いまもなお伝統的建造物や異国情緒あふれる街並みが残る函館。幕末に国際貿易港として開港して以来、さまざまな文化や人の交流地点となってきた函館港と、街のシンボルでもある函館山の間に広がる旧市街地、通称「西部地区」は、訪れる人々を心踊る旅へと誘ってくれます。
西部地区が面白いのは、古い街並みが景観として保護されているだけでなく、いまなお暮らしや仕事の場として利用されているところ。西洋文化の影響を受けつつ、独自の進化を遂げた和洋折衷の建築物をリノベーションしたお店や、古くから街の人たちに親しまれている温泉施設などが、地元の人も旅行者も分け隔てなく迎え入れてくれるのです。
函館の風土や暮らしが感じられるスポットを中心に、西部地区の「古くて新しい」魅力をご紹介したいと思います。
文:阿部光平 写真提供:箱バル不動産( http://hakobar.com/

函館の街を知るなら「まちやど」へ。旅のスタートは家族利用が可能なゲストハウスから

SMALL TOWN HOSTEL Hakodate(スモールタウンホステル ハコダテ)

画像: SMALL TOWN HOSTEL Hakodate(スモールタウンホステル ハコダテ)が入居する複合商業施設「大三坂ビルジング」

SMALL TOWN HOSTEL Hakodate(スモールタウンホステル ハコダテ)が入居する複合商業施設「大三坂ビルジング」

旅行の計画を立てる際、ガイドブックを参考にする方が多いと思いますが、日々その姿を変え続ける街の姿を知るためには、「生きた情報」に触れるのが一番。そこで、頼りになるのが「まちやど」の存在です。

「まちやど」とは、街を丸ごと宿と見立て、地域の日常を楽しんでもらうことを目的とした宿泊施設のこと。地元の飲食店や銭湯など、その街にある施設を旅行者に紹介し、その土地固有の魅力を街ぐるみで提案しています。

函館の西部地区には、約100年前に建てられたビルをリノベーションした「大三坂ビルヂング」という複合商業施設があり、その一角に「SMALL TOWN HOSTEL Hakodate」という、まちやどがあります。

SMALL TOWN HOSTEL Hakodateは、いわゆるゲストハウスに分類される宿泊施設ですが、小さなお子さんのいる家族客も受け入れています。消灯時間が決められているなど、落ち着いた雰囲気が魅力のまちやどです。

建材には、思わず素足で歩きたくなる道南杉の床材や、北海道産ホタテ貝を混ぜた漆喰を使用しているほか、改修工事には多くの地元ボランティアが参加。宿泊者以外の人も参加できるイベントを定期的に開催するなど、旅行者を迎え入れる宿泊施設でありながら地元にも開かれた場所として親しまれています。

画像: 薪ストーブがある共用スペース兼食堂

薪ストーブがある共用スペース兼食堂

画像: 3名様まで利用可能な個室「HORAI」

3名様まで利用可能な個室「HORAI」

SMALL TOWN HOSTEL Hakodateでは、旅行者の趣味趣向に応じた西部地区のオススメスポットを紹介してもらえます。スタッフの多くが、街並みの保存、活性化を目的とした活動をしているので、ここでしか聞けないディープな函館の情報が得られるでしょう。

近所には、函館の海の幸を取り揃えている鮮魚店があり、宿で提供される道南産食材を使った朝食に、新鮮なお刺身をプラスするといったアレンジも可能! 宿泊施設という役割を越え、街の案内役として、ガイドブックには載っていないローカルな旅をアテンドしてくれるはずです。

画像: 朝食には道南産の白米をはじめとする、地元食材が使われている

朝食には道南産の白米をはじめとする、地元食材が使われている

SMALL TOWN HOSTEL Hakodate(スモールタウンホステル ハコダテ)
定休日なし
営業時間チェックイン 16:00〜21:00 / チェックアウト 〜10:00
住所北海道函館市末広町18-25
webhttp://smalltownhostel.hakobar.com/index.html

函館の伝統的建造物をリノベーションした、天然酵母のパン屋さん

天然酵母パン tombolo(トンボロ)

画像: 天然酵母パン tombolo(トンボロ)

天然酵母パン tombolo(トンボロ)

旅先での朝はのんびりスタートしたいという方は、SMALL TOWN HOSTEL Hakodateからほど近い天然酵母パンのお店「tombolo」に立ち寄ってみてはいかがでしょう。ここは自家製の天然酵母と北海道産小麦、塩、そして函館の水のみでつくられたシンプルで味わい深いパンが並ぶお店で、地元の人はもちろん、遠くからわざわざ足を運ぶファンも多い人気店です。

