おいしいお米があるところに、おいしい日本酒あり。米どころ新潟県には、個性あふれる日本酒を醸す酒蔵が88蔵もあり、都道府県別の酒蔵数は日本一を誇ります。日本酒とは、お米と水から造られるもの。それは、その土地の自然の恵みがそのまま表現された飲み物と言えるのではないでしょうか。まさに“地酒”という言葉がぴったりです。

日本酒を知ることは、その土地を知ること。つまり日本酒の旅は、日本酒好きだけでなく誰でも楽しめる、観光にはもってこいの旅のスタイルなのです。特に新潟には、日本酒と縁の深い日本庭園が点在していることも特徴。酒蔵と併せて巡れば、新潟のさまざまな魅力を味わえる、充実した観光コースが完成します。そんな、日本酒を中心に楽しむ新潟の旅を、モデルコースと共に紹介しましょう。

画像: ※撮影時のみマスクを外しています(以下同様)

※撮影時のみマスクを外しています(以下同様)

涼やかな浴衣に着替えれば、酒蔵を巡る旅気分がさらに高まる

画像1: 涼やかな浴衣に着替えれば、酒蔵を巡る旅気分がさらに高まる

新潟を舞台にした酒蔵と庭園巡りの旅に出かけるのは、こちらのおふたり。JALグループの航空会社J-AIRの客室乗務員を務める金城晴香さん(右)。そして、初代ミス日本酒に輝き、現在は新潟県観光協会が企画・運営する「ふらっとフライトぽんしゅ旅」のアンバサダーとしても活躍する森田真衣さん(左)です。

旅の始まりは、新潟空港からタクシーで約20分の新潟市中心部にある古町(ふるまち)から。酒蔵巡りをファッションから楽しむために、着物の専門店「和gen」(わげん)に立ち寄り、涼しげな浴衣に着替えました。

画像2: 涼やかな浴衣に着替えれば、酒蔵を巡る旅気分がさらに高まる
画像3: 涼やかな浴衣に着替えれば、酒蔵を巡る旅気分がさらに高まる

「和gen」は着物や和雑貨の専門店で、着物や浴衣を気軽にレンタルすることができます。浴衣は約15種の中から好きなものを選ぶことができ、レンタル料は1日7,700円(税込・着付け代込み)。足袋だけは持参が必要ですが、小物やバッグなども一式借りることが可能です。

和gen(わげん)

住所新潟県新潟市中央区古町通7-934-4
電話025-222-5678
営業時間11:00~19:30(日曜は~19:00)
定休日火曜、第1・3火曜、水曜定休
※浴衣レンタルは前日までに要予約
webhttps://niigata-wagen.com/
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浴衣に着替えただけでも気持ちは涼やかに。「普段なかなか和装で出かける機会がないので、こういう時に思い切って浴衣を着るのもいいですね。今日の観光が楽しみになってきました」と金城さん。古町商店街をゆっくり散策しながら、次の目的地へ向かいます。

糀本来の自然な甘みと旬のフルーツのうまみが融合した糀ドリンク

画像1: 糀本来の自然な甘みと旬のフルーツのうまみが融合した糀ドリンク

到着したのは、新潟の総鎮守として1,000年以上の長い歴史を持つ白山神社の近くにお店を構える「古町糀製造所」(ふるまちこうじせいぞうしょ)。糀の魅力を発信することを目指し、糀と季節の食材を使ったオリジナルのドリンクなどを揃えています。糀は日本酒造りには欠かせないもので、近年は発酵食品への注目の高まりとともにその栄養価が高く評価されている重要な存在です。さっそく、酒蔵巡りの前のエネルギーをチャージしましょう。

画像2: 糀本来の自然な甘みと旬のフルーツのうまみが融合した糀ドリンク

ふたりがオーダーした糀ドリンクは「糀・りんご」(400円・税込)、「糀・ハニージンジャーレモン」(450円・税込)。糀本来の自然なやさしい甘みをいかしつつ、フルーツ果汁などで割って飲みやすさも追求されています。

画像3: 糀本来の自然な甘みと旬のフルーツのうまみが融合した糀ドリンク

「夏旅の休憩にぴったりのドリンクです。飲んでいるとスッと体温が下がっていく感じがします。糀は今回の旅のテーマである日本酒とも深いかかわりがありますし、糀専門店でありながら気軽に楽しめる点が、すごく素敵だと思いました」と金城さん。

