3月に入り、暖かい日が続くようになりました。みなさんは、海外で“春のお祭り”としてメジャーな「イースター」をご存じでしょうか。日本ではまだあまり知られていませんが、イースターはスイーツとの結びつきが強いイベント。そして、国によって歴史や文化が異なるように、イースターのスイーツにもいろいろなバリエーションがあります。

そんな個性豊かなイースターのスイーツを知ってもらうために、4カ国にわたって紹介する旅へとご案内しましょう。ナビゲーターはスイーツで人を幸せにする芸人、スイーツなかのさんです。

画像1: スイーツで旅する世界。4つの国のイースタースイーツ誕生ストーリー

スイーツなかの

東京生まれ。早稲田大学卒業後、吉本興業に所属。子どもの頃から好きだったお菓子を独学で勉強し、パンケーキハットをトレードマークに唯一無二のスイーツ芸人として活動。老舗からコンビニまで多ジャンルの和洋菓子を1万種類以上食べ歩き、その確かな知識と情報で「林先生の初耳学」「メレンゲの気持ち」など多数のテレビ番組に出演。西武渋谷店の催事企画、行政と取り組んだ監修商品の発売など、幅広いジャンルで活躍中。

よろスィーツ!
スイーツ芸人のスイーツなかのです!

画像2: スイーツで旅する世界。4つの国のイースタースイーツ誕生ストーリー

イエス・キリストの復活を祝うお祭り、イースター。日本のスイーツ界でも少しずつ浸透してきましたが、みなさんの頭に浮かぶイメージはきっと、卵やウサギ型のかわいらしいスイーツなのではないでしょうか。

実は、イースターにまつわるお菓子は、ヨーロッパを中心にたくさんつくられており、そのバリエーションの豊富さには驚かされます。

今回は、4カ国のお菓子を選び、イースターとお菓子の結びつきや歴史を解説しましょう。イースターのお菓子を手がける日本のお店もご紹介しているので、ぜひいつか足を運んでみてください!

春の訪れを告げるお菓子「セムラ」

スウェーデンで、春の訪れを告げるお菓子としても知られている「セムラ」。見た目はシュークリームのように見えますが、ジャンルとしてはパンに分類されます。カルダモン風味の甘いパン生地で、マンデルマッサと呼ばれるアーモンドペーストとホイップクリームを挟んだつくり。カルダモンは、日本人にとってあまり馴染みはないですが、スウェーデンでは料理にも使われることが多く、家庭でも親しまれるスパイスです。

画像: 春の訪れを告げるお菓子「セムラ」

毎年1月に入ると多くのお店がセムラをつくりはじめ、チョコレート味をはじめとした色んなバリエーションのセムラが並びます。地元紙が「今年のセムラはどこが美味しかったか」という特集まで組むそうで、いかにセムラが愛されているかわかりますよね。

なぜ、この時期にセムラを食べるようになったかというと、イースター前の断食期間に由来します。断食は、復活祭の46日前からスタートしていましたが、その断食する前日に食べるご馳走がセムラだったそう。現在では、セムラを食べる習慣だけ残り、冬のお菓子として愛されています。

東京でセムラを食べることができるお店:
フィーカファブリーケン

画像1: 東京でセムラを食べることができるお店: フィーカファブリーケン

東京・世田谷の豪徳寺駅から少し歩いたところにある北欧菓子専門店、「FIKAFABRIKEN(フィーカファブリーケン)」。スタイリュッシュであたたかみがある佇まいのお店です。スウェーデン暮らしの経験をもつ、店主・関口さんが手がける北欧菓子は、人気のシナモンロールをはじめ、生菓子から焼き菓子まで豊富につくられています。

画像2: 東京でセムラを食べることができるお店: フィーカファブリーケン

フィーカファブリーケンのセムラは、ちょこんと帽子をかぶったようなかわいいルックス。外からは見えないのですが、ホイップクリームの下には自家製アーモンドクリームがたっぷり詰まっています。見た目以上の食べ応えです。カルダモンは種から挽いたものを使っていて、香りにもこだわったその味わいは、ナイスィーツ!

画像3: 東京でセムラを食べることができるお店: フィーカファブリーケン

関口さんにとってセムラは、スウェーデン留学中に初めて食べ、留学時代の友達と一緒に手作りしたこともあるなど、思い入れの強いお菓子の一つ。開店当初から人気の一品で、セムラを求めて来るお客さんも増えているそう。一度食べたら、きっとハマります!

