秋田県庁への出向経験もあり、自身も「大の秋田好き」というJALふるさとアンバサダーの渡邊さんが、“大切な人と楽しみたい特別な2泊3日の秋田旅”を案内します。
※価格は税込み表記です。
〈1日目 仙北市角館・大仙市〉
「ristorante giueme」で地産食材の力強さを実感
雪国らしい天候に恵まれた1月、旅は大仙市にある一軒家レストラン「ristorante giueme(リストランテ・ジュエーメ)」から始まりました。同市出身の佐々木章吾シェフが、秋田県産を中心とした食材を生かして腕を振るう人気店で、全国からファンが訪れます。
注文したのは、7皿から成る「ランチBコース メイン料理有り」(7,260円)。
「前菜と野菜の盛り合わせ」に並ぶのは、鹿のテリーヌと秋田県・横手市産「紅の夢」の焼きリンゴ、同じく横手市十文字で育ち品質基準をクリアした上位10%のみの銘柄豚「十豚(じゅっとん)」。さらに横手市の在来種「沼山大根」、湧水で知られる秋田県・美郷町の「美郷れんこん」、「あきた伝統野菜」の「石橋ごぼう」や「チョロギ」など、色鮮やかで多彩な食材に1皿目から目を奪われます。
一つ一つの素材の味は濃厚で、力強さや生命力を感じさせるものばかり。「丹精込めて作物を育てる農家さんがいるからこそ料理をつくることができる。この土地の個性ある食材を生かして、秋田の魅力を伝えていきたい」と佐々木シェフは話します。
2皿目の「その日のスープ料理又は温前菜」に続き、3皿目には秋田県で捕獲されたツキノワグマ、4皿目は秋田で獲れた鮭のイクラ、5皿目は鹿角市で自然放牧・自然交配されている「かづの牛」と、個性的で質の高い食材が次々と登場し、秋田の食文化の豊かさに驚かされました。
こうした食材の特徴や魅力一つ一つを丁寧に教えてくれるのも同店の魅力。
料理のサーブの際に、スタッフが資料を使用しながら説明してくれるため、旅の食体験が、より深いものになります。渡邊さんも、「料理のみならず、充実したサービスやスタッフの方々の人柄にも魅かれました」と感動の様子。
酒処・秋田県の日本酒の品揃えも豊富で、ペアリングを提案してくれます。写真左から、自社田で無農薬栽培された米で醸した秋田市・新政酒造の「農民藝術概論」、T-FARMの自然栽培米ササニシキを10%しか磨かずに生酛仕込みした大仙市・出羽鶴酒造「カゼノオト」、通常の3倍の麹米を使用し、黄麹と白麹をブレンドした大仙市・金紋秋田酒造の「純米原酒 X3 Blanc」です。
秋田の魅力をお客さまに伝えながら、同店が作り出しているのは非日常の空間。
「外とはまったく違う時間が流れていますので、ゆっくり過ごしていただきたいです」と佐々木シェフは話していました。
ご紹介したランチはもちろん、ディナーではさらに多くの食材を使用したコースを提供しています。大切な人と上質なひとときを過ごしに、ぜひ訪れてほしい一店です。
ristorante giueme
住所 | : | 秋田県大仙市戸蒔字谷地添100-1 |
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電話 | : | 0187-73-5053 |
営業時間 | : | ランチ11:50~15:00(料理は12:00から一斉スタート) ディナー18:20~22:00(料理は18:30から一斉スタート) ※前日までの完全予約制・Webサイトからいつでも予約可能 |
定休日 | : | 水・木曜 |
web | : | ristorante giueme 公式サイト |
国の伝統的工芸品の魅力に触れる「樺細工」
ランチを楽しんだら、400年の歳月を超えて江戸の町並みが残る城下町・仙北市角館(かくのだて)へドライブ。約40分で、城下町が造られた当時の驚くべき広さの道幅を持つ「重要伝統的建造物群保存地区」に到着します。
黒板塀が連なる武家屋敷に、雪景色が美しく映える角館。春には桜が咲き誇り、新緑や紅葉の名所としても知られます。
武家屋敷を見学したり、写真を撮ったりとまち歩きが楽しいエリアですが、ぜひ訪れてほしいのが、「角館樺細工(かばざいく)伝承館」。国指定の伝統的工芸品・樺細工は、「樺」と呼ばれる山桜の樹皮を用い、茶筒を主としたさまざまな製品を作る技術で、日本では唯一、ここ仙北市角館で伝承されています。
