本記事では、そんなブルワリーの中から3軒を厳選してご紹介。銀色に輝くステンレスタンクに、鼻腔をくすぐるホップの香り。美しき港町の個性派ブルワリーを、大人の社会見学気分で訪ねてみませんか?
※2024年7月時点での価格・レートです。
※店舗の営業時間等は季節等により変更の可能性があります。公式Webサイトなどで最新情報をご確認ください。
クラフトビールの聖地、ビクトリア
ビクトリアは、カナダの西海岸沖に浮かぶ「バンクーバー島」の南端にある都市。日本から直行便で約9時間(往路)のバンクーバーから空路なら約30~40分、フェリーなら約1時間半で到着する、歴史的建造物と豊かな自然が特徴の港町です。
実はブリティッシュコロンビア州の州都は、バンクーバーではなくここビクトリア。ネオバロック様式の州議事堂や美しい庭園などの観光名所も見ごたえがありますが、ビクトリアの魅力はそれだけではありません。ここは小さな町に約20軒のマイクロブルワリーがひしめく「クラフトビールの聖地」でもあるのです。
カナダのクラフトビール文化は1980年代から発展してきました。大企業による「ゴクゴクと大量消費するビール」が北米で主流だった当時、この地の醸造家たちの熱意と地道な努力によって「じっくり味わうビール」を楽しむ文化が徐々に形成されていきます。
そんな歴史の中で生まれた、ビール醸造所(brewery)に飲食店(pub)を併設した新しい業態が「ブルーパブ(brew pub)」。香り高く新鮮なビールが楽しめる場所として、今日も多くの人々に親しまれています。
それでは、ビクトリアでぜひ訪れていただきたい、3軒の個性派ブルーパブへご案内します。
可愛いシャチがトレードマーク。「バンクーバーアイランド・ブルーイング」
ビクトリア・ダウンタウン(繁華街)の目抜き通り「ガバメントストリート」を北に進むと見えてくるのが、シャチが目印の「バンクーバーアイランド・ブルーイング」。1984年創業、ビクトリアのクラフトビールシーンを代表する老舗ブルワリーのひとつです。
一見すると工場か会社といった感じの無機質な外観。でもシャチの案内看板に従って進むと併設のパブ(飲食店)が見えてきます。
入り口は小さいものの、店内は吹き抜けで明るく開放的な空間。ひとりでも気兼ねなくビールを楽しめます。
メニューには個性あふれるビールがずらりと並びます。あれもこれもと目移りしてなかなか決められないときに最適なのが、少量ずついろいろなビールを味わえる「飲み比べセット」(4種類で8.5カナダドル=約970円。5種類で9.5カナダドル=約1,090円)。カウンターのメニューボードに書かれた約20種類のビールの中から好きなものを選択することができ、約120mlずつ入った小さめのグラスで提供されます。ビールの名前から味を想像して選んでもいいですし、店員さんに「あなたのおすすめを」とオーダーすればおいしい新発見があるかも。
港町のそよ風のように軽やかなラガービール「アイランダー」は、万人に愛される人気銘柄。製造過程でいちごや桃、グレープフルーツなどの果汁を加えたフルーツビールも種類豊富で、ビール党以外の人にも試してほしい爽やかな味わいです。
大きな仕込み釜が見学できる2階の特等席で、大人の好奇心を満たしながらのリラックスタイムを過ごしましょう。
バンクーバーアイランド・ブルーイング(Vancouver Island Brewing)
住所 | : | 2330 Government St, Victoria, BC |
---|---|---|
営業時間 | : | 13:00~19:00 |
定休日 | : | 月・火曜 |
web | : | Vancouver Island Brewing 公式サイト(外国語サイト) |
: | @vibrewing |
圧巻のビールタンクは必見。「ヘラルドストリート・ブルーワークス」
中華街が栄えている都市はたくさんありますが、ここビクトリアもそのひとつ。ビクトリア・チャイナタウンはカナダ初の中華街で、いつも観光客でにぎわっています。この近くにあるのが、店内に並ぶビールタンクが圧巻のブルーパブ「ヘラルドストリート・ブルーワークス」です。
