加賀温泉郷のひとつである「山代温泉」。遠く白山の恩恵を受け、豊富な湯量と清らかな湧水が町に流れ、歴史と文化の濃い優雅な温泉地です。初日はこの温泉地で、九谷焼や北陸らしいグルメを楽しむ小旅行。2日目には霊験あらたかな「白山比咩神社」で厳かな時間を過ごし、おいしいお蕎麦やお土産屋、伝統技法で醸す日本酒蔵などをレンタサイクルでまわりました。ひとり旅や夫婦旅、のんびりと時間を使いながら旅をするのが好きな方にオススメしたい、加賀エリアの1泊2日旅レポートです。
画像1: 加賀エリアの伝統・歴史・グルメを堪能「山代温泉街」「鶴来」を巡る1泊2日

西村 愛

2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。

画像2: 加賀エリアの伝統・歴史・グルメを堪能「山代温泉街」「鶴来」を巡る1泊2日

「山代温泉」温泉街ぶらり散策

山代温泉の最寄り駅は「加賀温泉駅」。温泉街の中心となる古総湯までは、バスで25分程度、車では10分強で到着します。
町全体に大きな温泉宿、割烹料理屋や和菓子屋さん、器のお店やお土産もの屋さんが連なり、どこから入ろうか目移りしてしまうほど。情緒ある温泉「古総湯」や源泉公園内にある「足湯」も人気で、お客さんで賑わうスポットです。
江戸時代、共同浴場「総湯(現・古総湯)」を中心として、周囲に町が形成していきました。これを「湯の曲輪(がわ)」という北陸地方独特の名前で呼び、今でも古総湯をぐるりと取り巻くように旅館やお店が並びます。

「服部神社」には織物の神・天羽槌雄命と、白山信仰の祭神である菊理媛神を祀っています。温泉街から歩いていくことができる距離ですが、静かで落ち着いた参拝ができます。

「六方焼」とは、小麦粉の皮の六面を香ばしく焼き、あんこを包んだお茶菓子。この専門店である「六方焼 惣八」は、文政年間(1820年代)から現在まで、6代にわたる伝統の味を引き継ぐお店。皮には水を一切使わず、すべて手作り。素朴で優しい味わいが、地元でも人気です。
焼きたても購入できますが、個包装された持ち帰り用は甘さも落ち着きしっとりとした生地でまた違った美味しさがあります。

風情ある町並みは、夜のライトアップでさらに艶っぽく輝きます。石灯籠の灯りや旅館や古総湯のライトアップなど、光の演出もたっぷり。星空も美しく、遅い時間までゆっくりと楽しめる温泉街です。

九谷焼とあいうえおの郷 山代温泉

住所石川県加賀市山代温泉
電話0761-77-1144 (問い合わせ先:山代温泉観光協会)
webhttps://yamashiro-spa.or.jp/ (山代温泉観光協会)

古総湯

住所石川県加賀市山代温泉18-128
電話0761-76-0144
営業時間6:00~22:00
定休日毎月第4水曜日午前(正午から営業)
webhttps://yamashiro-spa.or.jp/spa/ (山代温泉観光協会)

六方焼 惣八

住所石川県加賀市山代温泉万松園通14
電話0761-76-1254
営業時間8:00~18:00
定休日火曜日午後、水曜日
webhttps://roppouyaki.com/

加賀を代表する伝統文化“九谷焼”を学ぶ「九谷焼窯跡展示館」

山代温泉はその名の通り温泉地であるとともに、九谷焼の生産が行われていた場所でもあります。
豪快な筆描きに「五彩」と呼ばれる色を合わせ、極上の絵皿に焼き上げた焼き物です。
その歴史は、江戸時代前期に九谷村(現・山中温泉の奥地)で陶石が見つかったことから始まりますが、作陶から50年ほどで終了します。この理由については諸説あるものの、はっきりしたことがわかっていません。