FIKAFABRIKEN(フィーカファブリーケン)

住所東京都世田谷区豪徳寺1-22-3
webhttps://fikafabriken.jp/

母の日の伝統菓子でもある「シムネルケーキ」

イギリスのイースターといえば「シムネルケーキ」がお馴染みです。ドライフルーツやスパイスを合わせたケーキの上に、焼き目をつけたお団子状のマジパン(アーモンドと砂糖を練り合わせたお菓子)を飾っているのが特徴。このマジパンを数えると、11個のせられていることがわかります。これは、イエス・キリストの12人の弟子から、裏切り者のユダを除いた「11人」の使徒を意味しているのだそう。

画像: 母の日の伝統菓子でもある「シムネルケーキ」

また、イギリスの母の日はイースターとも結びつきが深いのが特徴。毎年復活祭から3週間前の日曜日を「マザーリング・サンデー」と呼び、祝います。17世紀頃、親元を離れ奉公に出ていた娘たちが、マザーリング・サンデーのタイミングで里帰りすることが許されていました。この帰省の際に、母への感謝を込めて焼いて持ち帰ったのが、シムネルケーキなのです。そのため、シムネルケーキは、母の日の伝統菓子としても知られていて、これが「母の日」の起源とも言われています。

東京でシムネルケーキを食べることができるお店:
レイジーデイジーベーカリー

画像1: 東京でシムネルケーキを食べることができるお店: レイジーデイジーベーカリー

東京・湯島にあるイギリス菓子のお店「Lazy Daisy Bakery(レイジーデイジーベーカリー)」。イギリスの伝統菓子、郷土菓子がアンティーク調のかわいいお皿の上にずらりと並び、小さなお店のなかはまるでおもちゃ箱のようです。店主の中山さんは、お菓子作りをする上で「一線を越えない」ことを心がけ、伝統菓子や郷土菓子の「らしさ」をなくさないようにするという見極めを大切にしています。

画像2: 東京でシムネルケーキを食べることができるお店: レイジーデイジーベーカリー

レイジーデイジーベーカリーのシムネルケーキは、「ハレのお菓子らしい華やかで伝統的な味わいを大切にしたい」と、想いを込めてつくられています。カランツやサルタナなどのレーズン、レモンやオレンジなどのピール、グリオットチェリーのコンフィなどをオレンジ果汁とブランデーでじっくりマリネ。オリジナルにブレンドした数種類のスパイスを混ぜ込み、生地を焼き上げています。

画像3: 東京でシムネルケーキを食べることができるお店: レイジーデイジーベーカリー

マジパンを3つ飾ったかわいいサイズのシムネルケーキは、ちょっとしたプレゼントにもナイスィーツ! 誰かと一緒に食べたいあたたかなお菓子が、レイジーデイジーベーカリーには揃っています。

Lazy Daisy Bakery(レイジーデイジーベーカリー)

住所東京都文京区湯島2-5-17
webhttps://twitter.com/lazydaisybakery

羊の形が印象的な「アニョー・パスカル」

フランス・アルザス地方でイースターの時期に食べられる伝統的なお菓子、「アニョー・パスカル」。羊型のかわいい焼き菓子です。アニョーは「羊」、パスカルは「復活祭」の意味。羊の由来は、イエス・キリストのことを「神の仔羊」と呼んだことや、ユダヤ教の「過ぎ越しの祭り」の際にいけにえとして仔羊を食べていた風習など、さまざまな説があるそう。

画像: 羊の形が印象的な「アニョー・パスカル」

卵をたっぷりと使い、ふんわりと焼き上げたビスキュイ生地に、粉砂糖をまぶしたシンプルなつくりのアニョー・パスカル。そこに赤と白のアルザスの旗や黄と白のバチカン市国の国旗をさしたり、首にリボンを巻いたりと、さまざまな飾りつけをします。

気になるのは、いったいどうやってこんな綺麗な羊型に焼き上げるのか?ということ。実は、アニョー・パスカルは仔羊型の専用陶器で焼かれているんです。アルザスのスフレンハイム村は赤土で作られた伝統的な陶器が有名で、ここでは他にもクグロフなどの焼き菓子の型も作られています。お菓子との結びつきが深いアルザスは、ぼくもいつか行ってみたいところです。

東京でアニョー・パスカルを食べることができるお店:
ルコント

画像1: 東京でアニョー・パスカルを食べることができるお店: ルコント

1968年に誕生した「A.Lecomte(ルコント)」は、日本で最初のフランス菓子専門店とも言われている老舗で、ぼくも大好きなお店です。
※ルコントは、2022年8月に全店閉店します

画像2: 東京でアニョー・パスカルを食べることができるお店: ルコント

ルコントのアニョー・パスカルは、伝統的な味を踏襲し、小麦粉、砂糖、卵、バターといった基本の材料に、レモンの皮を加え、ふわっと焼き上げています。シンプルながら、やさしく深い味わいのビスキュイ生地がナイスィーツ! 型は、フランス・アルザス地方のスフレンハイム村の職人による、手作りの陶器。一つ一つハンドメイドされた、伝統的な一品を使用しています。