伝統工芸品展で最高賞を受賞した製品も並んでいました。
館内では、伝統工芸士や歴代名工の貴重な作品が展示されているほか、職人による製作実演を間近に見ることができます。
職人から教わることができる体験教室もあり、渡邊さんはコースター作りに挑戦しました。樺細工の製造工程でも使われる金コテを高温で熱し、水で温度を調節しながら山桜の樹皮を木地に接着していきます。温度が高すぎると繊維が剥がれてしまい、低すぎると接着できません。職人は適温を、金コテを水につける音で判断します。
館内にはおみやげコーナーもあり、樺細工製品を購入することができます。人気は茶筒。渡邊さんも「母はお花があしらわれたものが好きそう」と茶筒を手にとって選んでいました。
角館樺細工伝承館
住所 | : | 秋田県仙北市角館町表町下丁10-1 |
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電話 | : | 0187-54-1700 |
営業時間 | : | 4~11月 9:00~17:00(入場は16:30まで)、12~3月 9:00~16:30(入場は16:00まで) |
定休日 | : | 12月28日~1月4日 |
web | : | 仙北市立角館樺細工伝承館(仙北市 公式サイト) |
樺細工コースターづくり
料金 | : | 1名5,000円 ※10日前までに要予約。人数により体験料金が異なる |
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申し込み | : | co-de@city.semboku.akita.jp(仙北市交流デザイン課) |
web | : | 体験学習申し込み案内(仙北市 公式サイト) |
歴史ある蔵に滞在して非日常を体感「和のゐ 角館」
この日の宿は、角館のまちに点在する歴史ある蔵を改装したホテル「和のゐ 角館」。佐竹氏の家臣であった西宮家の敷地内にある「武士蔵」に隣接し、漬物蔵として使われていた「ガッコ蔵」と、武家屋敷通りのすぐそばにありかつては呉服店だった建物を改装した「反物蔵」に宿泊することができます。
チェックインは、角館駅すぐのグループホテル「ホテルフォルクローロ角館」で。車がない場合は、ホテルフォルクローロ角館から宿まで送迎してくれます。
渡邊さんは、武士蔵に宿泊。部屋では、秋田県の伝統工芸品「楢岡焼」や、角館で開窯した「白岩焼」の器でお茶やコーヒー等を楽しむことができます。ゆっくりくつろいで、おしゃべりするのにも最適です。
3施設とも違った雰囲気を楽しめることから、ハシゴして宿泊する方もいるそう。ガッコ蔵は、漬物樽をモチーフにしたサイドテーブルやカウンター、浴槽まであり、旅行者を楽しませてくれる工夫があちこちに見られました。
蔵の扉を閉めると、外の音も聞こえない、閉じられた空間となる和のゐ 角館。江戸時代にタイムスリップしたような非日常を過ごすことができます。
和のゐ 角館
住所 | : | 秋田県仙北市角館町中菅沢14(フロントカウンター ホテルフォルクローロ角館) |
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電話 | : | 0187-53-2774 |
チェックイン | : | 15:00~19:00 |
チェックアウト | : | ~10:00 |
web | : | 和のゐ 角館 公式サイト |
〈2日目 仙北市角館から湯沢市へ〉
革新的な老舗「ヤマモ味噌醤油醸造元」で発酵文化への理解を深める
2日目は、朝食をいただいて、湯沢市へ。角館の武家屋敷通りから約1時間20分ドライブすると、1867年創業の「ヤマモ味噌醤油醸造元」に到着します。同社は、伝統的な味噌・醤油を作り続けながら、自社蔵から見つかった独自の酵母「ヴィアンヴァー」で肉や魚の発酵、ワインの醸造などを行い、料理のフルコースを提供。その革新的な取り組みに世界から注目が集まっています。
渡邊さんは、「TOUR LUNCH α」(9,350円)に参加。このツアーでは、ランチの前に工場を案内してもらえます。
