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西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
山口県のお茶の9割を生産!どこまでも広がる茶畑「藤河内茶園」。
宇部市北部、小野エリアに広がる茶畑「藤河内茶園」。この茶園は山間部を開いて作られた小高いところにある畑です。一か所の面積としては『西日本最大』で、実際に目の前にするとその広大さに圧倒されます。太陽の光を浴びてキラキラと輝く緑の畝がまるで日本古来の文様「青海波」のように映り、感動的な光景。山から下ったところに製茶場もあり、摘み取った茶葉を新鮮なうちに、それも一度に大量に加工できるという大きなメリットも持つ農園です。
この日はこの壮大な景色の中での試飲会。お茶独特の苦みと青々しい香り。最近流行りの甘みを感じさせるお茶ではなく、昔から親しみながら飲んでいた渋い日本茶。ザ・クラシックな味わいは、むしろ一周まわって新しい感覚をもたらすという発見がありました。

宇部はお茶。そんな話を耳にして、この旅の中でお茶の街=宇部を実際に体験しに出かけます。朝から快晴で嬉しい~。

宇部市小野地区にある「藤河内茶園」は西日本最大の面積を持つ茶畑。5月の一番茶が刈り取られた畑では、2番茶の生育・刈り取りが始まっています。

茶畑の脇で即席のカフェ試飲スペースを作っていただきました。

この地域のお茶は「浅蒸し」で作られ、苦みと甘みがある昔ながらのお茶の味わいが楽しめます。緑も濃くてきれいな色が出ます。

5月に刈り取った新茶は、既に商品としてパッケージされています。藤河内茶園はすぐ隣に製茶工場を併設しているので、新鮮なうちに摘み取ったお茶を加工することが出来ます。

藤河内の共同工場。大量に処理ができるため効率的です。畑と工場の距離が近いので、酸化する前に加工できるというメリットがあります。

今の時代は手軽であることも大切です。プレゼントなどには少量パックなども好まれますね。嗜好品であるため、多様性の時代に順応すべく色んな商品が生まれています。

そのひとつが「ゆめ花茶」。山口県産緑茶にハーブや花の香りづけをしたフレーバーティー。レモンやベリーの香りが口に広がり、飲みやすく爽やか。ここまで来たかー、と日本茶の概念が変わります。

広大な茶園に圧倒されました…。山口にこんなところがあったなんて。360度の絶景でした。
販売個数1億個!「月でひろった卵」の小野茶味は、クリーミーで老若男女に愛される味。
藤河内茶園から戻ったその足で向かったのは、あさひ製菓が運営する「果子乃季
宇部ファーム店」。大正時代創業のこの会社が作るお菓子は和菓子から洋菓子まで様々。山口県内に44店舗も展開している、山口県を代表するお菓子メーカーです。
果子乃季 宇部ファーム店は売り場とカフェが併設され、売り場で購入したお菓子をカフェのお茶と共に楽しむこともできます。
あさひ製菓で最も人気の「月でひろった卵(つきたま)」は、ふんわりドーム型のカステラ菓子です。なんとコレ、2010年までにその販売個数が1億個を突破した大ベストセラー。こだわりのおいしい水「柳井の琴名水」を使って蒸し上げているので口当たりが良く、食べ応えもあります。
その人気商品にお茶を練り込んだのが「月でひろった卵 小野茶味」。生地やクリームに使われたお茶がちゃんと生きてる!そこに小豆が加わって、和洋コラボレーションの絶妙バランスです。
宇部産のお茶が使われた“つきたま”は、宇部のお土産にもぴったりですね。
宇部のお茶の魅力をもっと知るには…。宇部市中心部へ戻ってきてから向かったのはお茶を使った山口銘菓を作っているというお店「果子乃季宇部ファーム店」。入り口から菜園やハーブガーデンが広がります。

老若男女が大好きな味の「月でひろった卵」のメーカー、あさひ製菓のカフェです。

カフェ店内ではランチメニューやスイーツが提供される他、売り場で購入した商品を食べることもできます。人気商品「月でひろった卵」小野茶味を購入しました!

