長崎県の西にある平戸は、キリスト教の布教を条件に日本で初めて西洋貿易を行った歴史ある町です。ポルトガルやオランダとの国際貿易港として繁栄した平戸は、異国の文化に彩られ、寺院と教会が並ぶ独特な町並みやダイナミックな自然美が共存。その歴史や成り立ちを解き明かしていけば、まるで冒険家になったかのような好奇心を味わえます。
画像: 長崎県・平戸のアドベンチャーツーリズムで、自然と歴史文化に触れる冒険へ

ただ見る、触れるだけではなく、その背景も知ることによって心に響く体験として刻まれる。それを提供するのが「平戸アドベンチャーツーリズム」です。JALふるさと応援隊長崎県担当の一ノ瀬さんが現場を訪れ、レポートします。

※各スポットの営業日・時間、料金は変更される可能性があります。最新情報は施設に直接ご確認ください
※価格は税込み表記です

ススキが優しく揺れるビュースポット「川内峠」

画像1: ススキが優しく揺れるビュースポット「川内峠」
画像2: ススキが優しく揺れるビュースポット「川内峠」

平戸市内から車で約12分の場所にある「川内峠」は、30ヘクタールほどの広大な草原が広がるビュースポットです。毎年2月上旬には「野焼き」が行われ、豊かな土壌が作られます。そして春には平戸つつじが咲き始め、夏は青々とした草原に、秋には優しく揺れるススキが一面に広がります。

黄金色に輝くススキに一ノ瀬さんも思わず「キレイ!」と感動。「家族でのハイキングにも、ゆっくり散歩するのにもぴったりですね」と一ノ瀬さん。

画像3: ススキが優しく揺れるビュースポット「川内峠」
画像4: ススキが優しく揺れるビュースポット「川内峠」

アドベンチャーツーリズムでは、平戸市内から自転車で川内峠へ移動します。風を切って走るサイクリングは最高です。頂上からは天候がよければ、九十九島や玄界灘など海を望むことができます。

川内峠

住所長崎県平戸市大野町

かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ

画像1: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ
画像2: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ

安満岳(やすまんだけ)は、平戸島と生月島を結ぶ「生月大橋」の袂にそびえ、平戸市の最高峰として親しまれている山です。標高534メートルの山頂には、白山比賣神社(はくさんひめじんじゃ)があり、その背後には、かくれキリシタンの人々が祈りを捧げる祠が安置されています。信仰の山として古くから地元の人々に崇められている霊山へ、登山道入り口である一の鳥居から登りました。

画像3: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ

ゴロゴロと転がる岩や樹々の根を避けながら、登山道を進みます。澄み切った空気がとても気持ちよく、深呼吸。ときどき野鳥の鳴き声も聞こえてきて、嬉しくなります。原生林を感じさせる森を見回しながら、ゆっくりと歩いていきましょう。体力がある方なら、約30分で神社に到着できるはずです。

画像4: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ

神社の本鳥居をくぐると、平たい石が敷き詰められた参詣道が奥まで連なっています。ここは「裸足参り」と呼ばれ、昔は草履を脱いで裸足でお参りしていたそうです。樹々に囲まれた参道は神秘的な雰囲気に包まれていました。

画像5: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ

白山比賣神社へ到着すると、ご神体が祀られた祠が安置されていました。その背後奥には、もう一つ「奥の院様」と呼ばれる石祠が安置されています。これこそが、かくれキリシタンが手を合わせた祠であり、現在でも参拝に訪れる方がいるそうです。

画像6: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ

かくれキリシタンとは、キリスト教が禁教されていた17~19世紀において、社会的には普通に生活をしながら、ひそかにキリスト教由来の信仰を続けようとした「潜伏キリシタン」で、キリスト教の信仰が許された19世紀以降もカトリックに復帰せず、潜伏キリシタン由来の信仰を続けた人々のことを指します。

画像7: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ
画像8: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ

