ペットは大切な家族の一員。旅行や出張、冠婚葬祭などで家を空ける際のペットの預け先は、多くの飼い主にとって切実な問題です。ネットで調べても情報が多く、どの方法が自分のペットにとって最適なのか、かえって迷ってしまうことも少なくありません。

この記事では、飼い主が安心してペットを預けられるよう、主な選択肢であるペットホテルからペットシッター、知人への依頼まで徹底比較。それぞれの特徴や利用する際の注意点まで、獣医師の監修のもとわかりやすく解説します。

画像: 大切なペット、旅行の時はどうする?旅先で安心できるお留守番術【獣医師解説】

この記事の監修者
小林充子

横浜国立大学卒業後、獣医師を志し麻布大学へ編入。ウイルス研究を経て2002年に免許取得。動物病院勤務や皮膚科専門施設での研修を経て、2010年に目黒区で総合診療施設CaFelier(キャフェリエ)を開業。自身も猫4匹と一緒に暮らしている。

CaFelier 公式サイト

ペットがお留守番する際の選択肢

ペットがお留守番する際の主な選択肢は6つ。それぞれのメリット・デメリットを解説していきます。

ペットホテルに預ける

画像: iStock/Antonio_Diaz

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飼い主が家を空ける際、代表的な選択肢になるのがペットホテル。犬の場合は、日中はケージから出て、室内で自由に過ごせる時間を設けている施設も多く、運動量の多い子でもエネルギーを発散しやすいのが特長です。また、1日1~2回ホテルでの様子を写真で送ってくれる施設もあります。

ペットホテルの種類もいくつかあります。代表的な種類を以下にまとめたので、ペットに合わせて参考にしてみてください。

〈ペットホテルの主な種類〉

種類特徴こんなペットにおすすめ
ペットホテル専門店・24時間スタッフが常駐している
・日中は室内フリーにしていることが多い
・若い子やパワフルな子
・寂しがりやで夜間の夜鳴きがある子
動物病院併設のペットホテル・体調に変化があった場合にすぐ対応してくれる
・過ごし方は病院によってさまざま。「日中は室内フリーで夜間はケージ」や、「日中は犬舎預かりで、朝晩の散歩で外に出る」場合などがある
・持病がある/高齢の子
・体調の変化が心配な場合
ペットショップ併設のペットホテル・基本はケージで過ごす
・ショップによってはお散歩やプレイタイムがある場合も
・おとなしい性格の子
・1~2泊程度の短期での預かりの場合
保育園(しつけ教室)併設のペットホテル・日中は室内フリーでほかの子と遊べる
・園によっては基本的な訓練をしてくれる場合も
・若い子やパワフルな子
・ほかの子と遊ぶことが好きな子

相場は小型犬の場合1泊3,000〜4,000円程度ですが、年末年始やGWなどの繁忙期は料金が割高になる傾向に。また、猫の場合は環境の変化に敏感な子が多いため、慣れない場所で過ごすこと自体が大きなストレスになる可能性も考慮しましょう。

小林さん「施設によっては、混合ワクチンなど複数の接種証明書の提示が必須であったり、高齢や持病のあるペット、ヒート(発情)中の場合は預かりを断られたりすることも。事前にルールをよく確認し、安心して任せられる場所を見つけることが大切です」

飛行機を利用する方には「羽田空港ペットホテル」のような空港直結の施設も便利です。旅行の直前に預けたり、帰国後すぐに迎えに行ったりできるため、ペットとの時間を最大限に確保できます。

羽田空港ペットホテル

住所東京都大田区羽田空港3-4-5 羽田空港第2ターミナル P4駐車場 1階
電話03-5756-7111
営業時間7:00〜22:00(年中無休・完全予約制)
web羽田空港ペットホテル 公式サイト

