予約なしで気軽に見学できるため、観光にもおすすめ。入館方法からお土産、見学ツアーまで、一通り紹介しましょう。
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予約不要で気軽に見学できる
「東京ジャーミイ」の正式名称は「東京ジャーミイ・トルコ文化センター」。最寄りは昨今、ハイセンスなカフェや飲食店が集まる小田急線、東京メトロ千代田線の代々木上原駅。その駅の西口を出て徒歩5分ほどの場所にあります。建物はオスマン朝のモスクを忠実に再現したデザイン。1階には本屋さんやマーケット、多目的ホールがあり、2・3階がモスクとなっています。
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外観は、丸いドームとミナレット(尖塔)が印象的
モスクとは、ムスリム(イスラム教徒)にとっての礼拝場のことで、日本国内では約100カ所にあります。その中でも、集団で礼拝を捧げる金曜礼拝を行う大きなモスクが「ジャーミイ」。ここは日本最大の規模を誇ることもあって、東京はもとより全国からムスリムが訪れます。
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1階のエントランスに入ってすぐのところにある、トルコの民家の客間
一般的に、モスクに異教徒が入ることは許されませんが、ここは文化交流のための場所でもあり、誰でも入ることができます。入館は無料かつ基本的に予約不要で、金曜のみ14時から。土日祝は14時30分より日本語ガイド付きの見学ツアーが開催されていて、こちらも予約は不要。平日は、5名以上の団体の場合のみ、見学ツアーを組んでもらうことができます(要予約)。
また、毎週土曜に定期開催される女性向けイスラム講座やこどもクルアーン教室(イスラム教聖典の講座)などがあるほか、不定期開催のスポット的なイベントなども。詳細は公式サイトをチェックしてください。
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内には至るところに美しいオブジェや装飾が
80年以上の歴史をもつ由緒正しきイスラムの礼拝所
今回は見学ツアーに参加し、広報担当の下山茂さんにガイドをしていただきました。下山さんは大学時代にアフリカのスーダンに約1年滞在し、そこで出会ったムスリムの人々に惹かれて改宗したのだそう。
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東京ジャーミイ・トルコ文化センターの下山茂さん。左手に持っているのはナツメヤシの実「デーツ」で、1階エントランスでも試食することができます
まずは、日本とトルコの関係や「東京ジャーミイ」の歴史などを教えてもらいます。同館の前身は「東京回教礼拝堂」。1917年に起きたロシア革命で迫害を受け、ロシアのカザン州から日本に避難したトルコ系民族タタール人によって、1938年に設立されました。やがて1986年に老朽化に伴い取り壊されましたが、寄付金などによって2000年に再建されたのです。
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トルコ文化センターの多目的ホール
オスマン朝のモスクを再現しているだけあり、装飾品はもちろん建具や家具もトルコから持ち運んだもの。多目的ホールの一角にはイスラムに関するさまざまな書籍と、それを読むスペースも用意されています。また、有名な啓典であるコーラン(クルアーン)の写本が飾られているなど、貴重な資料も多数。
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イスラムの書籍を閲覧できるスペース
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コーランの写本は2015年に「東京ジャーミイ」を訪れた、トルコのエルドアン首相から寄贈されたもの
美しきモスクの見どころ
1階奥の階段から、いよいよモスクがある上階へ。階段をのぼると2階がバルコニーになっていて、その先にモスクの入り口があります。
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モスクの入り口。ここで靴を脱ぎ、扉を開けて入館します
重厚感にあふれる扉を開けると、そこはまるで別世界。思わず息を飲む荘厳な空間が広がっています。2階建て構造のさらにその上の高さまで壁が続き、天井にはドームを有するモスク。圧倒的な開放感があり、ここには一度に最大800人が入れるそうです。
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一面に緻密な装飾がちりばめられ、神の住まいを美しく演出
正面中央部の窪んだ部分は「ミフラーブ」(聖龕・せいがん)があり、これは聖地であるメッカの方角を示しています。大きなろうそくが置かれているのが特徴です。
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壁面や天井にはアラビア文字のカリグラフィが施され、ステンドグラスにはアラベスク文様があしらわれています
館内で見られるアラビア文字のカリグラフィは、コーランの一節を用いたもの。また、アラベスク文様は、チューリップやカーネーションの原種をはじめ多彩な植物文様と幾何学文様からなっています。
