この記事では、旅の準備をしているとき、旅の移動中、旅の思い出に浸りたいとき…。それぞれの旅のタイミングで見たくなる、飛行機と空港が舞台の映画をご紹介します。
文:新谷里映
機内で見れば、空港に入るときにドキドキ感が味わえる?『ターミナル』
空の旅の出発地と到着地である空港の中でも、国際線ターミナルは、さまざまな国の人たちが行き交う多国籍で賑やかな場所です。トム・ハンクス主演、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ターミナル』は、そんな空港を舞台にした感動作。飛行機の中で見れば、空港に足を踏み入れる瞬間のドキドキ感が、いつもとは違ったものになるかも…。
主人公の名前は、ナボルスキー。ある願いを叶えるためクラコウジアからニューヨークへやって来ますが、彼が離陸した直後に母国で軍事クーデターが起こり、クラコウジア政府は消滅してしまいます。その瞬間、前の政府から発行された彼のパスポートは無効に。新政府が米国と国交を結ぶまで入国も帰国もできず、JFK国際空港の国際線乗り継ぎロビーに滞在することになってしまうのです。
言葉は通じない、知り合いはいない、ターミナルから出ることもできない……孤独のなかで、ナボルスキーは自分の居場所を作ろうと奮闘します。英語を学び、仕事を見つけて働くうちに、空港で働く人たちと友だちになったり、フライトアテンダントのアメリア(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)とのロマンスが訪れたりと、変化が起きていきます。
舞台となるニューヨークのJFK国際空港は、なんと巨大セットを建設して撮影されたものなのだそう。空港の外部や飛行機の発着シーンなどは、ケベック州モントリオールのモントリオールミラベル国際空港がロケ地となっています。
『ターミナル』
Blu-ray:2,075円 (税込)/DVD:1,572 円 (税込)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※ 2021年4月の情報です。
思うように旅に出られないときも、旅への気持ちを高めてくれる『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』
『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』は、世界30カ国で販売された人気小説『IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅』が映画化されたもの。思うように旅に出られないときでも、いつか旅をしたい!という気持ちを高めてくれる作品です。
ムンバイの小さな村で生まれ育った大道芸人のアジャ(ダヌーシュ)は、母の死をきっかけに、一度も会ったことのない父に会うためにパリへ向かいます。父を探す前に訪れたパリのインテリアショップで、アメリカ人女性マリーと恋に落ちたアジャ。彼女と次の日に会う約束をするのですが、泊まるあてのないアジャはその夜、家具店のクローゼットのなかで一夜を過ごすことになってしまいます。
実は、アジャが入ったクローゼットはロンドンへ発送される予定だったもの。アジャはそのまま、パリからロンドン、スペイン、ローマ、リビア……と思いがけない場所へ旅することに。
国から国へ、アジャの移動手段は飛行機がメインです。なかでもユニークなのはトランクの旅。スペインの空港から出られなくなってしまったアジャは、イタリアの大女優のトランクに忍び込み、なんとか脱出しようと奮闘します。洋服と一緒に空の旅をするユニークな展開が、インド映画らしいカラフルな世界観で描かれています。
『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』
DVD:4,180円(税込)/3,800円(税抜)
発売元:TCエンタテインメント
販売元:TCエンタテインメント
Brio Films @Sébastien Bossi
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客室乗務員の仕事ぶりに、飛行機に乗って出かけたくなってしまう『ハッピー・フライト』
グウィネス・パルトロウ主演の『ハッピー・フライト』は、ネヴァダ州の片田舎で暮らすヒロインが客室乗務員を目指すサクセスストーリーであり、ロマンチック・コメディでもある作品です。機内での出来事がたくさん描かれているので、旅の計画を立てながら見れば、飛行機に乗ってどこかへ行きたくなるはず。
この町から遠く離れて人生を変えたい!と思いながらも、ネヴァダ州の片田舎で暮らす主人公・ドナ。彼女を動かしたのは、元客室乗務員のサリー・ウェストンのインタビューでした。サリーの「どんな田舎に生まれようが、人にバカにされようが、夢は必ず叶う。ただし今すぐに行動すること」という言葉を信じて、ドナはすぐに行動を起こし、小さな航空会社で働くことになります。