動物病院に預ける

画像: iStock/DavidPrahl

iStock/DavidPrahl

先述したとおり、動物病院がペットホテルを実施している場合もあります。獣医師や動物看護師が近くにいるため、持病のあるペットや高齢のペットでも、体調が急変した際にすぐ対応してもらえるのが最大のメリットです。普段から薬を飲んでいる場合も、病院であれば確実に投薬してもらえます。

ただし、すべての動物病院が毎日の預かりに対応しているわけではなく、短期滞在のみというケースも。また特に注意したいのが、年末年始やお盆などの長期休暇中です。こうした期間は病院自体が休診となるため、スタッフが24時間常駐していないケースも少なくありません。

数時間おきの見回りやお世話が制限されることもあれば、多くのペットが預けられていると一頭一頭に十分な注意が行き届かない可能性も考えられます。

小林さん「預ける際は、利用条件はもちろん、長期休暇中の夜間の体制やスタッフの人数まで、具体的に確認しておくと良いでしょう」

ペットシッターを利用する

画像: iStock/koumaru

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慣れない環境がストレスになってしまうペットには、ペットシッターという選択肢があります。ペットが住み慣れた場所で過ごせるため、特に環境の変化を嫌う猫にとってはストレスを最小限に抑えられるのがメリットです。

一方で、自宅に他人が入ることに抵抗がある方にとっては、難しい選択肢になることも。料金は1回30分~1時間で3,000~4,000円程度、加えて交通費がかかるのが相場で、1日預けられるペットホテルより割高な傾向があります。

人見知りな猫の場合、シッターの滞在中に一度も姿を見せず、健康状態を正確に確認できないというケースもあります。さらに、投薬など専門的なスキルが求められる場合は、対応可能なシッターを探す必要があります。

小林さん「信頼できるシッターを見つけるには、知人やかかりつけの動物病院からの紹介が安心です。それが難しい場合は、実績のある大手のシッター派遣会社から探すのが良いでしょう。動物看護師やペット栄養管理士などの資格の有無、動物をお世話した経験数や看取りの経験なども信頼性を判断する材料になります」

家族や知人にお世話を頼む

画像: iStock/Yagi-Studio

iStock/Yagi-Studio

家族や知人にペットのお世話を頼むのも、多くの飼い主が検討する方法。自宅に来てもらうか、相手の家に預けるか2通りの方法がありますが、ペットの性質を理解して決めることが大切です。

一般的に「犬は人につき、猫は場所につく」といわれます。犬は、信頼できる人と一緒であれば環境が変わっても順応しやすいのですが、猫を自宅以外の場所に連れて行くと、いくら知っている人でも環境が違うというだけで強いストレスを感じさせてしまうため、できるだけ避けたほうが無難です。

小林さん「猫の場合は、飼い主の自宅にお世話をしに来てもらうのが理想といえます。お願いする相手が、猫と何度も会っていて顔見知りであれば、猫が感じるストレスはさらに軽減されます。

また犬・猫どちらの場合でも、初めてお世話を頼む際は、必要な情報を共有することが不可欠です。万が一に備えて、かかりつけの動物病院の連絡先と診察券の場所は必ず伝えておきましょう」

ペット可能のホテルに宿泊する

画像1: iStock/Liudmila Chernetska

iStock/Liudmila Chernetska

近年はペットと一緒に泊まれるホテルや旅館が全国的に増えており、どこかに預けるのではなく、一緒に旅を楽しむという選択肢も広がっています。犬や猫はもちろん、施設によってはウサギやフェレットといった小動物、爬虫類などさまざまな種類のペットに対応した宿もあるのだとか。

ただし、「ペット可」といってもルールはさまざま。同伴できるペットの種類や大きさ、館内で立ち入れる範囲などを予約時に必ず確認しましょう。

小林さん「宿でペット用の食事が提供されることもありますが、移動の疲れと慣れない食事で体調を崩す子もいるため、普段から食べ慣れているフードを持参するのが安心です。

万が一に備え、事前にかかりつけの動物病院で胃腸薬などの常備薬をもらっておくと、さらに心強いでしょう。もし、旅先で体調が悪くなってしまった場合は、まずかかりつけの動物病院に電話をして指示を仰いでください」

