成田空港からクルマで10分ほど。ご存じなければ通り過ぎてしまうかもしれません。のどかな田園風景に静かに溶け込むように佇む「DINING PORT 御料鶴(ごりょうかく)」。ここはJALが民家を改装し運営するレストランです。撮影に訪れたこの日は平日でしたが、連日、開店直後からほぼ満席になります。
周辺地域と連携し、農業で人とのつながりを深めるためのレストラン
成田空港が開港して約50年。JALが長年にわたってお世話になってきた成田の土地に恩返しがしたいという思いを込めて、お店を作りました。一般のご自宅を買い受けてリノベーションを実施。ガラスや曲線を多用し、空港ラウンジを手掛けたデザイナー監修のもと、居心地のよさを大切にしています。
「JALならではの遊び心を加えています。皿やコップなどは機内で使っているものを利用しています。コンテナも、空港で使用されなくなったものをリフトとトラックを使って、私が持ってきました。実は手作りの要素が多いお店なんです」
運営しているJAL Agriport・管理部長の奥間良浩はこう振り返ります。地域との連携を図り、インバウンドも見据えたサービスを提供するJALのグループ会社です。
地元の食材を活かしたメニューや、人気の“ラウンジカレー”も
「社長の鎌形晶夫はこの地の出身なのです。千葉の特長を活かしたものをご提供したいという思いがありました。ですから産地は成田のものを中心に、でも単に地元だけじゃなく、千葉全体の食材を集めてご提供しています」
地産地消をもっとも味わえるメニューは「御料鶴小鉢膳」(2,500円・税込)。イタリアンで修業を積んだシェフが腕によりを掛けた看板メニューです。
御料鶴小鉢膳には小鉢が並びます。この日は、鰻のオムレツ、水郷鶏のバンバンジーや九十九里伝統のなめろう、菜の花豚の一口カツ どら豆ソースなど6品で、いずれも洋食のエッセンスが感じられる作品。またたっぷり添えられたフレッシュな野菜たちは彩りの役割のみならず、瑞々しさが口のなかで踊ります。
そしてJALの国際線ラウンジで提供されている「JAL特製オリジナルビーフカレー」も大好評のメニューです。濃厚で奥深い食材とスパイスが絡み合う欧風カレーは、多くのお客さまに愛されてきた伝統の味。添えられた玉ねぎのローストも名脇役です。ゆっくり、じっくりと火を入れて甘みを引き出し、ほろりと柔らかい仕上がり。玉ねぎが苦手なお子さまにも召し上がっていただけることでしょう。
「このカレーは、鎌形の強い思いから実現したものです。鎌形はもともと客室乗務員で、その後機内食全般を担当。ソムリエの資格も持っており、JALのなかでも食に精通しています。このカレーはラウンジ以外では滅多に提供されないのですが、今回やっとご提供することができました」
フライト気分が味わえる機内食に、オリジナル焼酎
飛行機の気分を味わっていただくのにうってつけのメニューもあります。国際線エコノミークラスでご提供している機内食も、御料鶴で味わえるのです。季節で変わるメニューですが、現在(2020年8月)は「牛肉と野菜の旨煮 ご飯添え」「牛バラとトマトのピリ辛煮込み」「蟹と豚バラ肉のドリア」がラインナップ。機内でお出ししているものをそのままご提供しています。
「機内では常時2種類から選べますが、ここでは3種類からお選びいただけます」
レストラン以外にも力を入れています。直営農場には芋畑もあり、収穫したサツマイモでオリジナル芋焼酎「鶴空(つるそら)」を作っています。店内でお飲みいただけるほか、当社ホームページでも販売しております。味わいはスッキリしていてフルーティ。スッと飲み口がよく、芋の香ばしい香りが鼻に抜けます。
「福岡県にある焼酎の蔵元にお願いして蒸留しており、焼酎の名産地である九州のお客さまにもご好評なんです。JALの酒類アドバイザーからもお墨付きをいただき、ビジネスクラスの機内にも搭載されています。また、度数を変えた「鶴空PREMIUM」(度数:35度)は、国際線機内販売でもお求めいただけます」
お腹に余裕があれば、デザートもご賞味ください。併設の農園で育てた獲れたてのフルーツを使ったメニューをご用意。冬から春はイチゴ、夏はブルーベリーを使ったメニューをご提供しています。
