記事後半では、予算3,000円以内で「買うべきおすすめ商品」を選び抜き、食アイテムは実食レポートとともに魅力をお伝えします。読み終わるころには、アンテナショップに詳しくなれるだけでなく、現地への愛も深まることでしょう。
ふたつの県が共同運営している理由
今回訪れたのは、2014年にオープンした「とっとり・おかやま新橋館」。ふたつの県が共同で運営している、珍しいアンテナショップです。そのコラボレーションのきっかけは、岡山県が都内でアンテナショップの出店を探していたタイミングと、それまで新橋で営業していた「食のみやこ鳥取プラザ」のリニューアル時期が重なったため。
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また、山陰の鳥取と瀬戸内の岡山で気候が異なるため、果物の旬や特産となる海産物に被りが出ないことも理由のひとつ。南北で隣接しているため観光や防災などで連携することが多く、親睦の深かった両県が互いに助け合い、補い合っている様子がうかがえます。
コンセプトは「ももてなし」。これは両県を代表するフルーツ、岡山の「もも(桃)」と鳥取の「なし(梨)」を「おもてなし」に掛けたもの。店内にはそのフルーツをはじめ、多彩な食と工芸品が並んでいます。
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場所はJR新橋駅の銀座口から徒歩で約1分。東京メトロ銀座線の3番出口とはビルが直結していて、アクセスは至便です。店舗は2フロア構成で、1階はショップ、2階はレストランと観光・移住・しごとのコーナーで構成。まずはショップから紹介します。
ともにフルーツとミルクの宝庫でスイーツも豊富
アイテムの半分以上が食品となっているうえ、さすがに「ももてなし」だけあってフルーツを使ったお菓子が豊富。一番人気のスイーツは岡山の「蒜山(ひるぜん)ショコラ」という瀬戸内のドライフルーツを使ったショコラバーで、なくなり次第終了。来シーズンは2021年11月ごろから販売開始されます。
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「蒜山ショコラ」。全8フレーバーがあり、税込648円から
「蒜山ショコラ」と双璧をなす人気のスイーツは、「プレミアムフルーツコラーゲンゼリー」シリーズ。こちらもスタイリッシュなデザインが印象的で、専用の棚が用意されていました。
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「プレミアムフルーツコラーゲンゼリー」。全4フレーバーがあり、5本で357円、12本で789円(ともに税込)
伝統的な銘菓はあんこなどを用いた和菓子タイプが中心です。例えば鳥取は「因幡(いなば)の白うさぎ」、岡山は日本三大まんじゅうのひとつである「大手まんぢゅう」。また、鳥取では日本海で獲れる松葉がにを使った「焼かにせんべい」も定番みやげで、これらの銘菓はコンスタントに売れる商品となっています。
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「因幡の白うさぎ」(5個入り648円・税込)
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「大手まんぢゅう」(4個入り340円・税込)
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「焼かにせんべい」(27枚入り1,080円/左、14枚入り648円/右・ともに税込)
フルーツ以外で両県共通の名産といえば、乳製品。鳥取は全域で親しまれている白バラ牛乳、岡山は蒜山の牧場から届くジャージー牛のミルクが代表ブランドで、同館でもそれぞれの乳製品が並んでいます。
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店内の一角では、それらの牛乳を使ったソフトクリームを販売。鳥取の白バラ牛乳は一般的なホルスタイン種の乳で、さっぱりした上品な味わいが特徴です。岡山の方はジャージー種の牛乳特有のコク深いテイスト。筆者は後者を味わいましたが、濃厚な乳脂肪の粒々とした舌ざわりが楽しめるふくよかなおいしさでした。
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「蒜山ジャージーソフトクリーム」(385円・税込/テイクアウトは378円・税込)
両県ともにお酒もおつまみも盛りだくさん
また、両県ともに日本酒も特筆もの。水が良質なのはもちろんのこと、鳥取は“幻の酒米”といわれる「強力(ごうりき)」唯一の生産地で、この「強力」を使った日本酒が人気。一方の岡山も、栽培が難しいため同じく“幻の酒米”と呼ばれる酒造好適米「雄町(おまち)」の発祥地であり、全国の「雄町」の9割以上は岡山産であるほどの酒どころです。
