
西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。

1日目
2日目
8:30 関西国際空港から重要文化財・船守神社へ
関西国際空港から泉佐野駅を経由して、淡輪(たんのわ)駅へ。岬町では一番大きな町であるという、淡輪の散策。まずは国の重要文化財に指定された社殿を持つという「船守神社」を目指し、駅から住宅街を進みます。
船守神社には紀船守、五十瓊敷入彦命、紀小弓宿弥の三柱が祭神として祀られています。これを見てピンと来た方もいるかもしれませんが、淡輪は古代の豪族・紀氏の領地でした。紀氏は大和王権に仕えたいわゆる名門で、「土佐日記」の紀貫之も紀氏のひとりです。
神社に到着するとまず素朴な古い石垣がありました。短い参道を通り、境内へ入ると天然記念物の樹齢800年のくすの木が迎えてくれます。
さらに社殿へ進み、本殿でお参りしました。生命力に溢れた木々に囲まれた本殿には、素晴らしい檜皮の流造の屋根。古社ではあるものの保存がしっかり行われている様が感じられます。
船守神社は特に漁業関係者の守り神として崇敬されています。当地から数百メートル行くともう海で、海沿いには船守神社の「御旅所」があります。そちらへ行ってみることにしました。

初めて降り立った淡輪駅は洋風木造建築のおしゃれな駅舎。大正時代に建てられた瀟洒なデザイン。

駅前にこれから向かう船守神社の看板がありました。

徒歩5分ほど歩いた船守神社へ向かう途中、中世、この地域を治めていた淡輪氏の邸跡がありました。説明看板のみの史跡は、淡輪城跡の一部でもあります。

船守神社はこの石垣が見えてくるともう参道が近いです。

狛犬、燈籠が並び、大きな木々が茂る船守神社。

写真に収まりきらないほどの大きなくす。樹齢は800年と言われる神社のご神木です。

国の重要文化財となっている社殿。安土桃山時代に豊臣秀頼の命で建てられたもの。

木々で全景は見られませんでしたが、檜皮造りの大変立派な屋根でした。

神社横には地車(やぐら)庫があります。3台の地車を曳き、練り歩く秋祭りが行われます。
船守神社
住所 | : | 大阪府泉南郡岬町淡輪4442 |
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web | : | http://www.misakicho-kanko.com/spot/watching/detail_000047.html |
10:30 淡輪港散策
船守神社から住宅地を抜け、淡輪漁港方面へと向かいます。あった、ありました!船守神社の鳥居がかかる「御旅所」。神社の祭りの際には、この鳥居がある黒崎の浜まで細い路地を通ってお神輿が運ばれ、船に乗せられて港を一周するのがならわしとなっています。
黒崎の浜にある石碑には、紀貫之が土佐から戻り、浜を通りかかった際の「土佐日記」の一文が書かれています。日本の五色(黄、緑、赤、白、黒)になぞらえて「地名の黒、松の緑、波の白、磯で獲れる貝は赤」、そしてあと一つ足りないのは「黄=紀」と言って、自らの一族・紀氏の衰退を嘆いたことが記されています。
淡輪港にあるヨットハーバーでは、真っ白な船が長いマストを空に伸ばし、リゾート気分を盛り上げてくれます。ヨットを右手に見ながら埠頭防波堤を歩いて先端まで行くと、赤い船の形をした灯台「淡輪港西防波堤灯台」が見えてきます。上部にライトを乗せ、風になびく帆を思わせるアートなモニュメント灯台で、遠くからも良く見えました。
お天気も良く、遠くに関空や飛行機の姿も見えました。淡輪港では穏やかな海面を赤く染める、夕日もきれいだということです。