航空会社で働くうちに、もっと上を目指したい!と考えるようになったドナ。人生を変えるきっかけをくれたサリーがいるロイヤルティ航空の面接を受けてみごと訓練生として採用されますが、その先にはさまざまな理不尽が待ち受けていました。しかし、ドナはどんな状況に陥っても決して夢を諦めず、国際線のファーストクラス担当者を目指します。
田舎の小さな空港や国際線の飛行機の機内など、架空ではありますが、いろいろな空港や飛行機が登場するのもこの映画の見どころのひとつ。また、ドナとテッド(マーク・ラファロ)の恋の行方も描かれます。
旅の後に、これまでの旅や仕事を振り返りながら見たい『マイレージ、マイライフ』
飛行機の旅では、マイレージを貯めていくのも楽しみのひとつです。ジョージ・クルーニー主演の『マイレージ、マイライフ』は、1000万マイル達成を目標にしているビジネスマンが、2人の女性と出会うことで、人とのつながりや人生を見つめ直していく人間ドラマ。思い出深い旅の後に見て、自分のこれまでの旅や仕事を振り返ってみてはいかがでしょうか。
主人公のライアン・ビンガムは、企業のリストラ対象者に解雇を通告するプロフェッショナル、いわゆるリストラ宣告人です。年間322日も出張で各地を飛びまわっているため、夢の1000万マイル達成まではあと少し。そんな彼に予期せぬ2つの出会いが訪れます。
1人目は出張先で知り合ったアレックス(ヴェラ・ファーミガ)。自分と同じように全国を飛びまわる彼女とビンガムは、気軽な大人の関係に。2人目は新入社員のナタリー(アナ・ケンドリック)。優秀だけれど社交的ではなく、オンラインでの業務を導入して出張を廃止する合理的な案を出してきたことで、ビンガムと衝突します。恋愛と仕事、それぞれにおいて彼がどんな答えに辿り着くかが見どころです。
撮影は5都市で行われたそうですが、ビンガムの出張先として描写されるのは、デトロイト、フェニックス、セントルイス、ウィチタなど20都市にも及びます。また、空港や機内のシーンも多く、デトロイト・メトロポリタン空港が5つの空港に描き分けられているのだとか。美術班によって作られた、それぞれの空港の違いにも注目です。
『マイレージ、マイライフ』
Blu-ray: 2,619円 (税込)/DVD: 1,572 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
※ 2021年4月の情報です。
これから始まる旅での出会いに胸が高鳴る『フレンチ・キス』
ロマンチック・コメディ『フレンチ・キス』でメグ・ライアンが演じるのは、極度の飛行機恐怖症のケイト。そんな彼女がやむを得ない事情で人生初の飛行機に乗るところから、物語が始まります。旅に出る前に見れば、これからロマンチックな出会いがあったりして…と、思わず妄想してしまうかも。
ケイトが飛行機に乗ることになるきっかけは、パリに出張していた婚約者のチャーリー(ティモシー・ハットン)がパリジェンヌと恋に落ちてしまったから。ケイトは、彼を奪い返すためにトロントからパリへ向かいます。
偶然、飛行機の席が隣同士だったことから恋が始まる──という展開は、なんとも映画的でドラマティック。ケイトの隣の席に座ったのはちょっと風変わりなフランス人男性リュック(ケビン・クライン)でした。離陸のときも、飛行中に揺れたときも、彼が話し相手になってくれたおかげでケイトは無事にパリに辿り着くことができます。
しかし、良い人そうに見えたリュックは、入国の申告を逃れるためにケイトのバッグの中にあるモノを隠していたのです。一目惚れで始まる恋物語…とはいかず、偶然とハプニングが重なって、リュックはケイトの恋人奪還を手伝うことに。
旅を通じてケイトは、知らなかった自分を知り、受け入れ、どんどん魅力的になっていきます。飛行機が恐くて世界を知ろうとしなかった女性が、それまで知らなかった世界を知り、新しい恋に出会う。飛行機から始まる自分探しの旅を描いた映画です。
飛行機と空港が舞台、といっても描かれるテーマはさまざま。俳優や制作スタッフの旅への想いが詰まった作品ばかりです。これらの映画を見て、今までの旅やこれからの旅について想いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
新谷里映(しんたに・りえ)
雑誌編集者を経て現在はフリーの映画ライター、コラムニスト。雑誌・ウェブ・TV・ラジオ、各メディアで映画紹介をするほか、コラムの執筆、映画のオフィシャルライター、東京国際映画祭やトークイベントのMCなど幅広く活躍。2019年発売の映画写真集『海外名作映画と巡る世界の絶景』では解説執筆を担当。
https://note.com/rieshintani
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