窓際の席で、摘みたてのハーブを使ったハーブティーと共に。

季節により変わるハーブティーは7種類の新鮮なハーブを使ったすっきり味。レモングラスやミント、ゼラニウムなど爽やかな風味が調和していて心身ともにとても落ち着けます。

ぽわんと丸みを帯びた形で可愛い。しっとりとしたカステラ生地にクリームが包まれています。

「月でひろった卵・プレーン」はカスタードクリームと和栗入り。そして小野茶味は生地にもクリームにも小野茶が使われており、中心に小豆が入っています。和洋折衷の味わいと、お茶の香りを楽しめるお菓子でした。
お茶の持つあらゆる魅力を伝えたい。今年オープン日本茶庭園カフェ「茶宗天地」。
お茶にまつわるスポットを目指し、今度は宇部線での電車旅。海を目指して岐波駅へ。
私が訪問した時にはまだオープンから1か月という新しいお店「茶宗天地(ちゃそうあめつち)」へ伺いました。
キワ・ラ・ビーチのすぐそばの、自宅を改装したお茶カフェ。日本茶に限らずアジアのお茶などもラインナップされたお茶は、店主の平中健也さんが全て自分で選んだものだということです。またオリジナルのブレンドティーなども用意されており、幅広いバリエーションとこだわりで、お茶好きも満足できる内容です。
平中さんは自身がお茶に癒された経験を持ち、そしてお茶の持つ力や魅力を伝える伝道師のような方。実際にこちらで過ごす間は、お茶を通して感じる空間や会話がとても温かく、時間を忘れるような感覚に包まれます。
宇部産のお茶を楽しみ充足感を感じながら、海辺のカフェを後にしました。

夕方に近づく時間帯。お茶を訪ねてもう一軒。今度は宇部線に乗って海へ向かいます。

宇部新川駅から岐波駅へ。途中から車窓に瀬戸内海が見えてきました。

岐波駅からは徒歩で。目指すは「キワ・ラ・ビーチ」方面へ。

ビーチはすっかり潮が引いて、海ははるか遠く。瀬戸内海の中でも広島、山口の海岸線は特に潮の干満差が大きいと言われています。なるほど、まさにこれがそうなのですね。

キワ・ラ・ビーチは水質も良く穏やかな海と聞いていましたが、この日は干潮で浜は灼熱の砂漠と化していたので…。早速宇部の新しいお茶のスポット「茶宗天地」へ伺いました。

茶宗天地は今年オープンしたばかりの日本茶庭園カフェ。ビーチ沿いの高台にあり、お店からも海や庭園が一望できます。

この日は真夏の如く暑かったので、席についてすぐの冷たいほうじ茶がとっても美味しかった…。

汗が引いてきたところでお話を聞きながらお茶の世界を楽しみます。上品に炊かれた大納言。地元のお店お菓子司若狭屋の羽衣もなか。

学校の先生をしていたという平中さんが、奥様と一緒に営まれているお茶カフェ。取り扱うお茶は全て自分で買い付けるというこだわりようで、日本茶に限らず台湾烏龍茶や韓国のコーン茶などもメニューにあります。

体調を崩したのをきっかけにお茶に興味を持つようになった、という平中さん。熊本でお茶作りを手伝うなどしながら、お茶には自らの心身がほぐれるような癒しがあることに気づいたということです。

自宅の2階部分をリノベーションし、お茶のカフェを開業。オープン当初から人気のお店となりました。

次々とオーダーが入りますが、きちんと丁寧に一杯ずつ淹れられている印象です。海風が吹き抜ける店内は、待ち時間すらもゆっくりと楽しめる雰囲気です。

私のオーダーは小野茶。一煎目だけでなく、お湯を継ぎ足してもらい二煎目も楽しめるので、気の合う友人とゆっくり語らうこともできるいいカフェですねー。一人で来ちゃったけど。

せっかくだからとお抹茶も点ててくださいました。こちらは福岡八女星野村の抹茶。苦みの中にお茶の甘さや青々しさを感じます。

もっともっとゆっくりしたかったのですが、残念ながら電車の時間。宇部のお茶の聖地になりそうな予感がしました。
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