前出の明るく開放的な「バンクーバーアイランド・ブルーイング」とは対照的なクールな佇まい。ドアの向こうは、大人の隠れ家といった趣です。このお店で陣取るべきは、タンクを目の前にビールを味わうカウンター席か、タンクの全景を見下ろす2階席。
このお店のメニューにも「飲み比べセット」があります。こちらは約10種類から好みの4種類を選択(1グラス約120ml)。クリアで軽やかなラガービールから心地よい苦みのペールエール、カラメル風味を感じる黒ビールやフルーツビールまで、個性強めのラインナップ。まさに「ビール愛好家のためのお店」といった趣です。
このお店の哲学は「定番レシピに固執するのではなく、レシピを探求し進化させ続ける」ことだそう。未知なる味わいとの遭遇を求めて訪れたい、そんな場所です。
ヘラルドストリート・ブルーワークス(Herald Street Brew Works)
住所 | : | 506 Herald St, Victoria, BC |
---|---|---|
営業時間 | : | 月~木・日曜 12:00~22:00 金・土曜 12:00~23:00 |
定休日 | : | なし |
web | : | Herald Street Brew Works 公式サイト(外国語サイト) |
: | @heraldstbw |
醸造家の情熱が生み出した伝説のブルーパブ1号店。「スピネーカーズ」
ビクトリアのクラフトビール産業発展の立役者ともいえる一軒が、ここ「スピネーカーズ・ブルーパブ(Spinnakers Brewpub)」。1984年にカナダ初のブルーパブとしてオープンしたお店です。
1980年代当時、醸造所と飲食店を同じ建物内につくることはカナダの法律で許可されていませんでした。そんな中、ジョン・ミッチェルという醸造家がビールへの情熱と産業全体の発展にかける地元愛で行政までをも動かし、「ブルーパブ」という新しい業態を作りました。その伝説の第1号店が、ここ「スピネーカーズ」です。
地元産の材料を多用するのもこのお店の特徴。メニューには州内の果樹園で採れたりんごで造った発泡酒や、地産地消のフードメニューも豊富です。ブランチからディナーまで、そして訪れる人も子どもからシニア世代まで。ビール好きでなくてもみんなが楽しめるこのお店は地元の人たちに支持され続け、食事時ともなれば店内はにぎやかな笑い声で満たされます。
繁華街からは少し離れた場所ですが、タクシーか市営バスで簡単にアクセス可能。晴れた日にはぜひ海辺のテラス席へ。「Guest House」と呼ばれる三ツ星ホテルも併設され、宿泊も可能です。
スピネーカーズ・ブルーパブ(Spinnakers Brewpub)
住所 | : | 308 Catherine St, Victoria, BC |
---|---|---|
営業時間 | : | 9:00~23:00 |
定休日 | : | なし |
web | : | Spinnakers(外国語サイト) |
: | @spinnakersbrewpub |
キーワードは「Flight」。「旅好き」と「飲み比べセット」の素敵な関係も
美しき港町のマイクロブルワリーには、作り手のクラフトマンシップと遊び心があふれる魅力的なビールがいっぱい。
ここでひとつ豆知識を。いろいろな種類のビールなどを少量ずつ味わう「飲み比べセット」のことを、英語圏の飲料業界では「Flight(フライト)」と呼びます。ドリンクの種類間を「飛ぶ」ように試すことが語源といわれていますが、これもまた旅心をくすぐられる言葉ではないでしょうか。
ぜひ飛行機に乗って、お気に入りの味わいを見つけるクラフトビールの聖地・ビクトリアへ。Have a safe Flight!
取材・撮影:佐知ゆりこ
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