「海外と聞くと構えてしまうかもしれませんが、実は今の時代、国内旅行と同じくらい気軽にカジュアルに行けるんですよね。日本人は、1年にそう何度も海外に行っちゃいけないんじゃ? と思いがちですが、全然そんなことないですから」
世界中の情報がネットで調べられるようになり、さらには手軽に航空券やホテルが手配できるようになった今、行かない手はないといいます。
「ひとりっぷデビューしたのは社会人になってから。今では台湾に行くのは京都で、香港は大阪くらいの感覚で出かけています」
言葉が通じずともあきらめない。気持ちは絶対に伝わるから
とはいえ、異国においそれと行くのはハードルが高いもの。言葉やセキュリティも不安だし、寂しいかもしれないし。でも福井さんに言わせれば、「なんとかなる!」。
「大事なのはできないからと、コミュニケーションをあきらめないこと。もちろん言葉はできないよりはできた方がいいです。でも、最低限、現地の言葉で、こんにちは、ありがとう、おいしい、いくら? あと1から10の数字を覚えればなんとかなります。わからないからといって貝になってはそこで終わり。できないなりに頑張れば、こちらの気持ちは絶対伝わるし、私もいざというときは絵を描いて見せたりしています」
それに、スマホがあればたいていの言語は翻訳できる時代です。
「その意味では、ネット環境のほうが重要かもしれませんね」
寂しさだって安全面だって、考え方ひとつで意外と大丈夫
同様に、寂しさについても気にする必要はなさそう。
「最近はSNSでいつでも繋がれるじゃないですか。旅先のことをLINEで送れば、すぐ返事が返ってくるし。今は感動をリアルタイムで共有できる時代なんですね。どうかすると、いろんな友人にLINEするのに忙しいくらい。やりすぎ注意です(笑)。なので寂しいかもと心配している方も、スマホがあれば案外大丈夫ですよ」
セキュリティ面も、ひとりで行くということ自体が、身を守ることに繋がるとか。
「特に女性の場合、ひとりでいることで緊張するし、警戒するし、油断も少なくなるんですよね。むしろふたり以上で旅している日本人男性の方がスキだらけですよ。ガイドブックで10ページくらい割いて注意を促しているのに、明らかに高額な絨毯を買わされていたりとか(笑)」
旅は2度目から。海外を楽しみ尽くすためのポイント
ひとり旅のハードルが少し下がったなら、本題は「どう楽しむか」。そこには、福井さんならではのポイントがあります。
「旅は2度目からです。初めての場所で『あそこにも行ってみたかった』とやり残し感があるなら、また行けばいい。旅は一度限りじゃないし、欲張るけど欲張りすぎないようにするのが大事です。初回は見ておくべきところを見るだけで終わりがちなんですよね。でも2回目以降は本当に行きたいところややりたいことに集中できます」
ちゃんと調べて旅に臨むのは大前提。渡航先への礼儀として、また、行程のムダをなくす意味でも、タイプの違うガイドブックを最低3冊読んで行くのが福井さん流。その上で出会う発見や驚きこそが旅の楽しさだと言います。
「私の場合、初めての土地なら観光に一日、買い物に一日と決めています。それは私が買い物好きだから。インドをかなり早足で1カ月回った時、買い物の時間があまり取れず、最後に消化不良になっていることに気づいて以来、そうしています」
誰にも気兼ねせず、自分のやりたいことに集中するためにも、ひとり旅はきっといい。もちろん何が好きでどう追求するかはあなた次第。そして始めて行くのにオススメな国のひとつが、台湾だとか。
食い倒れの国、台湾。実体験のこだわり情報は著書『ひとりっぷ』シリーズに
「とにかく人が親切で日本語も通じやすいんですね。他国では信用ならない“日本語で話しかけてくる人”も、親切心からが多いですし、屋台も多くてひとりご飯もしやすい。一度行くとハマってしまって、何度も行く人続出です。でも夜市でのスリには気をつけて下さいね。実は、私も一度だけやられました。
夜市での買い物に夢中になってバッグを背中に回していたら、いつの間にか底が切られていて……お会計のときに財布を取ろうとバッグを開けたら『え、足元が見える!?』って、ボー然(笑)。でもお店の人がすごく親切で、代わりのバッグを近くの店から買ってきてくれたんですよ。スリにあったのは大ショックだったんですが、同時に涙が出るほど感激しました」
