九州のなかでも、四国側に張り出して位置する大分県は、別府や湯布院など全国的に知られる温泉郷を抱え、源泉の湧出量が日本一。さらに食の魅力もあります。冬に訪れたならば、クエをはじめとした海鮮。湯に浸かり、鍋や刺身に舌鼓。ああなんと、旅人の心をかき乱す誘惑に満ちているのでしょうか。訪れない理由を探す方が難しいかもしれません。一路大分へ。海鮮と温泉を堪能する旅へと出かけます。

※価格は税込み表記です。

画像1: 「クエを食え」心の声に導かれ、大分県別府市、温泉海鮮グルメ旅

本州側から大分空港への着陸アプローチはやや複雑で、沿岸に位置する空港を通り過ぎ、グルッとUターンする形で滑走路に車輪を下ろします。その際、左右の窓から眼下に広がるのは別府湾。聞くところによるとブリやヒラメ、マダイが獲れ、クエの養殖も行われているのだとか。湾の奥に位置するのが、旅の目的地である別府市、温泉郷です。

別府湾を望む格別の立地にある「界 別府」は、“賑わい”の温泉宿

訪れたのは12月。かねてよりの暖冬ですが、さすがは日本屈指の温泉郷。一年通して人が集まる土地柄からか、熱気を感じるようです。

画像1: 別府湾を望む格別の立地にある「界 別府」は、“賑わい”の温泉宿

湾に面して大型のホテルが林立していますが、そのなかでもひときわ目新しい建物が、「界 別府」。星野リゾートの温泉宿です。

画像2: 別府湾を望む格別の立地にある「界 別府」は、“賑わい”の温泉宿

焼き杉の羽目板をあしらったような隠れ家風の入り口からエントランスロビーに入ると、温泉街の風情をモチーフにしたというインテリアが出迎えてくれます。テーマは“ドラマティック温泉街”だそうで、別府温泉ならではの賑わいが随所に表現された、テーマ性のある宿なのです。そしてこれらの意匠は、隈研吾氏が手掛けたものなのだとか。

画像3: 別府湾を望む格別の立地にある「界 別府」は、“賑わい”の温泉宿

さて、何はともあれひとっ風呂。別府が誇る塩泉を、臼杵焼のモチーフに彩られた内湯と、別府石を用いて野趣溢れる作意の露天風呂で堪能します。

画像4: 別府湾を望む格別の立地にある「界 別府」は、“賑わい”の温泉宿

全室オーシャンビューで、別府湾を四角くくり抜いたような借景と、陽光に照らされた柿渋色の壁が、なんとも個性的です。別府といえば血の池地獄が有名で、そこから着想を得たしつらえ。「豊後絞り」のオーナメントが部屋を彩ります。露天風呂付き客室もあり、滞在中は大浴場と交互に浸かって温泉三昧といきたいものです。

伊勢海老と和牛。贅と工夫に彩られた、海山のディナー

クエに呼ばれて訪れた旅路ですが、旅を豊かな体験にするためには、一食たりとも気を抜くわけにはいきません。夕食はスペシャリティの「伊勢海老と和牛の会席」をいただきましょう。

先八寸は、星野リゾートのどこの宿に行っても、華やかできらびやかなもてなしの盛り付けを見せてくれます。大分らしい竹細工と小鹿田焼にのっているのが、フグ皮とくろめ、椎茸の和え物。かぼすがのっていて、さっぱりとした味わいです。

画像1: 伊勢海老と和牛。贅と工夫に彩られた、海山のディナー

お次の煮物椀は鴨敷石寄せ。鴨肉の上にかぶらと薄いニンジンと大根、さらに薄くスライスしたしゃぶ餅を載せたもの。鴨はパテ・ド・カンパーニュのような印象で、濃密な味わい。出汁と具材の食感のコントラストも楽しい逸品です。

温泉ということで、木桶に盛り付けられたお造りの主役は伊勢海老です。大分の沿岸で獲れることから、主役に抜擢されたということですが、実は伊勢海老の旬は冬。九州ならではの甘い醤油か、塩とかぼすで、まったりとコクのあるぷりぷりの伊勢海老が表情豊かに楽しめます。

画像2: 伊勢海老と和牛。贅と工夫に彩られた、海山のディナー

臼杵はフグの産地。唐揚げはほんのり味が付いています。

メインを飾るのが、上質な和牛の鍋。野菜はクレソンとニラ、さらに椎茸は大ぶりなステーキ椎茸と呼ばれるもので、肉厚にしてジューシーで絶品。するどい辛みが特徴のかぼす胡椒で味の変化を楽しみます。鍋のしめは麺で、かぼすを練り込んだのだそう。濃密な椎茸の出汁に、さらにごまダレを溶き合わせ、かぼすが香る爽やかな麺仕立て。いやはや、鮮やかなお手並みでした。

