瀬戸内海の穏やかな海と、ぽこぽこと浮かぶ小さな島々。潮の香りを感じながら路地を歩けば、昔から続く港町の暮らしが、今もそこかしこに息づいています。
岡山県の東南端に位置する牛窓は、「日本のエーゲ海」と呼ばれる美しい町。青い海と島々を望む景色はもちろん、昔ながらの路地や家並みも残り、歩いていると、まだ日本にもこんな風景があったのだと思わされます。海とともにある町の時間をゆっくり味わう、牛窓1泊2日の旅へ。

干潮のときだけ現れる奇跡!「黒島ヴィーナスロード」へ

画像1: 干潮のときだけ現れる奇跡!「黒島ヴィーナスロード」へ

2日目は、少し早起きして海へ。
朝9時30分、あらかじめ予約しておいたモーターボートに乗り込み、黒島を目指します。
お目当ては、干潮のときだけ姿を現す「黒島ヴィーナスロード」。
瀬戸内海は、約6時間ごとに潮が満ち引きします。そんなことで、干潮のタイミングに合わせて出発です。
黒島までは数分で到着。
海側から見る牛窓のまちもいいものです。

画像2: 干潮のときだけ現れる奇跡!「黒島ヴィーナスロード」へ

黒島、中ノ小島、端ノ小島。普段は海に隔てられている3つの島が、潮が引くと砂州でつながり、島と島の間に道が現れます。桟橋や黒島のビーチからも、青い海の中に砂の道がゆるやかなカーブを描いているのが確認できました。これが、黒島から中ノ小島へと続くヴィーナスロードです。

画像3: 干潮のときだけ現れる奇跡!「黒島ヴィーナスロード」へ

この日は完全に潮が引いていたわけではなく、渡ろうとするとひざあたりまで海に浸かります。
せっかくなので、ビーチサンダルで海の中へ。

画像4: 干潮のときだけ現れる奇跡!「黒島ヴィーナスロード」へ

水の中を覗くと、小さな海の生き物もちらほら。足元を確かめながら一歩ずつ進んでいくと、ただ海を眺めているのとは違う楽しさがあります。わたっている間にも潮が満ちてくるので、大人でもちょっとした冒険気分。海水浴ともひと味違う、瀬戸内海ならではの海遊びです。

画像5: 干潮のときだけ現れる奇跡!「黒島ヴィーナスロード」へ

今回は前島フェリーのモーターボートを予約。周辺のクルージングなども希望に合わせてアレンジできるので、ヴィーナスロードと一緒に、海から牛窓の町並みを楽しむのもおすすめです。予約時に、出発時間やヴィーナスロードが現れるタイミングについて相談しておくと安心です。

そして黒島には、もうひとつ気になるものが。
モーターボートの中で聞いたのが、「牛窓」という地名にまつわる伝説でした。
陸に戻り、この牛窓地名の歴史をたどりに、神社へ向かいます。

前島フェリー

牛窓の地名に隠された「牛鬼」伝説

画像1: 牛窓の地名に隠された「牛鬼」伝説

モーターボートを降り、今度は「瀬戸内きらり館」でレンタサイクル。海沿いを自転車で走りながら、牛窓のまちを見下ろす高台にある「牛窓神社」へ向かいます。
神社へ向かう道は2通りありますが、今回はきらり館・観光センターおすすめの、海側から参道を上るルートへ。牛窓海水浴場を横目にペダルを漕いでいると、やがて大きな一の鳥居が現れます。

画像2: 牛窓の地名に隠された「牛鬼」伝説

ここから先は、空気が少し変わります。
鳥居をくぐると、神社へと続く参道へ。鬱蒼とした木々に囲まれた、長い長い樹木のトンネルです。頭上を覆うように枝葉が重なり、足元には木漏れ日が落ちています。
瀬戸内海のクルージングを“動”とするなら、こちらは“静”。さっきまで海の上にいたのが嘘のような、緑に包まれる参道です。

画像3: 牛窓の地名に隠された「牛鬼」伝説
画像4: 牛窓の地名に隠された「牛鬼」伝説

この地には、その昔、牛窓の沖に現れた牛鬼を神功皇后が退治したという伝説が残されています。
舟でやってきた神功皇后が備前の海上で出会ったのは、大きな牛。そこで住吉大明神が老人の姿となって現れ、牛の角をつかんで投げ飛ばしたと伝えられています。このとき牛鬼が投げ転がされたことを「牛転(うしまろび)」といい、頭や角が黒島に、胴体が前島になったとされています。さらに、牛窓沖に浮かぶ島々にも、牛鬼の体の一部だという言い伝えが残っています。

画像5: 牛窓の地名に隠された「牛鬼」伝説

この「牛転(うしまろび)」がなまって「牛窓」という地名となり、この地で語られ続けています。

画像6: 牛窓の地名に隠された「牛鬼」伝説

そう思って前日から見てきた牛窓の風景を振り返ると、海も島もまちも、ひとつの物語の中にあるように思えてきます。クルージングで眺めた島々を、今度は伝説を頭に入れ、牛さながらに反すうしてみます。
旅の最後に、牛窓の景色が少し違って見えました。
写真は黒島。左が頭、右の2つが牛鬼のツノ。
牛鬼、だいぶ大きい。

画像7: 牛窓の地名に隠された「牛鬼」伝説

牛窓神社には、その牛鬼を退治したとされる神功皇后が祀られています。そして近くの「五香宮」には、神功皇后を助けた住吉大神が祀られています。

画像8: 牛窓の地名に隠された「牛鬼」伝説

海を見て、島へ渡り、まちを歩いた1泊2日の旅。
最後に神社を訪れたことで、これまで見てきた牛窓の景色が、土地に残る物語と重なりました。
瀬戸内海からしか得られない栄養がある。
今回の旅で感じたのは、そんな牛窓の時間でした。海を眺めるだけではなく、海で遊び、まちを歩き、土地に残る物語に触れる。その一つ一つが重なって、帰るころには、牛窓を少し深く知ったような気がします。

牛窓神社

住所:岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓2147
WEB:https://www.instagram.com/ushimadojinjya/

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