エアコンがないはるか昔から、日本には涼をとるための文化が存在しています。直接的に涼しいということではなく、情緒に涼しさを求める風情の文化。味わいや景観、音色や触れた感触、五感で楽しむ奥ゆかしい旅のご提案です。

※価格は税込み表記です。

夏は、夜。月のころは、さらなり。闇もなほ。蛍のおほく飛びちがひたる、また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。——平安時代、清少納言が枕草子に記した夏の風情です。古くから日本には、感性で四季を愛でる文化があります。暑さ険しいこの夏に、五感に合わせた旅先に目を向けてみませんか。

「視覚」で涼をとる

①世にも珍しい「白金青い池」の、水縹(みはなだ)色に輝く美しい水面

画像: ①世にも珍しい「白金青い池」の、水縹(みはなだ)色に輝く美しい水面

万葉集にも記述のある水縹(みはなだ)色とは、こんにちの水色に近しい色。藍染めで明るく染めた緑がかった薄青色のことを指しますが、北海道の美瑛町にある「白金青い池」の水面は、まさにそのような色。近隣の白金温泉に含まれる硫黄と、美瑛川にあるアルミニウムが混ざることで「コロイド」という成分が作られ、太陽の光に乱反射することで、世にも珍しい色みが生まれます。山々の緑とのコントラストは絶妙。絶景に心を奪われて、しばし暑さを忘れてみませんか。

白金青い池

住所北海道上川郡美瑛町白金

②山形の「クラゲドリーム館」で眺める、幻想的なクラゲたち

画像: ②山形の「クラゲドリーム館」で眺める、幻想的なクラゲたち

山形県鶴岡市にある加茂水族館は「クラゲドリーム館」と称して、世界中のクラゲを集めて展示しています。常時約80種類ものクラゲを見ることができ、生態を学べたり、ライトアップして眺めることができたりします。クラゲを愛でる文化は、近年日本が積極的に打ち出し、世界の水族館にも影響を与えていることをご存じでしたか。幻想的で美しいクラゲの姿は、日本人の琴線に触れるものといえそうです。

鶴岡市立加茂水族館

住所山形県鶴岡市今泉字大久保657-1
電話0235-33-3036
営業時間9:00~17:00(最終入館16:00)
休館日無休
入館料高校生以上1,500円 、小中学生500円
web鶴岡市立加茂水族館 公式サイト

「味覚」で涼をとる

①涼しげな京都の川床で、旬のハモを味わう贅沢を「旅館ひろ文」で

画像: ①涼しげな京都の川床で、旬のハモを味わう贅沢を「旅館ひろ文」で

季節に合わせて食べるべき料理や旬の食材が、日本にはあります。そんな食文化を大切にする場所のひとつが、古都京都。貴船にある「旅館ひろ文」は、夏らしい風情を楽しむことができます。貴船といえば清流の上に床を敷いた川床。暑さ厳しい京都における夏の風物詩です。丁寧に骨切りしたハモを主役にした懐石料理に舌鼓を打ってはいかがでしょうか。しゃぶしゃぶから落とし、あぶりと鱧三昧。川のせせらぎが響くなか、夏の暑さから少しばかり逃れることができそうです。

旅館ひろ文

住所京都府京都市左京区鞍馬貴船町87
電話075-741-2147
川床営業期間例年5月1日~9月末(増水時、気象警報発令時は屋内にご案内)
営業時間11:00〜15:00(最終入店13:30)、16:30〜21:00(最終入店18:00)
定休日無休
料金鱧しゃぶコース 15,370円(要予約)
web旅館ひろ文 公式サイト

