
西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
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八幡浜駅からすぐ近く、鳥津蒲鉾店で愛媛名物「じゃこ天」を。
松山市駅から八幡浜へは電車かバス、どちらでも行くことができます。今回はバスに乗りのんびり旅。到着したバス停前にちょうどレンタサイクルの「メセナドライブ(谷本蒲鉾店内)」がありました。八幡浜のレンタサイクルはネット予約できる上、日をまたぐことも可能です。さすがサイクリングが盛んな地、愛媛県。
まず向かうのは「くずし鳥津(鳥津蒲鉾店)」。店舗の横ではじゃこ天製造の真っ最中。見学をさせてもらいました。
八幡浜は西日本で有数の漁獲高を誇る港。ここで揚がる小さな魚を骨ごとすり身にして揚げたのがじゃこ天です。お店によって原材料として使う魚も製法も違い、それぞれのお店にファンがつくということです。鳥津蒲鉾店では1日に2,000枚ほどのじゃこ天を作り、各地の飲食店やインターネットからの注文などを受け付けています。
愛媛県は代表格であるじゃこ天以外にも蒲鉾、ちくわなどバラエティに富んだ商品があり、お話を伺いながらこの地域の練り物文化の奥深さを知ることになりました。

松山市駅から八幡浜へ。バスはリムジンバスで座席も広くて快適でした。バス停目の前でレンタサイクルを借ります。

レンタサイクル「メセナドライブ」の受付は谷本蒲鉾店の店内で。予めネット予約も可能、電動アシスト付きもあります。

最初にお邪魔したのは駅から数分のところにある「くずし鳥津(鳥津蒲鉾店)」。

愛媛名物「じゃこ天」の製造工程を見せていただきました。

じゃこ天の特徴のひとつが色。骨ごとすり身にするので黒っぽい色をしています。じゃりじゃりと骨を感じる素朴なものもあれば、しっかりと挽いて滑らかな口当たりのものもあります。お店ごとに製法が異なります。

揚げたものを冷まして商品化していきます。八幡浜では新鮮な魚がたくさん獲れます。海の状態などを見ながら仕入れを行い、新鮮なうちにすり身にしてじゃこ天を作ります。

現代のニーズに合わせて保存料を使わない商品を開発するなど、日々研究を重ねているということ。

揚げたてアツアツのじゃこ天をいただきました。ぷりっとした食感でコクがあり、魚のおいしさがあふれ出てきました。ごちそうさまでした!
八幡浜「保内地区」までサイクリング。途中念願のみかんとパンメゾン「塩パン」を購入。
商店街を抜ける際、ふと目に留まったのはみかんの山。街の八百屋さんで柑橘を買い込みます。“みかんの大トロ”ともいわれる「せとか」、そして「清見タンゴール」。どちらも1個40円~50円と激安!さすが愛媛、出荷量ナンバーワンのポテンシャル。
愛媛県のパン屋さん「パンメゾン」は、今やパン屋さんの定番となった“塩パン”を最初に考案したお店。八幡浜にもお店があり、立ち寄って人気の塩パンを購入です。次々と入店するお客さん、その買い方は、20個、30個と豪快。噛んだとたんじゅわっとバターが染み出す塩パン。一度に複数個食べてしまうなんてことはざらで、確かに次々と手が出てしまいます。
ここからは海沿いをひた走り、保内の街へ。新しい街との出会いが楽しみです。

鳥津さんからも近い八百屋さんで柑橘を選んでもらいます。愛媛に来たら本場のものを旬のうちに購入したいと思っていたのです。

たくさんの種類の中から「せとか」と「清見」をチョイス。

自宅で食べてみました!“みかんの大トロ”とも呼ばれる「せとか」。白い筋や袋が柔らかく、ジューシーで甘くてものすごくおいしい!季節が少し過ぎていたこともあってなんとひとつが50円でした。

八幡浜には長くて大きな商店街がありました。この日はちょうど定休日…。商店街の中には「八幡浜ちゃんぽん」の名店が数多くあるそうです。愛媛の人は八幡浜と言えばちゃんぽん、と考える人も多いようですよ!

商店街をレンタサイクルで抜けて海のほうへ。港に向かったつもりが山へと出ました。八幡浜では緑の山と青い海とが接していて良い景観です。山は見渡す限り全部みかん畑!?

