秋分の頃、里山や川沿いを鮮やかに染め上げる彼岸花。全国には、棚田のあぜ道や公園、情緒ある寺社の境内など、まるで赤い絨毯のような景色に出合える名所が点在します。
この記事では、彼岸花の見頃や各スポットのアクセスに加え、周辺の観光情報やイベント情報についてもあわせてご紹介。定番から穴場まで、秋の小旅行にぴったりの“赤の絶景”を探しに出かけてみませんか?

彼岸花の特徴は?

秋のお彼岸の時期に咲くことから、古くから田畑やお墓の周囲に植えられ、生命の循環や人々の記憶と結び付けられてきた彼岸花。仏教とも深い関わりがあり、「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」という別名でも親しまれています。花言葉は「情熱」「独立」「悲しい記憶」「諦め」とされ、妖艶で鮮烈な赤色は見る人の心に深く残ります。

例年の見頃は9月中旬で、全国各地の群生地では一面が真紅に染まる景色を楽しめますが、近年は酷暑の影響で花の数が減少したり、開花時期がずれたりすることもあるといわれています。そのため、お出かけする際には、観光協会や公園の公式サイトのほか、SNSなどで最新の開花情報を確認してから訪れるのがおすすめです。

【宮城県・大崎市】羽黒山公園

15万本の彼岸花が咲く、真紅の丘

画像1: 15万本の彼岸花が咲く、真紅の丘

宮城県大崎市北部にある羽黒山公園は、小高い丘陵地に広がる自然豊かな公園です。南側の斜面およそ5,000平方メートルに約15万本の彼岸花が一斉に咲き、丘全体が真紅に染まります。見頃は例年9月中旬以降。県北随一の群生地として、毎年訪れるファンも多いそう。

画像2: 15万本の彼岸花が咲く、真紅の丘

公園内はゆるやかな起伏がありながらも、途中には東屋やベンチが点在しており、休憩を挟みながら散策を楽しめます。カメラは広角で斜面全体を収めるもよし、望遠で花の群生を圧縮して撮るもよし。朝霧が残る時間帯や、夕方の斜光が入る頃は特に神秘的な表情に出会えます。

見頃となる2025年9月23日(火・祝)に開催される「羽黒山彼岸花の里まつり」では、地元グルメのマルシェやステージイベント、写真コンテストなども行われ、ファミリーにもカメラ好きにもおすすめのスポットです。

羽黒山公園

見頃9月中旬〜9月下旬
住所宮城県大崎市古川小野字羽黒72-1
電話0229-23-7097(大崎市観光交流課)
料金無料
アクセス東北新幹線「古川駅」から車またはバスで約20分/東北自動車道「古川IC」から車で約15分
web大崎市公式サイト
※開花情報は長岡地区公民館ブログよりご確認ください。

【福島県・二本松市】安達ヶ原ふるさと村

鬼婆伝説の里を染める、美しい花々

画像1: 鬼婆伝説の里を染める、美しい花々

安達ヶ原の鬼婆伝説で知られる地にある「安達ヶ原ふるさと村」は、農村生活館や絹の家、武家屋敷などが点在する“昔の日本”を体感できるテーマパーク。茅葺き屋根や黒塀、土蔵が並ぶ風景の縁を、秋には真紅の彼岸花が縫うように彩ります。

画像2: 鬼婆伝説の里を染める、美しい花々

住民グループが10年以上にわたって球根を植え継いできた彼岸花は、8月下旬から10月上旬にかけて次々と開花し、最盛期の9月下旬には里全体が鮮やかな赤で染まるほど。古民家の軒先や水路沿い、武家屋敷の庭先など、建物とのコントラストが絵になる撮影スポットも多くあります。

屋内遊び場「げんきキッズパークにほんまつ」も併設し、天候を問わず家族で楽しめるのが嬉しいポイント。土産店「ふるさと館・Oniba」では、和菓子や清酒など二本松の名産も揃うので、花散歩の締めくくりに立ち寄ってみてください。

安達ヶ原ふるさと村

見頃8月下旬〜10月上旬(ピークは9月下旬)
住所福島県二本松市安達ヶ原4-100
電話0243-22-7474
料金無料(各施設・体験は有料の場合あり)
アクセスJR東北本線「二本松駅」からバスで約10分「安達ヶ原」下車/東北自動車道「二本松IC」から車で約10分
web安達ヶ原ふるさと村 公式サイト

【埼玉県・日高市】巾着田

高麗川に抱かれた真紅の絨毯に魅了される

画像1: 高麗川に抱かれた真紅の絨毯に魅了される

埼玉県・日高市にある巾着田(きんちゃくだ)は、高麗川の蛇行がつくり出した直径約500m・広さ約3.4ヘクタールに彼岸花が群生する全国有数のスポット。彼岸花関東三大名所のひとつとしても知られています。秋分前後の見頃には真紅の彼岸花が林床を埋め、川面のきらめきと重なって一面が赤のグラデーションに染まります。