②ひんやり素朴でおいしい、「千日」の沖縄ぜんざい

画像: ②ひんやり素朴でおいしい、「千日」の沖縄ぜんざい

沖縄の夏の甘味として知られる「沖縄ぜんざい」をご存じでしょうか。そもそも沖縄でのぜんざいはかき氷を指し、黒糖や砂糖で甘く煮た金時豆にたっぷりかき氷をのせていただく素朴な味。那覇の下町にある老舗「千日」では、懐かしい雰囲気の店内で、きれいな円錐型の美しい沖縄ぜんざいを楽しめます。また、さらさらのかき氷にコンデンスミルクをかけることもでき、 たっぷりの金時豆が渾然一体となり、口の中に涼をもたらしてくれます。

千日

住所沖縄県那覇市久米1-7-14
電話098-868-5387
営業時間11:30~19:00
定休日月曜

「聴覚」で涼をとる

①京都「鈴虫寺」。禅寺らしい凜とした佇まいの境内に、鈴虫の音色が響く

画像: ①京都「鈴虫寺」。禅寺らしい凜とした佇まいの境内に、鈴虫の音色が響く

鈴虫の声を耳にすれば、涼しげな秋の訪れを感じることでしょう。四季を通じて鈴虫の音色が響く不思議なお寺が、京都にあります。「鈴虫寺」と呼ばれる華厳寺(けごんじ)です。現在は臨済宗の寺院ですが、約300年前、華厳宗の再興のために開かれた経緯があり、開山の鳳潭(ほうたん)上人は、丁寧な布教で華厳宗の教えを広めたとされています。境内では上人の姿を偲ぶことができるほか、四季折々の自然と苔むした風情が調和し、鈴虫のすがすがしい音色が今日も響いています。

妙徳山 華厳寺 鈴虫寺

住所京都府京都市西京区松室地家町31
電話075-381-3830
拝観時間9:00~17:00(最終受付16:30)
拝観料大人 500円、子ども 300円(4歳~中学生)
web妙徳山 華厳寺 鈴虫寺 公式サイト

②遠州静岡の名刹に響く、「遠州三山 風鈴まつり」の味わい深い風情

提供:袋井市観光協会

「夏の音」のひとつといえば風鈴が挙げられます。古く、寺院の四方に吊した魔除けのための風鐸(ふうたく)がその発祥とされます。静岡県袋井市にある法多山・油山寺・可睡齋(はったさん・ゆさんじ・かすいさい)の「遠州三山」と呼ばれる名刹では、古い文化と夏の風物詩を結び、毎年5月下旬から9月初旬まで「遠州三山 風鈴まつり」を開催しています。期間中は各お寺で夏のスイーツが振る舞われることも、風鈴巡りの楽しみのひとつ。美しく静寂をたたえる景色の中、たくさんの風鈴の音色とセミの声が響きます。

遠州三山 風鈴まつり

住所〈法多山 尊永寺〉 静岡県袋井市豊沢2777
〈油山寺〉 静岡県袋井市村松1
〈秋葉総本殿 可睡齋〉 静岡県袋井市久能2915-1
電話〈法多山 尊永寺〉 0538-43-3601
〈油山寺〉 0538-42-3633
〈秋葉総本殿 可睡齋〉 0538-42-2121
web遠州三山 風鈴まつり 公式サイト

「嗅覚」で涼をとる

①京都の香の老舗・松栄堂が運営する、香りを学び楽しめる「薫習館」

画像: ①京都の香の老舗・松栄堂が運営する、香りを学び楽しめる「薫習館」

松栄堂の創業は今から300年ほど前。以来12代目に至る今日まで、香づくり一筋に歩んできました。その松栄堂が、2018年に京都で開いた「薫習館(くんじゅうかん)」へ。施設内ではお線香の製造工程などが映像で見られるほか、いろいろな香りとの出会いを楽しめる「Koh-labo 香りのさんぽ」をはじめ、様々な企画展が開催されるギャラリー「松吟ロビー」など、日本の香り文化を学んで楽しむことができます。隣接する松栄堂の京都本店では、香りを楽しめるさまざまなギフトやお土産をお求めいただけます。感性は人それぞれ。自分だけの涼しげな香りを探してみてはいかがでしょうか。