店頭でのカップドリンクのほか、お土産や自宅用のボトルタイプも販売しています。夏のおすすめは「糀・白桃」「土用甘酒・うめ糀」とのことです。

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古町糀製造所(ふるまちこうじせいぞうしょ)

住所新潟県新潟市中央区古町通2-533
電話025-228-6570
営業時間10:00~17:00
定休日火曜
webhttp://www.furumachi-kouji.com/

長い歴史を持ち、幅広い世代に愛される日本酒を醸す

糀ドリンクで涼をとり、酒蔵を巡る準備は万全。一路、新発田市へ向かいます。最初に訪れたのは「市島酒造」(いちしましゅぞう)。「王紋」(おうもん)の蔵元です。

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五百万石(ごひゃくまんごく)や越淡麗(こしたんれい)といった新潟県産の酒米と、加治川を水源とした軟水を使って醸造することにより、独特のまろやかさを含んだ良質のお酒ができあがります。

画像2: 長い歴史を持ち、幅広い世代に愛される日本酒を醸す
画像3: 長い歴史を持ち、幅広い世代に愛される日本酒を醸す

見学では「市島酒造」の蔵人が、酒造りの工程や市島家の歴史について分かりやすく解説をしながら案内してくれます。大きな蒸釜(むしがま)や酒母樽(しゅぼだる)など酒造りに必要な道具はもちろん、市島家初代・秀松にまつわる文献や資料、市島の奥様が嫁入りの際に着た婚礼衣装などを見ることができるのも、この蔵ならではの特徴です。

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蔵に併設された試飲コーナーには、常時7~8種類のお酒を用意。大吟醸から梅酒まで、市島酒造ならではの味を試飲・購入することができます。
「『王紋』の純米大吟醸は、熟したリンゴのようなフルーティさがありながら、お米のうまみもしっかり感じられるお酒。その分、合わせる料理の幅が広いと感じました」と森田さん。

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長い歴史を持つ蔵でありながら、日本酒ビギナーや女性向けの低アルコール純米酒「かれん 純米甘口*女子限定」を販売したり、「王紋 極辛19」という大吟醸原酒を炭酸水で割ってハイボール風に楽しむ飲み方を提案したりと、日本酒の新たなファンを作ることにも注力しています。

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「商品ラインナップの幅が広いのが市島酒造の特徴だと感じます。訪れるたびにユーモアのある新しい商品にも出合えますし、これからも楽しみです」と森田さん。

市島酒造(いちしましゅぞう)

住所新潟県新発田市諏訪町3-1-17
電話0254-22-2350
営業時間9:00~16:00
定休日無休
※改装工事のため酒蔵見学は不可。試飲・販売は可。2022年春、リニューアルオープン予定
webhttps://www.ichishima.jp/

市島家の繁栄と当主の思いが感じられる明治初期の代表的住宅建築

画像1: 市島家の繁栄と当主の思いが感じられる明治初期の代表的住宅建築

市島酒造を後にして向かったのは「市島邸」(いちしまてい)。現在の市島酒造のある場所からタクシーで15分ほど離れた場所にあります。明治初期の代表的住宅建築によって建てられたもので、新潟県の指定文化財。丹波(兵庫県)に端を発したといわれる市島家が、この地で大地主となり栄華を極めた証と言える建物です。簡素でありながら優雅な邸宅で、回遊式の庭園が見どころになっています。

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実際に間近で建物を見ると、豪農と言われながらも簡素な佇まいが見受けられます。これは一般的な豪農の邸宅のように建築士が建物を設計し、庭師が庭園を手掛けたのではなく、市島家当主の徳次郎自らがすべてを設計したためと言われています。市島家の家訓として質素倹約を大切にした、市島徳次郎の人柄を感じることができます。

画像3: 市島家の繁栄と当主の思いが感じられる明治初期の代表的住宅建築

爽やかな夏の風が吹き抜ける竹林を歩き、美しい庭園を眺めていると、気分は明治時代にタイムトリップ。当時に思いを馳せながらゆったりと過ごす時間は、何よりの旅の思い出になるはずです。

市島邸(いちしまてい)

住所新潟県新発田市天王1563
電話0254-32-2555
営業時間9:00~17:00(12月~3月は16:30まで)
※入館は閉館30分前まで
定休日水曜(祝日の場合は翌日)
料金大人620円、小人310円(いずれも税込)

