5つの大きな島と無数の小さな島で構成される「五島列島」。ドラマやマンガなど多くの作品の舞台として人気が高まる観光地です。透明度抜群の海や火山によって作り出された特異な地形が生み出す雄大な景色、島の歴史を語り継ぐスポットなどを巡る、下五島・福江島の島旅をレポートします。
画像: あなたの知らないディープ長崎 ~ 歴史と文化を辿る五島・福江島の旅

西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。

時を超えた太古の姿を今に見る「福江島・地質遺産の旅」いつもと違う観光地の楽しみ方

日本列島は約2000万年前、地殻変動によりユーラシア大陸の一部がちぎれて海水が入り込み、徐々に今の形が形成されました。その際、五島列島は最後まで大陸とつながっていた場所にあたります。
五島をドライブしていると、面白い海岸線や地形を見ることができます。ポピュラーな観光地も地質的観点から見ると新たな発見や人とは違った見方ができ、悠久の時を感じる壮大な旅を楽しむことができます。

現在の五島を形成する「五島層群」と呼ばれる地質はユーラシア大陸由来の砂と泥がもとであり、これらは見た目に白っぽくしましまになったように見えるのが特徴です。代表的な景観のひとつ「大瀬埼灯台」は、4つの展望台からその姿をはっきりと確認できます。また切り立った絶壁の上に建つ白亜の灯台は優美で、見ごたえもあります。
一方、その後島内で火山噴火を起こし火山灰や溶岩が流れ出した場所もあり、これらは海岸線などで黒いごつごつとした岩場として見ることができます。特に「鐙瀬(あぶんぜ)溶岩海岸」では、鬼岳の火山噴火で溶岩が流れることにより作られた景観が展望台から一望できます。その海岸線はまるで異国ハワイのような風景で、青い海と黒く力強い溶岩のコントラストは自然のパワーに溢れています。

今私たちが福江島で観光地として楽しんでいる海や山は、長い時代の上に成り立っています。今回訪問した福江島を含め、久賀島(ひさかじま)、奈留島(なるじま)など含めたエリアは2022年「五島列島(下五島エリア)ジオパーク」に認定され、特異な地質や地形はさまざまな形で保護され、未来に残していけるよう努力が続けられています。
五島の名所と呼ばれる各観光地を巡る時、少しだけ地質学的にそして文化的側面などを考え合わせて切り取ると、より島旅を奥深く楽しむことができます。写真では火山噴火によってできた「鬼岳」や人気のビーチ「高浜海水浴場」他、水平線に沈む美しい夕日や星空など、五島の美しい自然を紹介しています。

鬼岳

住所長崎県五島市上大津町

大瀬埼灯台

住所長崎県五島市玉之浦町玉之浦

高浜海水浴場

住所長崎県五島市三井楽町貝津1054-1
海水浴場開設期間7月中旬~8月下旬 9:00〜18:00

オレンジロード(夕映えの道)

住所長崎県五島市三井楽町渕ノ元

渕ノ元カトリック墓碑群

住所長崎県五島市三井楽町渕ノ元628

日本でもっとも新しく建てられた海城「福江城」と天主堂巡り

「福江城(石田城)」は、明治時代が始まるまであと5年の1863(文久3)年に完成しました。その後、明治の廃城令によりわずか9年という短い期間での役割を終え取り壊されます。しかし見事な石垣や石門、蹴出(けだし)門などの遺構が残り、一角には五島家第30代盛成公の隠居所だった「五島氏庭園」もあります。福江の港近くには領主が建てた堤防兼灯台「常灯鼻」も見られます。

五島藩の初代藩主・五島純玄(ごとうすみはる)はキリシタン大名で当初は五島のキリシタンたちを保護していましたが、その後、豊臣秀吉のバレテン追放令、その後徳川家康のキリシタンの弾圧などの国内情勢により五島藩も他の藩同様、迫害に転じました。禁教令が敷かれた後、五島のキリシタンは18世紀の半ばにはほぼ絶滅したと言われています。

キリスト教の教えが広く根付いている五島列島には現在約50か所の教会があり、五島市にはそのうち20の教会があります。地図でその場所を確認すると五島藩があった中心地には少なく、島を取り巻くかのように海岸沿いに並んでいることがわかります。
これは現在の五島カトリックの先祖が、19世紀終わりに外海(そとめ)から移住してきた時、不便な海岸や山の斜面などに住まいを置かなければならなかったその歴史を示しています。暮らしにくい場所で細々と暮らしながら集落を作り、キリスト教を守り伝えてきた証なのです。