歴史を感じさせる石畳の坂の途中で、ひときわ目を引く黄色いお店は、1921年に建てられた和洋折衷の建築を改装したもの。函館市伝統的建造物にも指定されている建築物が、いまも現役の店舗として使われています。

店主の苧坂淳さんは、日本における天然酵母パンのパイオニアともいわれる東京の「ルヴァン」で修行後、地元である函館に戻り、2010年にtomboloを開業。「シンプルなパンづくり」を心がけ、素朴でありながら日々の食卓を豊かにしてくれるパンを焼き続けています。

画像: いちじくとくるみのパン

いちじくとくるみのパン

筆者が個人的にオススメなのは「いちじくとくるみのパン」。ぎっしりと入ったいちじくの自然な甘みと、カリッと口のなかで音を立てるくるみの食感、噛むほどに風味が増す小麦の味が混ざり合い、食べることの楽しさを思い出させてくれるようなパンです。

見た目以上にしっかりとお腹がふくれるので、遅めの朝食にもぴったりでしょう。店内ではパンとともに美味しいコーヒーをいただくこともできます。

函館の観光ポスターにもよく掲載されているカトリック元町教会や、ハリストス正教会までは、お店から歩いて2、3分ほどの距離。天気のいい日には、散歩気分で歴史的教会群を訪ねることもできます。

画像: カトリック元町教会

カトリック元町教会

天然酵母パン tombolo
定休日月・火曜日(祝日は営業)
営業時間11:00〜17:00
住所北海道函館市元町30-6
webhttp://tombolo.jpn.org/

函館の古民家カフェで石窯ピッツァに舌鼓

Transistor CAFE(トランジスタカフェ)

画像: Transistor CAFE(トランジスタカフェ)

Transistor CAFE(トランジスタカフェ)

歴史的教会群だけでなく、ほかにはない独特な配色が人気の旧函館公会堂や、長い坂の下に海が見渡せる八幡坂など、西部地区には歩いて回れる範囲にたくさんの見どころが集まっています。

坂道のアップダウンが多いので、歩き疲れたらカフェで一休みしましょう。西部地区には、古い建物をリノベーションして、リラックスした空間に生まれ変わった居心地のいいカフェが点在しているのです。

お昼どきに訪れたいのが、店内の石窯で焼かれたピッツァが名物の「Transistor CAFE」。東京から移住してきた店主が、建物の改装からメニューづくりまでを手がけ、地元の業者さんやボランティアの方々の手を借りながら、わずか4か月でオープンまで漕ぎ着けたという異色のDIYカフェです。

店主の山田伸広さんは、東京の有名店で店長を任されていたというだけあって、食事の味は折り紙つき。季節のフルーツをふんだんに使ったパフェや、自家焙煎のコーヒーも大人気です。

画像: 旬の素材を使用したピッツァ

旬の素材を使用したピッツァ

画像: 春の人気メニュー・いちごのパフェ

春の人気メニュー・いちごのパフェ

土日は満席になってしまうことも珍しくありませんが、時間があれば山田さんに移住の経緯や、函館の話を聞いてみるのも面白いでしょう。外から函館にやってきた人だからこそ見つけられる、函館のユニークな一面を垣間見ることができるはずです。昭和初期に建てられた建物を土台にしながらも梁や窓など、使える部分はそのまま残し、リノベーションを行なったという情緒豊かな内観は一見の価値があります。

Transistor CAFE(トランジスタ カフェ)
定休日月・火曜日
営業時間水・木曜日11:00〜17:00(LO16:00) / 金・土・日曜日11:00〜16:00(LO15:00)、18:00〜21:00(LO20:00)
住所北海道函館市元町28-18
SNShttps://www.instagram.com/transistorcafe/

函館といえばやっぱりここ。函館山から街を一望

函館山

Transistor CAFEは、函館山のロープウェイ乗り場からも近いので、お腹を満たし、疲れを癒したら、山頂に登ってみるのもオススメです。ミシュランガイドで最高評価となる三つ星を獲得した函館山からの夜景の素晴らしさは広く知られていますが、昼間には西部地区の教会群やベイエリアの赤レンガ倉庫、五稜郭タワーまでもはっきりと見渡せるので、夜とはまた違った美しさがあります。夕方に山頂へ登り、徐々に光が灯っていく街の様子を眺めるというのも、とても優雅で贅沢な過ごし方です。

画像: 函館山からの眺め

函館山からの眺め

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