日本のお家芸と呼ばれる体操で、オリンピックをはじめ世界を舞台に輝かしい実績を残してきた内村航平さんと村上茉愛さん。内村さんは2022年3月に、村上さんは2021年10月に、それぞれ現役選手を引退しました。競技生活を終えたいま、その心境や生活にどんな変化が訪れているのでしょうか。日本の体操界への思い、12月に福井県で行われる全日本体操団体選手権の見どころ、そして世界大会などで訪れた旅先での思い出についておふたりに話をうかがいました。

【村上茉愛】現役引退後に感じた「幸せの瞬間」

東京オリンピックの種目別のゆかで、日本の女子選手としてオリンピックの個人種目で初めてメダルを獲得した村上茉愛さん。同じ年の世界選手権で金メダルを含むメダル2個を獲得し、最高の形で現役を引退しました。

画像2: YUTAKA/アフロスポーツ

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村上さん「現役時代は日本体育大学の体操部の寮で生活していたんですが、引退後にひとり暮らしを始めました。帰りにスーパーに寄って夕ご飯の買い物をしたり、翌日の練習のことを考えずに家でくつろいだり。そんな普通の生活をしていると、ああ、幸せだなって思います」

画像: 【村上茉愛】現役引退後に感じた「幸せの瞬間」

そう話す村上さんの表情は晴れやかで、充実感が伝わります。現在の体操との向き合い方についても聞きました。

村上さん「いまは体操を全然やりたくならないです。現役時代は本当に辛くて、人間の限界に近いことをやっていたので、やっぱりトラウマになるんですよ。ただ、体操が嫌いになったわけではなく、感謝の気持ちもある。引退後に体操の仕事をしようと思ったのは、そういう理由もあります」

人のために体操をするようになった

いま村上さんは母校である日体大・体操競技部のコーチに就任し、後輩たちの育成にあたっています。

村上さん「現役時代はいろいろな感情を練習にぶつけ、自分の調子がよければそれでよかったんですが、指導者はそういうわけにいきません。怒らなければいけないときもあるし、寄り添って背中を押してあげるときもある。自分の選手時代とは違った難しさを感じますね」

自分だけのことを気にかけていた選手時代から、30人近くの部員ひとりひとりと対峙するようになり、「人のために体操をするようになった」と話す村上さん。指導者になって視野が格段に広がったといいます。

初めて世界で戦う体操女子日本代表メンバーにかけた言葉

絶対的エースの村上さんが引退し、体操女子の日本代表は全員が初選出のメンバーになりました。世界大会はおろか、海外の試合もほとんど未経験。そこで、2022年10月29日から11月6日までイギリスのリバプールで行われた世界選手権の前に、村上さんは選手たちに会いに行き、こう声をかけたそうです。

村上さん「練習や合宿を見に行くと、緊張しているのが伝わってきました。いま彼女たちに必要なのは、失敗してもいいので多くの経験を積むこと。だから『不安だと思うけど、その気持ちは日本に置いていき、初代表だからこそ開き直って、思い切りやってきて』と伝えました」

福井県で開催される全日本体操団体選手権には、そうした体操女子の日本代表クラスの選手も出場します。この大会で村上さんが注目選手として挙げるのは次の選手たち。

村上さん「私が指導する日体大でいえば、世界選手権でも通用する坂口彩夏と、2021年の世界選手権の種目別平均台で金メダルを獲得した芦川うららのふたり。あと地元福井の・鯖江体操スクールの宮田笙子も世界選手権の予選を1位で通過した選手で、この3人は注目です」

旅に欠かせないものとこれからの楽しみとは

現役時代の旅は試合や合宿ばかりで、プライベートの旅行をしたことがなかったのは村上さんも同じ。ただ、現在は選手のときより自由な時間が増えたので、今年8月には北海道の北見市にひとり旅をしてきたそうです。

画像1: 旅に欠かせないものとこれからの楽しみとは

村上さん「私、北見にカーリング選手の友だちがいるんです。以前から会いに行く約束をしていたんですが、たまたま8月後半にお休みをもらったので、ぱっと思いついてひとり旅してきました。ちゃんと飛行機と宿泊先とレンタカーがセットになったJALのパッケージツアーで(笑)」

ちなみに、現役時代は試合や合宿で海外遠征するとき、長時間のフライトでコンディションを崩さないために、機内でこんな秘密のアイテムを活用していたそう。

村上さん「短いストレッチポールを絶対に持っていくようにしていました。機内でそれをお尻に敷いてゴリゴリとマッサージしたり、立てかけてタオルをかぶせ、枕代わりにしてもたれかかって寝たり……。あと、客室乗務員の方にお願いして、3つ横並びの空席があるときは特別にスペースをお借りして、ストレッチさせていただいたこともありました」

いま村上さんが行ってみたいのは、手つかずの豊かな自然が残る宮古島、そして母娘で行く温泉旅行だそう。

「ずっと体操に打ち込んできたので、母と旅行をしたことがないんですよ。近場でもいいでの、いずれ母とふたりで温泉に行ってみたい。それがいま一番の楽しみです」

第2の体操人生をスタートさせた村上さん。彼女が率いる体操女子の活躍からも目が離せません。

画像2: 旅に欠かせないものとこれからの楽しみとは

村上茉愛(むらかみ・まい)

1996年生まれ。神奈川県出身。2018年、全日本選手権個人総合を3連覇し、同年の世界選手権では個人総合で日本女子初の銀メダルを獲得。東京オリンピックの個人種目別ゆかでは日本の女子で史上初の銅メダルに輝く。同じ年の世界選手権の種目別女子ゆかで4年ぶり2度目の金メダルを獲得し、有終の美を飾って現役を引退。
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世界の大舞台を経験した内村さんと村上さんが期待を寄せる、これからの日本の体操界。全日本体操団体選手権は、日本のトップ選手たちが一堂に集結する機会です。ぜひ一度、ダイナミックな技を身近で体感してみてはいかがでしょう。

第76回全日本体操団体選手権

画像2: 元日本代表・内村航平、村上茉愛が振り返る、体操への思いと旅の過ごし方

PEOPLE(インタビュー連載)

OnTrip JAL 編集部スタッフが、いま話を聞きたいあの人にインタビュー。旅行にまつわるストーリーをお届けします。

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