園路はゆるやかな高低差で歩きやすく、木立を抜けて現れる群落はまさに“真紅の波”のよう。花の密度が高い林内は午前の木漏れ日が差す時間帯が特に美しく、写真映えの一枚が狙えます。

画像2: 高麗川に抱かれた真紅の絨毯に魅了される

地形そのものが見どころで、名称の由来となった“巾着”の形は、標高305mの日和田山から見るのがおすすめ。周辺には高麗神社や聖天院、古民家や農園など歴史・自然スポットが点在し、散策と組み合わせやすいのも魅力です。

画像3: 高麗川に抱かれた真紅の絨毯に魅了される

開花期には「巾着田曼珠沙華まつり」が行われ、地元グルメや特産品の出店で賑わいを見せます。自然の美しさと地元のあたたかさを同時に楽しめる、心に残る秋のイベントです。

巾着田

見頃9月中旬〜下旬(例年)
住所埼玉県日高市高麗本郷125-2
電話042-982-0268(巾着田管理事務所)
料金彼岸花開花期は入場有料 一般(高校生以上)500円、中学生以下無料 ※通常時は無料
アクセス西武池袋線「高麗駅」から徒歩で約15分/圏央道「狭山日高」ICから車で約20分
web巾着田 公式サイト (巾着田曼珠沙華公園)

【神奈川県・大和市】常泉寺

白花も咲く“花の寺”、羅漢と河童の秋景色

境内一帯に四季の花が途切れない常泉寺は、天正16年(1588年)創建の曹洞宗寺院。「花の寺」として知られ、秋には赤と白の彼岸花が境内のあちこちで咲き誇ります。特に白い彼岸花は繁殖力が弱く数も少ないため、群れ咲く姿を見られる寺院は貴重。杉木立や石畳の小径に浮かび上がり、伽藍の落ち着きと相まって静謐な景観をつくります。見頃は例年9月中旬〜9月下旬で、ハギ・オミナエシ・ワレモコウ・ススキ・シュウカイドウも同時期に彩りを添えます。

画像: 白花も咲く“花の寺”、羅漢と河童の秋景色

もうひとつの見どころが、石彫家・倉田辰彦氏とともに昭和63年(1988年)から三十余年をかけて造立された仏像群・五百羅漢。喜怒哀楽それぞれの表情が並び、彼岸花を前景に収めて撮影すれば、奥行きのある一枚に。境内には水の神として祀られる河童像も点在し、花めぐりとあわせて“見つける楽しみ”を味わえます。

拝観は9時から。白花は柔らかな光で透け感が出る午前中や、雨上がりのしっとりした時間帯が特に美しく、赤白のコントラストを求めるなら9月中旬以降が狙い目です。

常泉寺

見頃9月中旬〜下旬(白花はやや早咲き)
住所神奈川県大和市福田2176
電話046-267-8789
料金高校生以上300円、小・中学生150円
アクセス小田急江ノ島線「高座渋谷駅」から徒歩で約7分/東名高速・横浜町田ICから車で約40分
web常泉寺 公式サイト(PC)
※カメラなどの撮影機器のスタンド、一脚三脚は使用できません。
※ペットを連れての入場はできません。

【愛知県・半田市】矢勝川

ごんぎつねの舞台に広がる300万本の彼岸花

画像1: ごんぎつねの舞台に広がる300万本の彼岸花

愛知県・半田市を流れる矢勝川の堤防沿いは、新美南吉の童話「ごんぎつね」の舞台として知られる風情豊かなエリア。毎年9月下旬から10月上旬にかけて、約300万本もの彼岸花が一斉に咲き誇り、堤防は一面が真紅に包まれます。

童話の一節「ひがん花が赤い布のようにさきつづいていました」を彷彿とさせる景色は、地元住民による植栽活動から始まり、今では東海地方を代表する秋の風物詩となっています。

画像2: ごんぎつねの舞台に広がる300万本の彼岸花

全長約1.5kmにわたる遊歩道を散策すると、両岸に咲き並ぶ彼岸花が川面に映え、非現実的な風景を楽しめます。周辺には新美南吉記念館や、地元の特産品を味わえるお店もあり、文学と自然を一度に感じられる場所です。

さらに、彼岸花の時期には「ごんの秋まつり」が開催され、地域のおもてなし企画も楽しめます。童話の舞台を歩きながら、秋の情緒に浸るひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

