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JUN 13 2025

東御市が日本ワインの新聖地に。千曲川ワインバレーで見つけた“次の100年”

長野県東部に位置する人口約3万人の小さな市が今、日本ワインの新しい聖地といわれているのをご存じですか? その市とは、長野県の「東御(とうみ)市」です。ワイン造りに理想的なテロワール(風土)のもと生まれるワインの個性的な味わい、地域ぐるみで育むワイン文化……。そんな新しい日本ワイン文化の象徴の地をJALふるさと応援隊のふたりが訪問。日本全国のワイナリーが注目する日本初の原木園をはじめ、東御市のワインの根底に触れてきました。
画像: 東御市が日本ワインの新聖地に。千曲川ワインバレーで見つけた“次の100年”

訪れたのは、東御市出身の小山さんと、山口県出身の岡田さん。ソムリエの資格を持つふたりは、東御市の取り組みにも興味津々。ワイン好きを代表して、現場をレポートします。

日本ワインの未来を支える“母樹の畑”とは?「原木園プロジェクト」の全貌

画像1: 日本ワインの未来を支える“母樹の畑”とは?「原木園プロジェクト」の全貌

標高が470メートルから2,300メートルの高地に位置する「東御市」。日本の中では、夜間の温度が低く、日照量も多く、ブドウ栽培に適しているこの土地で、全国に先駆けて始まった取り組みについて話してくれたのが、一般社団法人・日本ワインブドウ栽培協会(以下、JVA)の代表理事で、信州大学の特任教授も務める、鹿取みゆきさん。

画像2: 日本ワインの未来を支える“母樹の畑”とは?「原木園プロジェクト」の全貌

「近年、日本ワインの品質は目覚ましく向上していて、海外で開催される国際的なコンクールでの受賞も毎年のように見られるまでに成長し続けています。そんな成長のタイミングだからこそ、次の100年を見越し、日本ワイン産業の課題を解消する必要があると考えました」

JVAが新たに始めた「原木園をつくるプロジェクト」は、これからの日本ワインの根底になるものだと、鹿取さんは言います。

原木園とは、健全なワインブドウの苗木のもととなる「母樹」を育てる特別な畑のこと。この場所でさまざまなブドウの品種やクローンを育てることで、国際競争力を持った日本ワインが生み出されるようになるのだと、鹿取さんは続けます。

画像3: 日本ワインの未来を支える“母樹の畑”とは?「原木園プロジェクト」の全貌

「私たちが直面している課題は主にふたつ。第一は、国内のブドウ苗木の約5割がウイルス汚染されているという品質問題。第二に、気候変動に対応した、日本で使える新品種・クローンの種類が極めて限られているということです」

2018年10月30日施行の「果実酒等の製法品質表示基準」(通称:ラベルの表示ルール)により、日本ワインは「国内産ブドウを原料とし、国内で醸造されたワイン」と法的に定義されました。これに従って、日本ワインは日本ワインであることの表示が義務化され、日本ワインとしての確実性が国内外に示されました。

しかし、健全な苗木の供給体制がいまだ整っておらず、栽培技術や情報の蓄積・共有、適地適作の実践も進んでいないのが現状。

「JVAはこうした課題の解決を目指しています。つまり、さまざまな品種のウイルスチェック済みの苗が普及して、各地のワイナリーで土地に適した品種が選べるようにしたいのです。また、日本全国に点在している生産者にブドウ品種や栽培についての情報が共有される仕組み作りにも取り組みます」。そうすることで適地適作も進み、高品質で土地の特徴を表した魅力的なワインが造られるようになると、鹿取さんは語ります。

ふたりは、鹿取さんの案内で東御市北御牧地区にある御牧原ワインラボ(仮称)の原木園を歩いて回りました。

画像4: 日本ワインの未来を支える“母樹の畑”とは?「原木園プロジェクト」の全貌

「先日、第一期となる苗木を植えたこの場所は、1.3ヘクタールほどの広さがあります。この場所は、『世界の主要産地から収集した200種の品種やクローンのライブラリー』『日本全国に出荷する苗木の源となること』という2つを主要機能としています。なかでも注目すべきは、従来の『ウイルスチェックの実施』に加え『耐病性のある品種の普及』に着手することです」と、鹿取さん。日本ワインにとって大きな役割を果たすことが期待されます。

