近年は緑豊かな風景をバックに、のびのびとテレワークができる複合施設も誕生。「養老公園」や「養老の滝」といった人気観光スポットへのお出かけもしやすく、気軽に長期ステイできるようになりました。
フレキシブルに活用できるワークスペース「YOROffice」
2022年9月、養老公園から車で5分の距離に誕生したのが、用途に応じてフレキシブルに使用できるテレワーク施設「YOROffice(ヨロフィス)」。養老公園をイメージして作られた館内は、キッズスペースやシャワールームなども完備。他にも、ソロワークスペースや3Dプリンターが使用できる多目的スペースなどがあり、個々のワークスタイルに合わせて活用できます。
リモートワークが浸透し、どこにいても仕事ができるようになりつつある今日この頃。都心の喧騒を忘れさせるこの環境下で、リフレッシュも兼ねたワーケーションはいかがでしょうか。
「地元の起業家や旅行者、移住者にとって、情報共有や憩いの場になってほしい」という願いのもと完成した「YOROffice」。偶然の出会いから、新たなアイデアが生まれるかもしれません。また、こちらは企業単位での滞在も可能。カジュアルな雰囲気のスペースを活用すれば、メンバー同士でのコミュニケーションがはずんで、チームワークも深まりそうです。
地元の職人と交流できるオリジナル作品づくり体験に参加
自然の恵みを肌で感じることができる養老町。地元の特産品を用いたワークショップは、老若男女が集い、にぎわいを見せています。
丸めて、伸ばして、じっくり自分と向き合う陶芸体験
地元の陶芸家・福田さん夫妻の工房で開かれる陶芸教室では、マグや平皿など、さまざまな器の作り方を丁寧にレクチャーしてくれます。
「言葉より、絵を描くほうが気持ちを伝えやすい」と、夫・覚さんは高校時代からデザインを学び、食器デザイナーとして34年間名古屋で活躍しました。その後、自然豊かな養老町の美しい景色に惚れ込み、現在の工房で日々作品を製作しています。
陶器製作体験では、福田さん夫妻の笑いが絶えない朗らかな空間で、ゆっくり陶器作りに没頭できます。完成形をイメージしながら、磁器と陶器を合わせた粘土を伸ばしたり、切ったり……。器のアイデアを膨らませながら一つひとつの作業を慎重に。焼き上げ後は、2カ月ほどで自宅に届きます。
丸いフォルムが愛らしい、ひょうたんランプづくり
養老町の特産品であるひょうたんに、思いおもいのデザインを刻むアート作品づくりにも挑戦できます。ひょうたんランプをレクチャーしてくれるのは「あかり空間アーティスト」の森さん。「地元名産のひょうたんの魅力を全国に広めたい」と、ネイリストからあかり空間アーティストに転身しました。
さまざまな大きさの穴を開けたり、はんだごてで表面を焦がすことで模様を描いたり、無我夢中で作業に没頭できるのが特徴。思うままにひょうたんを装飾していきます。完成したランプに灯りをつけると、あたり一面に幻想的な光と影が広がります。
「体験を通して、人との出会いも大切にしている」と森さん。笑顔で体験者に寄り添う姿が印象的でした。
文化人が想いを馳せた宿。時を超えて愛される旅館「千歳楼」
1764年に創業以来、その形を守りながら現在にまで受け継がれてきた老舗旅館「千歳楼」。脇道にそれたところにひっそりと一軒、静かに呼吸をするようにたたずんでいます。
大正天皇や、日本画の巨匠・竹内栖鳳など、数々の文化人も療養に訪れたとのこと。彼らがこの地でさまざまなことに想いを馳せたであろう当時の空間をそのまま、感じることができます。
厳かな雰囲気を感じる客室は大正時代から昭和初期にかけて作られました。使用する木材を各部屋によって変えるなどのこだわりも。床や壁には長い年月を感じさせる箇所もあり、修復を繰り返しながら守り今日まで受け継がれています。
窓から見えるのは、文化人が愛した「千歳楼」の庭園の景色。季節によって姿を変える風景に思わずうっとり。天候が良ければ名古屋駅まで見ることができ、現代社会の象徴であるにぎやかなビル群と歴史を感じる客室が同居した景色の異色さを味わえます。
創業当時と変わらない姿のままで、愛され続ける宿でありたいと願う
そんな千歳楼を当時と変わらぬ姿のまま守り続ける、吉岡さんご夫婦にお話を伺いました。
