柳沢さんは、なぜ旅ノートを作るのでしょうか。彼女がこれまでに作ってきた素敵な旅ノートを見せていただきながら、その魅力、作り方のヒントを教えてもらいました。
ひとり旅でアジア各地へ。現地の人の生活に触れるのが旅の醍醐味
旅行が趣味で、旅に関する著書も多数ある柳沢さん。まずはその旅好きのルーツからお聞きしました。
柳沢さん「はじめての海外旅行は小学校6年生の頃。旅好きの両親の影響で、大人になってから旅行が趣味になりました。特にひとり旅が好きで、コロナ禍以前は多いときで年7回くらい海外に行っていました。仕事のスケジュールが空きそうだな~と思ったら、直前でもえいっとチケットを取って出かけちゃうことも多かったです」
コロナの影響で気軽に海外に行けなくなり、「旅欲」が溜まって仕方ないという柳沢さん。以前はどんなひとり旅をしていたのか聞きました。
柳沢さん「アジアの民芸の器が好きで、以前はよく台湾や香港、ベトナム、タイなどにキッチン用品や日用品を探す旅に行っていました。我が家の日用品は旅先で入手したものがほとんど。あとは市場、本屋、美術館とカフェはどんな国でも必ず行きます。スーパーやコンビニも楽しいですよね。観光地としてパッケージされたものだけじゃなくて、現地の人たちが普段どういう生活をしているのかを見るのが好きなんです」
自分専用のガイドブック。旅行のたびに増えていく「旅ノート」
そんな柳沢さんが旅行のたびに作っているのが「旅ノート」。1回の旅行につき1冊のノートを作っているのだとか。
柳沢さん「旅ノートを作り始めた目的は、旅を記録しておくため。事前にスケジュールや持ち物、服装などをメモしておき、現地では、行った場所や買ったものをメモしたり、地図やショップカードを貼り付けたりしています。旅の記憶は、時間が経つと薄れてしまいがちですが、こうやって形に残っていると後で振り返ることができますし、私は同じ都市に繰り返し行くことが多いので、自分だけのガイドブックとしてとても役立ちます」
では、柳沢さんが旅ノートを作り始めたのはどんなきっかけがあったのでしょうか。
柳沢さん「大学生のときに卒業旅行でフランスに行った際に、地図を貼り付けたノートを作ったのが始まりです。当時はまだスマホのない時代ですから紙の情報が第一で、ノートにたくさん地図を貼り付けて、行きたいところやショップの名前を書き込んでいました。スマホを持つようになってからもその習慣が残っていて、旅ノートは作り続けています」
柳沢さんのようにリピート旅をすることが多いなら、以前の情報がまとまっていればとても便利。また、柳沢さんがこまめに旅ノートを書くのは、「ひとり旅&長旅派」という理由もあるのだそう。
柳沢さん「私はひとり旅が好きで、短くても1〜2週間ほど滞在するので、時間に余裕があるということも旅ノートを作り続けている理由かもしれません。カフェなどでのんびりとお茶しながら今日の出来事や今後のスケジュールを書いています」
旅先での余暇を使い、旅ノートと旅を充実させていくという柳沢さん。
柳沢さん「ちなみに、旅先ではあまり予定を詰め込まないスタイル。だいたい今日はこの辺のエリアをまわろうと、ゆるく決めるくらいです。行きたいカフェやお店などの目星はある程度つけていくけど、途中で気分じゃなくなったらあっさり変更します。その場で気ままに変えられるのがひとり旅の魅力のひとつだと思います」
特別な道具やスキルはいらない、旅ノート作りのコツ
ではここから、旅ノートの作り方を教えていただきます。まずは、柳沢さんが旅ノート作りに使っている道具を見せてもらいました。
柳沢さん「ノートは無印良品のA5サイズの方眼です。サイズや厚さもちょうどいいのでここ数年はずっとこれ。リングではなく中綴じタイプのほうが、書きやすくていいと思います。使用する文房具はペンやスタンプ、付箋、マスキングテープなど。書き直すこともあるので、ペンもスタンプも全て文字を消せるフリクションシリーズを使っています」
旅行の前にスケジュールや持ち物を書き込むときには、付箋に書いて貼り付けているそう。付箋なら予定が変わったときに貼り直せるし、宿泊先を移動するごとに付箋の色を変えるとわかりやすいなど、使い勝手がいいと柳沢さん。マスキングテープは、旅先でもらったショップカードやチケットなどを貼る際に使います。
柳沢さん「そのほかにも、旅先で買った商品についていたシールをそのまま貼ったり、駅や観光地でスタンプを押したりして、なんでもノートにまとめていきます。旅行先では文房具屋さんに行くのも好きなので、その土地の雰囲気がわかるようなシールを買ってそれを貼ることもあるんです。こうすることで、記録にもなり、ノートのページが賑やかに可愛く仕上がります。あと、最近は旅先で撮った写真をシール紙に小さくプリントアウトして、ノートの余白に貼って楽しんでいます。食べたものなどはやっぱり写真で見たほうが鮮明に思い出せますよね」
旅ノートのコツは書き込みすぎず“記録に徹すること”
では、旅ノートに記録していく際の手順やコツとは?
