金沢の文化と引き継がれている味~芝寿しの創業~
「芝寿し」は、北陸3県を中心に店舗を展開。押し寿し・お弁当を通じてお客さんへ「おいしさ」を届けています。
創業65年目、石川県金沢市の中心街片町の小さな東芝のショールームから生まれました。その創業のストーリーも、「もったいない」という考えが大きなきっかけでした。
創業者である梶谷 忠司氏は、当時この場所で日本初の自動炊飯器を販売していました。ただ炊飯器を販売していたのではなく、実際にご飯を炊く実演販売を行い、それは当時画期的な取り組みでした。
実演販売のおかげで炊飯器は売れるものの、炊きあがったごはんは毎日のように余るという状況。このことに梶谷氏は「あぁ、もったいない。このごはんを捨てずにどう活用すればよいか」と悩んだといいます。
そこで目をつけたのが、冷めても美味しくごはんを食べられる「寿し」。金沢ではお祭りや“ハレの日”に「押し寿し」をつくる風習があったことから、これをアレンジして売り出したところ、大きな評判を呼んで人気も高まり、本格的な販売にいたりました。
現在の代表商品「笹寿し」もまた、梶谷氏が笹餅をヒントに、餅をご飯に置き換えたのが始まりです。創業者の柔軟な発想から生み出された商品は、今も地元のお客さんに愛され続けています。
今改めて考えると、創業者の「もったいない精神」は、現代のSDGsに通じるものがあります。現在も同社ではその思いを引き継ぎ、持続可能な世界を目指し、商品開発・社会活動を行っています。
ちなみに「芝寿し」という社名は、“東芝ショールームから生まれた寿し”ということが由来となって付けられました。
「お客さんのために」がフードロスにもつながる~雨降りキャンセル~
「芝寿し」には、「雨降りキャンセル」という独自のサービスがあります。
お客さんがお弁当を利用されるシーン・用途はいろいろありますが、運動会などの野外で行われる行事・イベントは、雨が降ったら中止になることがほとんどです。
「お弁当が必要なくなったなぁ…どうしよう?」「キャンセル料がかかっちゃうなぁ…」など、お客さんには困りごとしか残りません。
その問題を解決するのが、この「雨降りキャンセル」サービス。行事・イベントは当日の朝6時30分までに電話すれば、無料でキャンセルを受け付けてくれるのだとか。
「当日のキャンセルなんて、どうやって対応できるの?」「キャンセルされたお弁当はどうなるの?」と、一見するとお店の負担やフードロスが気になります。
しかし「芝寿し」では、細かな時間管理を徹底し、日々1時間単位で製造可能な数の把握・管理をすることで、食材を無駄にしない仕組みを取っているといいます。
ごはんを炊き始める時間は夜中から雨雲レーダーで確認し、雲の動きや降水量など天候の変化を細かくみて、判断を行っています。もちろん、人が判断するため予想が外れることもありますが、その場合、炊きあがったごはんは直ぐに酢飯に変えてお弁当にし、直営店で販売することで、食材を廃棄することのないシステムが作れているとのこと。
キャンセルサービスは、北陸ならではの大雪による状況変化にも対応。また、最近では新型コロナ感染症の拡大で、予定していた行事・イベントなどが中止になっている現状にも対応してくれるサービスとなっています。
利用するお客さんのことを考えることで、現代の課題であるフードロスの減少にもつながる。「芝寿し」では、まさに理想とすべき取り組みが行われているのです。
つくる責任とつかう責任を持つ企業として~SDGsの取り組み~
さらに、「芝寿し」では新しい取り組みとしてフードバンク活動にも参加。
フードバンクとは「食糧銀行」とも呼ばれる福祉活動で、さまざまな理由で処分される食べ物を困窮者や福祉施設へ無償で提供することが主な活動とされています。
近頃、「子ども難民(貧困)が多くなってきている」というニュースを目にした方も多いでしょう。
フードバンク活動は、今目の前にある「食品ロス」「貧困」の解決に取り組むだけでなく、一人でも多くの子どもが健康で活き活きした大人になることを支援したい、そんな将来の日本のための活動です。
「芝寿し」では、フードバンク活動において多種類のお弁当・お寿しを製造していますが、主に「ごはん・お魚」を提供しており、種類でいうと34種類ほど。
単に施設などに提供といっても、日常の製造業務とは別に、種類分けや管理、お渡し方法など、窓口の対応も徹底して行っているとのこと。
実際にフードバンクを利用した施設からは、「好きなごはんが食べられる」「多種多様なごはんが嬉しい」「食で元気になれる」「対応へのお礼」といった声をもらうといいます。
