教えてくれたのは……
グランドニッコー東京 台場
料飲部 宴会サービス課 スーパーバイザー
村井 敏哉さん
羽田空港や都心からのアクセスも良い、東京・お台場にあるシティーリゾートホテル「グランドニッコー東京 台場」。本格的な洋食料理のコースをお召し上がりいただきながら、テーブルマナーが学べる「テーブルマナープラン」は学校行事や新入社員研修などにおすすめです。
web:グランドニッコー東京 台場
「思いやり」を形にした、テーブルマナー
テーブルマナーは、一見複雑に思えるかもしれませんが、その多くは人への思いやりから生まれたものです。
「例えば、ナイフの刃を相手に向けないのは、相手に不安な気持ちを抱かせないため。また、食事の途中でお皿を下げようとするスタッフには、カトラリーを「ハの字」に置くことで『まだお料理を楽しんでいます』という意思表示ができます」(村井さん)
このように、テーブルマナーの背景には相手を気遣う理由があります。形式的なルールではなく、思いやりの表現として捉えれば自然と身につくもの。村井さんも「テーブルマナーを身につけることで食事がより楽しく、豊かなものになりますよ」と話すように、円滑なコミュニケーションのツールとして活用するべく、次章から基本的なテーブルマナーをご紹介します。
フランス料理のテーブルマナー:カトラリー編
まずはカトラリーの使い方。「ナイフ・フォーク」「ナプキン」「グラス」のカテゴリに分けて、写真とともに解説します。
ナイフ・フォークの使い方
◾️使用順序
外側のカトラリーから順番に使用します。料理に合わせた大きさや形状のカトラリーが用意されているので、料理の提供順に合わせて使用していきます。
◾️正しい持ち方
人差し指をナイフ・フォークの背中に添えて、しっかりと握るのがコツです。肩の力は抜き、ほどよく脇をしめて肘が広がらないように注意しましょう。
◾️ナイフ・フォークを使った食べ方
左手のフォークを使って食材を軽く押さえたら、ナイフで一口大(3cm程度)にカット。そのままフォークを口に運んで食べます。このとき、体を前に倒したり、料理に口を近づけたりするのは避けましょう。ナイフは食材を真っ直ぐに切るというよりは、「ハの字」に、押すように切るイメージで行うのがポイント。食材がとりにくい場合はフォークを順手に持ち直し、右手のナイフで食材を支えるようにしてフォークですくって食べてもOKです。リーフなど、食材が逃げやすいものはスプーンのようにすくって食べるとスマートです。
◾️食事中の置き方
食事を一旦休憩する際は、カトラリーを「ハの字」にお皿の上に置きます。フォークは裏返さず、ナイフの刃は「ハの字」の内側に向けましょう。
NGパターン
ナイフの刃を外側に、フォークを裏返して置くのはNG。このとき、ナイフとフォークをお皿の縁に立てかけるのも避けましょう。立てかけるとバランスが悪く、ズレて音が鳴りやすくなるのでお皿の上で完結させるのが正しいマナーです。
◾️食べ終わりのサイン
ナイフとフォークを揃えてお皿の上に置きます。時計の針の「4時20分」を指すように配置するのがベストです。
ナプキンの使い方
◾️食事スタート時
お皿の上に置いてあるナプキンをとり、静かに広げたら、半分に折りたたみます。折りたたんだナプキンは太ももの上に置きましょう。向きはどちらでもOKですが、折り目が相手側に来るように置くと、使用する際に便利でおすすめです。ホストや目上の人がいる場合は、その人がナプキンをとってから自分もとるようにしましょう。
◾️使い方
基本的に外側は使用せず、半分に折った内側のみを使用します。食事中に口を拭う際は、ナプキンの上側を持ち上げて内側で拭い、手を拭く際はナプキンの下側でつまむようにして汚れを拭いましょう。こうすることで、外側に汚れがつかずスマートに食事をすることができます。
◾️離席する時
ナプキンをさらに半分に折りたたみ、椅子の背に掛けるか座席に置くと、「また戻ってきます」のサインに。ただし、料理が目の前にある時に席を外すのはマナー違反とされているため、トイレなどで離席する場合は、デザートの前や料理提供の間などを心がけましょう。
食事が終わり、席を立つ時はナプキンはたたまず、軽くクシュっとした状態でテーブルの上に置いて帰ります。わざとクシュっとさせることで、「今回の食事会は、料理もおいしくナプキンをたたむのを忘れてしまったほど楽しかったです」といったユーモアあふれるサインになります。
グラスの使い方
◾️グラスの持ち方