自動給餌器などを利用する

画像: iStock/MarioGuti

iStock/MarioGuti

自動給餌器やペットカメラの普及により、ペットに自宅でお留守番してもらう方法も選択肢の一つになりました。ただし、この方法が可能なのは、基本的に猫のみと考えましょう。

猫が1〜2泊程度お留守番をする場合、決まった時間に食事を与えられる自動給餌器や、新鮮な水を保てる自動給水器を活用しましょう。また、ペットカメラを設置しておけば、外出先でもスマホから様子を確認でき、飼い主の安心にも繋がります。

ただし、数日~数週間の長期不在になる場合は、ペットシッターや知人に給餌やトイレ掃除を依頼しましょう。適切な準備があれば、健康な成猫は数日程度の留守番も可能ですが、万が一に備え、誰かが定期的に様子を見に来てくれる体制を整えておくことをおすすめします。

小林さん「自動給餌器を使う場合、猫ちゃんが自動給餌器を倒して中の餌を全部食べてしまうケースもあるので、壁やケージなどに固定できるタイプが安心です」

ペットホテル?シッター?最適な手段の選び方

ここからは、家を空けるにあたりペットをケアする最適な手段を選ぶためのポイントを解説します。

ペットの種類で選ぶ

画像: iStock/Voren1

iStock/Voren1

ペットがお留守番をする方法を考えるうえで最も重要なのが、動物ごとの習性の違い。たとえば、人とのコミュニケーションを好み、環境の変化に比較的強い犬は選択肢が豊富で、ほかの子と触れ合えるペットホテルや動物病院、知人宅など、その子の性格に合わせて選びやすいといえます。

一方、縄張り意識が強く、環境の変化が大きなストレスになる猫は、自宅で過ごさせるのが基本。ペットシッターや顔見知りの家族・知人に自宅に来てもらう方法が最も安心でしょう。

また、ウサギなどの小動物や爬虫類といった専門的なケアが必要なペットは、預かってくれるホテルが少ないため、その動物の飼い方がわかる動物病院に任せるのが最も安全な選択肢です。

ペットの性格や年齢に合わせて選ぶ

ペットの性格や年齢も、預け先を選ぶうえで重要なポイントになります。たとえば、ほかのペットや知らない人が苦手な臆病な性格の子を賑やかなペットホテルに預けると、大きなストレスを与えてしまいます。

逆に、とても社交的で遊び好きな子であれば、ほかのペットと触れ合える環境の方が楽しく過ごせるかもしれません。普段の様子をよく観察し、その子の性格に合った環境を選んであげることが大切です。

小林さん「若い頃はペットホテルで問題なく過ごせていたとしても、シニア期に入ると環境の変化が体調不良の引き金になることもあります。持病があったり、体調面に少しでも不安があったりする場合は、慣れ親しんだ施設であっても万が一に備え、動物病院での預かりを選択するのが賢明です」

不在にする期間で選ぶ

不在にする期間も、最適な預け先を選ぶうえで重要。1~2泊程度の短期間であればケージメインで過ごすホテルや動物病院も選択肢になりますが、3泊以上の長期の場合は、運動不足によるストレスも感じやすいため、室内フリーにしてくれる施設を選ぶなど、期間に応じて検討することも大切です。

小林さん「不在期間が1週間以上の長期にわたる場合、ペットが感じるストレスも大きくなる傾向に。特に犬は、手厚くお世話をされていても、飼い主と長期間離れることで精神的に不安定になることがあります。日帰りで預ける練習をしたり、預け先のスタッフに慣れてもらったりするなど、事前準備をしっかりと行うこともポイントです」