船守神社から黒崎の浜を目指して住宅街を歩きます。道の向こうに海が見えてきて、素敵な景色です。

海沿いまで出ると、関西国際空港がしっかり見えました。

黒崎の浜には説明看板。この場所から船守神社例祭のやぐらが船に乗って海を渡ります。

こちらは石碑。紀貫之「土佐日記」の一文が彫られています。

船守神社の「御旅所」。海の色に映える真っ白な鳥居です。

淡輪港をぐるり散策。キラキラと陽射しを受けるヨットが並ぶハーバーは、まるで日本じゃないみたいな景色。

ヨットハーバーを横に見ながら防波堤を進みます。

西防波堤灯台に到着しました。風に帆をなびかせる赤いヨットです。

てっぺんに灯台のライトがありました。ソーラーパネルも見えます。
黒崎の浜
住所 | : | 大阪府泉南郡岬町淡輪1381 |
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11:30 絵本に囲まれる優しい空間で手作りお惣菜ランチ「IROHA Picture book and Cafe」
淡輪のランチは駅から徒歩5分程度のカフェ。海とは反対側に向かうとあっという間に田畑広がる世界が広がります。少し奥まった場所にあり、探しましたが無事に到着。きれいな芝生とハンモックが目印です。
「IROHA Picture book and Cafe」は、若いご夫婦が築40年の建物を改装しオープン。子どもの成長に欠かせない「絵本」を読んでもらえるカフェをオープンしました。壁を取り払い段差もなくし目線を低くして、子供が自由に遊べるスペースと、大人も寛げるお店作りがなされています。
ランチは子供に食べてほしいとメインはお魚。数種類の小皿料理は季節の野菜を使った食材が豊富に使われて、栄養バランスが考えられた内容です。曜日によって貸しスペースとしても利用されており、様々なイベントも行われています。
岬町に子どもの楽しそうな声が響くカフェができ、楽しそうに情報交換するお母さんたちの顔も嬉しそうでした。

淡輪のカフェは眩しいくらいの芝生とハンモックが目印。「IROHA Picture book and Cafe」

子どもの目線に置かれた本。小さなお子様に優しいお店です。

壁をなくし、子どもがどこにいても目が行き届くように作られた店内。

たくさんの絵本と遊び場が、子どもたちを笑顔にします。

若いご夫婦が営むカフェ。小鉢がたくさんつく料理は奥様の手作り。豆苗のナムルやアスパラと鶏肉の春巻きなど。

この日は淡輪漁港で揚がった新鮮なカイズ(チヌの幼魚)。なんと丸ごと一匹。

料理はシェア出来るよう、そして子どもでも食べられるものをという心遣い。特に、魚を食べてほしいという気持ちで、メインは魚と決めているそう。

お手製カップケーキのデザートまでついて幸せなランチでした。
IROHA Picture book and Cafe
住所 | : | 大阪府泉南郡岬町淡輪1588 |
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営業時間 | : | 10:30~14:00 ランチは火曜日のみ ※カフェ営業は新型コロナウイルスの影響により変更になる可能性あり。 Facebook、Instagram等で要確認 |
web | : | https://www.instagram.com/iroha_picturebook_and_cafe/ |
13:00 大阪湾の眺望抜群、岬町の思い出製造機「マリンロッジ海風館」
淡輪港やヨットハーバーから見えていた、小高い場所に建つマリンロッジ海風館。その姿は緑の木々を波に見立てた大きな豪華客船のよう!どうしても気になったので海風館に続く階段を上ってみることにしました。
マリンロッジ海風館はレストランや宴会場を併設した、岬町では誰もが知るリゾートホテル。ビーチにも近く、周辺の学校の課外授業などでも使われているという事なので、家族とのお出かけや子どもの頃の合宿の思い出がいっぱい詰まった親しみのある施設なのでしょう。
部屋からはもちろん、ロビーやレストランからも大阪湾を眺められ、すぐ近くにある淡輪ときめきビーチの砂浜や、先ほど行ってきたヨットの灯台も眼下に捉えることができます。
すぐ目の前の施設「大阪府青少年海洋センター」では、船の操舵室体験やヨット乗船、海カヌー体験などが行えます。また、ツツジで有名な淡輪遊園のすぐ横に位置しているので、緑も多く自然に囲まれた立地です。メロンソーダを片手に海に目をやると、釣り人や研修中の子どもたちが楽しげに過ごす姿が見られました。

