さらに、出水市の魅力を深く知るならば「農泊」という宿泊スタイルがおすすめです。農山漁村地域に滞在することで、その地域の生活を体験することができるのが農泊のよさ。
出水市の暮らしを身近に感じ、大自然にふれ、独自の食文化を知る。すべてを凝縮したような、1泊2日の旅に出かけましょう。
ナビゲーターは、JAL客室乗務員の北さん(左)と野田さん(右)。鹿児島出身で、「JALふるさと応援隊」として活動しています。おふたりによると、「鹿児島は温かい人が多い場所」だそう。どんな出会いがあるか、楽しみです。
4万坪の敷地で愛でる四季。十割粗挽きそばに、心も潤う
鹿児島空港から車で約1時間。出水市街地から20分ほど山を登るとたどり着くのが、「東雲の里」です。
10万本ほどもあるあじさいをはじめ、紅葉、しだれ桜、ハヤトミツバツツジなどが、四季を通して訪問者を優しく迎えてくれます。
入り口の門を越えて左手に見えてくる古民家は、オーナーの宮上さんご家族がもてなしてくれる食事処「生そば草の居」です。
注文したのは「ざるそば」1,100円。人気の「そば屋の玉子焼き」550円は、ふたりでシェアするとちょうど良いサイズです。
つゆだけでなく塩も用意されているのは、そば本来の香り・甘みを十分に楽しんでほしいから。自家栽培・自家製粉の十割粗挽きそばは、しっかりとした歯ごたえとほどよいザラつきのある独特な舌触りで、かなり食べ応えがあります。
味わい深いうつわと、美しく彩をそえる季節の前菜が、素朴な印象におさまりがちなそばを華やかに見せているのも特徴。こちらで使われているうつわはすべて、ご主人作というから驚きです。敷地内には、作品を展示しているギャラリーもあるので、そちらも覗いてみてはいかがでしょう。
「久しぶりに、ゆっくりご飯を味わった気がする」
「うん、また食べに来たいね。春の景色も見てみたい」
そんな会話をしながら、ゆったりとした時間を過ごしました。
東雲の里 生そば草の居
住所 | : | 鹿児島県出水市上大川内2881 |
---|---|---|
電話 | : | 0996-68-2133 |
営業時間 | : | 11:30~そばがなくなるまで ※「東雲の里」開園時間は9:30~16:30 |
定休⽇ | : | 木・金曜(あじさいと紅葉の時期は無休) |
: | https://www.instagram.com/shinonome_no_sato/ |
お土産に着物がもらえる、出水麓武家屋敷群の着付け体験
東雲の里を出て出水駅方面へ向かい車を走らせること20分。江戸時代の面影を残す出水麓武家屋敷群を訪れました。こちらでは、着物の着付け体験をすることができます(要事前予約)。
会場では、たくさんの着物と帯をそろえて、地域のお母さんたちが出迎えてくれました。
用意された着物は、地域の方々のお宅で眠っていたものたち。「新しい場所で活躍するなら」と寄付されたものもあり、レトロなデザインからビビッドな色合いのものなど、種類も豊富です。
この着付け体験プランの最大の魅力は、着用した着物と帯、足袋を持ち帰ることもできるということ。ナビゲーターのふたりも、夢中になって選んでいました。あれこれ羽織ってみて、お気に入りの一枚を見つけます。
その様子を見守っていたスタッフの方が、一言。
「捨てるのではなく次の持ち主へつなぐ、新しい体験のカタチです。何度もリピートする方もいますよ」と、嬉しそうです。
着付けが済んだら、徒歩2分の公開武家屋敷「税所(さいしょ)邸」へ移動。
5人以上で着付け体験を申し込むと茶道体験がついてくるのも、このプランの特徴です。市指定有形文化財でもある「税所邸」で、お茶のもてなしが受けられます。「初めての方でも体験しやすい内容なので、ご安心を」と、お茶の先生が優しくサポートしてくださいました。
琴の演奏を聴き、武家屋敷の風情、美しい庭を愛でながら過ごすのは、なんとも贅沢な時間です。
出水麓歴史館
住所 | : | 鹿児島県出水市麓町10-39 |
