この3つのエリアを午後だけでまわるのは大変なので、自由にアレンジしてみてください。(全部まわりたい方は2泊3日がオススメです!)
前編はこちら

西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。

いよいよ石川・福井の旅最終回。鯖江はメガネだけじゃなかった!生レッサーパンダにドキドキ、洋館にワクワク。武生の蔵の辻は重厚な屋根の家や蔵がずらりと並ぶ、古い歴史ある街でした。
西山公園でつつじ鑑賞、動物園でレッサーパンダの暮らしぶりを見る。
鯖江といえばメガネ、メガネといえば鯖江というほどに、固定イメージがある鯖江ですが、「(メガネ)だけじゃない鯖江」を探しにやってきました。レンタサイクルも準備万端です。
最初に向かったのは西山公園。江戸時代末期に造成された庭園が今の時代まで市民の憩いの場として存続している、歴史ある公園です。あいにくの雨の中でしたが、季節最後のつつじがなんとか咲いていてくれました。丘陵地となっている公園ですがなんとつつじは約5万株、桜は1千本植えてあるそうです。
公園を登り切った頂上には「西山動物園」があります。ここはなんと「日本で一番小さな動物園」。あっという間に園内をまわり切ってしまいます。しかしながら大きな見どころはレッサーパンダです!
約30年前に北京からやってきた3頭のレッサーパンダから始まり、繁殖させた頭数なんと50頭以上。今では日本中の動物園にレッサーパンダを送り出しているレッサーパンダのスペシャリストがいる動物園なのです。これだけの偉業を、なんと入場料無料で実現しているのもこの動物園の素晴らしいところです。レッサーパンダ以外にサルや鳥などが暮らしていて、一部行動展示なども行われています。
福井駅から鯖江駅までは15分程度。山中に掛けられた看板にワクワクします。
まずは花咲き乱れる公園、西山公園へ到着。つつじがぎりぎり咲いていました!
こんもりとしたピンクがキレイです。ピーク時はもっと鮮やかだったことでしょう!
市民のお散歩コースや憩いの場になっていました。
登りきったところには動物園があります。敷地面積が日本で一番小さいという「西山動物園」。
なんとここには沢山のレッサーパンダが!しかも柵の中だけでなく直に見ることが出来るんです。
入場無料で開放している良心的な動物園です。レッサーパンダの赤ちゃんの命名権を返礼品に取り入れたクラウドファンディング(資金調達)など、一般からの応援で成り立っています。
直接食事風景を見ることが出来たり、遊んでいる姿などをオリ越しでなく見ることが出来る貴重な動物園です。
その他には鳥などが多く飼われています。こちらはタンチョウ。
クジャク。おっと、求愛されてしまいました・・・。ちょうど求愛行動をする季節だったみたいです(^^;
やっぱりメガネの鯖江も紹介しておかなければ。「めがねミュージアム」でめがねの歴史を学ぶ。
お次の訪問地は「めがねミュージアム」。福井県眼鏡協会があるビルの1~2階をめがねショップ、カフェ、博物館などとして一般公開しているのです。
めがねショップでは福井県内のメーカーが製造しためがね約3,000本を販売。鼻パッドのフィット感、まつげが当たらない高さ、かけ心地や形など、日本人向けに開発されたこだわりの国産めがねが揃っています。種類も豊富ですし独自開発された機能的な素材のものなどを実際に試すことができます。ここで作っためがねは1週間から10日ほどで送られてきて、送料は無料。めがねの産地福井・鯖江で作っためがねというのは、また特別感がありますね!
めがね博物館には鯖江で作られるようになっためがねの歴史や江戸時代など古い時代のアンティークめがねの展示などが行われており、入場料は無料です。めがねに関するグッズも販売されていてどれも可愛くて欲しくなるものばかりでした。
街の中にはめがねモニュメントがいくつもあるので、街歩きしながら探してみるのもいいですね!今後、めがねモチーフを増やす計画もあるそうで、「隠れめがね探し」しながらまわるのも楽しそうです。
「めがねミュージアム」に到着しました!こちらではMADE IN JAPANのめがねを沢山取り扱っているショップや博物館、体験などが楽しめます。
館内だけでなく周辺道路にもたくさんのめがねモニュメント。めがねのシャンデリアやめがねベンチ、色んなめがねがお迎えしてくれます。私もこの日はめがねで行きましたよ!
