィンランドのラップランドは、豊かな自然が魅力でオーロラが見られる確率が高いことで知られる地方。その神秘的な世界観をヘルシンキにいながら楽しめるんです。
ラグジュアリーな雰囲気と現地のネイチャー感がほどよくミックスした優美なデザインで、それでいて価格が手頃なのも魅力。泊まるならぜひサウナルーム付きの部屋で、思う存分サウナ体験を楽しんでいただけたら。
Lapland Hotels Bulevardi(ラップランド ホテルズ ブレヴァルディ) | ||
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住所 | : | Bulevardi 28, 00120 Helsinki |
web | : | https://laplandhotelsbulevardi.com/ |
2. プロサウナー的に世界一おいしいグルメ Friends & Brgrs
僕はここが世界一おいしいハンバーガーショップだと断言できます。こちらのお店は現地にいくつかあるチェーン店ですが、フィンランドにしかありません。
オープンキッチンで、食材を開示するだけでなく、作る様子を動画でアップしているのが先進的。ベーカリーと調理キッチンはブースで分かれていて、それぞれ専門の料理人が作ったものを合わせて提供するというスタイルです。
味わいは深みがありながら極めてライトで、胃もたれなどは皆無。パティにはフィンランド牛を使うなど、オーガニックでヘルシーながら絶品です。クリエイティブなブランディングや哲学も素晴らしく、これが日本に上陸してくれたらなぁといつも思いますね。
Friends & Brgrs(フレンズ アンド バーガーズ) | ||
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住所 | : | Mikonkatu 8, 00100 Helsinki |
web | : | https://friendsandbrgrs.com/en/ |
世界最高の図書館に選ばれた観光スポット ヘルシンキ中央図書館 Oodi
2018年12月にオープンした図書館。ただ新しいだけでなく、国際図書館連盟(IFLA)による2019年度の「Public Library of the Year」(公共図書館オブ・ザ・イヤー)に選ばれているすごいところなんです。
まず行って驚くのが、圧巻の建築デザイン。外見が美しいだけでなく、計算し尽くされた空間づくりによって、人と人とのつながりやコミュニティが自然と生まれる設計になっているんです。
コンセプトは“すべての人へ”。開放的で、読書に没頭するのはもちろん、ミーティングしたり、瞑想したり、子どもを自由に遊ばせたり、その親御さんはくつろいだり。ジェンダーレスが進んでいる同国らしさもあって、トイレが男女一緒であるなど、ダイバーシティ感も秀逸。
また、図書館でありながらネットゲーム機、キッチン、3Dプリンタなどを備えていて、多彩なクリエイティブを発信できるコワーキングスペースになっているという、驚きの最先端スポットです。
Oodi(オーディ) | ||
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住所 | : | Toolonlahdenkatu 4, Helsinki 00100 |
web | : | https://www.oodihelsinki.fi/en/ |
国連が発表した2019年世界幸福度ランキングで、2年連続1位に選ばれたフィンランド。この背景には、社会保障制度の充実度やワークライフバランスの浸透などが特筆されますが、「サウナも関係しているのでは?」というのが秋山さんの見解です。
服を脱ぐということは、スマホをはじめとする情報端末から離れることであり、それは一種のストレスからの解放といえます。蒸気で体を温め、外気浴をすることで大自然とひとつになり、場所によっては美しいオーロラの輝きに照らされるという神秘体験でもあるのです。この豊かな文化を世界で最も享受しているのもまた、フィンランドだと秋山さんは言います。
ちなみに「フィンランドは遠い」と思いきや、フライト時間は約9時間。意外に近い国だと思いませんか? 冒頭で触れたとおり、2020年3月よりJAL羽田発ヘルシンキ便が就航となり、ぐっと身近になる北欧旅行。ぜひ本稿を参考に、幸福度満点のステイを楽しんでいただけたら。
秋山大輔
「東京ガールズコレクション」をはじめ、さまざまなイベントをプロデュースするかたわら、20代で目覚めたサウナ好きが高じて、サウナ専門ブランド「TTNE PRO SAUNNER」や「サウナシュラン」「SAUNA FES JAPAN」といったイベントを創設。現在ではサウナ師匠として、日本でのサウナ普及に努めている。
■参考書籍
Saunner Book(松尾大 著)
サウナブームの仕掛け人ともいえるプロサウナー「ととのえ親方」こと松尾大が贈る、心も体も、仕事も人生も、すべてが“ととのう”至福のサウナ指南書。秋山さんは、松尾さんとの対談ページに出演。
週末フィンランド(岩田リョウコ 著)
フィンランド観光局公認のフィンランド・サウナアンバサダーである岩田リョウコさんによる、旅ガイド。初めてでも短期間でも二度目でも、フィンランド旅行を思う存分楽しめる、最新情報が満載の1冊。
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