森をくぐり抜けると、突然バーッと広がる絶景。安満岳の山頂には、思わず感動の声が漏れるほど美しい風景が広がっていました。西側を向くと、遠く左端には上五島、中央に小値賀島・野崎島、右側には宇久島が見えます。

画像9: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ

同じ場所から右下を見下ろすと、これから向かう世界文化遺産「春日集落(かすがしゅうらく)」の棚田が見えました。

下山ルートは春日集落の方へ。集落の信徒たちが安満岳まで登った、メインとなる参道を下っていきます。なだらかな尾根をゆっくり下って約1時間30分。途中には石垣や炭焼き小屋などが残り、昔の暮らしを知ることができます。

画像10: かくれキリシタンが祈りを捧げた信仰の山「安満岳」へ

世界文化遺産「中江ノ島(なかえのしま)」が遠くに見えるスポットも。安満岳の周辺が世界遺産に囲まれていることを実感します。

白山比賣神社(安満岳)

住所長崎県平戸市主師町811番地
電話0950-24-2030
webhttp://shirayamahimejinjya.com

「世界文化遺産トレッキングと国立公園E-bikeサイクリング」ツアー開催

安満岳のライトトレッキングと西海国立公園をめぐる絶景ルートのサイクリングがセットになった1泊2日プランをご案内中。申込ページはコチラから。

450枚の棚田が広がる「かくれキリシタン」の里・春日集落

画像1: 450枚の棚田が広がる「かくれキリシタン」の里・春日集落
画像2: 450枚の棚田が広がる「かくれキリシタン」の里・春日集落

安満岳から春日集落に入ると、450枚あるという美しい棚田の中央に、小高い丘の「丸尾山(まるおやま)」が見えてきます。

画像3: 450枚の棚田が広がる「かくれキリシタン」の里・春日集落

丸尾山の頂には「丸尾さま」と呼ばれる石祠があり、そこから眺める棚田は圧巻です。16の農家の人々が今もこの場所を守っているそう。安満岳から流れる川の水を使い、大切に米が作られています。

この春日集落は、江戸時代の古地図と現在の地図の地形がまったく変わっていないことから、当時の景観が遺された集落として高く評価されたそうです。

「これだけの棚田を広げることは大変だったと思います。江戸時代から今日まで守って来られた方々には、驚きと尊敬の念を覚えずにはいられません」と一ノ瀬さん。

画像4: 450枚の棚田が広がる「かくれキリシタン」の里・春日集落

丸尾山から見えた安満岳の山頂。「あんな高いところから下りてきたのですね」と一ノ瀬さんも自分自身を褒めていました。

春日集落案内所「かたりな」で棚田の暮らしと信仰を知る

画像1: 春日集落案内所「かたりな」で棚田の暮らしと信仰を知る
画像2: 春日集落案内所「かたりな」で棚田の暮らしと信仰を知る

春日集落を訪ねる際の拠点として、観光案内やお土産ショップ、交流部屋が備わった案内所が「かたりな」です。集落の成り立ちやかくれキリシタンの歴史、世界文化遺産としての意義などを詳しく解説してくれます。さらに、安満岳のおいしい水で育った「春日の棚田米」や、棚田米を使った「かんころ餅」などの販売、春日集落を自転車でめぐるレンタサイクル(2時間500円)も行っています。

春日集落には現在、70名ほどの方々が住んでいます。そんな、集落をよく知る地元住民たちが毎日交代で「語り部」になって案内してくださるのが交流部屋です

画像3: 春日集落案内所「かたりな」で棚田の暮らしと信仰を知る

この日は、増田貞子さん(86歳)がいらっしゃいました。

「嫁いできたところが、かくれキリシタンの家でした。来客があっても絶対に見えないよう、神棚の奥に大切なものが隠されていたのはわかっていたのですが、その中身を知ることはできなかったんです。年に2回行われていたお祈りも、一度も見せてもらうことはできませんでしたね。それほど秘密にしていた大切なお祈りだったのです」。増田さんの真剣な話に耳を傾けます。