明治30年代当時、重要が高まっていた眼鏡製造は、大阪から呼び寄せた職人を通じて福井に広まっていきました。現在では国内生産シェア95%を誇っています。
好きな色を選んでめがねストラップを作れる体験などもあります。
めがねフレームの素材を使った47都道府県マップ。
島根県を購入。ミニめがね付。めがねに関するおみやげが揃っていてどれも欲しくなります!
実は駅にもモニュメントがあるんです!駅階段と駅前ロータリー。
どうしても見ておきたかった、鯖江の洋館「恵美写真館」。
住宅街の中にある古い洋館です。明治38年に建設されたクリームカラーの優しい色合いの建物は、文化庁の登録有形文化財に指定されています。現在はすぐ脇に今も続く写真館の事務所が作られています。
玄関エントランスには車寄せ風のポーチを造り、入口には漆喰による鳳凰の鏝絵(こてえ)が施されています。また人工的に大理石風に見せるデザインなど、とても凝っています。これは左官であった石動芳次郎作であるとのこと。昔の建物にはこういった手の込んだ装飾を作ることにより、大工や左官らが腕の見せ場を残していることが良くあり、これは今で言えば「人間国宝」級の左官が、日本各地で活躍していた証なんですね。
なお、恵美写真館は個人所有の建物ですので、ご覧になりたい場合は電話などで予めお問い合わせをお願いします。
鯖江で登録有形文化財に指定されている「恵美写真館」。はめ込み窓や鳳凰の絵などが漆喰で描かれています。近代建築がふんだんに使われた和洋折衷の木造住宅です。
アーチ型になった表門。銅板が貼られ、こちらも和風と洋風が上手く混合した建築となっています。
2階部分には今まで使われてきたカメラコレクションが展示されています。見学は受け付けていらっしゃいますが一般のお宅ですので、予めのお問い合わせをお願いします。
これはすごい!人と自然と神様が交わる場所「舟津神社」
引き続き鯖江を自転車でうろうろ。お天気も持ち直してきてあてもない旅が続きます。
鯖江の街は住宅街が広がっていて比較的落ち着いた印象の街でした。古そうな家々や大きなお寺などもあり、ゆっくり時間があればそういったところも見たかったのですが・・・。
当初まわっていた場所とは駅を挟んで反対側に位置する場所に神社があるということで、あまり下調べもなく行ってみる事に。自転車だとあっという間ですが少し自転車がこぎにくい道なので気を付けながら。
するとどうでしょう!舟津神社、素晴らしく自然に溶け込んだ風情の神社でした。神聖でカッコいい。早速自転車を降りて中まで進みます。一の鳥居から鬱蒼とした茂みの中に見え隠れ。佇まいがもう普通ではないっ。
二の鳥居あたりまで来ると青もみじと苔に挟まれ、緑の世界。そのまま進むと少しひんやりとした空気へと変化。途中、つつじが咲く赤い橋を渡り次の鳥居は福井県の重要文化財指定、足のある両部鳥居でした(宮島にある、あの鳥居です)。最後は朱塗りの鳥居をくぐって本殿へ到着。そこは光と影がある深い森のような場所でした。木々は造形物に覆いかぶさるように生え、全てのものよりも自然の方が優位性を感じるのです。人は自然の中で生かされているんだよなぁとしみじみ浸れるような場所でした。
こんな素敵な神社に出会えるなんて、旅ってやっぱりいいですね!
「舟津神社」入口の石柱には「式内舟津神社」とあります。「式内」とは今から1000年以上前に書かれた「延喜式」の中にちゃんと書かれているお宮ですよということを表していて、由緒ある古い神社の証です。
三の鳥居は木造の両部鳥居。建て替えや建造に関する歴史が資料でわかる鳥居ということで、非常に貴重です。県の重要文化財。苔むした姿で、新緑の中に溶け込んでいます。
長い参道を抜け最後の鳥居へやってきました。鳥居をくぐる毎に高揚感を感じるような、見せ場の多い神社です。四の鳥居は朱塗りで銅板が貼られています。こちらも県の重要文化財指定。
朱塗りの木造部分の足元は石で、半木半石という珍しい鳥居です。鳥居を見ているだけでもとても興味深い!