松栄堂 薫習館

住所京都府京都市中京区烏丸通二条上ル東側
電話075-212-5590
開館時間10:00~17:00
休館日不定休
入館料無料
web松栄堂 薫習館 公式サイト

②標高1,300mに広がる、すがすがしい景色と香り。関東最大級の群馬「たんばらラベンダーパーク」

画像: ②標高1,300mに広がる、すがすがしい景色と香り。関東最大級の群馬「たんばらラベンダーパーク」

ラベンダーの香りは、甘く華やかというより、爽やかですがすがしいものです。日本に本格的にもたらされたのは昭和に入ってからで、当初は北海道を中心に栽培されていましたが、近年では日本各地で楽しめるようになりました。夏にちょうどいいフレグランスは、一面のラベンダー畑で浴びるように楽しんではいかがでしょうか。関東最大級として知られる群馬県の「たんばらラベンダーパーク」は、標高1,300mの高原に約5万株が咲き乱れ、訪れる人を目と鼻で楽しませています。

たんばらラベンダーパーク

住所群馬県沼田市玉原高原
電話0278-23-9311
開園期間2024年7月6日~8月25日
開園時間8:30~17:00(最終入園15:45まで)
入園料小学生500円、中学生以上1,200円
webたんばらラベンダーパーク 公式サイト

「触覚」で涼をとる

①大自然の中、水しぶきに触れる夏のアクティビティ、埼玉「長瀞のライン下り」

画像: ①大自然の中、水しぶきに触れる夏のアクティビティ、埼玉「長瀞のライン下り」

林業が盛んだったかつての日本では、川下りは交通手段のひとつでした。近年では水のきれいな景勝地で、涼をとるアクティビティとして親しまれています。長瀞のライン下りは、100年以上の歴史を持つとされています。国の特別天然記念物に指定された、秩父長瀞の岩畳を横目に、ときに穏やかに水面を眺め、ときに荒々しく水しぶきを浴びる体験は、文字通り自然に“触れる”感覚を得られることでしょう。

荒川ライン下り

住所埼玉県秩父郡長瀞町長瀞531-1
電話0494-66-0890
営業時間9:00~16:00
料金子ども1,000~1,100円、大人2,000~2,200円
web荒川ライン下り 公式サイト

②岡山の「日名倉養魚場」の渓流で、童心に返る“魚のつかみ取り”

画像: ②岡山の「日名倉養魚場」の渓流で、童心に返る“魚のつかみ取り”

もっとも原始的な漁法といえば、“つかみ取り”といえるでしょう。岡山県にある「日名倉(ひなくら)養魚場」では、山々に囲まれた渓流で大胆な体験が楽しめます。獲れる魚はイワナやアマゴといった渓流に棲む淡水魚。大人も子どもも無心で楽しめ、暑さを忘れるひとときを過ごせることでしょう。バーベキューコーナーも併設しており、獲った魚は串に刺して塩焼きに。お腹もしっかり満たせます。

日名倉養魚場

住所岡山県美作市後山248
電話090-3723-5222
開催時期4月中旬~10月中旬
料金1kg(約15匹)4,500円
web日名倉養魚場 公式サイト

五感に語りかける夏の文化が、日本全国で待っています

そもそも五感の分類とは、生き物が環境を認識するための感覚で、古代ギリシャでアリストテレスが体系化したものといわれています。いずれかひとつの感覚に際立った刺激があると、人は周囲の状況をしばし忘れてその感覚に身を委ねてしまうものです。

年を追うごとに厳しさを増す夏の暑さですが、熱中症の対策をしながら、風情に興じるのも夏の旅における醍醐味といえます。旬のおいしさ、爽やかな香り、すがすがしい景色、趣のある音色、清涼な手触り。五感に語りかける夏の文化が、全国各地に待っています。

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