JALグループでは長年にわたり、すべてのお客さまに旅を通じた楽しさや豊かさをご提供する「アクセシブルツーリズム」の取り組みを続けています。ここでは取り組みの一例として、2022年10月に実施した、主に発達障がいのある方を対象とした「秋のアクセシブルツアー in 山形」について、企画したJALスタッフおよび監修にあたった専門家の皆さま、そしてツアーに参加されたお客さまの体験談とともにご紹介します。

【今回のツアー監修に関するお話を伺った専門家の皆さま】

  • 丹羽菜生さん(中央大学研究開発機構 機構助教)
    建物等の社会的障壁をなくすための研究に従事。秋山哲男教授と共に、羽田空港国際線ターミナルや成田国際空港始め、地方空港のユニバーサルデザインなどに携わっています。
  • 竹島恵子さん(公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 バリアフリー推進部)
    公共交通機関のバリアフリー化、ユニバーサルデザイン化の推進に関する調査研究等に携わっています。

【企画を担当したJALグループの社員】

  • 藤田凌輔(日本航空 CX企画推進部)
    JALグループのアクセシビリティ推進を担う部署として、本企画全体の事務局ならびに取り纏めを担当しています。
  • 村上華奈(日本航空 CX企画推進部)
    同上

【今回体験談を語ってくださったお客さま】

  • 齋藤恵美子さま、由葵さまご家族
    息子さんとお母さまの2名で参加。航空機を使った旅行は今回が初めてとのこと。

発達障がいのあるお客さまが、航空機利用に対して抱く不安とは?

──まずは、今回の「秋のアクセシブルツアー in 山形」が企画された経緯から教えてください。

画像1: 発達障がいのあるお客さまが、航空機利用に対して抱く不安とは?

藤田凌輔(以下:藤田):JALグループは「誰もが旅を通じて、より豊かな人生を楽しめる社会の実現」という理念を掲げアクセシブルツーリズムに取り組んでいます。とはいえ、まだまだ完全なサービスをご提供できているとはいえません。そこでお客さまへ、より安心で快適な旅をご提供するための知見を貯めるべく、社外のエキスパートの方々にもご協力いただき企画したのが「秋のアクセシブルツアー in 山形」です。今回は、特に発達障がいのある方にフォーカスしたツアーになっております。

──航空機移動に対して、発達障がいのある方が感じるバリアには、どのようなものがあるのでしょう?

画像2: 発達障がいのあるお客さまが、航空機利用に対して抱く不安とは?

竹島恵子さん(以下:竹島さん):大きな音や大きな振動、強い光、狭い空間など、発達障がいがある方が感じるバリアはさまざまです。また過敏になる要因や強さも個人ごとに幅があるため、すべてをカバーする対策を取ることが難しいといわれる場合もあります。

丹羽菜生さん(以下:丹羽さん):航空機の利用シーンにあてはめると、急に揺れたり大きな音がしたりなどが、わかりやすいところかと思います。しかし、過敏になってしまう要因はそれだけではありません。たとえば「待ち時間」がそれです。電車やバスに比べ、航空機は離陸するまで時間がかかる場合がありますよね? シートベルトを着用した状態で予想外に待たされることに対し不安を感じたことは、誰にでもあると思います。発達障がいのある方にとっては、その「待ち時間」が大変なストレスになることもあるのです。

竹島さん:場合によっては、周囲の環境に対する過敏な反応が高まることで、パニック状態になってしまう方もいらっしゃいます。そのため、自分がパニック状態になることで、周囲に迷惑をかけてしまうのではという心配から、航空機の利用に対して消極的になっている方が多いという現実があります。

藤田:弊社でも「JALスカイちゃれんじ」のように、発達障がいのある方に安心して航空機をご利用いただくための取り組みを行っています。とはいえ先ほども申し上げたように、社内の知見だけで取り組むことに対し限界を感じていたのも事実です。そんななか、JALも参加する全国各地の空港のユニバーサルデザイン診断を通じご縁ができた、交通エコロジー・モビリティ財団や中央大学から、今回の企画につながるご提案をいただきました。

「秋のアクセシブルツアー in 山形」とは

画像3: 発達障がいのあるお客さまが、航空機利用に対して抱く不安とは?