……といった数々のエピソードや、実体験から得られた情報が、『ひとりっぷ』シリーズ3冊にはきっちり記されています。
「台湾も60回も行っていると、もはや観光はほとんどせず、基本は食い倒れ目的。毎回1〜2箇所は新規開拓します」
実体験に基づいた間違いのない情報を載せることが、『ひとりっぷ』シリーズのモットー。
「一般のガイドブックには、たくさんのお店が掲載されていますが、実際に行ってみたら『ここ微妙・・・』っていうことがひとりっぷ400回の中で何度もありました。行列していても、日本人には味が“ボケている”印象のお店だったり。友人や同僚から『この国では何食べるべき?買い物は?』と相談を受けるうちに、紹介しているお店の数は少なくても、ハズレのない情報だけが詰まった本があってもいいんじゃないか、と思ったのが、『ひとりっぷ』を作ろうと思った最初の理由なんです。なので、台湾をはじめ、各都市とも、私の400回のひとりっぷ経験から、『ここはオススメ!』と思っているお店だけを紹介しています」
旅慣れた人の、こだわりのアイテムたち
さて、せっかくのひとり旅。持ち物には当然こだわりたいですよね。福井さんの愛用品を教えてもらいました。まずキャリーはイーグルクリークの「ORV トランク 30」を使用しているそう。
「大は小を兼ねる。買い物も多いので、短期旅行でも100Lクラスのラゲッジを持参します。ソフトタイプなので、荷物が少なければベルトで絞ってコンパクトにできるし、ジッパー式で立てたまま荷物の出し入れが可能。空港でチェックインの列に並んでいる時などにも作業できるので、ものすごく便利ですよ」
確かに、空港のロビーでスーツケースを広げるのは場所を選ぶし、セキュリティ面でも避けたいところです。
「あとはホテルの部屋のにおいが気になることも多いので、アロマディフューザーも必ず持参します。愛用しているのは無印良品の「ポータブルアロマディフューザー。100g切るくらい軽くてコンパクトサイズなので邪魔になりません」
ほかにもまだまだあります。旅を通して自分なりの必需品を見つけるのも楽しそう。
「たとえば危機管理のためにもいつでも走れるシューズ。ヒールなんかもってのほかで、旅先では1日1万歩以上歩くことも多いですから。あとは、S字フックをぜひ。海外のトイレにはフックがない場合がよくあるので、特にひとりっぷの場合、必須です!」
場所を選ばずカバンや上着が壁に掛けられるのは確かに便利かも。
「あとはナイフとミニまな板。旅先では、現地のフルーツを買いこんで、ホテルでカットして食べます。中でも夏の台湾には愛文マンゴーという素晴らしいマンゴーが出回るので、ぜひおすすめします」
ひとりっぷは、一歩踏み出せば絶対楽しい
同行者を探す必要もなければ、行き先も期間も自分次第。福井さんの話を聞いていると、不思議とひとり旅に興味が湧いてきます。
「旅を楽しむコツは、 “ゼロアクション”に近づけることなんですよ。自分で気づいていない旅にまつわる手間暇や面倒くささ、ストレスを、ひとつひとつ潰していくことで、ひとりっぷに限らず、旅に対するハードルはどんどん下がるはずです」
では、ひとり旅に向いているのはどんな人なのでしょうか。それは「してみたいと一度でも思った人」だとか。
「私の感覚では、ひとり旅をしてみたいと思っている女性の9割は、思い切って一歩踏み出しさえすれば、『ひとりっぷってこんなに楽しいんだ!』と満喫して帰ってきますね。地球は広くて、人生は短いんです。迷っている暇はありません。大丈夫です。みなさんにもできますから、ぜひ!」
福井由美子(ふくい ゆみこ)
大学卒業後集英社に入社。元『SPUR』編集長。女性のひとり旅を「ひとりっぷ」と名付けて応援中。25年にわたり400回以上海外ひとり旅を経験。香港160回、台湾60回、タイ&シンガポール各40回、サンフランシスコ30回、中国30回、ハワイ30回、中南米各国30回、カリブ諸国20回、中近東10回など、すべてプライベートでの渡航。その経験を元に、ひとり旅指南本『ひとりっぷ』シリーズを撮影、執筆、編集。最新刊『昨日も世界のどこかでひとりっぷ3 弾丸無茶旅編』を含むシリーズ3冊(全て集英社刊)が好評発売中
※「ひとりっぷ」は(株)集英社の登録商標です
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