画像5: 日本ワインの未来を支える“母樹の畑”とは?「原木園プロジェクト」の全貌

原材料であるブドウからきちんと日本で栽培することの重要性を知った、ふたり。小山さんは、「時間はかかるかもしれませんが、この原木園が母樹でいっぱいになるころには、私の生まれ育った東御市が日本の新しいワインの聖地となっているかもしれない。そんなふうに考えると、感慨深いし、ワクワクしますね」と、期待を込めて語りました。

一般社団法人 日本ワインブドウ栽培協会

Eメールinfo@jvine.or.jp

ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

画像1: ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

続いてふたりが足を運んだのは、ワイナリー「アルカンヴィーニュ」。

画像2: ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

「“ワインのある食卓”に集う日常の暮らしの楽しさを、現在そして未来の世代に伝える」。その理念のもと、日本に農業としてのワイン造りを根付かせること、そして荒廃した田園を美しく蘇らせることを目指して設立されたのが、日本ワイン農業研究所株式会社(JW-ARC)。

JW-ARC「アルカンヴィーニュ」では、ワインを醸造する以外に、「千曲川ワインアカデミー」という学びの場を設けています。

画像3: ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

取締役の小西超さんが、施設内を案内しながら創設時の話を聞かせてくれました。

画像4: ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

「現在11期目となる千曲川ワインアカデミーでは、ブドウ栽培、醸造、ワイナリー経営に関する知識と技術を学ぶことができます。300名超の卒業生のうち多くがワイン産業に参入し、自身のブドウ畑やワイナリーを設立しており、アルカンヴィーニュはまさに地域におけるワイン人材育成の中心的な役割を担っています」と、小西さん。

この取り組みには、オーナーであり、東御市産ワインの第一人者・玉村豊男さんの存在が切っても切れないと言います。

画像5: ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

「東御市初のワイナリーでありアルカンヴィーニュの兄弟ワイナリーであるヴィラデストワイナリー。その創設者である玉村豊男は、ワイナリー設立以前からエッセイスト、画家として広く知られていました。1991年、玉村さんは長野県に移住。西洋野菜とハーブの栽培を行う農園『ヴィラデスト』を始めました。翌年には0.2ヘクタールの畑にメルロー、シャルドネ、ピノ・ノワールといったヨーロッパ系のブドウ品種を植栽。これは、東御市において初めてのワイン用ブドウの植栽であり、玉村さんがこの地域のワイン産業における先駆者的な役割を担うことを意味しているのです」

画像6: ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

1996年、小西さんは宝酒造に入社。前年に「TaKaRa酒生活文化研究所」の所長に就任していた玉村さんとこのころに出会います。玉村さんの強い意志と行動力に賛同した小西さんは、2003年、ヴィラデストワイナリーの開業時に、栽培と醸造の責任者として参画。以来、東御市産ワインの質を現場レベルから引き上げています。

画像7: ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

「『ブドウ畑の風景を見ながら、そのブドウから造られたワインを飲む。野菜畑やガーデンを眺めながら、そこでいま採れたばかりの、新鮮な素材を素直に生かした料理を囲んで楽しい時間を過ごす』という『田園のリゾート』を創るというものでした」

いきいきと楽しそうに語る小西さんの話を、何度もうなずきながら聞くふたり。メモを取る手も止まりません。

画像8: ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

「NAGANO WINE」のコンセプトを提唱し、信州ワインバレー構想推進協議会の会長を務めるなど、長年にわたり地域のワイン産業をけん引してきた玉村さん。小規模ワイナリーが集積する新たなワイン産地を創り、農業を基盤としたライフスタイルをこの地に根付かせたいと、「アルカンヴィーニュ」を設立するに至ります。

話を聞いていた岡田さん、「ヴィラデストワイナリーの誕生をきっかけに、玉村さんのビジョンがどんどん広がっていくのがわかりますね。未来を夢見る力の強さを感じます」と、胸に響いたようです。

画像9: ワインで田園を再生する町へ。東御から始まった“学びと挑戦”のワイナリー

2008年、東御市はワイン特区に認定され、これを契機に小規模ワイナリーが続々と誕生。現在は、15のワイナリーが開業し、「千曲川ワインバレー」と呼ばれるまでに同エリアは成長しました。