矢勝川

見頃9月下旬〜10月上旬
住所愛知県半田市岩滑西町1-10-1
電話0569-32-3264(半田市観光協会)
料金無料
アクセス名鉄河和線「半田口駅」から徒歩で約10分/知多半島道路「半田中央IC」から車で約5分
web半田市観光協会 公式サイト

【岐阜県・海津市】津屋川堤防

堤防沿いを彩る、川辺の花回廊

画像1: 堤防沿いを彩る、川辺の花回廊

秋のお彼岸を迎える頃、海津市を流れる津屋川の堤防沿いは真紅の世界に変わります。約3kmにわたり10万本ともいわれる彼岸花が咲き誇り、雄大な養老山麓を背景に広がるその光景は、まるで自然が織りなす絵画のよう。

堤防の上は遊歩道として整備され、津屋川にかかる2本の橋を渡りながら右岸・左岸を行き来できるので、歩くたびに視点が変わり、異なる景観を楽しめるのも魅力。

画像2: 堤防沿いを彩る、川辺の花回廊

2025年10月4日(土)、5日(日)に開催される「津屋川のひがん花まつり」では、地元グルメを味わえるキッチンカーやフォトコンテスト、ステージイベント(5日)も行われ、花を愛でるだけでなく地域文化に触れられる賑わいの場となります。

画像3: 堤防沿いを彩る、川辺の花回廊

観賞後は、鉄分と塩分を含む黄金色の湯が特徴的な「海津温泉 宙船の湯」で疲れを癒やすのもおすすめ。市内施設では自転車遊び、カヌー体験も楽しめるため、ファミリーや友人同士で一日中過ごせるスポットです。

津屋川堤防

見頃9月下旬〜10月初旬
住所岐阜県海津市(津屋川堤防沿い)
電話0584-53-1115(海津市観光・シティプロモーション課)
料金無料
アクセス養老鉄道「美濃津屋駅」から徒歩で約10分/名神高速道路大垣ICから車で約20分/東海環状自動車道養老ICから車で約10分
web海津市 公式サイト
※周辺は生活道路です。路上駐車はご遠慮ください。臨時駐車場(500円)などをご利用ください。
※散策の際には、車等通行の妨げとならないようにご注意ください。

【奈良県・明日香村】稲渕の棚田

古代の面影を残す棚田と彼岸花の絶景

画像: (奈良県景観資産より)

(奈良県景観資産より)

奈良県・明日香村にある稲渕の棚田は、中世の平安〜鎌倉時代にかけて開墾されたといわれる歴史ある農村景観で、日本の棚田百選にも選ばれています。なだらかな斜面に約21ヘクタール、300枚以上の田んぼが階段状に広がり、四季折々の美しい姿を今に伝えています。

春は菜の花が黄色くあぜを彩り、初夏は水を張った田んぼが青空を映し出し、夏は稲の緑が一面に輝き、秋には黄金色の稲穂とともに彼岸花が鮮烈な赤を咲かせます。特に9月下旬から10月上旬にかけてあぜ道を真っ赤に染める彼岸花の群生は、稲穂の黄金色とのコントラストが見事で、訪れる人の心を強く惹きつけます。

また、歴史ある明日香村の原風景と、地元の人々が大切に守る農村文化が融合した場所として、ただの景勝地にとどまらず、地域の暮らしや文化を感じられるのも魅力です。周辺には石舞台古墳や橘寺などの歴史的スポットも多く、自然散策と歴史探訪をあわせて楽しむ旅にぴったりの場所です。

稲渕の棚田

見頃9月下旬〜10月上旬
住所奈良県高市郡明日香村稲渕
電話0744-54-3240(明日香村観光協会)
料金無料
アクセス近鉄吉野線「飛鳥駅」からバスで約20分「石舞台」バス停下車後、徒歩で約30分/南阪奈道路「葛城IC」から車で約30分
web飛鳥観光協会

【京都府・八幡市】若宮八幡宮

林間に咲く、真紅の彼岸花

写真は2020年時の様子

京都には数多くの彼岸花の名所がありますが、近年特に注目を集めているのが八幡市の若宮八幡宮です。境内自体は広大ではないものの、林間に咲き誇る彼岸花の群生は他にない独特の光景。木漏れ日を受けて輝く花々が織りなす風景は、訪れる人々を幻想的な世界へ誘います。

画像: 写真は2024年時の様子

写真は2024年時の様子

例年は9月中旬に見頃を迎えますが、近年は残暑の影響から開花が遅れ、数も減少している傾向にあり、9月末から10月初旬頃がもっとも美しい時期となります。

神社らしい静謐な雰囲気と、赤い花の妖艶なコントラストが調和し、都会から少し足を延ばしただけで非日常の時間を味わえるのもポイント。秋の花めぐりを楽しめるスポットです。