吉岡さんご夫婦で6代目となる千歳楼。一時は、あちらこちらに宿泊施設が建設され、旅館に泊まりに来る客足も遠のいたそう。しかし、「時代の流れに沿って新しくなるのではなく、古き良きたたずまいのままの状態で、後世にも伝承し続けていきたい」とこの旅館を守り抜くことを決意。
「それまでは千歳楼へ足を運ぶことに対して、気後れしてしまう方も少なくないようでした。しかし、地元職人が、体験教室を開講したり、音楽や、芸術などの講演会を催したりと、さまざまなイベントを開催。今では、地域の大広間やロビーに地元の人や観光客が集うようになりました」と、笑顔で語るお二人。訪れる方の笑い声が聞こえてくるのがとても幸せだといいます。
養老町の魅力が詰まった、新しいイベントも随時開催
おうち薬膳研究家の高澤真美子さんが考案した薬膳料理メニューをもとに、千歳楼では「薬膳料理教室」を開講。岐阜産、養老産の地元食材や、日本の「名水百選」にも選ばれている養老の水を使い、旬を感じられる季節ごとのレシピを提供します。このイベントのためにシイタケや、和ハーブの自家栽培も始めたそうです。「時期によっては収穫から調理までを体験できるかもしれません」と、構想が膨らみます。
ほかにも2階の大広間では「ヨガ教室」や、体験プランのパートで紹介した「ひょうたんランプづくり体験」などのイベントを開催。養老町と千歳楼、両方の魅力をじっくり感じることができそうです。
養老町の自然を第一に考える職人から教わる生木のスプーンづくり
養老町を代表する木材家具を親子で作っている「久保田家具工房」。父・久保田堅さんは、木材彫刻作品を主とした家具を制作。息子・芳弘さんは、約20年間生木を使った家具やカトラリーを制作しています。
生木とは、伐採したばかりの水分をたっぷり含んだ木材のこと。一般的に家具として加工される木材よりもやわらかく、湿っているのが特徴。自然豊かな養老町で採れる生木を積極的に使用し、「養老町に生えている、手つかずの木を何とかしたい」と天然資源の魅力を発信するとともに、地域の環境保護にも協力しています。
生木の魅力は「素材本来の木目を活かして作るからこそ、美しい模様を際立たせることができること」と芳弘さん。作品からは木材の温かみを感じます。
そして「もっと多くの人に故郷の山や、そこに植わっている木について興味を持ってもらいたい」と、始めたのがワークショップです。
工房では「お気軽体験(木型からスプーンをくりぬく)」「じっくり体験(生木から斧やナイフでスプーンを成形)」を開催。作品づくりに必要な工具は用意されているので、好きな木を選び、成形します。「生木は感触がやわらかく、扱いやすいので、初心者でも作品を作りやすいのが特徴です。また、木材の種類も選ばず、自宅に植わっている木でも応用できますよ」と芳弘さん。旅から帰った後も続けられる、一生ものの体験になりそうです。
「孝子物語」の舞台「養老の滝」でマイナスイオンを浴びて
日本の滝百選に選定されている「養老の滝」は、「親孝行な木こりが、泉から湧き出ていたお酒をひょうたんに入れて詰めて持ち帰り、父に飲ませると若返った」という孝子物語で有名。高さ30m、幅が約4mあり、その眺めは迫力満点で思わず圧倒されます。
滝の音や、水しぶきによるマイナスイオンで、心も体もリフレッシュ。日頃の疲れを吹き飛ばします。
養老の滝の近くにある「菊水霊泉(菊水泉)」にもぜひ立ち寄ってください。
日本の名水百選だけでなく日本三大銘水にも認定されている菊水霊泉。水汲み場もあり、ボトルなどに入れて持ち帰ることができます。
長期滞在型観光地へと生まれ変わった養老町の魅力を全国へ発信
ワーキングスペースが充実しているのはもちろんのこと、この土地ならではの魅力をもっと知ることができる体験プランを開催している養老町。「今までは、観光目的の方しか訪れなかった。しかし、使いやすさを追求したテレワーク施設も建設し、地域とつながる参加プログラムも考案したので、もっと養老町の魅力を知ってもらえたら」と地域観光資源開発推進機構の岩下智之さんも、期待の念を語ってくれました。
新ワーケーションスポットとして新たな一歩を踏み出した岐阜県・養老町。日常を飛び出して、緑に囲まれたこの地で新たなワークスタイルに挑戦してみませんか? これから活躍の幅を広げる地元の起業家や職人に出会えるかもしれませんし、あなたの中に眠る新たな可能性に気付けるかもしれません。
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