JALオリジナルドリンク「スカイタイム」の歴史をひもとくと、1992年にさかのぼります。初代「スカイタイム キウイ」から始まり、「スカイタイム ゆず」(2004年)、「スカイタイム シークワーサー」(2011年)、「スカイタイム キウイ(復刻版)」(2014年)と続き、今回のリニューアルで5代目となります。
アサヒ飲料と協業し、お客さまの声も取り入れながら開発
貝阿彌「楽しみにしていただいているお客さまも多く、リニューアルにはプレッシャーがありました。2年前となる2019年からプロジェクトがスタートし、東京2020大会の開催時期を目指して開発が進みました」
こう振り返るのが、客室乗務員で現在は商品・サービス企画本部に在籍する貝阿彌直子です。スカイタイムをオーダーされるお客さまと接してきた経験があり、とりわけ大きな重責を感じていたと語ります。
貝阿彌「『JALといえばスカイタイム』とおっしゃってくださるお客さまも多く、また人気があります。そこから進化した“定番”を作るわけですから、プレッシャーはありましたね。愛され、親しまれる味とはどんなものか、まずはフレーバーの検討から始めました。『スカイタイム キウイ』がご好評いただいていた理由の一つとして、世の中にキウイのジュースはあまりなく、新鮮に感じていただけたことが考えられます。すごく特別感のあるドリンクでしたので、その“伝統”を受け継ぎ、次のフレーバーも、あまり一般市場では見かけないものがいいのではと考えました」
しかしながら、そのようなフレーバーは、原材料となる果汁や香料の入手が困難であることがわかりました。また、日本であまり流通していない果物ではお客さまが味をイメージしづらく、親しみをお持ちいただけないのではという懸念が出てきたため、方針を練り直すことになりました。
貝阿彌「これらの課題を解決する答えとして、複数の果物をミックスすることを思いつきました。開発パートナーのアサヒ飲料さまと試行錯誤を重ねる中で、桃と2種(赤と白)のぶどうの組み合わせに行きつきました」
フレーバーの方針が決まりかけたところで、次に課題となったのが色。これまでは黄色系ばかりでしたので、桃やぶどうをイメージする赤では、スカイタイムらしさが損なわれるのではないかという懸念がありました。最終的には、「色が変わることでより新鮮さを打ち出せる」「JALブランドカラーと親和性がある」など、ポジティブな見解が勝りました。
貝阿彌「これまでのスカイタイムがそうであったように、後味スッキリは継承しつつ、香りは芳醇でありながらも味は甘すぎず、また国際線でもご提供しますので、海外のお客さまにも受け入れてもらいたい……と、試行錯誤を重ねながら開発を進めました」
さらに今回のプロジェクトにおいては、お客さまの声も取り入れさせていただきたいと考え、JALが運営する「trico」という旅コミュニティサイトのリアルイベントにご参加されたお客さまに試飲していただき、ご意見を伺いました。
貝阿彌「スカイタイムの新作という情報は伏せて試飲してもらいました。いただいたご意見に基づき、フレーバーを最終決定、味の微細な調整を重ねていったのです。リニューアルを発表した後、ご参加いただいたお客さまから『あのときのあれだったのか!』とお声をいただきました」
シンプルな歴代パッケージから一新。社内公募のデザイン
さて、味わいのみならず、パッケージデザインにもとことんこだわったのがリニューアルの特徴です。
今井「趣味で、色えんぴつでイラストを描いていたんです。スカイタイムのパッケージデザインの新しい案を募集するという社内広報を見たときに『これだ!』という思いで描きました。自分がすごくキウイが好きだったので、プレッシャーも感じながら。しばらくして、直接連絡をもらったときは、すごくうれしかったです。まさか、リニューアルプロジェクトだったとは……」
JALナビアの今井麗奈がこう語るのは、JAL社内でもリニューアルプロジェクトが極秘裏に進められていたからです。当時ご提供していた「スカイタイム キウイ」のパッケージ案を募集、最優秀案のスタッフに「ももとぶどう」をテーマに再度考えてもらうという趣旨だったのです。宣伝部の林 彩織も、同様に応募したひとりです。
林「私もスカイタイムが大好きなんです。これまでのパッケージがシンプルだったので、せっかくならポップで明るく、もっと手に取ってもらいやすいデザインだったらいいのに……という想いから、果汁が溢れるイメージでデザインを考えました」
林のデザインをベースに、今井が新たに描いたももとぶどうのイラストを載せるパッケージデザインとし、テイストの開発と同時進行で調整が進みました。
貝阿彌「パッケージに使えるイラストは『果実飲料等の表示に関する公正競争規約』による制約があり、これに抵触しないことが前提となります。そのなかで、お客さまへ飲み物のイメージがダイレクトに伝わり飲んでみたいと思っていただける、機内が明るくなってご旅行の楽しさを更に感じていただけるようなデザインを目指しました。客室乗務員として乗務をする際に、お客さまに見ていただけるようカートの一番前に置きたくなるデザインになったと思います」
以前のシンプルなデザインから一新。目を引くかわいらしさを求めたのです。
スッキリさわやか。食事にも合うおいしさ
さて、お客さまと社内の声を取り入れながら、試行錯誤を経て完成した「スカイタイム ももとぶどう」を開封してグラスに注げば、ふわっとした甘さのなかに、ほのかに酸味が混じった優しい香りが漂います。口に含めばももの甘さが立ちのぼり、重ねて感じられるぶどうのスッキリした後味によって、さわやかな飲み口に仕上がっています。食事にも合わせやすいと感じていただけるのではないでしょうか。
貝阿彌「白桃と白ぶどうと赤ぶどう、パッケージイラスト通りの果汁が入っています。ロゼワインのような色味で、果実由来のポリフェノールが含まれています。お酒を飲めない場面でも、お酒を楽しんでいる気分を感じていただけることと思います」
今井「注いだときの鮮やかな色にビックリしました。すごくかわいい。炭酸を足して飲んでもおいしそうです。実はご提供開始から、毎日SNSでお客さまの反応をチェックしています」
林「濃厚でとろっとしているのかなと思ったのですが、すごくサラッとしていて驚きました。キウイに負けないくらいおいしいと思います。携わることができて、感動です」
アレンジも楽しめる新作を、ぜひご賞味ください
プロジェクトに参画した3人も、出来映えに満足している様子です。さらに、「スカイタイム」はちょっとしたアレンジも楽しめます。
貝阿彌「ハワイ線限定ですが、エコノミークラスではスパークリングワインで割った『スカイロワイヤル』というオリジナルカクテルをご提供しています」
メニューにはありませんが、ファーストクラスやビジネスクラスではアレンジもできます。シャンパンや炭酸と割って召し上がっていただくのもおすすめです。
貝阿彌「自分が考えたことが形になって、お客さまにご提供する商品になるというのは、客室乗務員としての経験になかった仕事です。プレスリリース、そしてご提供を開始したときには感動しましたし、また、機内やSNS上で多くのお客さまよりポジティブな声をいただけてすごくうれしく感じました。乗務に戻ったときには、直接お客さまの反応に触れられるのが楽しみです。『実は私が開発に携わりました』とお伝えしてしまうと思います」
2年の歳月をかけて完成させた「スカイタイム ももとぶどう」。フライトのひとときが、さらに豊かな時間になるかもしれません。ご搭乗いただく機会が訪れたときは、JAL自信の新作をぜひご賞味ください。
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