遠目に見るとこんな感じです。海はきれいだし緑は濃くて癒される景色でした。

ここでお目当てのパン屋さん「パンメゾン八幡浜店」へ立ち寄り。「塩パン」のブーム火付け役になったお店です。中にはイートインスペースもありますが、みんなトレイいっぱいに塩パンを乗っけて購入していきます。すごい!

今やスーパーにも並ぶ「塩パン」。いわゆるバターロールで、中にはたっぷりバターを入れて包み込み焼くことで、焼きあがってからもじゅわじゅわとバター染み出るパン。表面には軽く塩が振られた極限までシンプルな美味しさです。

普通のパン屋さんなのでもちろん他にも色んなパンがあります。この日はこのスライムを連れて帰りました。手のひらに乗るくらいの小さなたまごパン。

八幡浜港からまわり込みながら保内の街へと向かいます。途中長いトンネルと坂がありましたが、それ以外は平らな道が多く、海風が気持ち良いサイクリングでした。

保内町の看板も見えてきました。ここからも海沿いの道でとても気持ちがいいです。保内町内も自転車で周ります~。
もっきんろーどを自転車で走る爽快感!八幡浜保内の街歩き。
保内町は鉱山や紡績、また養蚕業、金融など、明治期に大きく発展した港町です。その当時に建てられた洋館や工場跡地などが今では名所旧跡として風情を残しています。
町を流れる宮内川沿いには“もっきんろーど”があり、自転車で通るとカタカタと良い音を鳴らします。ここを通っていて目に飛び込んでくるのは旧東洋紡績の赤レンガ倉庫。広大な敷地を誇った東洋紡も現在残るのはこの倉庫だけで、歴史を語る上で大切な建物となっています。
鉱山業や紡績で繁栄を築いた白石和太郎の洋館、そしてその隣に建つ宇都宮壮十郎邸などのお屋敷も見学することができます。海運業が盛んであった街の廻船問屋や、青石を「矢羽積み」という独特の組み方で積んだ石垣や銅鉱石を取り除いた不要物から作られた「佐島レンガ」なども見ることができ、街そのものが歴史と暮らしが凝縮された博物館のようです。
八幡浜駅から保内は1か所を除きほぼ平らな道で、サイクリストにとってものんびりとポタリングできるいいコースでした。

保内の街へ到着しました。

街の中を流れる宮内川とそれにかかる美名瀬橋。その向こうには旧東洋紡の赤レンガ倉庫。

川岸に使われているのは伊予青石。矢羽根積みにした護岸ももっきんろーどから眺められます。まるで毛糸を編んだような美しさです。

風情を感じる街並みがあちこちに残っています。

平成11年の台風で倒壊した和田橋の部材をモニュメントに。戦中の鉄材不足から鉄筋ではなく竹筋で作られた珍しいコンクリート柱でした。
歴史ある風情漂う街並みをのんびりお散歩できます。

旧白石和太郎邸。紡績工場や大峰銅山の鉱山経営で財を成した白石和太郎の洋館です。

玄関天井には天使と地球儀が描かれています。これは左官が鏝で描く「鏝絵」。よく見ると小さな漢字で「日本」と書かれているので、見つけるのも面白いですよ!
旧白石和太郎邸すぐ隣にあるのが旧宇都宮壮十郎邸。膨らんだむくり屋根が特徴です。

禅寺である龍潭寺は外側から拝観。

さらに進んで内之浦公会堂。内部には入れませんでしたが、こちらは国登録の有形文化財です。細かいところに細工が施されていて通好みな雰囲気です。

「西のおやけ」と呼ばれる菊池邸。こちらも入館不可でしたがレンガ積みの壁を持つ豪邸でした。

愛媛蚕種。木造三階建ての会社です。なんと現役!

声をかけて中へと入らせてもらいました。生き物を扱っている会社なので、内部には許可をもらってから入りました。風通しを良くするための窓枠が並びます。ここでお蚕さんを育てているのですね。

ふと見ると中庭の階段も青石でした。愛媛県内では、町中の石塀や玉砂利などにも青石をたくさん見かけました。

建物の間にレンガを挟み、耐火を行っているということです。発展した歴史をきちんと残そうと考えられた街づくりの様子が見られました。静かで穏やかな時間を過ごせる場所です。朝から夕方まで八幡浜をしっかり楽しみ、松山に戻ります。
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