文・写真:長谷川円香
自然豊かな新潟県十日町市で、“ウィズコロナ”時代の旅を満喫
新潟県の南寄りに位置する十日町市は、東西に山が連なって「妻有盆地」と呼ばれる盆地を形作っています。その中央を流れるのは、日本一の大河・信濃川。日本の原風景ともいわれる棚田やブナ林などの景色の中で、人々は自然の恵みと共に暮らしています。
そんな十日町の豊かな自然を堪能できるツアーが、「心の豊かさに触れる旅~十日町で体感するニューラグジュアリー~」。新型コロナウイルス感染症への対策をとりながら催行される、“ウィズコロナ”時代の旅となっています。
ツアー日程
1日目
- 14:20 まつだい駅集合
- 14:40 醸す森〈チェックイン〉
- 15:00 まつのやま茶倉〈ホーリーバジル花摘み体験〉
- 17:15 醸す森〈夕食・宿泊〉
2日目
- 6:30 醸す森ラウンジ集合〈早朝散歩〉
- 8:00 醸す森〈朝食・チェックアウト〉
- 9:45 やぶこざきキャンプ場〈森散策・ミツロウクリームづくり体験〉
- 12:00 まつだい農舞台・里山食堂〈昼食〉
草間彌生「花咲ける妻有」が出迎えてくれる、まつだい駅
集合場所として指定されたのは、北越急行ほくほく線「まつだい駅」。東京駅からは新幹線と在来線を乗り継いで、約2時間30分で到着します。十日町市のなかでもこの旅の舞台である十日町市松代は、農村風景や里山の暮らしが残る自然豊かな地域。そんな十日町市と隣町の津南町は、「越後妻有(えちごつまり)」と呼ばれ、2000年から3年に一度「大地の芸術祭」を開催しています。
駅を出ると、草間彌生さんが2003年に制作した「花咲ける妻有」が出迎えてくれました。「花咲ける妻有」を楽しんだら、集合場所の観光案内所へと向かいます。
案内所でツアーの受付を済ませ、バスに乗り込みます。今回の訪問先のパンフレットとともに「新しい旅のエチケット」と書かれた注意事項も配られました。ウィズコロナ時代の新しい旅のスタートです。
松代・松之山温泉観光案内所
住所 | : | 新潟県十日町市松代3816番地1 |
---|---|---|
電話 | : | 025-597-3442 |
営業時間 | : | 9:00~17:00 |
定休日 | : | 不定休 |
web | : | https://www.tokamachishikankou.jp/touristoffice/ |
山の麓で、ホーリーバジルの花摘みを体験
宿泊先に荷物を置いて、本日最初の目的地、ホーリーバジルのお茶を生産している「まつのやま茶倉」へと向かいます。
ホーリーバジルはメディカルハーブの代表的存在で、別名トゥルシーとも呼ばれています。免疫機能の向上や老廃物のデトックス、アンチエイジングなどさまざまな効果が期待できるのだとか。インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」で用いられ、その薬効で人々の心と体を長い間癒してきたハーブです。
そんなホーリーバジルを育て、お茶として加工・販売しているのは、「まつのやま茶倉」の嶋村彰さん。この旅の案内人でもあります。嶋村さんはスノーボード好きが高じて9年ほど前に十日町市に移住。その後、長野県で栽培されるホーリーバジルと出会い、「こんな景色を自分でもつくりたい」と栽培を始めたそうです。
まず案内された場所は、山の麓一面に広がるホーリーバジルの畑。ラベンダーのような紫色のホーリーバジルが広がる様は美しく、心を癒してくれます。
嶋村さんに教えてもらいながら、実際に花摘みを体験。収穫していると、ほのかに甘い爽やかな香りが広がってきます。気づけば無心で収穫しており、時間が経つのも忘れてしまうほどでした。
こちらで栽培されているホーリーバジルは無農薬で、化学肥料も一切使われていません。気をつけているのは、「循環するものしか使わないこと」だそう。「例えば、バジルの畝にはビニールではなく、草や藁を敷いています。できる限り自然界で循環する素材でつくることを続けていきたいんです」(嶋村さん)。
強い日差しに負けないよう、適宜休憩を挟みます。嶋村さんがホーリーバジルを水出ししたお茶を用意してくれていました。ほんのり色づいたお茶からも、いい香りが。口に入れると、爽やかな香りが鼻を通り抜けます。
1時間ほど花摘みを体験した後は、ホーリーバジル茶の加工所へ。摘み取ったホーリーバジルは、水洗いをした後、香りが抜けないように室内でゆっくりと9割ほど乾燥させます。その後、天日干しや枝取り作業を行い、ようやくお茶になるのです。