ふなぐち菊水一番しぼりの醸造元。日本酒文化と美しい日本庭園に触れる

新潟の日本酒と聞いて「ふなぐち菊水一番しぼり」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。このお酒が日本で初めて缶入りの生原酒として発売されたのが1972年のこと。醸造元は新発田市の「菊水酒造」(きくすいしゅぞう)。1881年の創業以来、常に“いいお酒とは?”を追求しながら、飲む人に寄り添ったお酒を醸しています。

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菊水酒造の広大な敷地の中には、酒蔵としては珍しい施設があります。それが、「菊水日本酒文化研究所」です。こちらには、お酒の造り手側の視点ではなく「飲む人・楽しむ人」にフォーカスして集められた文献や資料が3万点以上も収蔵。一般公開されており、収蔵品の一部や酒造りの現場の様子を見ることができます。

画像2: ふなぐち菊水一番しぼりの醸造元。日本酒文化と美しい日本庭園に触れる
画像3: ふなぐち菊水一番しぼりの醸造元。日本酒文化と美しい日本庭園に触れる
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日本酒がどのように楽しまれていたかを知ることができる種類豊富な酒器の展示や、日本酒や食に関連する専門書が揃う文化資料室をはじめ、製造機能を持ち、創業者の名を冠した節五郎蔵(せつごろうぐら)を設置。ここではお酒の試験醸造のほか、高度な技術が要求される大吟醸酒の醸造が行われています。

画像5: ふなぐち菊水一番しぼりの醸造元。日本酒文化と美しい日本庭園に触れる

菊水日本酒文化研究所のすぐそばには、美しい緑に囲まれた菊水庭園が。こちらは新潟県出身で京都・銀閣寺の出入り庭師として名高い田中泰阿弥(たなかたいあみ)によって1969年に作庭された枯山水庭園。石の組み合わせや地形の高低などによって山水の景色を表現しています。

画像6: ふなぐち菊水一番しぼりの醸造元。日本酒文化と美しい日本庭園に触れる

緑色のじゅうたんのように広がる苔も実に美しく、風情を感じることができました。

画像7: ふなぐち菊水一番しぼりの醸造元。日本酒文化と美しい日本庭園に触れる

敷地内には菊水酒造のお酒を購入できる菊水ショップがあります。定番のお酒はもちろん季節限定酒、日本酒関連グッズなどもあり、お土産探しにぴったりです。特に人気なのは「ふなぐち菊水一番しぼり」をその場で四合瓶に瓶詰めしてくれるサービス。蔵元直売所だからこそできることとあって、好評を得ています。

今年、創業140周年を迎えた菊水酒造。来年は「ふなぐち菊水一番しぼり」の発売50周年を迎えます。10年前の発売40周年時には、蔵人たち自らが菊水酒造のお酒を愛飲してくれている全国各地の人々のもとに直接出向いて記念品を渡し、感謝を伝えるというキャンペーンを行いました。自分たちが醸したお酒を飲んでくれる方と直接顔を合わせる――まさに、菊水酒造が創業時から大切にしてきた“飲む人に寄り添った酒造り”の象徴と言える行動です。さて、2022年の「ふなぐち菊水一番しぼり」50周年にはどんな企画が行われるのでしょうか。その時が楽しみです。

菊水酒造(きくすいしゅぞう)

住所新潟県新発田市島潟750
電話0120-23-0101 ※休日のお問い合わせは菊水ショップ直通0254-24-5544
営業時間ショップ 9:30~16:30
定休日月曜(祝日の場合は翌日)
※蔵見学および菊水庭園の見学は休止中。ショップは営業
webhttps://www.kikusui-sake.com/

全量純米仕込みにこだわり、常にチャレンジを続ける酒蔵を訪ねて

画像1: 全量純米仕込みにこだわり、常にチャレンジを続ける酒蔵を訪ねて

酒蔵巡りの日本酒旅を締めくくるのは新潟市の「今代司酒造(いまよつかさしゅぞう)」です。新潟駅周辺や万代エリアなどの都会的な雰囲気とは異なり、どこかのんびりとした空気が漂う沼垂(ぬったり)地区で日本酒を醸しています。