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日本酒は両県ともに100弱の銘柄を扱っていて、県内産に限っては都内屈指のラインナップ。なお、お酒に関してはもちろん名産のフルーツを生かした果実酒やサワーも豊富で、クラフトビールは鳥取なら「大山(だいせん)Gビール」、岡山なら「独歩ビール」が有名です。
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「鳥取産二十世紀梨チューハイ」(198円・税込/左)、「岡山白桃カンチューハイ」(228円・税込/右)
その他の食品も紹介しましょう。鳥取はらっきょう生産量が日本一の県で、同店には定番の甘酢タイプにはじまり、ワイン、はちみつレモンなど個性的ならっきょう漬けが多彩にそろっています。
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また鳥取には独自の練り物文化があり、なかでも「とうふちくわ」が名物。これは魚のすり身3に対して豆腐を7の割合で混ぜたちくわで、豊かな弾力があるうえたんぱく質が豊富なのも魅力です。15品以上の練り物があり、そのうち8品が「とうふちくわ」となっているなど、選ぶ楽しみがあるのもポイント。
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岡山の海産物では「ままかり」が有名です。これはニシン科の「サッパ」という小魚を使った岡山の郷土料理で、同館では焼いて干したタイプ、酢漬け、アヒージョ、甘露煮などさまざまな「ままかり」が売られています。一番人気は、刺身や寿司ネタとしても使える冷蔵タイプの酢漬けとのこと。なおその名称は、「まま(ご飯)をかり(借り)にいくほどおいしい」ことが由来。ぜひ試してみてください。
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「ままかりの酢漬」(410円・税込)
ファッションや日用品にも特色が光る
店内の奥は工芸品のエリアになっていて、コーナーの目玉となっているのが岡山のデニムです。岡山デニムといえば児島産が有名ですが、同店で最もプッシュしているメーカーは津山を拠点とする「内田縫製」。こちらは現地や催事のみで展開しているブランドで、アパレルショップでの取り扱いはありません。都内で直接触れられる店舗は「とっとり・おかやま新橋館」だけだそう。そのほかには、「ベティスミス」「デニムクローゼット」「エッジ・オブ・ライン」といったブランドのデニムが並んでいました。
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繊維業や縫製業が盛んな岡山は、畳縁(たたみべり)の国内シェア80%以上を誇る一大生産地でもあります。畳縁とは畳の角を補強し、装飾性を高めるためにつけられている布のこと。同店には専用のコーナーもあり、実は最も売れる商品はこの畳縁なのだとか。その理由は色のバリエーションが多彩かつ、価格がリーズナブルだから。ハンドメイド小物の材料として、手芸をするお客さんが買っていくそうです。
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畳縁は1巻約1.5メートルで税込198円
また、岡山の倉敷はマスキングテープの発祥地と言われ、ここでは鳥取も含めたご当地色のある絵柄など、数種のマスキングテープがそろっています。畳縁同様、鮮やかなカラーリングと手ごろなプライスで人気が高いとか。
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マスキングテープは約10種があり税込300円から
鳥取の工芸品は、「牛ノ戸焼(うしのとやき)」や「因久山焼(いんきゅうざんやき)」といった焼き物が豊富。店内奥に、岡山の焼き物「備前焼(びぜんやき)」とともに並んでいます。
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2階には旅の相談窓口もある
次は2階へ。レストランは「ビストロカフェ ももてなし家」という名称で、鳥取と岡山それぞれのご当地グルメや、フルーツを使ったスイーツなどが人気。テイクアウトで両県のおいしいものを食べ比べすることもできます。
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また2階には観光情報コーナーもあり、鳥取砂丘、大山、岡山後楽園、倉敷美観地区など馴染み深い観光地から、穴場スポット、温泉、宿泊施設、ご当地グルメまでプランに合わせて案内してくれます。
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さらに「鳥取県立ハローワーク」と「おかやま就職・移住応援センター」が共同運営する、就職と移住に関する相談コーナーも。こちらでは、地域の情報をはじめ就職支援制度や地元の求人企業への職業紹介をサポートしてくれます。
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計3,000円で買えるおすすめの逸品をセレクト!