---|---|---|
電話 | : | 0996-68-1390 |
営業時間 | : | 9:00~17:00(入館は16:30まで) |
定休⽇ | : | 第3水曜(休日の場合は翌日が休み) |
料金 | : | 着物着付体験料 女性10,000円、男性6,500円(男性は持ち帰り不可) ※茶道体験は、4人以下の場合、上記料金に加えて5,000円必要 |
牛車に揺られて、のんびりと武家屋敷を観光
茶道体験の後は、着物姿のまま武家屋敷群を巡ります。せっかくなので、出水ならではの体験を求めて「いずみ観光牛車」に乗りました。1周25分ほどのコースで、先ほど訪れた「税所邸」のほか、「竹添邸」や石垣など、江戸時代の面影を残す美しい武家屋敷を愛でることができます。
こちらの出水麓武家屋敷群は、江戸時代に薩摩藩によって設置された「外城」が、現在に残る貴重な場所。武家屋敷は復元されたものですが、石垣や生垣などは400年前からほとんど変わっておらず、その規模は日本最大級といわれ、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。
牛車を引くのは、黒毛和牛のちはるちゃん。日本各地に牛車がありますが、黒毛和牛が引く牛車は出水が日本初だそうです。彼女の気分によって歩くスピードが変わるのもご愛敬。
いずみ観光牛車
住所 | : | 鹿児島県出水市麓町10-39「護国神社」前発着 |
---|---|---|
電話 | : | 0996-62-1511(ホテルキング内) |
営業時間 | : | 11:00~15:00 |
定休⽇ | : | 土・日曜・祝日(平日は4名以上で運行可。要事前予約) |
料金 | : | 大人(中学生以上)1,000円、小学生以下500円(3歳以下は無料) |
野菜の収穫、囲炉裏を囲んでの夕食。農泊ならではの体験を
車で20分ほど西へ向かい、本日の宿「悠遊庵」へ。
こちらのオーナーは、12年の海外生活を経て、定年退職後に生まれ故郷の出水に戻り田舎暮らしを始めた大平さんご夫妻。「日本の文化を体感してもらいたい」と始めた、農泊体験ができるお宿です。
荷物を置いて作業着に着替えたら、早速、収穫体験のスタートです。
裏の畑へ移動し、見慣れない赤いジャガイモや驚くほど大きな大根、不知火(みかん)などを収穫します。
柔らかくふかふかの土が気持ちよく、これはお父さんの手入れが行き届いている証拠。収穫した野菜たちは、お母さんが美味しい夜ご飯に仕上げてくださいます。
一息ついたら、続いてピザ作り体験へ。生地から手作りして、トッピングは好きな具材を好きなだけのせます。
ピザ窯はなんと、お父さんの手作り。薪をくべて火加減を調整したら、1~2分であっという間に焼きあがります。
出来立て熱々のピザは、冷めないうちに食べましょう。とろけるチーズの伸び具合に感動する応援隊のふたりからは笑顔が絶えません。ピザの出来栄えに大満足して、何度も写真に収めていました。
夕食は、囲炉裏を囲んでいただきます。畑の野菜を使ったおでんと、銘柄鶏「赤鶏さつま」の丸焼き、天ぷらや小鉢などが、次々と並びます。
冷えた体に、熱々のおでんが染みます。自分たちで収穫した大根だと思うと、より美味しく感じるもの。
ふたりが注目したのは、近くの海で獲れたというヒオウギ貝。ホタテに近い形状ですが、甘味を感じる濃厚な味わいです。カラフルな殻は、自然に生まれた色というから驚き。
このすべてが出水及びその周辺の食材。畑直送と、まさに地産地消です。
お父さん、お母さんとの会話が楽しめるのも、農泊の魅力のひとつ。土地の歴史や建物の作りについて伺っているうちに、いつの間にかお父さんの若いころの話にまで発展しました。お腹も心もいっぱいになったところで、明日に備えて早めに就寝します。
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。