画像3: 東京でアニョー・パスカルを食べることができるお店: ルコント

ルコントでアニョー・パスカルを販売し始めたのは、数年前にヨーロッパのファッションブランドを扱う会社から依頼があったことがきっかけでした。イースターはヨーロッパでとても大切なイベント。そこで、各店のスタッフへ日頃の感謝とねぎらいを込めて、伝統菓子をプレゼントしたい、というオーダーがあったとか。この想いに応えるべく、型を取り寄せてつくり、それ以降お店でも販売することになったそう。この時期だけ会える、やさしいお菓子です。

A.Lecomte(ルコント)広尾本店

住所東京都港区南麻布5-16-13
電話03-3447-7600
webhttps://a-lecomte.com/
※広尾本店の他には、日本橋三越店、渋谷店、羽田空港店があります
※2022年8月をもって全店閉店が決まっています

平和の象徴である鳩がモチーフの「コロンバ」

イースターの季節が近づくと、イタリアのパン屋やケーキ屋、スーパーにも必ず並ぶという、大きな菓子パン「コロンバ」。ブリオッシュのような甘い生地に、オレンジなどのフルーツ系のピールを混ぜ、あられ糖などをかけて焼き上げています。

画像: 平和の象徴である鳩がモチーフの「コロンバ」

パネトーネにも近い味わいで、カットして食べるような大きなサイズが一般的。見た目は十字型にも見えますが、これは羽をひろげた鳩がモチーフです。コロンバはイタリア語で「鳩」という意味があり、イタリアでは鳩が復活の象徴、平和のシンボルとされていることからこの形になったと言われています。

発祥には諸説ありますが、最も古い言い伝えだと、西暦572年まで遡ります。ロンバルディア州のパヴィアに住んでいた菓子職人が、侵攻してきたランゴバルド族の王に、平和の象徴として鳩型のパンを差し出した、というストーリー。この話が関係しているのか、現在でもロンバルディア州では、ミラノを中心にコロンバがたくさん作られています。

日本でコロンバを食べることができるお店:
ドンク

画像: ドンク三宮本店

ドンク三宮本店

1905年、神戸で創業した「DONQ(ドンク)」は、日本でフランスパンブームを起こすなど、パンの歴史を語る上では欠かせないお店。同店では、1970年代からコロンバを手がけており、50年近く愛されている、大ロングセラーです。

画像1: 日本でコロンバを食べることができるお店: ドンク

バターと卵を使ったイタリアの発酵菓子「パンドーロ」をベースにした生地で、オレンジピールを混ぜ、表面にマルツァパーネ(アーモンドと砂糖を練り合わせた餡のようなもの)を塗り、あられ糖をまぶして焼き上げています。爽やかな香りに、ふっくらとやさしい甘さが楽しめる一品です。

画像2: 日本でコロンバを食べることができるお店: ドンク

お店でコロンバを販売することになったのは、社員が1960年代から頻繁にヨーロッパ各国を訪れて食文化を学ぶなかで、イタリアにも興味を抱いたのがきっかけ。1975年には、イタリアから技術者を招いたりドンクの技術者をイタリアへ送ったりして、伝統発酵菓子のパネトーネやパンドーロなどの技術指導を仰ぎ、本場のノウハウを学んでいました。そんななか、イタリアのパンや発酵菓子を扱う新たなブランドを立ち上げたドンクは、そこで販売する一品としてコロンバをつくることに。その頃から配合や見た目に大きな変化もなく今に至るという、積み重ねた長い歴史も素晴らスィーツな一品です。

※コロンバ販売期間:2021 年3 月24 日(水)~ 4 月6 日(火)

DONQ(ドンク)

店舗情報全国展開のため公式サイトをご参照ください
http://www.donq.co.jp/pc/shop/
webhttp://www.donq.co.jp/pc/

世界のイースターのスイーツ、いかがでしたか?

今回は、「日本でも食べられるスイーツ」という視点で選んだものを紹介しましたが、世界には、もっともっとたくさんの種類のイースタースイーツがあります。

特にイースターは、共通したテーマがあるにもかかわらず、国や地域によって歴史や伝統との結びつきもさまざま。歩んできたストーリーを比較できるのも、おもしろいところです。

この記事を読んで、お菓子をきっかけに、その土地に興味を持ったり、いつか行ってみたいなあと思ってくれたりしたら、うれスィーツです。

画像3: 日本でコロンバを食べることができるお店: ドンク

※本記事は、2022年8月2日に一部内容を更新いたしました

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

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