万博の熱気が残る大阪。「だんじり祭り」で知られる岸和田を訪ねました。勇壮で荒々しいイメージの一方、岸和田城を中心に、落ち着いた城下町の風情が今も広がっています。石の配置や余白が想像力をかき立てる名作庭家の庭や大阪最古とされる能楽堂に流れる凛とした時間。紡織で栄えた寺田財閥の別邸「五風荘」や洋館の「自泉会館」など、近代日本の美意識を伝える建物も点在。祭りの熱と文化の静が共存する、その懐の深さに岸和田らしさを感じました。

おいしい寄り道 泉州名物おやつ「玉時雨」とご当地の味「かしみん焼き」

紀州街道沿いに店を構える「岸和田風月堂」は、創業123年を迎える老舗和菓子店。
もともとは街道沿いの和菓子屋でしたが、2代目が大坂凮月堂で、3代目が先代の縁から東京凮月堂で修業を重ね、のれん分けという形で「凬月堂」の名をもらいました。その際、3代目が和菓子屋の敷居の高さを意識し、地元の人が気軽に立ち寄れるよう、字を“凮”から常用漢字の“風”へと改めました。
看板菓子は「玉時雨」。殿様が好み、「しぐれ」と名付けたと伝わる名菓で、岸和田を代表する和菓子として知られています(岸和田では、「むらさめ」という名でも親しまれています)。しっとりとした生地が口の中でほろりとほどけ、大粒の大納言がやさしく甘みを添えます。2025年に新たに選ばれた「大阪代表商品」のひとつであり、「第21回全国菓子大博覧会 名誉大賞」「岸和田ブランド」「大阪産(もん)名品」にも選ばれるなど、その評価は折り紙付きです。
もうひとつ、岸和田で味わっておきたいのが「くるみ餅」です。
木の実の「くるみ」ではなく、餅をあんこでくるむことから、「くるみ餅」。特徴的なのは大豆あんで作られていること。
きなこのような味を想像しましたが、大豆の風味がより濃く、なめらかでこっくりとした味わいが口に広がります。くるみ餅は特にだんじり祭りの時に食べられるそうで、親戚が集まる席に欠かせないお菓子だといいます。

粉もん文化の大阪でも、なかなか出会えないのが岸和田名物の「かしみん焼き」です。
かしわ(鶏肉、ここでは親鳥)と牛脂のミンチを入れて焼くのが特徴です。
元祖は、今はなき岸和田の名店「藤原」。豚肉や海老、イカのお好み焼きはあっても鶏肉がないことから、試しに鶏肉で焼いたのが始まりでした。その後、海岸近くの店「大和」が牛脂のミンチを加え、「かしみん焼き」と名付けたことで、この名称と味が広まったといいます。
この日訪れた「鳥美」では、薄く焼いたクレープ状の生地をベースにする「洋食焼」スタイル。広島のお好み焼きを思わせますが、卵は使いません。かつて卵が高価だった時代、より庶民に親しまれるよう工夫された名残とのことです。
さまざまな部位を混ぜた親鳥と牛脂のミンチを重ね、手際よく焼き上げていきます。卵はなくとも、親鳥からにじむ鶏油と牛脂のコクが合わさり、旨味はしっかり。仕上げには2種のソースを使い、味にほどよい奥行きを持たせています。
店主とお客さんの軽快なやりとりが飛び交う店内は終始にぎやかで、その空気感も含めて、いかにも大阪らしい一軒です。

岸和田の味は、華やかさを競うのではなく、長い時間をかけて土地に根づいてきたものでした。
和菓子にも粉もんにも、この街の日常との結びつきが感じられ、そこには確かな人の気配があります。
この街らしい心地よさに触れられた、記憶に残るひとときでした。

御菓子司 岸和田風月堂

住所大阪府岸和田市本町4-4
電話番号072-422-0057
営業時間8:30~18:30
定休日木曜日(祝日は営業)
URLhttps://www.kishiwadafugetsudou.com/

鳥美

住所大阪府岸和田市堺町7-29
電話番号072-422-5816
営業時間11:00~18:00
定休日火曜日、水曜日、年末年始

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