そのおよそ100年後、「再興九谷」として生産が再開します。その際に使われた登り窯が見られるのが「九谷焼窯跡展示館」です。再興以前の九谷焼を復活させようと尽力した吉田屋窯が、発掘された状態で保存されています。この登り窯を保護するシェルターは建築家・内藤廣氏の設計で、鉄骨を組み合わせた内部構造は見応えがあります。
この横にある建屋では、九谷焼の展示などと共に、体験ができる工房となっています。蹴ロクロ体験や絵付け体験などで、九谷焼を身近に感じながら、その奥深さを知ることができます。
この展示棟の中には、北大路魯山人にもゆかりがあった「旧吉野屋旅館」のVIP向け家族風呂に使われていた、約200枚のタイルが装飾に使われています。足下にあるので見逃さないようにチェックしたいところです。

山代温泉と九谷焼の歴史を語る上で、外せないのがこの「北大路魯山人」です。
魯山人と言えば、篆刻家、陶芸家、書家、美食家など様々な顔を持つ人物ですが、ここ山代温泉に滞在し、九谷焼を学んだ歴史があります。その時期は半年ほどですが、その間に山代温泉の旅館などに、沢山の看板彫刻を残しました。また、須田菁華から陶芸の手ほどきを受け、菁華窯で沢山の器を焼きました。山代温泉は、その文化度の高さで、早くから魯山人の才能を見抜き育てた地であると言えます。
魯山人が滞在していた旧吉野屋旅館の別荘は、現在「魯山人寓居跡 いろは草庵」として公開されています。静かな佇まいと手入れされた庭園で、ゆっくり時間を過ごすことができる施設です。

また、九谷焼をもっと知りたいという方は「石川県九谷焼美術館」もオススメです。同市内にありますが、温泉街からは少し距離があります。
九谷焼の歴史を学んだり、古九谷など貴重な展示品を鑑賞したりすることができる美術館です。
館内は落ち着いた雰囲気があり、デザイナーズチェアなどの調度品も揃えられている洗練された雰囲気です。

九谷焼窯跡展示館

住所石川県加賀市山代温泉19-101番地9
電話0761-77-0020
開館時間9:00~17:00
休館日火曜日(祝日の場合は開館)
webhttp://www.kagacable.ne.jp/~kamaato/

魯山人寓居跡 いろは草庵

住所石川県加賀市山代温泉18-5
電話0761-77-7111
開館時間9:00~17:00
休館日水曜日(祝日の場合は開館)
webhttps://iroha.kagashi-ss.com/

石川県九谷焼美術館

住所石川県加賀市大聖寺地方町1-10-13
電話0761-72-7466
開館時間9:00~17:00(入館16:30まで)
休館日月曜日(祝日の場合は開館)
webhttp://www.kutani-mus.jp/

山代の冬の味覚“加能ガニ”を堪能する加賀カニごはん「割烹 加賀」

冬の北陸グルメと聞いて想像するのはやっぱり「カニ」。
加賀エリアでは、「加賀カニごはん」として、飲食店が様々な工夫を凝らしたカニを使ったごはんを提供していますが、ここ山代温泉では、「割烹 加賀」で食べられます。

“ひつまぶし風石焼 カニごはん”は、最後までアツアツ。濃厚なカニ出汁を最後にかけることで濃厚なカニの風味を楽しめます。カニ身、カニみそ、カニ殻とまるまる一杯が使われ、プチプチとした外子の醤油漬けがいいアクセントになっています。
他に、季節の前菜5種と加賀棒茶、笑顔がかわいい湯せん玉子「なかむらくん」とてんこ盛り。このなかむらくんは、三代目料理長の中村網さんにそっくりだということで命名されたそう。頭に乗せたタオルは手作りで、フォトジェニックで個性的な一品です。

『北陸と言えばカニ』という観光客の声に応え、橋立漁港から揚がる「加能ガニ」を最新技術で冷凍保存し、カニの季節以外でも割烹のこだわりの調理方法でおいしく食べてもらおうと考案されたカニごはん。今では地元のお客さんも多く訪れ注文されるようになり、一年中楽しめるメニューとなったということです。