まつのやま茶倉
住所 | : | 新潟県十日町市松之山黒倉1150 |
---|---|---|
電話 | : | 025-594-7188 |
web | : | https://www.mother-cakra.com/ |
自然のなかでゆっくりと寛げる「BAR & HOSTEL 醸す森 [kamosu mori]」
加工所の見学が終わると、宿泊する「BAR & HOSTEL 醸す森 [kamosu mori] 」(以下、醸す森)へ向かいます。ラウンジは木をベースにまとめられており、心地よい空間。ラウンジは広く、距離を保ちながらおしゃべりすることもできます。
「醸す森」は、バルとホステルが一緒になった宿。人やお酒、風土と出会って何かが生まれる場所でありたいということから“あなたを醸す”をコンセプトにしているそう。
客室は8畳タイプの和室でしたが、ひとりでは十分すぎるほどの広さ。ソーシャルディスタンスが守られたうえで落ち着いてゆったりと過ごせて、旅の疲れも癒されます。
窓の外は、目を奪われる絶景です。視界を遮るビルも建物もなく、大自然の雄大さを感じられます。
ホーリーバジル・地元食材と共に。「醸す森バル」で過ごす至高のひととき
18時30分からは、まつのやま茶倉と醸す森バルの特別コラボディナーです。嶋村さんも作業を終え、醸す森まで駆けつけてくれました。
まずは嶋村さんから挨拶と、今回のツアーのお土産が手渡されます。お土産は、最も手間暇をかけてつくられる数量限定の「神目箒茶 RAMA花茶」と、ホーリーバジルのポストカードでした。
挨拶が終わると、早速ディナーのスタートです。食前酒として出されたのは、隣町・津南町にある苗場酒造の日本酒「醸す森」。華やかな香りで甘口の「醸す森」は、日本酒にあまり親しみのない人でも飲みやすい味わい。後口は爽やかで、次にくる料理の味を崩しません。
お待ちかねの料理は「切りたての生ハムとパンコントマテ、ホーリーバジル添え」、十日町産のトマトをはじめ地元野菜を使った「フレッシュバジルのサラダ」、コシヒカリを米粉として利用した「丸パン」、十日町のとうもろこしを使った「とうもろこしの冷製ポタージュ」と、地元食材をふんだんに使ったメニューが並びます。
どれも野菜本来の味が楽しめる逸品。特に「とうもろこしの冷製ポタージュ」は、甘味料を加えていないそうですが、とうもろこし本来の甘みが濃厚に感じられました。
メイン料理は「越の鶏のコンフィ」です。「越の鶏」は新潟県産の鶏肉で、カロリーが低くヘルシーな食材。付け合わせのオクラやズッキーニは醸す森の畑でとれたものが使われています。
デザートは、「ホーリーバジルのブランマンジェ」。ぶどうをベースにしたソースと共にホーリーバジルがトッピングされていました。爽やかな風味で後味もさっぱりです。
食事の席は対面しないように斜めに配置されていて、程よく距離を保ちながら会話を楽しめました。お腹がいっぱいになったら、建物の外にある椅子やハンモックに座って星空を楽しんでも良し、部屋でゆっくりと寛いでも良し。好きなように過ごせます。
【2日目】心地よい朝の空気でリフレッシュする、早朝さんぽ
6:30にラウンジ集合。玄関を出ると、すでに嶋村さんが待っていてくれました。爽やかな朝の空気を感じながら、早朝さんぽのスタートです。こちらの行程は、販売されているツアーではオプションでの提案を予定しているそう。
「この景色が好きなんですよね」嶋村さんの声がしたのでそちらに目を向けると、田んぼと小川、畑が一緒に見える里山ならではの風景が広がっていました。歩いている道中で「自生のふきですね。食べられるはずですよ」と“ふき”をかじってみる場面もあり、普段の散歩とは違った体験ができます。
そして、30分ほど歩いて向かった先は、嶋村さんがこれから新事業として始める塩窯の工房です。1200万年前の海水が温泉として湧き出ている松之山温泉から塩をつくる予定なんだそう。通常、塩は海でつくりますが、松之山は山。だから、「山塩」として販売していきたいと嶋村さんは意気込みます。
朝からたくさん動いた後は、醸す森で地元のお母さんたち手作りの朝ごはんを堪能します。松代でつくられたコシヒカリ、醸す森の地下でつくられた手作り味噌、醸す森の畑で収穫された野菜など、地元の食材を味わいました。
BAR & HOSTEL 醸す森 [kamosu mori]
住所 | : | 新潟県十日町市松之山黒倉1878-4 |
---|---|---|
電話 | : | 025-596-2200 |