地元企業として、未来につながる地域貢献も行う。このように「芝寿し」は、さまざまなアプローチでSDGsに取り組んでいるのです。
SDGsの17の目標の中で「芝寿し」が取り組んでいるその他の活動は、同社のオフィシャルサイトに掲載されていますので、あわせてチェックしてみてください。
未来を切り開く人材育成~活躍する女性社員~
「芝寿し」では、「社員の成長なくして企業の成長なし」という考えのもと、自己の人間力向上を実感できる職場の実現を目指しているそうです。
最近では世代や性別を超え知恵を出し合える環境になり、女性社員の活躍も目立つようになったといいます。
男女比率に偏りがみられる組織がまだ多い中、同社では全体の8割が女性社員。役職についたり、リーダーとしてその力を発揮したりする女性が増えつつあり、多くの成果が出ています。
ここ最近では、働く女性が中心となって、近年注目されている代替肉のお弁当を企画・開発し「大豆ミートのガパオライス」を商品化。
こちらの商品は昔からある定番商品とは異なるブランドとして展開。次世代のお客さんに向けて「カラダを気づかう新習慣」をテーマとしたブランド「芝ナチュラル」として販売を開始しました。少しずつ認知が広がり、現在注目を集め始めている商品です。
地元に愛されている定番商品とは全く異なるジャンルの商品を提案し、お客さんに受け入れていただくものづくりは、決して簡単な道のりではなかったといいます。しかし、一人ひとりの社員が世の中の変化を敏感に捉え、進化・成長し続ける同社の理念を意識することで、成功へとつながっているのです。
芝寿しの創造と挑戦は続く~地元と共に歩む企業であり続けるために~
地元を中心に、金沢の文化である押し寿しは広がりを見せています。
地元ではもちろんのこと、これからさらに多くのお客さんに感動を届けるために、「芝寿し」が新たな技術と設備を追求し、素材と製法にもこだわり誕生したのが「冷凍寿し」です。
冷凍なのに、炊きたてのようにシャリがふっくら。冷凍なのに、握りたてのようにネタが新鮮。通常の寿しと比べてもまったく違いがわからないといった声をもらうほど好評だといいます。
これまでは「笹寿し」を全国配送する際、お客さんの手元に届いたその日が消費期限であることが難点だったそうですが、この冷凍技術を使って作ったお寿司は、“食べたいときに、好きな分だけ食べられる”ことを可能にし、徐々に販路を拡大させているのだそう。
日本だけでなく、世界の食卓に「芝寿し」の商品が並ぶ日も、そう遠くないでしょう。
現代では、食の多様化が進み「ごはん文化」が少しずつ失われようとしています。ごはんを食べる喜び、ごはんの歴史と文化を伝えていくことで、日本が育んできた食文化を守っていきたいという思いも持つ「芝寿し」。
食に携わる企業であるからこそ、ごはん文化の現在と未来をつなげる架け橋として、今後も地域と社会に貢献していきたいといいます。
そんな「芝寿し」のSDGsの取り組みを体感できるのが、石川県の本社工場の敷地内にある「芝寿しのさと」。古民家を移築し仕上げた売店があり、店内ではお米本来の美味しさを感じられる「竈炊きごはん」のランチやおむすびから、看板商品の「笹寿し」や「お弁当」も販売されています。
旅行の際には、こうしたSDGsに積極的に取り組む場所へ足を運ぶことで、旅行者としてもサステナブルな選択をしていることにつながります。
石川県へ旅行される際には、「芝寿しのさと」でランチを楽しんだり、お土産として「芝寿し」の商品を手に取ったりしてみてはいかがでしょうか。ただ消費するだけで終わらない、特別な旅となるはずです。
芝寿し
芝寿しのさと
住所 | : | 石川県金沢市いなほ2-5 芝寿しいなほ本社工場敷地内 |
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電話 | : | 076-240-4822(直通/飲食に関するお問合せ専用) 076-240-4569(本社/その他ご予約) |
営業時間 | : | 平日 9:00~17:00/土・日・祝 8:30~17:00 ※ランチタイム 11:00~14:00(L.O 13:30) |
定休⽇ | : | 【飲食】水曜/【お弁当販売】 1月1日 |
web | : | https://shibazushi.jp/shop_list/ishikawa/shibazushinosato |
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