五島観光の中でも人気の教会巡りでは和洋折衷、レトロなステンドグラスなど格調高い教会建築とともに、弾圧の歴史を語り継ぐ史跡もしっかりと見ておきたいもの。銅像やレリーフ、捕らえられた牢屋跡にはキリシタンに与えられた試練と史実が刻まれています。これらに真摯に向き合い、混沌とした時代の物語と悲劇の歴史、その後の自由な世界と解放された人々の心を感じていければ、だれもが神聖な心持ちと厳かな時間を過ごすことができることでしょう。

福江城(石田城)

住所長崎県五島市池田町1-2
電話0959-72-6111(五島市役所)
定休日なし
URLhttps://goto.nagasaki-tabinet.com/spot/348

※蹴出門および石垣改修期間:門より左は令和6年2月末まで、交差点側(右)は11月まで。正門は10月13日まで。

五島氏庭園

住所長崎県五島市池田町1-7
電話0959-72-3519
公開期間(一般)9月〜11月の土曜日 日曜日9:00〜17:00 月曜日9:00〜13:00
4月〜6月の土曜日 日曜日9:00〜17:00 月曜日9:00〜13:00
公開期間
(10名以上の団体)
2月~6月 9月~12月
年末・年始(12/27〜1/8)は休み(要予約)

常灯鼻

住所長崎県五島市東浜町
URLhttps://goto.nagasaki-tabinet.com/spot/61926

堂崎教会

住所長崎県五島市奥浦町堂崎2019
電話0959-73-0705
堂内拝観館時間3月21日~10月10日 9:00~17:00  ※夏休み期間は18:00まで
11月11日~3月20日 9:00~16:00
休館日12月30日~1月3日
URLhttps://goto.nagasaki-tabinet.com/junrei/332

水ノ浦教会

住所長崎県五島市岐宿町岐宿1643-1
堂内拝観館時間9:00~16:00(不定期)
URLhttps://goto.nagasaki-tabinet.com/junrei/1087

井持浦教会 ルルド

住所長崎県五島市玉之浦町玉之浦1243
堂内拝観館時間9:00~17:00(不定期)
URLhttps://goto.nagasaki-tabinet.com/junrei/670

※教会はすべて堂内撮影禁止

日本一の椿の島・五島で体感する、花の季節以外でも楽しめる椿を求めて

五島列島には1000万本の椿が自生しており、その数は日本一。
日本原産の椿は古来より愛されてきた花であり、古風な佇まいから茶の湯や和歌の春の季語としても使われています。椿は捨てるところがないと言われており、花を愛でるだけでなく種からは油を、葉っぱはお茶に、幹は櫛として利用されてきました。
春先になると凛とした花を咲かせ、夏になると実が赤くなりそのうち弾けて下に種子を落とす…。季節の移ろいや彩りを与えながら島の生活や私たちに潤いを与えてくれる椿は、まさに五島を代表する景色のひとつです。

こんな福江島の椿。花の季節だけでなくとも楽しめるスポットがあります。
訪問したのは椿オイル専門店の「椿乃(つばきの)」。ここでは搾油の体験ができます。
ひとつずつ種から中身を取り出すところから、ぎゅっと圧を加えて圧搾するところまで丁寧な指導を受けられます。椿そのものの説明や五島と椿の関わりなど歴史背景まで話を聞くことができ、搾りたての椿オイルはおみやげに。他にはリップクリームやバスボムなどを作るコースも。
ショップも併設しており、スキンケアやヘアケアなど椿オイルを使ったケア製品も購入可能です。

もう一か所立ち寄ったのは半泊(はんどまり)地区にある「五島つばき蒸溜所」。
17種類のボタニカルを使ったクラフトジン“GOTOJIN(ゴトジン)”の生産、販売が行われている蒸溜所です。
蒸溜器でそれぞれのボタニカルを一つずつ抽出し、個性を引き立てるブレンドを施して作られるジン。絡み合う複数のフレーバーを見事にまとめる役割をしっかりと果たすキーボタニカルとして、すべてに使われているのは五島の椿。島の香りと恵みが溶け込んだジンは、椿の花びらの繊細な表現を映したガラスボトルに詰められ、島から世界へと出荷されています。蒸溜所では製造の他販売も行われています。
また、オンライン定期コース販売にはなりますが、季節限定のフレーバーを用いたジンは小ロット製造。人気ゆえあっという間に売れてしまうのだとか。
蒸溜所そのものもクラフト感に溢れたナチュラルな雰囲気、目の前はブルーの海、隣には名建築を思わせる「カトリック半泊教会」もあり、ゆっくりのんびり島時間を過ごしたい方にもオススメのスポットです。