このエリアから端を発した信州ワインバレー構想の中心地として、「桔梗ヶ原ワインバレー」「日本アルプスワインバレー」「天竜川ワインバレー」「八ヶ岳西麓ワインバレー」とともにワイン振興に切磋琢磨しているそうです。

アルカンヴィーニュ

住所長野県東御市和6667
電話0258-71-7082
営業時間10:00〜17:00
定休日木曜
webアルカンヴィーニュ 公式サイト

「小さく・分散し・共生する」。東御モデルが描く日本ワインの新潮流

今や県、市を挙げて取り組んでいる長野県東御市でのワイン文化の醸成。市としての取り組みについて、東御市・産業経済部農林課の方にもお話を聞くことに。

画像1: 「小さく・分散し・共生する」。東御モデルが描く日本ワインの新潮流

重田雄一さん(右)と大塚伸夫さん(左)がワインを基軸にした地域振興の取り組みについて教えてくれました。

画像2: 「小さく・分散し・共生する」。東御モデルが描く日本ワインの新潮流

「東御市は、新興ワイン産地として急成長を遂げるとともに、JVAが推進する『原木園プロジェクト』の拠点として、日本ワインの未来を担う重要な地域となっています。2003年のワイナリー初開業を契機に栽培面積が拡大し、2011年7.8ヘクタールから2020年53.6ヘクタールへと約7倍に増加。この急成長が2008年の『ワイン特区』指定の転換点となりました」と、重田さん。

この特区制度により、果実酒製造免許の取得基準が緩和され、小規模ワイナリーの参入障壁が低下し、多くのワイナリーがこの場所に誕生するに至ったそうです。

画像3: 「小さく・分散し・共生する」。東御モデルが描く日本ワインの新潮流

大塚さんは、サステナブルであることも重要なポイントだと語ります。「東御市のワイン産業モデルは、小規模・分散型ワイナリーが集積し、持続可能性と地域活性化を両立させる先進事例として国内外から注目されています。経営者の多くは都市部からの移住者で、強いこだわりと起業家精神を持ち、地域の支援やネットワークを活用して持続的な経営を実現しているんです」

画像4: 「小さく・分散し・共生する」。東御モデルが描く日本ワインの新潮流

小規模ながら高品質・個性重視のワイン造りが可能となり、ワインツーリズムやイベントなどを通じて地域外からの交流人口が増加、観光・飲食・宿泊など他産業へ波及するまでになったそうです。

「小さく、分散し、地域と共生する」ことで、環境・経済・社会の三側面で持続可能性を高めている、東御のワイン産業モデル。日本ワインのベースとなることを目指して、行政側も徹底的にサポートしたいという姿勢を強く感じました。

花と風に包まれるワインの丘へ。東御の田園ガストロノミーを味わう

画像1: 花と風に包まれるワインの丘へ。東御の田園ガストロノミーを味わう

さまざまな角度から東御市のワイン文化に触れたふたりは、小西さんの話の中で出てきた、「東御市におけるワイン文化がスタートした地」を訪れることにしました。

画像2: 花と風に包まれるワインの丘へ。東御の田園ガストロノミーを味わう
画像3: 花と風に包まれるワインの丘へ。東御の田園ガストロノミーを味わう

アルカンヴィーニュでお話を聞かせてくれた小西さんは、ヴィラデストワイナリーの代表・栽培醸造責任者も兼任。ふたりを連れてワイナリーを案内してくれました。

ショップ、カフェ前に広がるガーデンには四季折々の花々やハーブが植えられ、北アルプスの雄大な景色も見られます。

画像4: 花と風に包まれるワインの丘へ。東御の田園ガストロノミーを味わう
画像5: 花と風に包まれるワインの丘へ。東御の田園ガストロノミーを味わう

12ヘクタールのブドウ畑には、メルローやシャルドネを中心に2万5,000本を超えるブドウの木。「ゆっくりとした空気の流れる中での自然散策は、心が晴れやかになりますね」と、岡田さん。

画像6: 花と風に包まれるワインの丘へ。東御の田園ガストロノミーを味わう
画像7: 花と風に包まれるワインの丘へ。東御の田園ガストロノミーを味わう

営業期間中の土・日・祝日には有料(500円)のワイナリーツアーを開催(前日までに要予約)。また、園内数カ所にはQRコードが設置されており、ご自由に「セルフガイド」ツアーを楽しむことも可能です。