「丸尾山の頂には、大きくて美しい十字架があったと、おじいさんがよく言っていました。今はもうありませんが、大切な場所だったんですね。それからお祈りの行事は、集落の中の各家が順番制で行っていました。今はもうないけれど、ただ、信仰に生きた、集落があったことを伝えるために、こうやって皆さまに語っているのです」。増田さんは、そういって、手づくりの「かんころ餅」を食べてみんねと、差し出してくれました。

画像4: 春日集落案内所「かたりな」で棚田の暮らしと信仰を知る
画像5: 春日集落案内所「かたりな」で棚田の暮らしと信仰を知る

「かんころ餅」は、「かんころ」と呼ばれる芋と餅、そして砂糖を練って作ったお菓子です。潜伏キリシタンはこれをよく作っていたそうです。「とっても素朴で香ばしい!」と一ノ瀬さんも目を見張ります。

他にも、干し柿やゴーヤを使った甘煮などテーブルいっぱいにおいしいデザートが並びます。「これ全部、私の手づくりだから、どんどん食べてね」と増田さん。愛情がいっぱい詰まったお菓子に、心もじんわりと温かくなります。

地元の人と触れ合い、土地のものを味わうこと。こんな素晴らしい体験が「かたりな」の魅力なのです。

春日集落案内所 かたりな

住所長崎県平戸市春日町166-1
電話0950-22-7020
営業時間8:30~17:30
定休⽇12月30日~1月3日
webhttps://www.hira-shin.jp

お祝いの時に作られる「平戸寿司(押し寿司)」に挑戦

画像1: お祝いの時に作られる「平戸寿司(押し寿司)」に挑戦

平戸には「平戸寿司(押し寿司)」と呼ばれる郷土料理があります。お祝いの時に作られていた押し寿司で、平戸伝統の味です。白石漁港にある綾香水産では、平戸寿司の手づくり体験をすることができます。

画像: 扇と花のかたちをした木型に、酢飯を全体の半分ほど詰めます

扇と花のかたちをした木型に、酢飯を全体の半分ほど詰めます

画像: レンコン、椎茸、かまぼこ、ニンジンを甘辛く炊いた具材を敷き詰めます

レンコン、椎茸、かまぼこ、ニンジンを甘辛く炊いた具材を敷き詰めます

画像: さらに酢飯を載せ……

さらに酢飯を載せ……

画像: 押し型でギュッと押し固めます

押し型でギュッと押し固めます

指導してくださったのは、平戸観光協会の藤田さん。平戸寿司は、平戸出身の藤田さんが、子どもの頃から食べ親しんでいる御馳走なのだそう。

画像2: お祝いの時に作られる「平戸寿司(押し寿司)」に挑戦

さて、型から寿司を押し出す工程にはコツがありました。ギューッと強く押し出すのではなく、ゆっくりふんわり優しく……。これがなかなか難しいのです。

画像3: お祝いの時に作られる「平戸寿司(押し寿司)」に挑戦

「ご飯が具材を挟んだ部分から上と下とに分かれて出てきましたね」と藤田さん。一緒に体験した外国人の方も興味津々の平戸寿司づくりになりました。

画像4: お祝いの時に作られる「平戸寿司(押し寿司)」に挑戦

このあとは、自らの手で成形し、なんとか仕上げます。最後に錦糸卵とでんぶをふりかけて完成です。

画像5: お祝いの時に作られる「平戸寿司(押し寿司)」に挑戦

「難しいけど、楽しかった!」と一ノ瀬さんも笑顔いっぱいです。

綾香水産

住所長崎県平戸市主師町725
電話0950-24-2648

生月島の「大バエ灯台」でダイナミックな自然を体感

画像1: 生月島の「大バエ灯台」でダイナミックな自然を体感

平戸市内から北西へ車で約20分の場所にある生月島(いきつきじま)。その昔、遣隋使や遣唐使が中国から日本へと帰ってくるとき、この島を見て安心し、ほっと「いきをついた」ことから、この名がついているそうです。