木々に囲まれた境内に建つ、重々しい剛健な本殿。本殿前の、基礎部分だけを残しているところにはかつて拝殿があったとのことです。屋根はこけら葺きになっていて陽の光が当たってピカピカ光っていました。県の重要文化財指定。
ご神木、市指定天然記念物の大杉。横には八幡神社が並んでいます。
鬱蒼とした森と苔の大地が広がります。手つかずになっていることが心地よく、自然と一体になった古社です。
神社からはこんな写真も撮影できます。一の鳥居と特急しらさぎと私が乗っていたレンタサイクルと(笑)。
蔵の辻は歴史的建築物のショールーム!ボルガライスでお腹も満足
旅の最後は古い町並みがある武生へ。武生の街で出会った方たちはみな、「武生」という名前に愛着がある様子。街の名前が変われども、駅名には残ったようです。ちなみに今は「越前市」という市名になっています。
ここには「蔵の辻」という場所があり、古い蔵や建物がずらりと並ぶエリアです。さらにしばらく歩くと越前箪笥のお店が並ぶ「タンス町通り」もあります。武生は古代には政治の中心であった「国府」が置かれ、また中世以降も越前地方の物流や文化の中心となる場所であったことから、栄えた町でした。1軒1軒を見ていくと、北陸地方の住宅家屋の特徴である大きな屋根と2階が低く1階との間にひさしが付いているお宅が連なります。
家屋というのは街の大部分を構成し、印象付ける重要な景色。住んでいると当たり前な風景が、旅人の私からは興味深く心に残る絵として焼き付きました。
武生のご当地グルメと言えば「ボルガライス」。蔵の辻の先にある神社の入口にある「ヨコガワ分店」で食べられます。一つずつ丁寧にフライパンを振っておられて、美味しい洋食でした!なおボルガライスの名前の起源は不明だということです。
武生駅から少し歩いただけで、北陸地方に良くある平入り(屋根の平らな方向に玄関がある)の住宅が連なります。古い看板なども見て歩くと楽しいです。
総社大神宮の入り口にある「ヨコガワ分店」で「ボルガライス」をいただきます!
オムライスの上にカツが乗ったボルガライス。ごろんとした鶏肉が入ったケチャップライスを薄い卵で包んだオムライスに、大きなカツを一枚のせ、ソースをかけた一品。お客さんのほとんどが注文するボルガライスが手際よくかつ丁寧に作られていきます。ご当地グルメにしておくにはもったいないほどの美味しさでした!
白壁や木造の蔵が並ぶ「蔵の辻」。
きれいに整備されレストランや会社、お店などになっていました。雰囲気は壊さない程度にリノベーションされています。
一瞬タイムスリップしたかのような錯覚に陥るかのように、古い建物にぐるりと一周囲まれます。
「大塚呉服店」の建物は素晴らしかったです!屋根がふんわりと膨らんでいるのがわかるでしょうか。これは「むくり屋根」と言って日本の伝統的な建築方法です。個人のお宅でこれだけ大屋根で見られるのは珍しいです。また向かって左には石の蔵があります。これはこの周辺で火事が起きてもこの蔵で火が止まるようにと建てられたものなのだそうです。
瓦が好きで屋根ばかり見て歩いている私ですがこれは興奮しました!大塚呉服店の屋根は下から「檜皮(ひわだ)」「銅板」「瓦」の昔の屋根三兄弟が一堂に揃っているのです。時代によって少しずつ修復していった結果でしょうか。すべてが一度に見られる大変貴重なお宅でした。
タンス町通りは残念ながら定休日のお店が多かったです。いくつもの越前箪笥のお店が並んでおり、職人の技を見ることが出来ます。武生はふらっと街を歩くだけでなく「いわさきちひろ」の生家や伝統工芸などに触れることが出来ます。
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。