JALグループや医師、研究者などの専門家だけでなく、空港会社などさまざまな企業が計画段階から参画し造成された、発達障がいのあるお客さまが、安心・快適に旅を楽しめるツアーです。発達障がいのあるお客さまが抱く、航空機利用にまつわる不安を解消するため、ツアー実施前に「事前搭乗模擬体験会」や「事前搭乗体験会」を開催。また、ツアー行程にも搭乗手続きの確認を含む事前チェックの時間を設けるなど、お客さまの不安を解消するためのさまざまな工夫を取り入れました。

「秋のアクセシブルツアー in 山形」

  • 日程:2022年10月11日(火)~13日(木)
  • 宿泊先:ホテルJALシティ羽田 東京 ウエストウイング(1日目)
    ダイワロイネットホテル 山形駅前(2日目)
  • ツアー内容
    ・搭乗前日に、羽田空港で施設や手続きを事前に確認
    ・観光果樹園でのリンゴ狩り体験
    ・お客さまが自由に選べる、サポート付きの山形フリープラン観光

大切なのは当事者目線。事前の「成功体験」により航空機利用の不安を軽減

──今回のツアーを企画するにあたり、特に配慮した点はどこでしょうか?

藤田:「当事者目線」の重視です。発達障がいのある方に限りませんが、航空会社としてすべてのお客さまの安全を担保しながら、航空機や空港の利用に対しバリアを感じている当事者の方々の気持ちに寄り添い、快適で楽しい旅をご提供することに注力しました。

竹島さん:具体的には、発達障がいのある方に寄り添うツアー企画として、空港や航空機の利用に対し抱く不安を解消するため、徐々に段階を踏み事前体験をしていただく場を設けたことが、今回の大きな特徴です。空港や機内の環境に慣れていただくため、ツアー実施前に2回の体験会を行いました。またツアーでは、山形へ移動する前日から羽田空港に前泊し、施設や搭乗手続きの確認をしていただきました。

画像1: 大切なのは当事者目線。事前の「成功体験」により航空機利用の不安を軽減

丹羽さん:航空会社はもちろん旅行会社や空港ビル事業者など、航空機利用にかかわるすべてのスタッフが一丸となって取り組んだことも、大きな特徴だったと思います。保安検査場や搭乗ゲートを通過する練習や、港内アナウンスをはじめ、どのような「音」があるかの事前確認など、本当にたくさんのスタッフの方々の協力があったからこそ実現したのではないでしょうか。

藤田:事前体験のメリットは、いわゆる「成功体験」にあったと思います。たとえば保安検査場がどんな場所かを知るだけでなく「通過できた」という経験を得ることで、実際にご利用いただく際にも不安が軽減されたと、お客さまからおっしゃっていただけたのは、とても嬉しかったですね。

画像2: 大切なのは当事者目線。事前の「成功体験」により航空機利用の不安を軽減

齋藤さま:息子の由葵にとって今回が、初めての航空機利用だったのですが、やはり事前に体験できたことが、実際に搭乗する際の大きな自信につながったようです。山形へ向かう機内では、初めての経験ということもあり、離陸時や乱気流で揺れが生じた際にビックリしてしまうこともありました。しかし、そのつどスタッフの方がクッションやボールなど、気持ちを静めるためのグッズを渡してくださったり、お声がけをしてくださったりしたので、大きなパニックになることはありませんでした。山形空港に着いたときには「思ったよりも、あっという間に着いたね」なんて喜んでいたんですよ。

村上華奈(以下、村上):由葵くんについては事前体験会での出来事が、とても印象に残っています。我々も初めてのことで緊張していたのですが、保安検査場を通る体験をした際、由葵くんがガッツポーズで、無事に通過できたことを喜んでくれたんです。これで、我々はもちろん他のお客さまの緊張も一気にほぐれました。

齋藤さま:ツアーの前にいただいたパンフレットや搭乗前にいただいたメッセージカードも、由葵にとって「お守り」となっていたようです。山形空港に到着した際にいただいたスノードームと一緒に今でも、大切な宝物になっています。

お客さまの「選択肢」を拡げることで不安を軽減、そして旅のワクワク感を醸成

──山形での観光プランで、工夫した点はありますか?