web | : | https://www.kamosumori.com/ |
貴重なニホンミツバチの蜜を使った、ミツロウクリームづくりを体験
朝食を終えて醸す森をチェックアウトし、やぶこざきキャンプ場へと向かいます。ここではミツロウクリームづくりと森の散策を体験します。
まずは、ニホンミツバチの巣からとれるミツロウを使ったオーガニックの保湿クリームづくりからスタート。
通常は蜂の巣を溶かしてミツロウをとるところから始めるそうですが、近年はミツバチが減ってしまい、蜂の巣をとることが難しいのだとか。今回は、昨年とってあったミツロウを使ってクリームをつくります。
まずは、用意されたミツロウにホホバオイルを入れて湯煎します。ミツロウが溶けたら、かき混ぜて冷めるのを待つ。たったこれだけの作業で、ミツロウクリームが完成します。
冷めるのを待っている間に森の散策へと出かけましょう。
上品な香りを持つクロモジを探しながら、やぶこざいて森を散策
「やぶこざきキャンプ場」の名前は、藪をかき分けて進むことを意味する「やぶこざき」から来ているそう。その名の通り、木々をかき分け、険しい道を進んでいきます。
森に入るとすぐに目に入ってきたのは、高級爪楊枝にも使われる「クロモジ」です。枝を折ると、爽やかで上品な香りが広がります。このクロモジの枝と葉をみんなで持って帰り、煮出してお茶として飲むことに。
説明を聞きながら、さらに険しい道を進んでいきます。両端が斜面になっていて、自分たちの両足の幅ほどしか足場がない道を進みます。藪をかき分け、急な傾斜の坂道を登り、散策は終了。
散策の後は、クロモジのお茶で一休み。枝と葉に分け、それぞれお湯で煮出します。枝のお茶はピンク色に、葉だけのお茶は緑色になりました。すっきりとした味で、歩き回って疲れた身体に染み入ります。
そして、忘れてはいけないのが、ミツロウクリーム。冷めたクリームに好きなエッセンシャルオイルを入れて、ゆっくりと混ぜたら完成です。エッセンシャルオイルのほんのりとした香りが、リラックス効果をさらに高めてくれます。
やぶこざきキャンプ場
住所 | : | 新潟県十日町市松代7216 |
---|---|---|
電話 | : | 025-594-7216 |
web | : | https://www.facebook.com/pages/category/Sports---Recreation/Yabukozaki-outdoors-468407283351182/ |
地元でとれたコシヒカリと野菜を使った郷土食を堪能
最後は、コシヒカリと旬の野菜を楽しめる「越後まつだい里山食堂」へ。水色で清々しい店内と一面ガラス張りの窓が印象的な食堂は、「大地の芸術祭」の作品でもあります。
メニューは、地域の食材を使ったおばんざいとコシヒカリのおにぎりの「おにぎり定食」。本来はバイキング形式での提供だったものを、感染対策で個別での提供に切り替えたそうです。
越後まつだい里山食堂
住所 | : | 新潟県十日町市松代3743-1 まつだい「農舞台」内 |
---|---|---|
電話 | : | 025-594-7181 |
営業時間 | : | 9:00~17:00(16:30L.O ※ランチ11:00〜14:00) |
定休日 | : | 水曜 |
web | : | https://www.echigo-tsumari.jp/travelinformation/satoyamashokudo/ |
山の澄んだ空気と、棚田や山の風景、その恵みを受けて育った農作物。そのすべてを満喫し、身体にとりこんだ2日間でした。溜まっていた疲れはどこかへ飛んでいき、全身に力がみなぎってくるようです。十日町市には、ツアーが終わってもまたすぐに訪れたくなる魅力がありました。
このツアーは、10月に実施される秋のツアーの販売が開始されています。詳しくは十日町市観光協会にお問い合わせください。
■十日町市観光協会
https://www.tokamachishikankou.jp/
■心の豊かさに触れる旅〜十日町で体感するニューラグジュアリー<秋>〜 お申し込みはこちら
https://www.tokamachishikankou.jp/tourinfo/45499/
※体験内容や行程は、季節に応じた内容に変更となるため、販売されるツアー商品と異なる場合があります。
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。