画像8: 花と風に包まれるワインの丘へ。東御の田園ガストロノミーを味わう

ワイナリー併設のカフェレストランでランチタイム。ガーデンで採れた野菜やハーブ、地元農家から届く野菜のほかに、長野県内でつくられるさまざまな食材を中心に、季節感たっぷりのメニューを提供しています。

画像: 季節の野菜づくし

季節の野菜づくし

画像: 信州豚のオニオン煮込み、春野菜添え

信州豚のオニオン煮込み、春野菜添え

この日のヴィラデストランチコース(5,000円〜)は、「季節の野菜づくし」「信州豚のオニオン煮込み、春野菜添え」「骨付き『信州紅酔豚』の炭火焼き」といった、この地ならではの魅力が詰まったお腹いっぱいのラインナップ。ワイナリー自慢のワインと合わせて楽しむのもこのお店ならではの醍醐味です。

ヴィラデストガーデンファーム アンド ワイナリー

住所長野県東御市和6027
電話0268-63-7373
営業時間10:00〜17:00
カフェ定休日水曜(3月と12月は火曜、水曜)、冬季(12月下旬〜3月上旬)
ツアー土日祝のみ13:00より、定員10名 ※前日までに要予約
webヴィラデストガーデンファーム アンド ワイナリー公式サイト

世界が認めた“椀子ワイン”のすべて。360度の畑とともに歩く醸造体験

画像1: 世界が認めた“椀子ワイン”のすべて。360度の畑とともに歩く醸造体験

千曲川ワインバレー内でも最大規模の栽培面積を誇るワイナリー「シャトー・メルシャン 椀子(まりこ)ワイナリー」にも足を運びました。

画像2: 世界が認めた“椀子ワイン”のすべて。360度の畑とともに歩く醸造体験
画像3: 世界が認めた“椀子ワイン”のすべて。360度の畑とともに歩く醸造体験

ここは、360度をブドウ畑に囲まれた景観の中で、ブドウ栽培からワイン製造までを一貫して見学できる施設です。2019年9月にオープンし、自社管理の「椀子ヴィンヤード」内に位置する“ブティックワイナリー”として、地域のワイン文化の発信地となっています。

画像4: 世界が認めた“椀子ワイン”のすべて。360度の畑とともに歩く醸造体験

椀子ワイナリーの最大の魅力は、すべてのワイン製造工程を実際に見学できることです。「ブドウ栽培からワイン造りまでを公開する」というコンセプトのもと、ワイン造りの全工程を学ぶことができます。

製造部長でチーフワインメーカーとして製造の最先端に立つ、勝野泰朗さんの先導でワイナリー内を巡りました。

画像5: 世界が認めた“椀子ワイン”のすべて。360度の畑とともに歩く醸造体験
画像6: 世界が認めた“椀子ワイン”のすべて。360度の畑とともに歩く醸造体験

施設にはテイスティングカウンターが設けられており、訪問者は椀子ワイナリーで生産されたワインを試飲することが可能です。

画像7: 世界が認めた“椀子ワイン”のすべて。360度の畑とともに歩く醸造体験

「コンクールで複数の賞を獲得している世界レベルの日本産ワインを、造り手の言葉を聞きながら試飲できるのは、ワイナリーを訪れたからこその醍醐味ですね」と小山さん。貴重な経験に、目を輝かせていました。

シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー

住所長野県上田市長瀬146-2
電話0268-75-8790
営業時間10:00〜16:30(木曜のみ9:00〜)
定休日火曜、水曜
webシャトー・メルシャン 椀子ワイナリー公式サイト

日本ワインの“今”を体験する旅。東御で、五感が目覚めるワイナリー巡りへ

画像: 日本ワインの“今”を体験する旅。東御で、五感が目覚めるワイナリー巡りへ

日本全国から熱い視線を集め始めている東御市。日本ワインの聖地として、新しい歩みを始めた千曲川ワインバレーには、個性豊かなワイナリーと熱い思いから生まれる多彩な味わいが存在しています。

豊かな自然とともに生まれる日本ワインの“今”を、生産者・醸造家の話を聞きながら、体験しに出かけませんか。

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