海岸へ戻り、気になっていたあの建物へ!波を超えてこちらに近づいてくるような迫力があります。

マリンロッジ海風館は宿泊&レストラン施設です。

入口も船に乗り込むような錯覚を起こす、凝ったデザイン。

窓も多くてバルコニーもあります。周辺の自然豊かな環境の中に建つホテルです。

淡輪遊園の目の前に位置し、建物の窓からは緑あふれる景色が楽しめます。季節になるとここに赤やピンクのつつじが咲き誇ります。

海側を見ると「淡輪ときめきビーチ」の長い砂浜が見えました。部屋からみたら最高でしょうね。

ホテルと海の間には「大阪府青少年海洋センター」があり、海アクティビティの拠点となっています。

お天気最高の中、シーカヤックを漕ぐ学生たち。港はほとんど波がなく安全で、思いっきり楽しめる課外授業ですね。

海を眺めながらジュースで喉を潤します。静かな時間が流れていきました。
マリンロッジ海風館
住所 | : | 大阪府泉南郡岬町淡輪6190 |
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web | : | http://www.kaifukan.jp/ |
14:30 ホッと一息。懐かしい昭和の思い出溢れる「ひろしげ珈琲倶楽部」
マリンロッジ海風館から淡輪駅方面へ向かう道の途中、淡輪散策の最後、休憩に立ち寄りました。
岬町のお話を聞くと皆さんの口から出るのは、昔は大阪や和歌山の人たちが遊びにくる観光地だったという話。この店舗がある通りは、駅から淡輪遊園やマリンロッジ海風館へ海遊びに行く人たちが行き来する、町一番の通りで、当時はその通りに様々なお店が賑やかに並んでいたのだそう。このカフェも元お土産屋さんで、現在のご店主のご実家だった場所です。
その店舗兼実家をそのまま開放しカフェにしてしまったのが、コーヒー専門店「ひろしげ珈琲倶楽部」です。店の奥に大きな焙煎機を置き、厳選した豆にそれぞれ適した焙煎をかけ、ハンドドリップで提供するスタイルです。
何といっても驚くのはそのお値段!客が好きなコーヒー豆を選んで自分で挽き、自ら淹れる場合は1杯250円。さらにそれを飲み放題にすると590円。店主に淹れていただいても400円~と、本格コーヒーを良心的な価格で飲めるのです。
しかも店主がブレンドしたオリジナルのコーヒーが11種類もあり、全種類では20種類ほどが揃う、コーヒー好きでも迷ってしまいそうなラインナップ。選び抜かれた豆のグレードの良さは言うまでもなく、焙煎前と焙煎後の2度にわたるハンドピック(傷んだ豆を一粒ずつ取り除く作業)を丁寧に行うことで、雑味のない、豆の甘さや香りが感じられる一杯を楽しむことができます。
昭和のままの懐かしい家具やレトロな硝子、なんと仏壇までがそのままに置かれ、まるで田舎のおばあちゃん家に帰ってきたかのようです。コーヒー飲み放題が設定されているのも、この安心感と心地良い空間で、いくらでも長居していいよというご店主の配慮なんですね。近隣のケーキ屋さんや和菓子屋さんのお菓子も置かれているので、コーヒーのお供に楽しむのも良いですよ。
懐かしさに浸り、いつまでもゆっくりしていたいという気持ちに後ろ髪を引かれつつ、淡輪を後にしました。

海を眺めてリラックスした後、駅へ戻る道途中のカフェタイム「ひろしげ珈琲倶楽部」。

入口には駄菓子や近隣のお菓子屋さんのケーキやゼリーが並びます。

店内は寛ぎの空間。靴を脱いで畳に上がって、静かに扇風機の風を浴びる。もうこのまま寝っ転がりたい。

とある家族の日常がそこにありました。ノスタルジックな雰囲気に浸れる空間です。

店の奥に置かれるのはフジローヤル、2台の焙煎機。これでこだわりのローストが行われます。

種類豊富な豆。オリジナルブレンドは11種類もあります。色々ありすぎて選ぶのに迷います。

程よい苦みのエスプレッソを使ったカフェ・ラテ。冷たくておいしくて、幸せな気持ちになれました。

籐の椅子に座って、コーヒー片手にゆっくり庭を眺めるのもいいですね。
ひろしげ珈琲倶楽部
住所 | : | 大阪府泉南郡岬町淡輪1478-1 |
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営業時間 | : | 11:00~18:00(L.O.17:30) ※新型コロナウイルスの影響で営業日時の変更あり。 |
休日 | : | 火曜定休 |
web | : | http://hiroshige-coffee.com/ |
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