まずは古くから造られてきた「あまくち塩しょうゆ」を試食。米どころのため麹由来の甘さを好む地域性があり、塩分控えめでほんのり甘みを感じます。
醤油と味噌の製造機器や、充填の様子など製造工程も間近で見学。
1年未満と30年以上熟成された味噌も食べ比べ、菌の働きでうまみが増幅されていることを実感できます。
大正時代に作られたとされる木樽がある「もろみ蔵」では、取り組みの内容をうかがいながら、ウェルカムフード「酵母に漬け込み発酵熟成させた豚肉とりんご」をいただきます。
自社酵母を使い、新潟県のワイナリー「ドメーヌ・ショオ」に醸造を依頼したオレンジワインとペアリング。フレッシュなブドウの香りを楽しみながら、口に含むとドライでどんな料理にも寄り添ってくれる万能ワインです。
その後はレストランスペースへ。サラダの葉野菜に合わせるのは、醤油と酵母でローストしたナッツと、ニンジンを発酵させて乾燥したフレーク、酵母のエキスを煮詰めた塩。そこに発酵したキウイと酵母などを含んだヨーグルトベースのドレッシングをかけたり、鮎(あゆ)の肝とほうれんそうを発酵させたムースを和えたりと、発酵の力で編み出される複雑な味にワクワクさせられます。
葉野菜は、湯沢市小安峡温泉の地熱と鳥海山の雪解け水を使用して水耕栽培されているレタス。酵母の出汁で固めた根菜のテリーヌとせりの根のフリットと一緒にいただきます。
この日のメインは、発酵熟成させた鹿肉。野生みが強く、本来であれば商品として扱われない鹿肉を、ヴィアンヴァーの力でうまみを増幅させ、価値のあるものに変換させています。
食感を楽しみながら噛み締めていくと、うまみが増幅するのを感じました。
2種から選べるデザートは、20年味噌を使用したクリームブリュレ。ラズベリーソースとピンクグレープフルーツを発酵させたジャム、チョコレートを使用したソースで味に変化をつけながらいただきます。
味噌なのか、チョコレートムースなのか? 新感覚を味わえるデザートです。塩味があり、お酒にも合います。
ただ料理を味わうだけではない、発酵の力を五感で感じられる本ツアー。秋田県の中でも雪深い、湯沢市だからこそ育まれてきたスペシャルな体験をして、細胞が研ぎ澄まされるようでした。
ヤマモ味噌醤油醸造元
住所 | : | 秋田県湯沢市岩崎124 |
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電話 | : | 0183-73-2902 |
営業時間 | : | ストア/カフェ 9:00〜17:30、ランチ/ツアー 10:00〜16:00(L.O.15:00) |
定休日 | : | ストア/カフェ 不定休、ランチ/ツアー 火・水曜 |
料金 | : | TOUR LUNCH αは9,350円 ※1日前までに要予約 |
web | : | ヤマモ味噌醤油醸造元 公式サイト |
国の伝統的工芸品の魅力にふれる「川連漆器」
ヤマモ味噌醤油醸造元から車で約20分。湯沢市川連(かわつら)町には、国の伝統的工芸品に指定されている「川連漆器」が伝わります。約800年の歴史があり、漆器の製造工程である木地づくり、塗り、沈金・蒔絵(まきえ)を専門の職人が担ってきました。
川連漆器の歴史や工程について学べ、職人による数々の商品を展示販売しているのが、「湯沢市川連漆器伝統工芸館」です。
予約すると、沈金・蒔絵体験ができるので、渡邊さんも蒔絵に挑戦しました。この日教えてくれたのは、「漆工房 攝津」の攝津広紀さん。赤と黒の漆器から好きな色を選び、転写した顔料の線に沿って、漆をのせていきます。
下絵通りになぞるも良し、塗りつぶしても良し、空いているスペースに月や団子など好きなものを描いても良し、「1,000人いたら1,000通りの作品ができますよ」と攝津さん。「潰れたり曲がったりしてもそれはそれで私がなんとかしますので安心してください」と楽しく丁寧に教えてくれます。
漆が接着剤となるので、描き終わったら、蒔絵用の色粉をのせていきます。どんな色をのせるか、ぼかしたり、グラデーションをつけたりと、ここでも十人十色の表現が生まれます。
攝津さんの力も借りて、飛行機を描いたオリジナルの漆器が完成しました!