広い庭先でバーベキュー。さらに広大な農場もあります
レストランの広い芝生エリアでは、デイキャンプが楽しめるように、器材とお肉・野菜などをご用意しています。手ぶらでのバーベキューをお楽しみください。
「タープやテーブル、BBQグリルや炭もご用意しています。食材もシェフが選んだものをご用意しています。すべてご自分で用意されるより楽で割安ですし、時間制限はありませんから、夕方までゆっくりお過ごしいただけます」
さらに、少し足をのばせば直営農園があります。4.5ヘクタールという広大な敷地では、イチゴやブドウを栽培するビニールハウスが21棟並んでいます。また、ブルーベリーやイモ、季節の野菜を栽培しており、一部はレストランでご提供しています。今はオクラやナスにキュウリ、フルーツトマトといった夏野菜が収穫の時期を迎えています。
機内食用の高品質な季節のフルーツ狩りも楽しめます
また、イチゴやブルーベリーのフルーツ狩りもできます。
「イチゴはJALグループのスタッフがボランティアで植え付けをしました。ビニールハウス内の通路は、整備士が工夫してくれて、滑走路を模した床のデザインにしています。立ってイチゴ狩りができるように高い位置で栽培しているほか、車椅子のお客さま用に低い位置にも苗があります」
夏はイチゴ狩りはお休みですが、露地栽培のブルーベリー狩りができます。樹木ごとに違う品種でいろんな味わいがあります。
「当社はASIA GAPに認証された農園で、作物はすべて規格に沿った方法で栽培しております。機内食にも使っていた上質なフルーツをお楽しみいただけます」
コロナ禍でも、安心してお食事を楽しんでいただくために
地元の食材を活かしたものや、通常は飛行機をご利用いただかないと食べることのできないメニューを揃え、おかげさまで高い評価をいただいています。しかし3月のオープン直後に発生した新型コロナウイルスの影響で、休業を余儀なくされました。
「オープンしたばかりで、1カ月半休業していました。何かできることはないかと考え、お弁当を作り成田空港のJALスタッフ向けに販売していました。グループ向けとはいえ手は抜かず、御料鶴で用いる食材を随所に使ったお弁当は好評でした」
営業再開後は、スタッフは全員マスクを着用し、お客さまには入店前のアルコール消毒と検温をお願いしております。さらにお食事後にはテーブルを消毒しています。またご希望のお客さまは屋外のテラスでお食事いただけます。加えて、ランチタイムは混雑が見込まれるため事前の予約をおすすめしています。
豊かな食の体験をご用意。ぜひ成田にお越しください
現在はランチのみの営業ですが、夜の営業も再開していきたい考えです。
「おかげさまでSNSを中心に話題にしていただいていて、嬉しい限りです。そしてこれが継続されるよう努力をしていかないといけません。今後、お客さまによる野菜の収穫体験も検討しています。お客さまが採ったお野菜をそのままお料理にしてお出ししたいですね」
店内で働くスタッフには客室乗務員の経験を持つスタッフもおり、サービスの品質にもこだわりがあります。
ランチにバーベキューに、フルーツ狩り、御料鶴はフルサービスキャリアならではのおもてなしで、豊かな食の体験をご用意できる複合施設です。また御料鶴のみならず、成田は見どころが豊富にあります。飛行機をご利用でなくとも、機会があればぜひ成田にお越しください。
DINING PORT 御料鶴 | ||
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住所 | : | 千葉県成田市川上245-219 |
電話 | : | 0476-36-5272 バーベキューも上記電話番号から予約を承っています。 |
営業時間 | : | 火曜~金曜 11:30~15:00(ラストオーダー 14:30) 土日・祝日 11:30~17:00(ラストオーダー 16:00) |
定休日 | : | 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日がお休み) |
※2023年7月10日に一部内容を更新いたしました
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