ペットを預ける際の注意点

ペットの預け先が決まったら、安心して任せるための準備も必要です。ここでは、飼い主がペットを預ける際の注意点を解説します。

ワクチン、フィラリア、ノミ・ダニ予防を済ませておく

画像: iStock/FreshSplash

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ペットホテルや動物病院などの施設に預ける場合、混合ワクチンや狂犬病ワクチン、ノミ・ダニ予防の証明書の提出を求められることがほとんどです。

ほかのペットとの間で感染症が広がるのを防ぎ、何より愛するペット自身の健康を守るための重要なルールです。直前に慌てないよう、予定が決まったら早めに動物病院で済ませ、証明書を手元に準備しておきましょう。

トイレなどのマナーを身につける

画像: iStock/Nina Calykh

iStock/Nina Calykh

特に多くの犬が共同で過ごすペットホテルでは、基本的なトイレマナーが求められます。トレーニングが不十分な場合、滞在中はマナーパンツ(犬用おむつ)の着用が必須となることもあります。

また、猫を自宅以外に預ける場合、デリケートな猫だと、トイレ環境がストレスの引き金になることも。普段使っている猫砂と同じタイプを用意してもらえるか、あるいは使い慣れた猫砂の持ち込みが可能かなどを事前に確認しておくと、より安心して過ごせるでしょう。

アレルギーがある場合は事前に伝える

預け先で普段と違う食事を食べると、お腹を壊してしまうことがあります。アレルギーの有無にかかわらず、何かあったときのことも考え、食べ慣れているフードを滞在日数分より少し多めに持参しましょう。

特に食物アレルギーがある場合は、命に関わる可能性もあるため、必ず事前に詳しく伝えてください。食べ物以外のアレルギーについても、共有しておくと安心です。

ペットの性格や特徴を事前に伝える

ペットが少しでも快適に、安全に過ごせるよう、普段の様子や性格も伝えておきましょう。たとえば犬の場合、「他の犬と遊ぶのが好き」「大型犬が苦手」といった社交性に関する情報を伝えていれば、施設側もトラブルを未然に防ぐための配慮ができます。

そのほか「雷の音が苦手」「おもちゃへの執着が強い」「男性が苦手」など、気付いた癖や好きなこと・苦手なことをメモにまとめて渡しておくと親切です。

預ける時期に注意をする

避妊手術をしていないメスの場合、ヒート(発情)中はほかのペットを興奮させたり、予期せぬトラブルの原因になったりするため、多くのペットホテルでは預かりを禁止しています。

もしこの期間にどうしても預ける必要がある場合は、事前に動物病院に相談しましょう。

車酔いに気をつける

画像2: iStock/Liudmila Chernetska

iStock/Liudmila Chernetska

普段車に乗る機会が少ないペットの場合、預け先への移動中に車酔いをしてしまう可能性があります。慣れない場所へ向かう不安に体調不良が重なると、ペットにとっては大きな苦痛です。いきなり長時間乗せるのではなく、短い距離から車に慣らす練習をしておきましょう。

また、出発直前の食事は控えめにし、車酔いがひどい場合は、事前に動物病院で酔い止めの薬を処方してもらうと安心です。

泊まる練習をする

突然慣れていない場所に長期間預けるのは、ペットにとって大きな不安とストレスを伴います。可能であれば、本格的なお泊まりの前に、同じ施設の日帰り預かりや1泊程度のショートステイを経験させてあげることをおすすめします。

事前に場所やスタッフに慣れておくことで、ペットは「ここは安全な場所だ」「飼い主は必ず迎えに来てくれる」と学習でき、本番のお泊まりも安心して過ごしやすくなります。

ペットにとってストレスのない方法を考えよう

ペットホテルからシッター、知人への依頼まで、飼い主の不在時の選択肢は多様化しています。しかし、どの方法が一番良いという絶対的な正解はありません。

何よりも大切なのは、ペットの性格や年齢、健康状態、そして犬や猫といった習性の違いを深く理解し、その子にとって最もストレスの少ない方法を考えてあげること。不在にする期間なども考慮して最適な選択をし、事前の準備や情報共有もしっかりと行いましょう。

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