グラスは、ステム(グラスの脚の部分)を人差し指、中指、親指の3本の指で持ちます。手の平全体ではなく、指先で軽く持つのがコツです。
重さを感じる場合は、左手をグラスの底部に添えることで、安定した持ち方になります。
◾️乾杯のマナー
乾杯の際は、グラスを胸の高さまで持ち上げます。アイコンタクトを保ち、その場でグラスを動かさずに軽くにっこり笑顔で「乾杯」と言いましょう。グラスを高く掲げて「カンパ~イ!」としたり、他の人のグラスと重ねて音を鳴らしたりするのはNGです。
フランス料理のテーブルマナー:食べ方編
続いては、メニューごとの食べ方についてです。「食前酒」「オードブル」「パン」「スープ」「魚料理」「肉料理」「ワイン」「デザート」「コーヒー・紅茶」の順に、写真とともに解説します。
食前酒
食前酒は、文字通り食事の前に軽く飲むお酒のこと。胃を活性化し食欲増進させる効果があるだけでなく、コースの内容を確認したりメニューを選んだりする時間に飲みます。お酒が苦手な方は、炭酸水などのノンアルコールでもOKです。
オードブル
多くのフランス料理では、お皿の左側に置いてあるものから食べると料理を堪能できるようにつくられています。そのため、絶対的なマナーではありませんが、左側から食べ進めると間違いないでしょう。
まずは、料理をそのまま味わい、次にソースをつけて食べます。その際、右手のナイフでソースをすくい、料理に刷毛(はけ)のように塗り、フォークで食べましょう。
→料理のカットの仕方は、〈◾️ナイフ・フォークを使った食べ方〉をご参考ください。
料理に添えられているリーフや付け合わせは、料理と料理の間に単品で食べるのが正しいマナー。合間に挟むことで口の中をリセットする効果があります。ちなみに、リーフや付け合わせは一度にすべて食べてしまわないこと。料理の分量を見ながらバランスよくお皿の中身を減らしていきましょう。
パン
◾食べ方
一口大にちぎって、バターやオイルをつけて食べます。バター皿が別に用意されている場合は、バターはバターナイフを使って、自分のパン皿にお好みの量だけとりましょう。
細かい部分ですが、バターを塗る際、ちぎって皿に置いておくほうのパンは断面が相手に見えないようにすると、テーブルマナー的にスマートです。
◾食べている途中・食べ終わり
バターナイフは、相手側に刃を向けなければ置く位置は縦でも横でもOK。パン皿が自分から見て横にある場合は横向きに、奥にあり、横に人がいる場合は縦に置きましょう。ちなみに、パンは肉料理が終わるまでに食べ切るのがマナー。残っている場合は、肉料理を下げるタイミングで下げられるので意識しておきましょう。また、テーブルに落ちたパンくずは手で払わずそのままでOK。お店の方が片付けてくれるのでお任せしましょう。
スープ
◾️飲み方
丸いスプーンを使い、手前から奥に向かってスープをすくって口に運ぶのが基本の動作。スプーン一杯ですくう量は6割程度にすると◎。
口に運ぶ際は、スープの表面でスプーンを止め、スッと持ち上げるとスプーンの下に一滴だけついた状態に。これでスープがボタボタとこぼれずに上品に飲めます。
スープが残り少なくなってきたら、皿の手前を指で軽く持ち上げ、奥にスープをためると、すくいやすくなります。フランス料理のテーブルマナーにおいて、茶碗のように持ち上げて食すのはNGです。
◾️飲んでいる途中・飲み終わり
飲んでいる途中、休憩したい時はスプーンを裏返し、横向きに立てかけます。こうすることで「まだ飲んでいるので、お皿を下げないでください」というサインになります。飲み終わったら、スプーンを表にして同様に横向きに立てかけます。
魚料理
◾️フィッシュスプーンについて
面が平たいフィッシュスプーンは、ナイフとスプーンの2つの役割を持った万能アイテム。ソースが多い料理や、やわらかい食材の料理の時によく使います。
◾️食べ方
左手のフォークで食材を押さえ、右手のフィッシュスプーンを縦にしてナイフのように食材をカットしましょう。ソースをつけて食べる際は、右手のフィッシュスプーンをスプーンを持つように持ち替え、ソースを一緒にすくって食べます。料理が動く場合は、料理に左手のフォークを添え、支えにして右手のスプーンで料理をすくいましょう。
→料理のカットの仕方は、〈◾️ナイフ・フォークを使った食べ方〉をご参考ください。
肉料理
肉の筋に沿って斜めにナイフを入れて一口大にカットします。肉料理は、食べる分だけカットして食べるのが正しいマナー。食べやすいからといって、最初にすべてカットしてしまうと冷めやすくなったり、断面から肉汁があふれてお皿が汚れてしまったりするためNGです。また、付け合わせの野菜はナイフとフォークでお皿の手前に移動させてから切るようにしましょう。