画像2: 全量純米仕込みにこだわり、常にチャレンジを続ける酒蔵を訪ねて

創業は1767年。その昔、まちの真ん中を流れていた運河・栗ノ木川(くりのきがわ)によってお酒の原料や製品の運搬に便利だったことから、この沼垂地区に蔵を構えたといわれています。特徴はなんと言ってもアルコール添加を一切行わない全量純米仕込み。そして「今の時代を司る」という意味を持った今代司(いまよつかさ)という名前の通り、伝統を大切にしながらも新しいコンセプトの商品をリリースしたり、ボトルデザインにこだわった商品を多数揃えたりする酒造りの姿勢です。

画像3: 全量純米仕込みにこだわり、常にチャレンジを続ける酒蔵を訪ねて

江戸・明治時代に建てられた趣ある蔵の中を歩きながら酒造りについて話を聞く時間はとても有意義で、同時に新潟市や沼垂地区の歴史を学ぶこともできました。

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試飲コーナーには15種類以上の純米酒を用意。1本1本を確かめるようにじっくりと味わいながら森田さんはこう語りました。「今代司酒造はチャレンジをする蔵だと思います。お肉料理のための『ブラック今代司 極辛口純米酒』や牡蠣をおいしく食べるための日本酒『IMA 牡蠣のための日本酒』など、料理と日本酒を楽しみたいという、飲む人目線の商品が多いからです」。

画像5: 全量純米仕込みにこだわり、常にチャレンジを続ける酒蔵を訪ねて
画像6: 全量純米仕込みにこだわり、常にチャレンジを続ける酒蔵を訪ねて

全量純米仕込みで、新潟県産の酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)を1種類を除いたほぼすべてに使用するという、こだわりの酒造り。加えて「錦鯉」(にしきごい)など、デザイン性の高さにおいても国内外から注目されている「今代司酒造」。足を運べば必ずや新潟らしい、おいしい地酒との出合いが待っていることでしょう。

今代司酒造(いまよつかさしゅぞう)

住所新潟県新潟市中央区鏡が岡1-1
電話025-245-0325
営業時間平日 13:00~18:00/土日祝 10:00~18:00
定休日無休
※営業時間は変更となる可能性があるため、最新情報はwebでご確認ください
※蔵見学は要予約で13:00~18:00の間、1時間ごとに実施。無料(土日祝日は10:00~18:00)
webhttp://imayotsukasa.co.jp/
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「新潟にあるひとつひとつの酒蔵に、その蔵ならではの歴史とストーリー、そして味わいがあります。新潟を旅した際は、単にお酒を飲むだけではなく、手にした日本酒を醸している蔵の成り立ちや今日までの歩み、そこに携わる蔵人にも目を向けて、知ってほしいです」と力強く語る、森田さん。一日を共にした金城さんも「日本酒の素晴らしさはもちろん、いつもと違う視点で新潟のよさに触れることができた気がします」と言います。酒蔵巡りを通して日本酒をより深く楽しむことができれば、それは新潟の魅力を堪能したことにつながっているはず。そう思える旅でした。

〈新潟県のその他の注目酒蔵〉

VR酒蔵見学を導入「越後桜酒造」

阿賀野市にある醸造元、「越後桜酒造」(えちござくらしゅぞう)。2021年6月に、新潟県内で初となるVR酒蔵見学を導入したことで注目を集めました。VRとは仮想現実のことで、この技術を使って日本酒ができるまでの工程が見学可能です。専用のVRゴーグルを着用すると、まるで蔵の中に入ったかのよう。酒造りの工程を360度、4K動画+ナレーションで臨場感たっぷりに体感できます。

越後桜酒造(えちござくらしゅぞう)

住所新潟県阿賀野市山口町1-7-13
電話0250-62-2033
営業時間10:00~16:30
定休日月曜
webhttps://www.echigozakura.com/
※VR見学は、webより要予約

伝統と革新「大洋酒造」

大洋酒造は1945年に法令による指導を受けた14の蔵元が合併して誕生しました。現在の社名になったのは1950年。この年に主要銘柄「大洋盛」(たいようざかり)が生まれました。また、1972年には全国に先がけて大吟醸酒を発売。元々、複数の蔵の集合体だったことから常に新しいアイデアが生まれ、伝統と新しさが融合した酒蔵として、県内でもますます注目が集まっています。

大洋酒造(たいようしゅぞう)

住所新潟県村上市飯野1-4-31
電話0254-53-3145
営業時間9:00~12:00/13:00~16:00
※蔵見学、和水蔵での試飲・販売は休止中
webhttps://www.taiyo-sake.co.jp/

関連情報
日本酒の旅についてさらに知りたい方は、新潟県観光協会のサイトをご覧ください。

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

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