東北地方でも最大の都市「仙台市」は、藩政時代から豪華で粋な文化が花開き、歴史が育てた様々な芸術、工芸、様式が数多く残る町です。見どころの多い仙台の食や工芸を楽しく見て回る1泊2日。緑濃い街並みと爽やかな気候が気持ちいい、東北の夏旅をお届けします。
画像1: 城下町の伝統を肌で感じる夏の旅、仙台1泊2日おすすめコース

西村 愛

2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。

画像2: 城下町の伝統を肌で感じる夏の旅、仙台1泊2日おすすめコース

9:00 伊達藩ゆかりの寺で庭園に癒される「輪王寺」

仙台市内の北山エリアに美しい庭を持つお寺「輪王寺」があります。ここは、伊達家九代当主伊達政宗の奥方であった蘭庭明玉禅尼に所願され創建された、伊達家ゆかりの由緒あるお寺です。

朝、小雨降る中、輪王寺を訪ねました。仁王門から続く参道は雨に濡れた石畳に木々が映り、自然のエネルギーを存分に感じられる緑のトンネルでした。その参道の脇には十三体の仏様が置かれており、歩くだけでもご利益がありそうです。

見応えのある日本庭園は行き届いており趣があります。ぐるりと散策すると広さがあり、池ごしに見える三重塔や季節の花々には心洗われるような清々しさがあります。日々の生活に感謝する禅の教えを、自然から語り掛けられているような気持ちになれました。
街の中心地にあることを忘れてしまうほどの緑の多さで、まさしく仙台の名刹です。

曹洞宗 金剛寳山 輪王寺
住所宮城県仙台市青葉区北山1-14-1
webhttp://rinno-ji.or.jp/

10:00 城下町に江戸時代から伝わる甘味”仙台駄菓子”の「熊谷屋」

庶民の味として、江戸時代から親しまれてきた仙台駄菓子。今の時代まで続く、いわばロングセラーの逸品ぞろいの伝統的なお菓子です。仙台市内には駄菓子を取り扱う和菓子屋さんが今でも残っており、店頭のケースにはコロコロとした一口サイズの可愛らしいお菓子が並びます。

仙台駄菓子の特徴として、種類が豊富であることが挙げられます。お皿いっぱいに並べてもまだ並びきらないほどの種類の多さ。派手好きとして知られた伊達政宗公の心意気は、庶民にもこのような形となって広がっていたのでしょうか。

米どころであった仙台では江戸時代、一級品の“糒(ほしいい)”が作られていました。糒は保存食として、また戦の携行品として重宝されていましたが、特に仙台藩の糒は全国に名を轟かすほどの名品でした。沢山の糒が作られた中、中級以下のものは駄菓子などの素材として利用されました。今でも米を原料とした駄菓子が多く残っているのもそのためです。

仙台駄菓子の熊谷屋は元禄八(1695)年の老舗で、現在十代目。仙台市民に愛されるなじみ深い味を守り続けています。

元祖仙台駄菓子本舗 熊谷屋
住所宮城県仙台市青葉区木町通2-2-57
営業時間8:30~17:30
休日日曜定休
webhttps://kumagai-ya.co.jp/

12:30 伝統と食の融合!仙台箪笥のミニ懐石「鍾景閣」のランチ

仙台の工芸品のひとつであり、また芸術品としても取引され今でも珍重される「仙台箪笥」。この伝統工芸を料理と共に親しめるということで、やってきたのは「鍾景閣」です。

仙台箪笥は土台である「指物」、装飾を行う「金具」、漆をかける「漆塗」という伝統技巧を用いた、和の緻密さを詰め込んだ宝箱のようです。もともとは刀や身の回りのものを入れるために使われ、その後も嫁入り道具として日常的な収納として利用されるものでした。しかし時代は変わり、現代では小さなサイズが好まれ、大型ではない様々にアレンジされた仙台箪笥があるそうです。

この日は仙台箪笥の引き出しに詰まったスイーツと、簡単なお食事までついた「箪笥スイーツ膳」を楽しみます。引き出しや扉の中にはいくつものスイーツが入っています。和洋組み合わされたバラエティある内容、また素材も仙台を意識した「ずんだ餅」や「秋保ワインを使った林檎コンポート」もありました。

きれいなお料理と丁寧な盛り付け、そして仙台箪笥という伝統的工芸を見ることが出来る鍾景閣ですが、何といっても見どころはうっとりするほどのお庭と、大名屋敷としての風格です。

ここ鍾景閣は、仙台藩主であった伊達家の邸宅を移築した建物。代々藩主として仙台を見つめてきた権威と、華族としての誇りを示す設えや意匠に加え、隠し扉や長刀を振れるよう天井高にした1階部分など、戦闘を想定した造りが非常に興味深いです。

仙台の有形文化財に指定され、昭和天皇の御泊所として、また現・上皇、上皇后両陛下の御休息御座所としても使われた由緒ある建築としての見ごたえも十分。
食事を仙台箪笥で提供するオリジナルのスタイルに加え、歴史的側面からも楽しめる、仙台でも貴重なスポットであると言えます。

旧伊達伯爵邸 鍾景閣
住所宮城県仙台市太白区茂庭字人来田西143-3
webhttps://shoukeikaku.jp/

14:30 旧石器時代の森が眼前に迫る!「地底の森ミュージアム」

鍾景閣の帰り道、長町南駅から歩いてすぐのところにある博物館「地底の森ミュージアム」へ立ち寄りました。
ここは、旧石器時代にこの場所にあったとされる森の姿を見ることが出来る博物館です。

かつて生えていた木々が化石となり、腐ることなく埋もれ残っているもののことを「埋没林」と呼びます。この埋没林が見られる施設は国内でたった3か所しかなく、富山県・魚津、島根県・三瓶(さんべ)、そしてもうひとつが宮城県・仙台市富沢エリアにある地底の森ミュージアムです。3つの中でも駅から歩いていくことが出来るアクセスの良さはここ仙台・地底の森ミュージアムがダントツで、気軽に立ち寄ることができます。

小学校建設に先立って行われた富沢遺跡の発掘調査は、約2万年前にここに森があったこと、その植生はすでに絶滅した「トミザワトウヒ」他であったこと、また動物(鹿)が生息していたこと、森にいた昆虫などの発見につながりました。特に、この場所で人の手によって割られた石器が見つかり、ここで狩りのための道具を作ったことや滞在した跡(焚火の跡)などが地面に残っていることがわかりました。一見すると無機質な木々の幹や根が横たわっている展示なのですが、生きるために、食べるために行動した人の営みがしっかりと刻み込まれていることが証明されています。これはとても貴重なことです。
それらは展示品と映像によって詳しく解説されていて、とてもリアルに感じられます。

富沢遺跡は我々祖先の暮らしを現代に蘇らせ、そして様々なことを語りかけてくれているようでした。悠久の時を経て現れた地底の森に、2万年前の世界への想像力がかきたてられる時間を過ごしました。

地底の森ミュージアム
住所宮城県仙台市太白区長町南四丁目3-1
webhttp://www.sendai-c.ed.jp/~bunkazai/~chiteinomori/

仙台で伝統を守り続けるスポットを「仙台まるごとパス」を使ってお得にまわりました。訪れた場所では興味深い“モノ”との出会いが沢山ありましたが、そこには“人”の探求心や努力、誇り、伝えていきたいという意欲が泉の如く湧き出ていました。
脈々と残る工芸や文化を感じ、奥深い仙台の魅力に気づけた旅でした。

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