島内で愛されていることがとても良くわかる椿の花。島のあちこちで色々なモチーフとして使われていました。椿モチーフを宝探しのように探してみるのも楽しく、見つけるたびについついシャッターを切ってしまう…、そんな椿探しの旅も楽しいものです。

椿乃

住所長崎県五島市吉田町2498
電話0959-75-0411
ショップ営業時間13:00~18:00
定休日日曜、月曜、不定休(サイトで要確認)
体験9:30~18:00(最終17:00~) 完全予約制(前日までに電話またはDMにて予約)
URLhttps://tsubakioil.jp/

五島つばき蒸溜所

住所長崎県五島市戸岐町1223-5
蒸溜所ボトルショップ
営業時間
10:00~15:00
定休日日曜日
URLhttps://gotogin.jp/

五島でカワイイスポットを探して島巡り

五島の魅力はまだまだ尽きないのですが、最後に旅の中で集めたカワイイものを紹介。
五島市のイメージキャラクター(ゆるキャラ)「つばきねこ」はたくさんのグッズになって販売されています。町なかでもオブジェやモチーフとして使われているところがあり、頭に椿の花を載せた姿を見ることができます。
「御菓子司はたなか」の「つばきねこ」や伝統凧をモチーフとした「ばらもんちゃん」をかたどった焼き菓子はばら売りでも購入可。島巡りのちょっとしたおやつにも良さそうです。

手作りの椿プレートに盛られたパンケーキが人気の「ごとカフェ」。
栽培から出荷まですべて島内で行い、約40日間熟成させた安納芋「ごと芋」をたっぷり載せたパンケーキは華やかな一皿です。おみやげ売場も併設しているので、休憩や立ち寄りにもぴったりのお店です。
フォトスポットも作られているので、「つばきねこ」とごと芋ソフトクリームとのツーショットも撮れますよ!

大瀬埼灯台へ向かう途中にある「NEWパンドラ」は島民にも人気の食堂。
料理は島の新鮮なお刺身や五島うどんなどのご当地ランチからハンバーグや揚げ物などの定食屋さんメニューまでさまざま。ここの駐車場には海のうきを利用したつばきねこや、井持浦の青い海に面した場所に設置されたハートのフォトスポットがあります。モニュメントには店内で販売されているハートの南京錠をつけることもできるので、旅の想い出にいかがでしょうか。

ドライブのお供においしいジュースを。島の中心地・山内地区にある「やまうちカフェ」では、地元産のフルーツ(この日は山内産メロンといちご)を使ったスムージーが飲めます。リゾート感あるテラス席で冷たいドリンクでリフレッシュタイムを楽しめます。

まだまだ紹介しきれないほどの観光地がある五島列島・福江島。静かでチルな島旅を好む人にも、色んなスポットを巡る欲張りな旅をしたい人にもおすすめできる島です。

御菓子司はたなか

住所長崎県五島市中央町7番地20
電話0959-72-3346
営業時間8:00~19:00
定休日なし
URLhttps://www.hatanaka.cc/

ごとカフェ(おみやげ&カフェ ごと)

住所長崎県五島市吉久木町726-1
電話0959-75-0111
営業時間10:00~18:00(L.O. 16:30)
定休日元旦
URLhttps://www.instagram.com/nagasakigoto_shop_cafe/
https://nagasakigoto.net/gotocafe/

NEWパンドラ

住所長崎県五島市玉之浦町玉之浦1153-2
電話0959-87-2566
営業時間10:00~15:00 17:30~20:30
定休日不定休
URLhttps://www.instagram.com/new.pandora710/

やまうちカフェ(山口商店)

住所長崎県五島市岐宿町中嶽1077-1
電話0959-83-1005
営業時間9:00~17:00
定休日日曜日
URLhttps://goto.nagasaki-tabinet.com/restaurant/80105

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