→料理のカットの仕方は、〈◾️ナイフ・フォークを使った食べ方〉をご参考ください。
ワイン
◾️飲む前に
〈◾️グラスの持ち方〉を参考に、グラスを胸の前で持ったら、まずは目でワインの状態を確認。次に、グラスに鼻を近づけて香りを嗅ぎ、一口ワインを口にふくみます。その際、口から軽く息を吸うことで口の中でワインと空気が混ざり合い、ワインの味わいをより楽しむことができます。
◾️飲み方
グラスを置いたら、ステム(グラスの脚の部分)を持って4~5回グラスを回してワイン全体を空気に触れさせます(この動作を「スワリング」といいます)。そして、改めて香りを嗅いだ後、一口目との香りや味の違いを楽しみながら飲みましょう。
飲む時は複数箇所に口をつけるのではなく、一度口をつけたところから飲みなおすのもポイント。グラスが汚れないため、スマートです。
ワインをはじめ、飲み物のおかわりを断りたい時は、グラスに手を被せるようにすることで、「おかわりは結構です」というサインに。会話を止めずに、サービスへの意志を伝えることができます。
デザート
スプーンやフォークだけで食べられるものもありますが、基本的には左手にフォーク、右手にナイフ兼スプーンを持ち、両手で食べます。細長いチョコレートは手で食べず、フォークまたはスプーンで真ん中あたりをポンっと軽く叩いて割って食べましょう。フィンガーボールがある時以外は、手で食べるのはパンのみです。
コーヒー・紅茶
カップを両手で持たず、取っ手を親指と人差し指で持ち、中指で支えます。一度に飲む量は7分目程度にし、音を立てないように注意しましょう。
NGパターン
やりがちですが、取っ手に指を通して持つのはテーブルマナーとしてはNGです。
シュガー、ミルクは紅茶用のスプーンで2~3回程度、アルファベットの「N」を描くように静かにかき混ぜます。ぐるぐると回すようにかき混ぜると、スプーンとカップが当たって音が鳴ってしまう可能性があるため避けられるとベターです。
スプーン使用後は、水滴がこぼれないようにカップの縁に沿わせて拭い、受け皿の奥側に置きます。
知っていると、よりスマート! テーブルマナーの豆知識
最後に、知っているともっとフランス料理を楽しめる6つのティップスを紹介します。
出された料理をすぐに食べない
グループでフランス料理を楽しむ際、最初に料理が運ばれてきてもすぐに食べ始めるのはマナー違反。全員に料理が行き渡り、ホストがいる場合は、ホストがカトラリーを持って食べ始めてから食べるのが正解です。
食べるペースは周りに合わせる
フランス料理は優雅に、会話を楽しみながら食べるもの。ごはんだけを食べに来ているわけではないので、周りとペースを合わせて食べましょう。
お皿やグラスは基本的に動かさない
日本食でお茶碗を持って食べるように、ついお皿を持ち上げたくなりますが、フランス料理ではお皿やグラスは、提供された位置から大きく動かさないのがマナー。隣の人のグラスと混同したり、ぶつかってしまったりするのを避けるためにも置かれた位置で飲食しましょう。
落ちたカトラリーなどは自分で拾わない
カトラリーを落としたり、飲み物をこぼしたりした際は自分で拾ったり拭いたりしないこと。慌てず、胸の前で手を軽く上げてお店の方を呼び、対応してもらうのが正しいマナーです。
椅子は深く腰掛ける
緊張からつい、テーブルと体の間に距離を置いて座ってしまいがちですが、テーブルから遠いと、こぼさないようにと皿に顔を近づけて食べてしまうことに。顔はできるだけ下げないほうが上品なので、椅子には深く腰掛け、テーブルとお腹の間にこぶし一個分入るくらいを目安に座りましょう。
食事中にスマホや髪を触らない
食事中にスマホや髪を触るのは、「この場がつまらない」というサインに。そうでなくても、対面で座るテーブルでは目立つ行為なので気を付けましょう。また、食事前後にスマホで写真を撮りたい場合は、予約の際など事前にお店の方に確認するのがベターです。
カトラリーの使い方や食事のタイミングなど、一つ一つのマナーに意味があることが分かれば、テーブルマナーは楽しく、また自然と身についていくはずです。とはいえすべてを守ろうと緊張せずに、まずは素敵な空間で、充実した食事を楽しむことが大切です!
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