例年であれば、3月から4月にかけて見ごろを迎えた桜の景勝地は大勢の観光客で賑わいます。そんな人混みを避けて桜をご覧いただける特等席のひとつは、実は飛行機かもしれません。速度があるので一瞬ですが、淡い桃色の絨毯は忘れられない景色になることでしょう。JALパイロットのオススメの筆頭は、なんといっても成田空港です。
絶景スポット1「成田空港の桜」
「成田空港の着陸直前に右(西)側をご覧ください。桜が咲き乱れる山(空の駅・さくら館)があり、シーズンには美しい桜が見られます。夜間はライトアップされていて、とてもきれいですよ」(52歳男性)
この桜は空港からほど近く、離陸前にもご覧いただけます。国際線のご利用はまだ難しい状況ですが、いつか桜の季節に成田空港をご利用される際は、ぜひお楽しみください。
「成田空港A滑走路での離陸の順番待ちのとき、滑走路の反対側に見えます。また南風が吹いていて、北から南に向かって着陸するときには、着陸前にもご覧いただけます。昼間もいいのですが、夕方の夜桜を離陸の順番待ちのときに見るととても和みます」(50歳男性)
絶景スポット2「高松空港のほか、全国のさまざまな空港の桜」
「運航中に桜とはっきりとわかるような景色は、あまりないかもしれません。しかし国内の多くの空港は近くに桜が植えられておりますので、離着陸の際には客室の窓からお楽しみいただけます」(52歳男性・機長)
このように、実は日本全国の空港には桜の絶景スポットが数多くあります。なかでももうひとつのおすすめが、高松空港です。
「高松空港滑走路横に位置する高山航空公園の桜はきれいに見えます」(52歳男性・B737機長)
さて、桜以外にも絶景は数多く存在します。羽田からのフライトでしたら、パイロットオススメの絶景スポットが豊富にあります。
絶景スポット3「東京のランドマークと富士山」
「羽田から離陸する際、C滑走路(34R)からの離陸で西方面に向かう路線の場合、スカイツリー、東京ドーム、富士山と大変きれいに見えます」(53歳男性・B737機長)
絶景スポット4「天橋立の美しい緑」
「羽田ー出雲や羽田ー山口宇部線などなら、日本海に差し掛かった宮津市の上空あたりでぜひ地上を見てください。天候にもよりますが、天橋立の緑色のラインがきれいに見えるときがありますよ」(52歳男性・B737機長)
空の上なら、地上から見るのが当たり前の美しい景勝地の知られざる顔を発見できそうです。
絶景スポット5「木曽山脈と飛騨山脈の美しい紅葉」
地上から約1万メートルにも達する巡航高度ともなると、人工の建造物は小さくしかご覧いただけませんが、雄大な自然となると別です。ダイナミックな風景が窓いっぱいにご覧いただけることもあります。
「羽田ー福岡、羽田ー熊本など南に向かう路線で、離陸してから15分から20分後、木曽山脈や飛騨山脈の上空を秋に飛行する際に、紅葉で山が赤く染まって見えることがあります」(52歳男性・機長)
絶景スポット6「八ヶ岳から諏訪湖までの山々」
「東京ー福岡線で離陸後15分くらい経ったら右手をご覧ください。八ヶ岳、北アルプス、南アルプス、諏訪湖といった景勝地が次々に見えます。冬は雪化粧が施され、さらに絶景になりますよ」(55歳男性・B787機長)
さて、これらの景色は季節や天候、運航条件から高い可能性で見ることができる絶景ですが、なかには“運がよければ見られる”ような、特別な景色もあります。
絶景スポット7「全国各地の花火」
「夏の週末の20時前後に関東や西日本を飛行すると、あちこちで花火が上がっていて、大変きれいです。また、使用滑走路にもよりますが、羽田空港からの離着陸時には、ほど近い大型アミューズメントパークの花火が上がっているのが美しく見えます」(40代男性)
さらに、上空ならではの特別な自然現象をご覧いただけるケースもあります。
絶景スポット8「晴れた夕方に現れることがある“ヴィーナスベルト”」
「晴れた日の夕方、空の色がツートンカラーのように見えることがあります。これは日没前に地球の“影”が見えており、この境目の上が昼の部分、下が夜の部分です。その境目のアッシュピンクの帯状のラインは『ヴィーナスベルト』と名付けられています。日の出前にも見られますが日没前の方が見えやすいですし、東西に飛んでいる飛行機では両方の窓から見ることができます」(56歳男性・B767機長)
普段は何気なくご覧いただいている機外の景色にも、実はこのように穴場の絶景や必見の風景が数多くあるのです。またご搭乗の機会が訪れたときには、上空だからこそ見られる絶景を探してみてはいかがでしょうか? とはいえ時速850kmにも及ぶ飛行機ともなると、視界に入るチャンスはごくわずかです。特別な絶景をお見逃しのないよう、くれぐれもご注意ください。
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