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その目当ては、1,000個のランタンに彩られたレトロとモダンが交錯するフォトジェニックな風景。地元客・観光客に向けた体験イベントも定期的に行われており、11月にはお祭りが開催されます。そんな商店街の魅力をお伝えするとともに、イベント情報をいち早くお届けします。
鯖街道の終点として、「京の東の台所」と呼ばれた街

古川町商店街は、古くは安土桃山時代以前から、京都に若狭からの水産物を運ぶルートとして「鯖街道」と呼ばれた若狭街道。その終点が古川町商店街の入り口であり、言うまでもなく周辺は仕入れ業者や一般客で賑わいました。
その後、1950年に古川町朝日会が発足し、54年に京都商店連盟に加盟。最盛期は約50軒もの店舗が並び、祇園の高級料亭からも食材を求める料理人などが訪れました。
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現在では生鮮品を扱う店舗はほぼありませんが、昔ながらの肉屋、惣菜屋、生花店などが暖簾を守っています。
フォトジェニックでノスタルジック。そんな街を支える「会社」とは
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そんな古川町を歩いていて気付くのは、「若い女性が多い」ということ。道幅は2~3m、人とすれ違うのもやっと……という細い場所もありますが、カメラ片手の観光客や地元っ子らしき若者が多数。道のあちこちで撮影する姿が見られ、その先にはカラフルな丸いランタンが。これは「パステルランタン」という提灯で、2019年から商店街の活性化のために取り付けられたものです。
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アーケードの天井にピンクやブルー、オレンジなど色とりどりのランタンが飾られ、ノスタルジックな商店街の雰囲気に溶け込んでいます。有名なCMや映画の撮影にもこの風景が使われたとか。
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そうした取り組みを支えるのは、2017年7月に発足した「白川まちづくり会社」。地域活性化やブランド構築、高齢化問題などの課題解決に取り組むため、商店主・地域住民・民間企業が出資して作られた組織です。その取締役副社長を務める鈴木淳之さんと、古川町商店街振興組合理事長の藤村洋平さんにお話を伺いました。
道の狭さが魅力です!? 京都の下町情緒がそこかしこに
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「この商店街の魅力は、通路の狭さでしょうか」と鈴木さん。都会から来た人は、路地に店舗がひしめき合っているこの景色を見て「京都らしい」と感動すると言います。さらには、老舗から新しいカフェやビアバーまでが混在する「新旧混交」な店の顔ぶれも魅力。それがレトロ&モダンと打ち出す所以でもあります。
また大きな特長としては、「地元の方にも観光客にも開かれた商店街であること」。その心とは……?
地域にどっぷり溶け込んで。旅人と住人がつながる商店街
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商店街の中ほどにある、「白川ライフアカデミア」という施設。入り口から2階への階段を上ると、木の香りのする瀟洒な空間が迎えます。会議用テーブルが並ぶこの場所は、地域コミュニティのハブ&知の発信基地として2022年4月に開設した多目的スペース。商店街事務所である「古川趣蔵」と併せて、商店街の集まりや講習会、体験講座などの会場として活用されています。
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定期的に開催されている講座は、「練り切り和菓子体験」「水引結び」「会計ソフト入門」「包丁研ぎ教室」など多彩。商店街の店主や、外部から招いたプロが講師を務め、参加は地域の人も旅行者も大歓迎。旅先での思い出づくりだけでなく、自分磨きや生涯学習ができる、いわば「学べる商店街」でもあるというわけです。
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また商店街では空き家の利活用を促すため、新規出店希望者への店舗紹介などの相談に応じています。通りからすぐの場所に白川が流れ、知恩院や祇園方面へ雨に濡れずに行けるこの商店街は、新規出店者に人気のエリア。そうした新参店と古参店が講座やイベントを通じて交流し、人と人がつながるきっかけを創出するのも「白川まちづくり会社」のミッションです。
人気YouTuberのヨーグルト店から、包丁研ぎ職人の店まで
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揚げたての唐揚げを売る鶏肉店や、かつての歴史を物語る昆布店、雰囲気のある居酒屋などの店舗に交じり、エッジの立った面白そうなお店がちらほら。ここで鈴木さんに商店街のユニークな新店を案内していただきました。
韓国で惚れ込んだ味を再現。「グリークヨーグルト ヌン」
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チャンネル登録者数11万人の人気YouTuberゆちさんが2022年9月16日にオープンしたお店。水分を極限まで抜き、チーズのような食感ながら高タンパク低カロリーという韓国の「グリークヨーグルト」を手作りしています。キュートなゆちさん本人に会えるかも。
京のエッセンスを巧みに取り入れた「Hi! café」
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小窓があるオシャレなアメリカン調のカフェ。昆布とカツオの出汁がしっかり利いた「お出汁薫る京風キーマカレー」や、程よい酸味がクセになる「しば漬けの焼きめし」など、京都らしい食材を使ったフードが味わえます。
生麩を気軽に食べ歩き!?「京生麩の店 愛麩(まなふ)」
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何とも珍しい生麩カフェです。京生麩の田楽にさまざまなトッピングをした「生麩バー」が名物。商店街のランタンをモチーフにした「おいり麩ソフト」は写真映えするので必食です。
どんな刃物でも切れ味復活させます。研ぎの「常真」
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この道26年の職人による、刃物研ぎ専門のお店。国産の天然砥石にこだわり、包丁からハサミ、彫刻刀、まで幅広い刃物を研いでくれます。その手仕事を見るだけでも興味深いので、一度覗いてみる価値ありです。
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紅葉を見に来たら、11月のイベントにもぜひ立ち寄って
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2022年の11月後半はイベントやお祭りが目白押し。その一部を簡単にご紹介します。
「ランタン祭&珈琲祭」2022年11月19日(土)・20日(日)
8~10店舗の自家焙煎珈琲専門店がコーヒーを販売したり、商店街の店舗が特別メニューを提供したり。京都華頂大・短大によるブラスバンドや、立命館大の和太鼓演奏、手作り市などが行われます。地域と京都市内の団体がコラボし、「食」「音楽」「体験」で商店街を盛り上げます。(詳しいご案内はコチラ)
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「白川学び・体験プログラム」2022年11月26日(土)・27日(日)
2日間にわたり、学び・体験のプログラムが実施されます。「パステルランタン絵付け・取付体験」や「地域活性化フィールドワーク&ウォーキングツアー」のほか、ミニライブ、写真講座など盛りだくさん。白川の川底に昔から残っている陶器の破片を拾って作品をつくる「白川陶器破片採集&アクセサリー作り体験」や、カフェ開業のノウハウを実際の店主に聞ける「リカレントプログラム」も。WEBで申し込みもできます。(予約ページはコチラ)
訪れたら何かに出会える。商店街を目指す京都旅はいかが?
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単発のイベントだけでなく、毎月の手作り市や、ワークショップ、アート展示など、「来たら何かしらの発見や出会いがある」のが特色。藤村理事長は「地域活性化は街の人の理解や協力が必須。これまで地道にやってきましたが、お陰様で少しずつ知名度も上がり、古川町を目指して来られる方も増えました」と手応えを語ります。
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公式サイトやFacebookなどSNSでの情報発信も活発。旅の目的地は古川町商店街、という新たな京都観光のスタイルが定着しそうな予感です。
古川町商店街
白川学び・体験プログラム 予約ページ
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