寝ても覚めても温泉三昧。別府のステイを彩る、余興の数々

画像1: 寝ても覚めても温泉三昧。別府のステイを彩る、余興の数々

満腹になったころ、すっかり夜も更けており、また温泉に浸かると、エントランスが縁日のような風情に様変わり。カタヌキにピンボール、輪投げとブースが並び、風呂上がりにしばし童心に返れる余興とは。湯治客の心を掴むのがお上手です。

画像2: 寝ても覚めても温泉三昧。別府のステイを彩る、余興の数々

21時からは湯治ジャグバンドと題したショータイム。はっぴをまとったスタッフが、小気味いいリズムを、温泉と桶で太鼓よろしく打ち鳴らします。スモークとプロジェクションマッピングで幻想的な演出(期間限定)も加わり、温泉郷の夜を鮮やかに彩ります。

画像3: 寝ても覚めても温泉三昧。別府のステイを彩る、余興の数々

翌朝、別府の名物料理「地獄蒸し」をアレンジした和食膳をいただいたら、出発前にアクティビティをひとつ。

画像4: 寝ても覚めても温泉三昧。別府のステイを彩る、余興の数々

別府温泉絞りという染め物を作ります。赤と青に染められたハンカチを選び、参加者は模様を付けたい部分に輪ゴムや割り箸でシワを付けます。

画像5: 寝ても覚めても温泉三昧。別府のステイを彩る、余興の数々

温泉で染料を落とし、模様を浮かび上がらせるというものです。温泉の風情が模様になった、世界でひとつのお土産が完成しました。

界 別府

住所大分県別府市北浜2-14-29
web界 別府 公式サイト

見事なクエ鍋と、山あいで珍重される歴史的背景

さて、あらゆる角度から別府温泉を満喫したなら、いよいよ旅の目的であるクエを食べに向かいましょう。別府から車で約1時間、内陸の竹田市にある料理店「友修」に伺いました。創業明治13年(1880年)。地元で古くから親しまれる老舗でクエをいただきます。

画像1: 見事なクエ鍋と、山あいで珍重される歴史的背景

「海から比較的離れている竹田市で古くからクエが重宝されてきたのは、小魚だと運ぶ途中に傷んでしまうからです。山あいの人間は海の物に憧れるんです。舌が肥えている人が多かった土地柄もあり、食文化は栄えていました」

画像2: 見事なクエ鍋と、山あいで珍重される歴史的背景

こう教えてくれたのが、4代目の友永修治さんです。クエが高級魚と認識されるようになったのは、近年になってからだといいます。

画像3: 見事なクエ鍋と、山あいで珍重される歴史的背景

「高級魚といえばフグかクエかというくらいで、身も普通の魚とは違ってホロホロしているし、淡泊でありながら深い味わいがあります。皮目のゼラチンもおいしいですし、普通の魚とはレベルが違いますよね。ただ、ここ20年くらいで高級魚のイメージになりましたが、それ以前は身近な魚でした。大人になってお酒が飲めるようになって、ようやくおいしさがわかってきました」

画像4: 見事なクエ鍋と、山あいで珍重される歴史的背景

かくして現れたのが、見事なクエ鍋です。クエ鍋は出汁で煮込んで、そのつゆごと器にすくい、醤油とかぼすをジュッとたっぷり搾ってそのままいただくのが大分流。淡泊な白身ながら、脂の乗りは最高。ほろほろと崩れるや否や、ふくよかな甘みが押し寄せます。

竹田で古くから愛されてきたハレの大皿「頭料理」を堪能

「クエは宮崎沖や福岡の玄界灘で獲れたものが多くて、大きなものは使い勝手が悪いということで、こっちに回ってきたという背景もあります」

当時は貴重だった魚を、余すところなくいただくための食文化が、竹田に残るといいます。それが「頭(あたま)料理」と呼ばれるもの。現在はクエを使わず、スズキ科のニベと呼ばれる魚で作るそうです。

画像1: 竹田で古くから愛されてきたハレの大皿「頭料理」を堪能

「骨とウロコ以外はすべて食べます。口の内側の皮、口のまわりの身、アゴの下の身、クチビルなど、“頭”がメインの料理です。さらに胃袋、浮き袋、肝臓、腸など、普通は食べない部分も、茹でてかぼすポン酢で召し上がっていただきます」