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シャンデリアは、オリエンタルなデザイン
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陽光を受けて、鮮やかながらやさしい明かりを空間に取り込むステンドグラスも必見
建築的な美しさはもちろん、ムスリムの方々による礼拝を間近で見られるのもここならでは。
モスクを見学する際に知っておくべきルール
モスクは女性と男性で礼拝場所がわかれていて、「東京ジャーミイ」の場合は2階(モスク内の1階)が男性・女性共用、3階が女性専用。入って右側の扉の奥から上がります。
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3階は女性しか立ち入りできません
男女の礼拝場所以外にも、「東京ジャーミイ」には大きくふたつの注意点があります。
■1.撮影について
館内で記念撮影はできますが、営利目的の撮影はもちろんのこと、何らかの目的のある撮影は事前に事務所に申し出る必要があります。なお、礼拝中の方を撮影することは禁止されていますので、注意しましょう。
■2.ドレスコードについて
肌の露出が多い服装はNGで、たとえば男性なら短パンやタンクトップではいけません。女性もショートパンツやミニスカート、ノースリーブなど露出の多い服装は控えましょう。また、女性の場合はストールかスカーフ、帽子で髪を覆うことが大切です。
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スカーフは各自持参しましょう
お土産やフードなどのお楽しみも盛りだくさん
見学の際にチェックしておきたいのが、1階の書籍のコーナー。一般書店では売られていない外国の絵本や写真集、トルコのガイドブックなどが並べられています。
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イスラム教や学術的なもの以外に、音楽や美術など文化的なテーマの本も多く、スパイスやトルコ料理について書かれた実用的な一冊も。また、下山さんがおすすめするのは封筒とセットになったメッセージカード。トルコから直輸入した本場のデザインが美しく、贈り物にはもちろんお土産にも最適です。
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メッセージカードは150円
また、ムスリムの戒律によって食べることが許された食べ物を扱う「ハラール・マーケット」も注目。ここは1階奥の離れのような場所にあり、トルコ・インドネシア・マレーシアから輸入したアジア系食品のほかに、アルコールの入っていない醤油を使って作られた日本のせんべいなどハラールの和食品もそろっています。パン、スイーツ、チーズなどもあるので、ぜひ行ってみましょう。
1年を通して、下山さんが特におすすめするのがラマダンの時期。日本では一般的に厳しい断食だと思われていますが、ムスリムにとっては聖なる月にあたり、決して苦行ではない待ちに待った一ヶ月。
ラマダン月に断食をするのは、預言者ムハンマドがアッラーから最初の啓示を授かった月だからです。
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「東京ジャーミイ」でイマーム(指導者)を務める、ムハンマド・リファット・チナルさん
イスラム暦は西暦よりも1年の日数が10日〜11日短いため、西暦ではラマダンの時期が年によってずれていきます。2019年のラマダンは5月6日から6月3日までで、2020年は4月23日から5月23日。この間毎日、ムスリムは日の出から日没まで一切の飲食を絶ち、日没後にイフタールと呼ばれる食事会を開きます。
東京ジャーミイでは、このイフタールを約500食、一般の方にもふるまっています。しかも、本国からこのためだけに招いたシェフによる、本場そのままのトルコ料理です。
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シャンデリアを真下から見ると、雪の結晶のような六角形になっています
毎週土日、午後2時半から開催されている無料のツアーの所要時間は約90分。興味を惹かれる話と現地を旅行しているような非日常感で、あっという間です。また、下山さんはどんな質問にも丁寧に答えてくださり、充実した時を過ごすことができました。
東京ジャーミイの素晴らしさは、空間そのものや礼拝の様子を間近で見て、体感できることにあります。美しい装飾に目を奪われ、神聖な空間に気持ちがリフレッシュされるだけでなく、楽しみながらイスラム教やトルコについての知識を深めることができる場所なのです。
東京ジャーミイ・トルコ文化センター | ||
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住所 | : | 東京都渋谷区大山町1-19 |
電話 | : | 03-5790-0760 |
営業 | : | 10:00~18:00 |
定休日 | : | 無休 |
web | : | https://tokyocamii.org/ |
撮影:豊川裕之
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