南北10kmにわたって細く伸びた島は、半日もあれば島を一周することが可能。とくに島の西側には、海岸に沿って「生月サンセットウェイ」と呼ばれる道が伸び、車やサイクリストにはたまらないコースになっています。アドベンチャーツーリズムでは、この道を自転車で走り抜ける体験も用意されています。

画像2: 生月島の「大バエ灯台」でダイナミックな自然を体感

「生月サンセットウェイ」の途中には、大海原を眼下に望む「石原橋展望所」があります。海の反対側には険しい山がそびえ、山と海を近くに感じるダイナミックな自然が広がっています。

「どこか北欧のような雰囲気を感じさせる場所です。平戸の大自然に驚かされました。きっと夕陽も美しいのでしょうね」と、一ノ瀬さん。次回は夕暮れ時に訪れたいと話します。

画像3: 生月島の「大バエ灯台」でダイナミックな自然を体感

道路脇に放牧されている牛たちがやってきました。このような景色が望めるのも、生月島の魅力。

画像4: 生月島の「大バエ灯台」でダイナミックな自然を体感

サイクリストたちは、さらに島を北上し、360度パノラマの海が広がる「大バエ灯台」を目指します。

画像5: 生月島の「大バエ灯台」でダイナミックな自然を体感
画像6: 生月島の「大バエ灯台」でダイナミックな自然を体感

生月島の一番北には白亜の「大バエ灯台」があります。海から約100mの断崖の上に建てられ、灯台の上には展望台が。風と波の強さに驚きますが、360度ぐるりと海が見渡せる絶景は素晴らしいものがあります。

ここから眺める夕陽はまた別格とのこと。夕暮れを目指して生月島を訪れ、ロマンチックな気持ちに浸るのはいかがでしょうか。

大バエ灯台

住所長崎県平戸市生月町御崎26-2
電話0950-22-4111(平戸市観光課)

平戸で愛される冷たいスイーツ「食べるミルクセーキ」

画像1: 平戸で愛される冷たいスイーツ「食べるミルクセーキ」

「食べるミルクセーキ」をご存じでしょうか? 一般的にミルクセーキと聞くと飲み物をイメージしますが、長崎ではかき氷のようにして食べるスイーツとして知られています。

その長崎ならではのミルクセーキを求めて訪れたのは、生月大橋からすぐの「大福屋」。1959年創業の老舗です。

画像2: 平戸で愛される冷たいスイーツ「食べるミルクセーキ」

作り方はシンプル。溶いた卵に練乳を加え、そこに削りたての氷を少しずつ加えながらかき混ぜていきます。今では珍しい製氷機は、創業当時から使われているものだそう。これがふんわりと雪のような氷を生み出していました。

出来上がったミルクセーキはまさに“食べる”という名にふさわしい食べ応えのあるデザート。優しい甘さとなめらかな口溶けは、この上ない“口福な”気持ちに。これで400円。店主の大福康司さんが心を込めてつくる昭和のミルクセーキはいかがでしょうか。

画像3: 平戸で愛される冷たいスイーツ「食べるミルクセーキ」

大福屋

住所長崎県平戸市生月町南免4400-14
電話0950-53-2493
営業時間9:00~17:00
定休⽇不定休
画像4: 平戸で愛される冷たいスイーツ「食べるミルクセーキ」

平戸をまるごと体感するアドベンチャーツーリズムは、地元の人々に親しまれている安満岳をハイキングしたり、大自然が横たわる生月島をサイクリングしたりしながら、その土地の人の話に耳を傾け、日常と文化を学び、想いを馳せることができる深いツアーでした。

そして何より大きな収穫は、その体験の先に待ち構える大きな感動です。見ること、知ること、触れることで味わえる達成感と感動をかみしめる、平戸アドベンチャーツーリズムの醍醐味をぜひ感じてください。

平戸アドベンチャートラベル イメージムービー

画像: youtu.be

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