若宮八幡宮

見頃9月末〜10月上旬
住所京都府八幡市野尻北ノ口5
電話075-981-1141(八幡市観光協会)
料金境内自由
アクセス京阪「石清水八幡宮駅」からバスで約20分「野尻」下車後、徒歩で約1分
web若宮八幡宮 公式サイト(八幡市観光協会)
※周辺に駐車場はありませんので、公共交通機関をご利用ください。

【愛媛県・松山市】窪野町 彼岸花群生地

山里に広がる真紅の大地

松山市郊外、緑豊かな山々に囲まれた窪野町に広がる彼岸花群生地は、県内でも有数の名所として知られています。約2500平方メートルにわたり咲き誇る彼岸花は、もとは田んぼのあぜ道でモグラよけに植えられていた球根を移植したことから始まりました。

今では地域の人々が手入れを続け、秋には辺り一面が真紅のベールで覆われる圧巻の光景が広がります。

見頃を迎える9月中旬から下旬にはカメラを手にした人々で賑わい、朝日や夕日に照らされた花々が刻一刻と表情を変える様子はまさに絶景。お気に入りの撮影スポットを探しながら散策するのがおすすめです。

画像: 山里に広がる真紅の大地

また群生地内には、水の神を祀る「水天龍王社」もあり、パワースポットとして訪れる人も少なくありません。地元住民が守り育ててきたこの景観は、自然と人の営みが織りなす美しい風景として、多くの人の心を惹きつけています。

窪野町 彼岸花群生地

見頃9月中旬〜9月下旬
住所愛媛県松山市窪野町196
料金無料
アクセス松山市中心部から車で約40分
webくぼの里山会公式サイト

【福岡県・宮若市】犬鳴川河川公園

川沿いを彩る30万本の彼岸花と秋祭りの賑わい

宮若市を流れる犬鳴川の河川敷に整備された犬鳴川河川公園は、地域の憩いの場として親しまれる公園。園内には桜やツツジなど約1万本の植栽があり、水路や東屋なども整えられ、四季折々の花を楽しめます。

画像: 川沿いを彩る30万本の彼岸花と秋祭りの賑わい

特に秋のお彼岸の時期には、全長約850mにわたって約30万本もの彼岸花が咲き誇り、川沿いが赤と白のレースを広げたように染まります。川面に映える花々と雄大な自然のコントラストは、一度は味わいたい光景です。

また、毎年9月下旬には「宮若市ヒガンバナまつり」が開催され、ライトアップや屋台、しゃぼん玉ショーで大きな賑わいを見せます。周辺には古代から続く湯治場として知られる「脇田温泉」もあり、花の観賞とあわせて立ち寄れば、より充実した時間を過ごせるでしょう。

犬鳴川河川公園名

見頃9月中旬〜9月下旬
住所福岡県宮若市本城65-1
電話0949-32-0773(まちづくり推進課 地域振興係)
料金無料
アクセスJR「勝野駅」から車で約13分
web宮若市役所 公式サイト

【長崎県・大村市】鉢巻山展望所

3色の彼岸花が織りなす、山頂からの大パノラマ

長崎県・大村市の野岳湖公園近くに位置する鉢巻山展望所は、標高を活かした抜群の眺望が魅力のスポット。例年9月中旬から下旬にかけては、山頂一帯が彼岸花で彩られ、赤・白・クリーム色の花々が一面に広がる光景は圧巻です。

※開花は気候などに影響されます。

画像1: 3色の彼岸花が織りなす、山頂からの大パノラマ

花の絨毯の向こうには大村湾が広がり、青い空と海とのコントラストが一層鮮やかに映えます。特に夕暮れ時には、海に沈む夕日と彼岸花の赤が重なり合い、エモーショナルな光景を楽しめると評判です。

画像2: 3色の彼岸花が織りなす、山頂からの大パノラマ

展望所にはベンチも整備されており、ピクニックを兼ねて訪れる人も多く見られます。近隣の大村公園やガラスの砂浜とあわせて巡れば、自然とフォトジェニックを満喫できる一日旅にもぴったり。開花情報やイベント情報は市のインスタグラムでも発信されているので、訪れる前に確認するのがおすすめです。

鉢巻山展望所

見頃9月中旬〜9月下旬
住所長崎県大村市野岳町
電話0957-53-4111(観光振興課)
料金無料
アクセスJR大村駅前県営バスターミナルから「野岳湖」行きバスで約40分/長崎自動車道 大村ICから車で約20分
web大村市 公式サイト

四季を彩る花旅へ出かけよう

秋を代表する花・彼岸花は、各地でその土地ならではの景観とともに楽しめます。今年は少し足を延ばして、真紅に染まる絶景を訪れてみてください。

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