岡山県の東南端に位置する牛窓は、「日本のエーゲ海」と呼ばれる美しい町。青い海と島々を望む景色はもちろん、昔ながらの路地や家並みも残り、歩いていると、まだ日本にもこんな風景があったのだと思わされます。海とともにある町の時間をゆっくり味わう、牛窓1泊2日の旅へ。

西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎(実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典(PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
「日本のエーゲ海」を実感 牛窓オリーブ園へ

牛窓を訪れたら、まず足を運びたいのが「牛窓オリーブ園」です。1942年に開園した、牛窓を代表する観光スポット。海辺の町から坂道を上っていくと、オリーブの木々の向こうに青い海と点在する島々が見渡せます。これはまさに、牛窓を代表する眺めです。

園内の展望台は無料で登ることができ、さらに高い場所から牛窓の町と海を一望できます。実際にこの景色を眺めていると、「日本のエーゲ海」と呼ばれる理由も納得。まずはここで、牛窓らしい風景をしっかり目に焼き付けておきたいところ。

園内で育てられたオリーブは実際に収穫・搾油され、オリーブオイルをはじめ、食品や化粧品などにも加工されています。
展望台の1階では、オリーブを使った商品を手に取ることができます。ここで、ぜひ体験してほしいのがオリーブオイルの試飲。
香りや味わいの違いを比べながら試すことができ、普段何気なく使っているオリーブオイルも、こうして飲み比べてみると、それぞれに個性があることに気づきます。
なかには「オリーブオイルってこんなにおいしいの?」と思うような一本に出会えることも。
気に入ったものは購入できるので、旅の記憶として持ち帰るのもおすすめです。


オリーブ園内は広い植物園になっていて、約10万平方メートルに約2,000本のオリーブが植えられています。さまざまな種類もあり、開園時に植えられた樹齢80年の立派な木も見ることができます。


オリーブ園を楽しんだら、もうひとつのお楽しみがジェラート。
オリーブ園から坂を少し下ったところにあるのが、大人気のお店「牛窓ジェラート工房 COPIO(コピオ)」です。

牛窓の山本牧場が営むジェラート店。自家牧場で搾った新鮮な牛乳を使い、「しぼりたてミルク」をはじめ、季節のフルーツや地元の素材を使った味が並びます。
ひと口食べると、ミルクのコクがありながら口当たりはさっぱり。オリーブ園を歩いたあとにもぴったりの味です。

さらに、夏には瀬戸内のレモンを使った、シャーベット状のシャリシャリ冷たいレモネード、冬にはホットレモネードも。季節に合わせて楽しめるのもうれしいところです。

牛窓オリーブ園
| 住所 | : | 岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓412-1 |
|---|---|---|
| 営業時間 | : | 展望台およびショップ 9:00~17:00 |
| 定休日 | : | なし |
| WEB | : | https://nippon-olive.info/ |
牛窓ジェラート工房
| 住所 | : | 岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓479-4 |
|---|---|---|
| 営業時間 | : | 12:00~17:00 |
| 定休日 | : | 月曜休み |
| WEB | : | https://www.instagram.com/copio__official/ |
海辺の路地を歩いて、牛窓の日常に出会う

牛窓オリーブ園で高台から町を眺めたあとは、今度はまち散策。
向かったのは「しおまち唐琴通り」です。
海辺に沿って伸びる道と、海へ向かって入り組む細い路地。その先々に昔ながらの家々が残る通り。観光のためにつくられたものではなく、今も人々の暮らしが息づく港の生活道路です。
光を受けてきらめく水面を眺めながら、この通りを歩きます。


牛窓は、前島や黒島など沖合に浮かぶ島々によって大きな湾が形づくられています。波が穏やかなこの地形は、古くから船が行き交う港として利用されてきた理由のひとつ。
海に向かって路地が延びる町のつくりからも、牛窓が長い間、海とともに暮らしてきた港町であることが感じられます。


かつては造船でも栄え、さらに時代をさかのぼれば朝鮮通信使との交流もあった牛窓。穏やかな海を眺めながら歩いていると、この小さな町が海上交通の要衝として大きな役割を担ってきたことが少しずつ見えてきます。

歴史をもっと知りたくなったら、「海遊文化館」へ。
元警察署だった建物は、どこか優雅な雰囲気をたたえ、館内にはステンドグラスも。牛窓の歴史や文化を知る入口として立ち寄りたい場所です。

そして、通りを歩いていて目に留まるのが、黒い板張りの外壁を持つ家々。
海辺の町ならではの塩害から建物を守るための工夫が、今も町の景観として残されています。

「瀬戸内きらり館」では、牛窓のお土産を探したり、観光情報を聞いたりすることもできます。レンタサイクルの申し込みもこちらで。
敷地内にある青いポストも、牛窓の町歩きで目に留まる存在です。


歩き疲れたら立ち寄りたい、小さなロースタリーカフェ「CHONTO」。
関西から移住したご夫婦が営むコーヒーと焼き菓子、絵本のお店で、旧歯科医院を改装して複合施設として活用される「牛窓クラフトコンプレックス」の1階にあります。