柳沢さん「事前に決めておいたスケジュールや持ち物、お土産リストなどは最初のほうのページに、付箋を使ってまとめておきます。また、旅の最中に書きこむページのフォーマットを決めておくのもコツです。1日1見開きと決めて、付箋で日付を書いておくんです。そのページに下調べしたお店の情報をメモしておくこともあります」
旅の最中(旅ナカ)は、1日につき1見開きを午前、午後に分けて、その日にあった出来事を時系列に沿って書き込んでいるのだそう。また、旅ノートに書くのは記録のみ、決して日記は書きません。
柳沢さん「私の旅ノートは記録に徹しています。書く内容は、行った場所と時間、食べたもの、移動手段、使ったお金、一言感想くらいです。日記を書いちゃうと、次の旅で活用したいのに恥ずかしくて読み返せなくなっちゃうでしょう(笑)。それに長文の感想を必須にすると書くこと自体が負担になってしまうので」
ちなみに、海外旅行だけでなく、国内旅行や仕事の出張でもノートを作っています。
柳沢さん「出張用のノートは1冊をインデックスシールで分けて毎回記録しています。出張先でも朝ホテルの周辺を散歩してお気に入りの喫茶店を見つけたりして、それを記録しておきます。事前に駅で買えるお土産の情報を調べてメモしておくだけでも役に立ちます」
日帰り週末旅の旅ノートを実際に作ってみました
今回柳沢さんに教えてもらったコツを参考にしながら、編集部も旅ノートを作ってみました。行き先は横浜への1泊2日の小旅行。有名観光スポットだけあって、テレビや雑誌で横浜の情報を目にする機会は多いでしょう。しかし、自らの手で横浜の行きたい場所やお土産に買いたいものなどを下調べして旅ノートにまとめてみると、まだ自分が知らなかった横浜の魅力を発見することができました。そして、来る横浜旅の日がより楽しみに。
旅ノートを作ることで、行き先の情報をしっかりと把握でき、旅マエのワクワク感も増し、より充実した旅にすることができるというわけなのです。旅行の前にネットや雑誌で情報を見ておくだけでなく、それを書き留めておくことで、現地で実際に役に立つ情報になります。
ノートが増えるごとに“旅のスキル”も増えていく
旅ノートを作るメリットを聞いてみると、旅のスキルアップにもつながると柳沢さんは言います。
柳沢さん「たとえば、持ち物や服装ですごく役立ったものには印をつけておき、逆に必要なかったものにはバツをつけて、気温なんかもメモしておくと、次行くときにどんな服を着ていけばいいか迷いませんよね。旅ノートの記録を見返すことで、次の旅に必ず生かせ、旅を充実させることができると思います」
柳沢さんのように何度も同じエリアを旅する人は、旅アトにも旅ノートに体験を記すことで、旅のスキルが上がっていく。そしてもちろん学びを重ねていく以外にも、自身の旅ノートを見返すことで、いつでも当時の思い出に浸れるというのも魅力です。
このようにひとつの旅の全てが詰まった旅ノートは、旅マエ、旅ナカ、そして旅アトのそれぞれをより充実したものにしてくれます。これから旅行を検討しているのであれば、ぜひ作ってみてはいかがでしょうか。難しく考えず、まずは柳沢さんのマネをして作ってみるといいでしょう。旅を重ねていくと同時に旅ノートが増えていき、旅をより深く、いつまでも楽しめる。旅好きにこそ、作っていただきたい1冊です。
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