創業40年、山代温泉では最も古い割烹料理屋さんとしての誇りを詰め込んだカニごはん。北陸旅の想い出に、ぜひ食べてみてはいかがでしょうか。

割烹 加賀

住所石川県加賀市山代温泉桔梗丘2-73
電話0761-76-0469
営業時間11:00~13:30(LO)
17:00~21:00(LO)
定休日火曜日
webhttps://www.kaga-kappou.com/

日本語“あいうえお”発祥の地「薬王院温泉寺」で静かなひと時を

いくつもの顔を持つ山代温泉で謳われる「あいうえおの郷」とはどういったものなのでしょうか。
実はここ、日本語の五十音である「あいうえお、かきくけこ…」が作られたとされる歴史があるのです。
薬王院温泉寺は、奈良時代の山代温泉開湯の際、行基によって温泉守護のために建てられた寺。この後、明覚上人が寺に入ったと伝えられています。
明覚上人が学んだサンスクリット語をベースに、母音と子音を組み合わせた日本語の五十音を、自著である「反音作法(1093年)に書き記しました。温泉街にもモニュメントがありますが、確かに「あいうえお」が書き表されています。但し、現在の“あかさたな”の順番ではなく、“あかやさたならはまわ”という順番になっています。
この“あいうえお”を題材とした山代温泉謎解きゲームも開催中。クイズを解きながら温泉街を散策できます。

薬王院温泉寺からは山に向かって階段が伸びています。
ここは「あいうえおの小径」と呼ばれており、小さな陶板にあいうえお、また韓国ハングル文字やローマ字で書かれた文字がはめ込まれています。これらは明覚上人の供養する五輪塔まで続いており、気軽な散策ができます。
山代温泉が物語る五十音の歴史と静かな自然に包まれる、静かな時間を過ごしました。

薬王院温泉寺

住所石川県加賀市山代温泉4区18−40 甲
電話0761-76-1155
webhttps://yamashiro-spa.or.jp/aiueo1/ (山代温泉観光協会)

山代温泉謎解きゲーム

優しい味覚に癒される「はづちを茶店」の加賀パフェ

街歩きが疲れたら、甘いもので体を癒したいもの。そんな時は、加賀の名物をグラスいっぱいに詰め込んだ「加賀パフェ」を。
温泉街で立ち寄った服部神社の祭神「天羽槌雄命(あめのはづちをのみこと)」から名付けられた、“はづちを楽堂”内に店舗を構える囲炉裏のあるカフェ「はづちを茶店」でスイーツを楽しみます。

加賀パフェは、加賀市内6店舗で提供されるスイーツで、加賀の食材を使った5層のパフェを九谷焼の器を使い、加賀棒茶を添えて提供するという、“丸ごと加賀”なデザートです。
「はづちを茶店」では、加賀棒茶のゼリー、加賀の生はちみつ入り生クリーム、紫芋シフォンケーキと平松牧場ソフトクリーム、加賀米のポン菓子と重ね、一番上の段には自家製温泉卵や地元和菓子屋のあんこ、季節の野菜を使ったモンブラン、クッキーやチュイール、せんべいなどを彩りよく盛り付けた豪華なパフェです。
ソースには伝統菓子の吸坂飴を使用するこだわりで、隅々まで加賀の伝統と歴史、食文化を感じられます。

はづちを茶店の加賀パフェは、行基がこの温泉地を開くことになった際に現れた霊鳥「ヤタガラス」が頂上を飾る、山代温泉にふさわしいデザート。甘すぎない加賀棒茶のゼリーがみずみずしく、ヘルシーささえ感じる、大人のパフェの味わいでした。
加賀の魅力満載で彩り豊かなパフェは、きっと山代温泉の想い出に残る味になるでしょう。

はづちを茶店

住所石川県加賀市山代温泉18-59-1
電話0761-77-8270
営業時間3月~10月 9:30~18:00 11月〜2月:9:30〜17:00
※営業時間は変更になる場合があるので、SNSなどを要確認。
定休日水曜日(祝日の場合は開館)
webhttps://www.instagram.com/hadutiwo/ (Instagram)

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