画像1: お客さまの「選択肢」を拡げることで不安を軽減、そして旅のワクワク感を醸成

藤田:皆さんで一緒に楽しむイベントとしてリンゴ狩り体験をご用意したほかは、基本的にフリータイムとしました。あえてフリータイムを多くしたのは、行き先が自由に選べるほか、疲れたらホテルで休んでいただいても構わないというように、お客さまに「選択肢」をご提供することが目的です。とはいえ、フリープラン時でもスタッフが同行するようにしていましたし、同行をご希望されなかった場合でも、常時連絡が取りあえる態勢を整えていました。

齋藤さま:リンゴ狩りも初体験だったので皆さんと一緒に楽しめましたし、スタッフの方からご提案いただいた観光スポットに行ったことも、もちろん良い体験でした。とはいえ、今回のツアーでいちばん想い出に残っていることといえば、NHKの番組が大好きな息子の希望で行ったNHK山形放送局なんです。施設内で記念撮影をしたり、番組のチラシをもらったりと、大満足していましたね。

画像2: お客さまの「選択肢」を拡げることで不安を軽減、そして旅のワクワク感を醸成

竹島さん:こちらでもおすすめ観光スポットのリストを用意していたのですが、皆さん旅行ガイドやネット検索などで現地の情報を調べて、行きたい場所を決めていたようです。旅行をする前にワクワクしながら計画を立てることも、旅の楽しみのひとつですよね。お客さまの安全を考慮し、プランを固めておくという考えかたもありますが、お客さまの選択肢を増やすことにより旅のワクワク感が醸成できるほか、「これができなければ、これをすれば良い」という安心感も得られるのかなと。これも、今回のツアーを通じて得た大きな知見のひとつだったと思います。

人のつながりの大切さを実感できるツアーに。アクセシブルツアーの取り組みはこれからも

──今回の「秋のアクセシブルツアー in 山形」にご参加いただいた感想をお聞かせください。

画像1: 人のつながりの大切さを実感できるツアーに。アクセシブルツアーの取り組みはこれからも

齋藤さま:私たちにとって、本当に素敵な経験となりました。今回の旅を通じて、息子も航空機の利用に自信が持てたようです。「また飛行機に乗りたいね。次は大阪に行って、吉本新喜劇が観たい!」なんて、次の旅のプランを考えているんですよ(笑)。

村上:参加された皆さんの楽しげな様子は、ツアーを企画した我々にとって大きな喜びと励みになりました。また、今回のツアーでは、お客さまにサポートしていただいたり、アドバイスをいただいたりすることがたくさんありました。そうした助けから得た気付きを、今後の企画にも活かせればと思っています。

丹羽さん:由葵くんは、ジャルパックさんが作成したパンフレットツアーを学校に持参して、先生やお友達に説明するほど、今回のツアーを楽しみにされていたと伺っています。ツアーの監修は今回が初めての経験だったのですが、ご参加いただいた方が、今回のツアーをとても楽しみにしてくださり、そして齋藤さまご家族のように、とても楽しんで帰っていただけたことを、本当に嬉しく思っています。

画像2: 人のつながりの大切さを実感できるツアーに。アクセシブルツアーの取り組みはこれからも

竹島さん:事前体験会だけにご参加いただいたお客さまを含め、今回の企画にかかわったすべての方々の間で生まれた「つながり」は、とても貴重なものだと思います。より良いアクセシブルツアーを実現するための知見を積むだけでなく、障がいのある当事者を含めたすべての人々が楽しめる旅を持続可能なものにするためにも、この取り組みを続けていきたいですね。

齋藤さま:確かに、このツアーの存在を教えてくださった方から、サポートしてくださったスタッフの方々、そして一緒に旅をしたご家族まで、人とのつながりの大切さを実感する機会が多かったと思います。そうした、人とのつながりの温かさや素晴らしさを感じられたのも、今回のツアーの魅力だったのかなと思います。

画像3: 人のつながりの大切さを実感できるツアーに。アクセシブルツアーの取り組みはこれからも

藤田:ご参加いただいたお客さまからは「次はいつ開催するの?」「また一緒に旅をしたい」といった感想をいただくことができ、ありがたく思っています。私自身も参加者として、とても楽しい旅となりました。一方ツアーの運営側としては、発達障がいのある方が空港や航空機の利用に際し、どのような対応を求めていらっしゃるのかを、あらためて知り、そして考える機会を得ることができました。今回の知見を活かし、すべてのお客さまにとって、より最適な旅をご提供できるよう、これからも一生懸命取り組んでいきたいと思います。この場を借りて、監修いただいた先生方やアドバイザーの皆さま、そしてツアーにご参加いただいたお客さまに、あらためてお礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!

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画像: 【JAL Group Spirit】発達障がいのあるお客さまに、空をもっと身近に ー 秋のアクセシブルツアー in山形 youtu.be

【JAL Group Spirit】発達障がいのあるお客さまに、空をもっと身近に ー 秋のアクセシブルツアー in山形

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