文:ON TRIP JAL編集部 写真:八木由奈
旅先で必ず購入する絵本から、世界各地の文化の違いを感じとる
JAL:旅先で必ず買ってしまう買うものはありますか?
亀山:ご当地ストラップ子どものおみやげに買ってしまいますね(笑)。あとは作品に使う切り絵のため紙は、旅行中に限らず集めてストックするようにしています。町中のチラシとか包装紙とかで気になったものはもちろん、文房具屋さんとか、紙屋さんとかでも買い集めています。
あとはやっぱり本ですね。海外でも造本が凝ったものを見つけたら必ず買ってきちゃいます。日本とは、本のつくり自体がまったく違いますし、本に対する考え方や受け入れられ方が全然違うんですよね。その姿勢からは影響を受けることもあります。
亀山:ぼくらのつくる絵本は、仕掛けが多かったりして実験的と言われることもあるんですが、海外に行くとこういう絵本がたくさんあるんですよね。なかでもKveta Pacovska(クヴィエタ・パツォウスカー)という作家の絵本が好きで。学生時代に中川が彼女の作品をプレゼントしてくれたことがあったんですよ。
彼女はいまは90歳のおばあちゃんなんですけど、日本じゃ考えられない絵本をつくってるんですよ。一見意味のない仕掛けがたくさんあって、どれだけの労力とお金をかけてつくってるんだというような。
中川:彼女の作品はやりたいことを本当に全部詰め込んだんだろうなって思えるような、見ていて気持ちのいいものが多いんです。海外の絵本はやっぱりどこの国も日本人の感覚とは全然違っていて。子どもの喜ぶツボも違うので、海外を訪れたときに絵本を読んでいる反応を見ていても面白いですよね。
子どもが小さい時期こそ海外旅行へ。ハプニングを楽しむ旅の心得
JAL:国内外、さまざまな場所に旅をなさっているお二人が考える旅の魅力とは何ですか?
中川:みんなが同じ時間を生きていても、全然違う場所でそれぞれの暮らしがを営んでいるんだなということをリアリティーを持って感じられることですね。私はわりと出不精ですし、制作の時期になるとますます外に出ることが減るので、旅行に行くと体の感覚が刺激されて、気持ちが外に広がる感じがしますね。
亀山:ぼくは「新しいことを知る」という経験が好きなんですよね。例えば旅先で訪れた地域も、歴史を知っているとちょっと見えかたが変わりますよね。はじめて訪れる場所の歴史を調べてみて、全然知らないことだらけだった! って気づけるのも楽しいんですよ。
そうしたちょっとした学びも含めて、遠くまでまで足を伸ばして、人に会って、その土地のものを食べるという経験が、自分をつくっているんですよね。そう考えると、旅行に行けばいくほど経験値が上がり、自分自身が面白くなるような気がするんです。
JAL:そうした「自分を面白くする体験」はお子さんのためにもなっているような気がします。
中川:そうですね。子どもにとってもいい経験ですし、大人も子どもが一緒だからこそできる体験が多いですね。以前イタリアのボローニャを訪れたときも、ベビーカーを押して町を歩いているだけでお母さんが声かけてくれたり、町の方々も親切にしてくださったりして。大人だけでは得られなかった経験だと思いますね。
亀山:ぼくらが子どもを連れて、最初に旅行したのがボローニャだったんです。上の子どもが2歳の頃ですね。大変だったんですけど、ボローニャまで行ってしまったら、あとは怖いもの知らずですよ(笑)。あのロングフライトに耐えたんだからと思うと、どこへでも行ける気になります。だから、最初は思いっきり遠いところに行ったほうがいいです。ブエノスアイレスとかどうでしょうか?
中川:亀山の意見は極端にしても(笑)、一人で歩いていると自分が興味を持ったものしか目に入らないけど、子どもがいると、視野が広がります。ベトナムに行ったときも、子どもを大事にする風習が根づいているみたいで、なぜかはじめて会う人たちが子どもを見て拝んでくれたりして。そうしたちょっとしたハプニングも旅先なら楽しいじゃないですか。
だから、「ああしちゃいけない、こうしちゃいけない」とあまり気を使いすぎずに、ハプニングを受け入れられると、旅が楽しくなるんじゃないかと思いますね。
tupera tupera(ツペラ ツペラ)
亀山達矢と中川敦子によるクリエイティブユニット。2002年より活動を開始。絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、舞台美術、アニメーション、雑貨など、さまざまな分野で幅広く活動している。『かおノート』『しろくまのパンツ』など著書多数。海外でも多くの国で翻訳出版され、世界各国にファンを持つ。京都造形芸術大学 こども芸術学科 客員教授
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