周囲130km、9割が森林に覆われた屋久島が見えてきます。
屋久島に到着したら、一刻も早く山へ向かいたい。登山が目的であれば、そう思う方も多いのではないでしょうか。今回は、事前の学びと情報収集で、より深く屋久島を楽しむ旅をおすすめします。1泊2日でその魅力を体験してきました。

JALふるさとアンバサダー〔鹿児島支店〕 山本

日本初!「世界自然遺産」
屋久島は1993年、白神山地とともに日本で初めて「世界自然遺産」に登録されました。登録された理由は大きく二つあります。
一つ目は「自然美」です。小さな島ながら標高約2,000m近い山々をもち、樹齢1,000年を超える屋久杉の天然林が織りなす自然景観が高く評価されました。
二つ目は「生態系」です。亜熱帯性の植物から冷温帯性の植物まで、標高に応じて連続的に変化する植生(植物の垂直分布)が残されていることが、貴重であると認められました。
私は屋久島便に乗務していると、個人の感想ながら、お客さまがよく「こんにちは」と返してくださるのが印象的です。屋久島の雄大な自然が、お客さまのそのような温かい反応を引き出しているのではないかと、しばしば感じています。
まずは情報を入手!装備は万全に!
「登山前には、観光案内所やレンタルショップに立ち寄り、地元の方から情報を得ていただきたい」と話すのは、エコツアーガイド会社「山岳太郎」を経営し、登山用品のレンタル・販売も手がける渡邊さんです。店舗では知識豊富なスタッフが装備やルート、天候などについて丁寧にアドバイスしています。
「屋久島では、海外からの旅行者も含めて、軽装での登山が問題となっています。屋久島は日本の南に位置しているため、暖かいイメージをお持ちの方もいますが、寒さ対策など十分な準備なく山に入ることは危険です。安全に楽しんでいただくために、天候の確認や登山靴、雨具などの装備は必須です。」

登山に必要なものが一式レンタルできる
屋久島の年間平均気温は低地では鹿児島市よりやや暖かいのですが、山頂付近では札幌市と同程度に冷え込みます。そのため、屋久島の山を登ると、日本列島を縦断しているかのように多様な植生の変化を体感できます。屋久島の魅力の一つでもある植生の垂直分布。万全な準備をして楽しんでいただきたいです。
〔お問い合わせ先〕山岳太郎ショップ
| 住所 | : | 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房410-8 |
|---|---|---|
| 電話 | : | 0997-49-7112 |
| 営業時間 | : | 9:00〜18:30 |
| 定休日 | : | 無休(冬季は臨時休業あり) |
| web | : | 山岳太郎ショップ 公式サイト |
屋久島を深く知る
次に向かったのは、「屋久島世界遺産センター」です。
屋久島の魅力や自然の成り立ち、環境保全の取り組みや登山のマナー・ルールまで幅広く学ぶことができます。

スタッフの方から屋久島の概要や成り立ちについて教えていただきました。
屋久島は、島の約2割が世界自然遺産に登録されており、隣接する口永良部島は全域が国立公園です。特に、屋久島の西側、国立公園の特別保護地区内にある西部林道は、日本で唯一、世界遺産地域に車で入れる場所です。
屋久島は花崗岩が隆起してできた島であり、その栄養分の乏しい花崗岩質の土壌が縄文杉を長生きさせる理由の一つです。雨が多く台風や積雪もある厳しい環境で成長が遅いため、年輪が狭く長寿につながります。また、雨が多く、花崗岩の上に生えた苔が水分を蓄えることで、杉は安定して水分を確保し、育つことができます。

人力で運搬!?山のトイレ
皆さんは山のトイレのし尿が人の力で麓まで運び出されていることをご存じでしょうか。
山岳地帯では、し尿の運搬にトロッコや人力を用いていますが、運搬に掛かる費用や、し尿を運ぶ人々の身体的負担など、さまざまな問題を抱えています。
屋久島世界遺産センターでは、20Lのし尿運搬体験ができ、実際に担いでみると、山道を運ぶことがいかに重労働であるかを実感できます。

このような山岳トイレの維持管理やし尿運搬の負担を軽減するため、携帯トイレの活用が推奨されています。携帯トイレは島内各所で購入可能です。入山の際は、万が一に備え携帯トイレを携行し、自然環境の保全にご協力ください。
センター内には山に設置されているのと同じテント型の携帯トイレブースがあり、使用方法を実際に試して知ることができます。

山のトイレの現状と課題、そして携帯トイレの必要性について理解することで、山の美しさを守り、貢献するためには何をすべきかを考えるきっかけとなりました。
〔お問い合わせ先〕屋久島世界遺産センター
| 住所 | : | 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房前岳2739-343 |
|---|---|---|
| 電話 | : | 0997-46-2992 |
| 開館時間 | : | 9:00〜17:00(入館は16:30まで) |
| 休館日 | : | 年末年始(12月29日〜1月3日) |
| 入館料 | : | 無料 |
| web | : | 屋久島世界遺産センター 公式サイト |
いざ山へ!学んだからこその楽しさを実感
翌日、実際に山へと向かいました。
この日の目的地は、「小杉谷集落跡地」です。縄文杉へ向かうルート上にあり、休憩スポットとしても親しまれています。
午前10時30分、荒川登山口を出発。登山届を忘れずに提出します。

かつて林業に使われていたトロッコ道を進んでいきます。
植物を保護するためにも登山道以外にはむやみに足を踏み入れないようにします。

目的地までの道中、数匹のヤクシマザルとヤクシカに遭遇。
野生動物との健全な関係を壊さないためにルールがあることを事前に学びました。具体的には、食べ物を与えたり見せたりしないこと、野生動物とは10m以上の距離を保つこと、サルの目をじっと見ないことなどです。
ルールを守って静かに観察していると、動物たちは私たちの存在に気付きました。すると、まるで山へ案内するかのように背中を向けて前方を駆けていきます。その愛らしい姿は、とても癒される光景で、今も心に残っています。
1時間ほど歩くと、小杉谷集落跡地に到着。
小杉谷集落は、1923(大正12)年に森林軌道の敷設と共に国有林経営の拠点として誕生しました。1960(昭和35)年の最盛期には、小杉谷集落は540人が暮らす林業集落で、理髪店や小さな店なども存在しました。しかし、1970(昭和45)年の小杉谷製品事務所の閉鎖により、半世紀の歴史を終えました。

小杉谷小・中学校跡地。1963(昭和38)年には147名の子どもたちが在籍していました。
かつての集落の賑わいを想像し、ノスタルジックな気持ちに浸れる場所でした。

事前の学びの時間を大切にしたことで、山に入った時の感じ方が違いました。
五感をフルに使って、屋久島の奥深さを楽しめた気がします。
「世界自然遺産」鹿児島県には他にも二つある
鹿児島県には、今回ご紹介した「屋久島」のほかにも、世界自然遺産に登録された地域があります。それが「奄美大島」と「徳之島」です。ひとつの県に複数の世界自然遺産があるのは、日本では鹿児島県だけです。
今年は、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の登録から5周年の節目にも当たります。この機会に屋久島、奄美大島、徳之島の世界遺産の旅をぜひお楽しみください。
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