画像2: 竹田で古くから愛されてきたハレの大皿「頭料理」を堪能

魚の部位ごとに適した火入れで茹であげられ、ハレの料理らしく大鉢に大胆に盛り付けていきます。ぷりぷりした浮き袋は、噛んでいると徐々になくなっていきます。ゼラチン質のノド、とろっととろける濃厚な白子、しゃくしゃくの食感が面白いまつげ(エラ)、ほろ苦くコクもある肝、なかでもクチビルはぷるぷるの食感で、口に運ぶたびに新たな食との出会いがある、驚きの連続でした。

友修

住所大分県竹田市竹田町284
電話0974-63-2254
営業時間11:30~14:00(L.O.13:45)、17:00~21:00(L.O.20:30)
定休日不定休(主に月曜)
※クエ料理は事前予約制。詳しくはお問い合わせ下さい。

おいしい海鮮は旅先のみならず。お土産にするのはいかがですか?

いやはや満腹。大分の海鮮を楽しみながら、食文化の歴史にも触れることができましたが、この食の体験をできれば持ち帰りたいもの。実は、鮮魚をお土産にするという選択肢だってあるのです。

画像1: おいしい海鮮は旅先のみならず。お土産にするのはいかがですか?

訪れたのが、「丸栄鮮魚」。別府駅近くの鮮魚店で、地元の人や観光客がひっきりなしに訪れます。別府から佐伯にかけての地魚を中心に扱っていて、刺身盛り合わせは1,000円から、海鮮丼は1,500円から。予算に応じて盛り合わせてくれます。

画像2: おいしい海鮮は旅先のみならず。お土産にするのはいかがですか?

「冬の時期はハタやアンコウがおいしいですね。たまにクエが並ぶこともありますよ」

画像3: おいしい海鮮は旅先のみならず。お土産にするのはいかがですか?

こう教えてくれたのが店主の安田邦彦さん。フライトの前に立ち寄るのもおすすめです。リクエストすれば、発泡スチロールのなかに鮮魚とともに保冷剤を入れてくれます。空港で手荷物として預けることもでき、食いしん坊にはたまらないお土産となります。

丸栄鮮魚

住所大分県別府市中央町6-22 べっぷ駅市場
電話0977-25-1458
営業時間9:30~18:00(日曜は~17:00)
定休日1月1日~3日
※仮店舗営業中。2025年8月にリニューアルオープン予定

ペアリングの麦焼酎も懐に抱え、大分の旅路の続きは自宅でも

温泉と海鮮を存分に堪能し、帰宅してからのお楽しみもできました。後ろ髪を引かれる思いに駆られる理由があるとすれば、大分の地魚と相性のいいお酒、焼酎を忘れることはできません。

画像1: ペアリングの麦焼酎も懐に抱え、大分の旅路の続きは自宅でも

食中酒なら、すっきりとしたものがいいでしょう。であれば、大分で作られている麦焼酎。麦を炒ったような香ばしい香りが特徴の「泰明」で知られる、「藤居醸造」に足を運んでみました。大分県南部にある昭和4年(1929年)創業の蔵では、知る人ぞ知るおいしい焼酎が造られています。

画像2: ペアリングの麦焼酎も懐に抱え、大分の旅路の続きは自宅でも

「うちは全部が手作りなんです。製麹工程では昔ながらの『むろ蓋』を使っています。ごくわずかの量しかできませんが、蒸留器は自家製で、パイプの角度ひとつにもこだわり、麦焼酎のおいしさを追求しています」

画像3: ペアリングの麦焼酎も懐に抱え、大分の旅路の続きは自宅でも

蔵を預かる藤居淳一郎さんは胸を張ります。すっきりとした飲みやすさで、水やソーダで割るなら「麦波」(720ml 1,133円~)、より麦の香ばしさを求めるなら「特蒸泰明」(720ml 1,540円~)など、蔵に併設された直売所にはいろいろなラベルが並び、併設のブルワリーで最近醸造を始めたというクラフトビール「IDA」シリーズもあります。県内の酒店でも取り扱いが珍しい希少酒、購入できる場所はWebサイトからご覧ください。

藤居醸造 焼酎工房

住所大分県豊後大野市千歳町新殿150-1
電話0974-37-2016
営業時間9:00~17:30
定休日不定休
web藤居醸造公式サイト

大分県は源泉湧出量日本一。こんこんと湧き出すお湯のように、楽しみと気付きが溢れ出す大分の旅路は、満足度の高い豊かなものになりました。立ち上る湯気のように旅の思い出が消えないように、これから海鮮に舌鼓を打つ夢の時間を夢想しながら、帰宅の途に就きます。

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