体験を終えた後は、攝津さんが特別に2階の歴史資料館を案内してくれました。樹液である漆を塗り重ねて生まれる漆器。「すごく貴重な自然の恵を使って、私たちはものづくりをしています」と攝津さん。できあがった製品を見るだけではなく、体験や職人との会話を通じて、その価値を深めることができる施設でした。
湯沢市川連漆器伝統工芸館
住所 | : | 秋田県湯沢市川連町字大舘中野142-1 |
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電話 | : | 0183-42-2410 |
営業時間 | : | 9:00〜17:00 |
定休日 | : | 木曜、12/31〜1/5 |
料金 | : | 入館料無料、蒔絵体験1名2,750円(3名〜) ※5日前までに要予約 |
web | : | 湯沢市川連漆器伝統工芸館 公式サイト |
秋田最古の温泉地でくつろぎの時間を過ごす「稲住温泉」
湯沢エリアでの宿泊は、秋田最古の温泉地と伝わる秋の宮温泉郷へ。この日は人気の隠れ宿「稲住温泉」に宿泊しました。自家源泉かけ流しの温泉が自慢で、プライベートな時間を過ごすことができる2種の貸切風呂が人気です。
夕食は、お食事処「仙楽」で、秋田の旬の食材を使用した和食会席と、秋田の個性豊かな地酒を楽しむことができます。
客室は、「天の坐」と名付けられた特別な4つの離れのほか、「雲の坐」「月の坐」「湯の座」「水の坐」があり、天然温泉の内風呂が付いた部屋がほとんど。また、夜鳴きそばやドリンクの無料サービスがあるのも、うれしいポイント。温泉につかった後や寝る前に小腹が空いたとしても、安心です。
山々に囲まれた秘湯で、景色を愛でながら極上のひとときを過ごすことができました。
湯けむりの宿 稲住温泉
住所 | : | 秋田県湯沢市秋ノ宮字山居野11 |
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電話 | : | 0183-58-1300 |
チェックイン | : | 15:00~ |
チェックアウト | : | ~11:00 |
web | : | 湯けむりの宿 稲住温泉 公式サイト |
〈3日目 湯沢市から秋田空港へ〉
「おみやげ広場あ・えーる」で、秋田らしさをお持ち帰り
最終日は宿での朝をのんびり過ごしたあと秋田空港へ。稲住温泉から秋田空港までは、車で約1時間30分です。
到着したら、国内線ターミナルビル2階の「おみやげ広場あ・えーる」へ。菓子類から工芸品まで、県内でも指折りの品揃えを誇ります。
秋田杉を装飾に使用した温かみのある内装も印象的です。
渡邊さんが手に取ったのは、秋田空港が大館能代空港と共同プロデュースした「秋田犬」のぬいぐるみ(1,650円)。
秋田県内の酒蔵が造る清酒(秋田誉酒造「秋田美人」、齋彌酒造店「雪の茅舎」、天寿酒造「鳥海山」、佐藤酒造店「出羽の冨士」、飛良泉本舗「飛良泉」)のロゴを刻印した酒升のガチャ「由利本荘・にかほのお酒を紹介しマス」(1回500円)も人気だそう。※升は観賞用です
サキホコレは、「コシヒカリを超える極良食味品種」をコンセプトに、2022年に本格デビューした秋田米。小サイズの「サキホコレ2号袋」(426円)はおみやげにぴったりです。
「ROYALSKY LOUNGE」で、旅の最後まで秋田の魅力を感じる
おみやげを購入したら、2023年にリニューアルした「ROYALSKY LOUNGE」の利用がおすすめ。車椅子やベビーカーも移動しやすい、ゆとりある空間で、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
おみやげに人気の「比内地鶏と玉ねぎ・ポークのコンソメスープ」と「比内地鶏と鰹の和風スープ」「六角薄焼き青のり煎餅」を試飲・試食できるほか、ラウンジ内には秋田ゆかりの作家の作品がたくさん展示されているので、ショールームとして楽しむこともできます。旅の最後の最後まで、秋田を満喫できるスポットです。
試飲・試食できる商品は、いずれもおみやげ広場あ・えーるで販売。日本酒のラインナップは毎月変わります。この日は「刈穂酒造」の「刈穂 純米吟醸 kawasemi label」でした。
『釣りキチ三平』で知られる、秋田県出身の漫画家・矢口高雄氏の作品を展示。季節ごとに作品が入れ替わるそう。
秋田県出身の版画家・池田修三氏の作品や、秋田県内でつくられている木工漆やガラス、陶器の製品なども多く展示。ラウンジで購入することができます。
県内アーティストの作品展示を通して、秋田の魅力を発信する場にもなっています。
秋田空港 ROYALSKY LOUNGE/おみやげ広場 あ・えーる
住所 | : | 秋田県秋田市雄和椿川字山籠49 国内ターミナルビル2階 |
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電話 | : | 018-886-3366(代表) |
営業時間 | : | 6:50~20:30 |
定休日 | : | 無休 |
料金 | : | ROYALSKY LOUNGE 1名830円 |
web | : | 秋田空港 公式サイト |
旅を通して、伝統工芸の職人と間近で話をしながら、手軽にできる体験がたくさんあることに驚いたと話す渡邊さん。「職人が作るものの価値をより実感できる機会でした」と話します。
また、秋田の食の奥深さを再認識。「きりたんぽやいぶりがっこが有名ですが、それだけではなくて、各々の地域に個性的な食材がたくさんあります。その良さを、giuemeさんやヤマモさんのように、自分のエッセンスを取り入れながら表現しているお店がたくさんあって、何度来ても遊び尽くせないと感じました。人の顔が見える、隠れ家みたいなお店が多いので、みなさんそれぞれにお気に入りを見つけてもらえたら」とますます秋田愛を深めているようでした。
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