自家焙煎のコーヒーが味わえ、なかでもすっきりとした味わいのアイスコーヒーは、水出しをベースにドリップを加えた独自のスタイル。港町を歩いたあとに、ゆっくり味わいたい一杯です。


「牛窓ブレンド」と名付けられたコーヒー豆は、おみやげにも。あっさりとして飲みやすく、牛窓の海を思わせるような爽やかな飲み口です。
パッケージの挿絵は奥様が手がけたもの。旅の記念に、牛窓の海を持ち帰るような気分で選んでみました。

牛窓を歩いていて印象的なのは、あちこちから海が見えること。
前島、三つの島からなる黒島、そしてその向こうには小豆島。
場所によって少しずつ表情を変えながら、島々が瀬戸内海に浮かんでいます。
港町の路地を歩きながらふと視界が開け、その先にはいつも青い海と緑の島。
そんな何気ない瞬間こそ、牛窓を歩く楽しさなのかもしれません。

しおまち唐琴通り
CHONTO
| 住所 | : | 岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓3069-1牛窓クラフトコンプレックス1階 |
|---|---|---|
| 営業時間 | : | 10:00~17:00 |
| 定休日 | : | 火曜日、水曜日、木曜日 |
| WEB | : | https://www.instagram.com/chonto_ushimado/ |
牛窓に残るちょっと懐かしい洋食屋「キッチンかいぞく」

しおまち唐琴通りを歩いているうちに、すっかりランチタイムに。
そこで目に留まったのが、どこか気になる外観の洋食屋さん「キッチンかいぞく」です。
1978年創業。初代・徹さんは高校卒業後、岡山市や倉敷市の有名店で修業を重ね、ふるさと牛窓に店を開きました。現在は2代目が店を受け継ぎ、家族で店を営んでいます。
皆さんにも、地元に帰ると必ず立ち寄りたくなるお店があるのではないでしょうか。
「キッチンかいぞく」は、まさにそんな、地域で長く愛されてきたお店です。

メニューを眺めていると、これがなかなか悩ましい。
どれもおいしそうで、「これが名物」とひとつに決められないのです。常連さんにも、それぞれお気に入りの一品があるのだとか。
せっかく訪れたのだから、ここは店名が付いた「海賊ランチ」をチョイス。岡山名物の「えびめし」に洋食のおかずがセットになった、食いしんぼうにはうれしいひと皿です。

「えびめし」はその真っ黒な見た目から、つい濃い味を想像してしまうのですが、ひと口食べてみると思いのほか軽やか。カレーピラフとケチャップライスの中間のような味わいで、どこか懐かしさもあります。
料理のおいしさはもちろん、アットホームな雰囲気に包まれる「キッチンかいぞく」。
旅先にありながら、まるで昔から知っていたような、ほっとする時間を過ごせるお店でした。
キッチンかいぞく
| 住所 | : | 岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓4173 |
|---|---|---|
| 営業時間 | : | 11:00~20:00 |
| 定休日 | : | 水曜日 |
| WEB | : | https://kitchen-kaizoku.studio.site/ |
牛窓では、海を眺める時間も旅になる
岡山県は「晴れの国」と呼ばれるほど、雨が少なく晴れの日が多いことで知られています。「降水量1mm未満の年間日数」は全国1位。なかでも牛窓のある瀬戸内市は、岡山県内でも日照時間が長い地域です。
だからこそ、空がすっきりと晴れた日に出会えると、海の青さも島の輪郭も、夕暮れの色もよく映えます。
牛窓オリーブ園から見下ろしたり、海沿いを自転車で走ったり、船の上から眺めたり。瀬戸内海のおだやかな海は、波が大きく立つこともなく、島々の姿をゆっくり眺めていられる。場所を変えるたびに、また違う景色に出会えるのも面白いところです。

いろいろな場所を旅していると、何もしない時間や、ただ穏やかに過ごす時間がほしくなることがあります。
その一方で、旅先でも急に仕事をしなければならなくなったり、思いついたことをその場で形にしたくなったりすることも。
そんなときに海辺で自由な時間を過ごせる、とても贅沢な場所があります。
それが2021年にオープンした「牛窓テレモーク」です。


カフェやおみやげ店、自由に使えるフリースペースのほか、音楽スタジオなども備えています。
窓の向こうに広がる瀬戸内海を眺め、心地よい風を感じながら過ごしていると、自然と新しいアイデアが浮かんできそう。旅の途中に立ち寄るのはもちろん、創作や仕事に集中したいときにもぴったりの場所です。


牛窓は「日本の夕日百選」にも選ばれたサンセットも楽しめる場所。きれいに晴れた青空を赤く染める夕日を眺めるなら、前島の夕日公園や、海の上から夕暮れを楽しめるクルージングもおすすめです。



海を身近に感じながら過ごした一日も終わり。牛窓らしい時間の過ごし方ができました。
牛窓テレモーク
| 住所 | : | 岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓4448-1 |
|---|---|---|
| 営業時間 | : | (施設)10:00~18:00、店舗の営業日時はそれぞれ異なる。各店舗SNSなどで要確認。 |
| WEB | : | https://ushimadotepemok.com/ |
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。