合計3,000円以内でセレクトする商品は、フードをメインにさまざまなジャンルからチョイス。7品をピックアップしました。
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まずは鳥取のいちおしをご紹介します。トップバッターは前述した「とうふちくわ」。なかでも有名だという、かろや商店(加路屋)の「とうふ竹輪」を選びました。「とうふちくわ」には「蒸し」と「焼き」があり、定番は前者。その蒸したタイプを味わいます。
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「とうふ竹輪 食べきり二寸半」(119円・税込)。食べきり二寸半はハーフサイズの商品で、レギュラーの「とうふ竹輪」は205円(税込)。焼いた「とうふのやき」も同価格
初めての人は、まずそのまま楽しむのがおすすめとか。そのうえで、普通の豆腐のようにネギや生姜を添えて醤油で味わったり、わさびを付けたりするのもおいしいとのこと。食べてみると、一般的なちくわよりもむっちり、ぷっくりとした豊かな弾力が印象的。味付けはやさしく、甘みは控えめ。その分魚介や豆腐のうまみを感じる味で、辛口の日本酒など、繊細なお酒に合いそうだと思いました。
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次は、鳥取が誇る白バラ牛乳を使ったコーヒー飲料。特徴は、生乳を70%とたっぷり使う一方、カラメルや香料などは使わずに、牛乳とコーヒーの素材感をいかしているところ。飲んでみると確かに、ミルキーな風味が豊かですが甘すぎずすっきりしていて、上品なテイストです。お風呂上がりに飲みたいと思いました。
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「白バラコーヒー 200ml」(128円・税込)
残りの5品は岡山から。鳥取からの牛乳つながりで、蒜山のジャージー牛乳で作られた飲むヨーグルトから紹介します。こちらの特徴は、濃厚な牛乳と乳酸菌のみで発酵させた自然な味わい。テクスチャーはそこまでドロッとしていないものの、味の深みや余韻はしっかりめ。甘みや酸味はやさしめで、ヨーグルト本来のコクを感じられる一本となっています。
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「蒜山ジャージー 飲むヨーグルト 150ml」(199円・税込)
次は人気の高い「蒜山ショコラ」から、組み合わせが絶妙なイチゴ×抹茶×くるみ味を。開封すると、パッケージそのままの鮮やかなショコラバーがあらわれるとともに、チョコレートらしい芳醇な香りも。これは贈り物にも喜ばれることうけあいでしょう。
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「蒜山ショコラ 岡山産イチゴの抹茶クランチチョコレート」(648円・税込)
味は抹茶の渋みにチョコレートが合わさって、ほろ甘い和やかなテイスト。口どけはシルキーで、そこにドライイチゴの凝縮感のある甘酸っぱさ、くるみの香ばしさが良アクセントに。各素材がおりなすレイヤー感を満喫できる贅沢なおいしさで、お茶やコーヒーを用意してじっくり味わいたい逸品です。
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岡山のフルーツの王様は、やっぱり白桃。毎年7月上旬から8月下旬にかけてアンテナショップでも白桃が並び、なかでも特に「清水白桃」という高級ブランドが代表的。青果の白桃は2週間ごとに収穫できる品種が異なり、「清水白桃」がお店に並ぶのも夏の2週間ほどです。そこで今回は季節を問わずに楽しめる、瓶入りのシロップ漬けをピックアップしました。食べてみると、繊細な口どけと優雅な香り、清涼感あふれる味で実にエレガント。甘酸っぱさが主張しすぎない上品なフルーツコンポートです。
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「清水白桃 フルーツコンポート 200g」(1,296円・税込)
岡山の麺料理では「ひるぜん焼そば」が有名ですが、県民のソウルフードといえば「岡山インスタント麺株式会社」の「クルード スパゲティ式めん」。学校給食でおなじみの「ソフト麺」のような太麺と「トマトルー」という粉末ソースが入っていて、茹でずにフライパンで調理するのも特徴です。
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「クルード スパゲティ式めん」(194円・税込)
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食感はソフト麺より硬い印象で、ほどよくもっちり。「トマトルー」の味はケチャップより甘みや酸味が控えめで、マイルドです。濃すぎず薄すぎずの絶妙なバランスが、不変の人気を支えているのでしょう。時間が経ってもおいしく、県民の間では弁当の主食としても愛されているとのこと。常温保存できてアレンジも用途も幅広く、ボリューミーかつ価格も手ごろといいことずくめの一品です。
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最後は岡山・倉敷発祥のマスキングテープを紹介します。数種の絵柄があるなか、桃太郎のイラストが描かれたテープをセレクト。
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「マスキングテープ 桃太郎伝説」(572円・税込)
桃色をメインカラーとした鮮やかなグラフィックと、桃太郎伝説に登場するかわいらしいキャラクターが印象的。女性や子どもへのプレゼントにもおすすめです。
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取材でインタビューに答えてくれたのは、宮田朋彦店長。「1ヵ所でふたつのおいしさを楽しめるのが当店最大の魅力です。商品を眺めるだけでも、それぞれの特色や魅力を知っていただけるはず。旬の時期にはその季節一番の果物が並びますので、ご出身の方はもちろん、フルーツ好きの方にもぜひ足を運んでいただきたいですね」とコメントをもらいました。
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宮田朋彦店長
ふたつの県のアンテナショップということで、パンフレットの数も多種多様。2階の観光コーナーでは、両県をまたぐ旅行プランの相談も大歓迎とのこと。まずは同店での下調べから、楽しんでみませんか。
とっとり・おかやま新橋館
住所 | : | 東京都港区新橋1-11-7 新橋センタープレイス1・2階 |
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電話 | : | 03-6280-6474(1Fショップ) |
営業時間 | : | 10:00~21:00(1Fショップ) |
web | : | https://www.torioka.com/ |
文・写真:中山秀明
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。