心地よい刺激を求めて。大人のための知的探訪4選

【札幌】開拓使時代の歴史に触れる、日本最古の木造ホテル「豊平館」

札幌・中島公園の中に佇む「豊平館（ほうへいかん）」は、明治天皇の宿泊施設として1880年に建てられ、国の重要文化財に指定されています。現存する木造ホテルとしては国内最古であるとともに、明治・大正・昭和と3代にわたり天皇家が訪れた由緒ある建物です。西洋料理店や旅館、市民会館と変遷をたどり、現在は観光施設として親しまれています。

まず目を奪われるのは、白い外壁を鮮やかに縁取る群青色。この色は「ウルトラマリン・ブルー」と言われ、昔は宝石として尊ばれたラピスラズリから作られる高貴な色なのだそう。間近に見れば、正面玄関の円柱やヨーロッパ風様式のバルコニーなどが施された華やかな意匠にうっとり。シャンデリアの吊元にあるメダリオンには紅葉や牡丹など日本らしいモチーフが使われているので、ぜひ見つけてみてください。

さらに、展示室には建設当時の資料や実際に使われた調度品が展示されており、近代日本の歩みを、建築を通じて学ぶことができます。

館内にある「喫茶室ハルニレ」では、クラシックな空間でコーヒーやパンケーキなどの軽食を味わうことも。

おすすめの楽しみ方は、無料のボランティアガイドと共に歴史を学びながら館内をまわること。その背後にある歴史や思想にじっくりと触れると、明治という激動の時代に日本が西洋文化をどう受け入れ、格式を保ちながら自国の美意識を表現していたのかが感じ取れます。

豊平館

【広島】広島の歴史と文化を歩いて学ぶ「広島城三の丸」

広島の中心部にある広島城は、戦国武将・毛利輝元によって築かれた名城。現在、天守では歴史博物館として武家文化を紹介する展示のほか、「かぶと試着体験」「刀の重さ体験」が楽しめます。また、広大な敷地の一角に2025年3月に整備されたばかりの「広島城三の丸」は、歴史と現代文化が調和する知的好奇心くすぐるスポットとして注目されています。

飲食店やセレクトショップなど５店舗が軒を連ねる商業施設の中でも、おすすめは「SOKO CAFÉ（ソウコ カフェ）」。

広島で400年以上続く武家茶道 上田宗箇流が初監修するカフェで、武家文化や茶道文化に触れられます。こだわりの抹茶は、京都「一保堂茶舗」と尾道「宇治園製茶」の濃茶・薄茶を使用。上田家伝来の由緒ある茶碗から着想を得た、オリジナルの茶碗で提供します。自分でお茶を点てる「武家茶体験セット」も人気。季節の上生菓子などと一緒に本格的な味をお楽しみください。

また、全国初となる、お城の中で和弓の体験ができる「広島城 射楽」も見逃せません。弓道経験はもちろん、年齢や性別、国籍を問わずに遊びながら和弓に触れられます。

また、2026年3月22日をもって閉城される天守の所蔵品が、2027年春に三の丸エリアにオープン予定の「広島城三の丸歴史館」に展示されることも決まっています。もちろん、閉城後もこの場所から堂々とした天守の外観を望むことができるのでご安心ください。

歴史の舞台としての重厚さと、現代的な開かれた空間が共存する「広島城三の丸」は、まさに“歩いて学べる博物館”のような存在。観光のひとときを、知的な発見と学びの時間に変えてくれる場所として、ぜひ訪れてみてください。

広島城三の丸

【福岡】禅の世界に浸る静かなひとときを「油山観音」

福岡市内にありながら、深い森と静寂に包まれた油山の中腹に佇む「油山観音」は、1000年以上の歴史をもつ禅宗寺院です。大和時代に創建され、現在は臨済宗の寺として、訪れる人々に心を整えるひとときを提供しています。

ご本尊の聖観音菩薩像は国の重要文化財に指定されており、そのやわらかな表情は人々の心に静かな安心をもたらします。

注目は、他ではあまりない「坐禅」「法話」「精進料理」の三つすべてを実践できる坐禅体験です。静かに座り、自分の内面と向き合う坐禅の時間は、現代人が忘れがちな「今」に意識を向ける大切さを教えてくれます。

禅の教えや生き方についての示唆を僧侶が丁寧に語ってくださる法話も、尊い時間。

檀信徒（特定の寺院に所属する家や人の総称）でなくともこのような経験ができる禅寺は数少ないため、ぜひ一度足を運んでみてください。静けさの中で自分と向き合う、またとない貴重な時間が過ごせます。

油山観音

【鹿児島】ウイスキーの哲学と向き合う「嘉之助蒸溜所」

鹿児島県日置市にある「嘉之助蒸溜所（かのすけじょうりゅしょ）」は、東シナ海を望む吹上浜のほとりに建つクラフトウイスキーの蒸留所です。「MELLOW LAND, MELLOW WHISKY」というコンセプトのもと、自然や歴史と調和したウイスキー造りをしています。

人気は、製造工程を間近で見学できるツアー（事前予約制）。参加すると、まず目に飛び込んでくるのは赤銅色に輝く3基のポットスチル（蒸留釜）です。3つ並ぶ構成は国内でも珍しく、これが多彩な風味を生み出す秘密のひとつ。ほかにも、発酵槽や芳醇な香りに包まれた熟成庫などを見ながら、貴重なウイスキー造りの現場を体感できます。

お楽しみは、ツアーの最後。蒸留所内のバー「THE MELLOW BAR」で3種のテイスティングが楽しめます。土地の風土や作り手の哲学を知ったうえで味わうウイスキーは、より深い感動を与えてくれるはず（運転をされる方、アルコールを飲めない方にはソフトドリンクを提供）。東シナ海を望むカウンターで過ごすひとときも、忘れられない時間になりそうです。

さらに、2025年7月には蒸留所から車でわずか5分の場所に、焼酎の体験施設「こまさや」も新装オープン。蔵見学や限定商品のショッピングなど、“KANOSUKEブランド”のルーツをより深く楽しめるコンテンツが充実しています。ぜひ、併せてお楽しみください。

嘉之助蒸溜所

日本各地には、大人だからこそ楽しめる“学び”に満ちた場所があります。観光地を巡るだけでは得られない、歴史や文化への理解、そして心を整えるひとときを求めて――次の旅行では、知的好奇心を満たす“深い旅”を目的に、計画を立ててみてはいかがでしょうか。

関連記事

関西圏からひとっ飛び。佐渡でおすすめの「大人の修学旅行」

日本最大の離島・新潟県の佐渡島。歴史と文化が今も色濃く残るこの島が今、大人の修学旅行地として注目を集めています。

ontrip.jal.co.jp

自然に触れて、子どもがひとまわり成長できる旅を。ファミリーにおすすめしたい沖縄のリゾートステイ

沖縄本島北部の豊かな森林が広がる「やんばるエリア」。独自の自然環境と文化を形成するこの地は、子どもたちが全力で遊び、経験や学びを得るにはもってこいの場所です。

ontrip.jal.co.jp