初詣の恒例行事といえば、おみくじ。じつはその歴史は明治時代に定着した初詣よりも古く、平安時代まで遡ります。全国には、当時の形式を残しているもの、独自の解釈によって進化を遂げたものなど、さまざまな形式のおみくじが存在しています。今回は、そんなユニークなおみくじが魅力の寺社をご紹介。ちょっと変わったおみくじで、新年を占ってみてはいかがでしょうか?

比叡山延暦寺 元三大師堂(滋賀県): 日本でもっとも歴史あるおみくじ。1回1,000円の理由とは?

画像: 比叡山延暦寺 元三大師堂

比叡山延暦寺 元三大師堂

まず紹介したいのが比叡山の最北に位置する滋賀県の比叡山延暦寺 元三大師堂。おみくじの創始者といわれる元三大師良源が住んでいた場所であり、その門前には「おみくじ発祥之地」と刻まれた石碑が鎮座しています。

日本で親しまれているおみくじは、「元三大師百籤(がんざんだいしひゃくせん)」という良源がつくった占いがその起源とされています。元三大師百籤は、小さな穴のあいた箱に納められた100本のくじから1本を取り出し、引いた番号に対応する漢詩によって、吉凶を占うというもの。主に為政者が観音菩薩に祈念して仏の教えを請うために用いられていました。番号のついたくじを引くという形式は、現在のおみくじと同様ですね。

「おみくじ」の語源である「籤引き(くじびき)」は国の政(まつりごと)や、後継者の選定の際に神様の意志を伺うために用いられていたもの。それが参拝者の運勢を占うように変化したのは鎌倉時代や江戸時代など諸説ありますが、いずれにせよ「元三大師百籤」の登場から数百年を待つことになります。

画像: 「おみくじ発祥之地」と記された石碑

「おみくじ発祥之地」と記された石碑

元三大師堂のおみくじはちょっと特殊です。ここのおみくじは元三大師に直接お伺いをたてるという形式のため、修行を重ねた僧侶しか引くことが許されていないのです。なので、参拝者はお伺いしたいことを紙に書いて、修行を積んだお坊さんに代わりに引いてもらい、説法のようにおみくじの結果をお坊さんから聞くという形式をとっています。1回1,000円とやや高額なのですが、30分ほどの説法を受けること考えると、納得の内容です。

おみくじなのに自分で「ひけない」というのは珍しいですが、由緒正しいおみくじで新年の運気を占ってみてはいかがでしょうか?

比叡山延暦寺 元三大師堂
開門時間9:00〜16:00(3〜11月)、9:30〜15:30(12月)、9:30〜16:30(1、2月)
定休日無休
住所滋賀県大津市坂本本町4220
webhttp://www.hieizan.or.jp/

川崎大師 平間寺(神奈川県): 落ち込まないで大丈夫。おみくじで「凶」が頻出する、合格祈願の聖地

画像: 川崎大師 平間寺

川崎大師 平間寺

成田山新勝寺、高尾山薬王院とともに真言宗智山派「関東三山」に数えられる神奈川県の川崎大師 平間寺は、1128年に建立されました。信仰の対象として安置されるご本尊は、真言宗の開祖「弘法大師」像。弘法大師は、教育機関が貴族のためのものであった時代に、庶民の教育目的で日本で初めて私立学校「綜芸種智院」を設置した人物。彼を祀っていることから、川崎大師は学問にご利益があるというわけです。

画像: 川崎大師のおみくじ。大吉や吉のほか、半吉、小凶、半凶、末凶など、区分が細かいのが特徴

川崎大師のおみくじ。大吉や吉のほか、半吉、小凶、半凶、末凶など、区分が細かいのが特徴

年間300万人が参拝に訪れる川崎大師は、初詣発祥の地といわれています。明治時代に行われた鉄道会社のキャンペーンによって、それまで「恵方詣り」と呼ばれていた正月のお参りが「初詣」と呼ばれるようになったのです。そんな川崎大師のおみくじは、吉凶の割合に特徴があります。

川崎大師は元三大師が残したおみくじの原典、『元三大師百籤帳(がんさんだしおみくじちょう)』にならって、100本のうち大吉が16本、吉35本、中吉、小吉などその他の吉が19本、凶30本という割合でつくられています。昨今では縁起が悪いという声を受けて「凶」をつくらない寺社が増えているなか、全体の約30%が凶というのは比較的高い数値。ですが、これもおみくじのルーツを忠実に再現した結果なのです。

「受験の結果を占うのに凶が多いなんて……」と不安を感じる方もいらっしゃると思いますが、「凶」は必ずしも悪い意味ではなく、神様からの「厄災に備えなさい」という励ましのお言葉であるとされています。安心して学業成就を祈りましょう。

川崎大師 平間寺
開門時間5:30〜18:00(4~9月)、6:00~17:30(10~3月)
定休日無休
営業時間9:00〜17:00(月~金)、7:30〜17:00(土、日)
住所神奈川県川崎市川崎区大師町4-48
webhttp://www.kawasakidaishi.com/

春日大社(奈良県): 伝統の技術でつくられた、愛くるしい「鹿みくじ」

春日大社

画像: 春日大社

春日大社

768年に建立されて以来、1200年以上の歴史を刻んできた奈良県の世界遺産、春日大社。御本殿がある奈良公園内には1,000頭以上の野生の鹿が生息していることで有名ですが、春日大社と鹿がそれ以上に深い関わりを持っていることはあまり知られていません。

春日大社では、鹿は神の使いとして祀られています。これは大社の第一殿に祀られている剣と雷の神、武甕槌命(タケミカヅチ)が永住の地を求めて白鹿に乗って奈良の地にやってきたという言い伝えによるものです。そんな春日大社のおみくじは、もちろん鹿にちなんだ「鹿みくじ」。特徴はかわいらしい鹿の彫りものが奈良の伝統工芸、一刀彫りによって掘られていることです。

画像: 陶器でつくられた「白鹿みくじ」も人気

陶器でつくられた「白鹿みくじ」も人気

一刀彫りとは雛人形、五月人形、能人形などの制作に用いられる奈良の伝統工芸で、大胆な彫りと極彩色の絵付けが特徴の木工品。春日大社の祭礼「春日若宮おん祭」の神事・田楽に用いられる人形づくりが一刀彫りの始まりとされ、その歴史は神社同様、平安時代にまで遡ります。神に捧げる人形は清浄第一と考えられていたため、極力人の手を加えないよう一刀の小刀でつくられました。荒々しい削り出しによる素朴な風合いは、こうした神社の文化にルーツを持つものなのです。

伝統工芸でつくられた愛くるしい鹿みくじは、お土産としても喜ばれること請け合い。初詣では毎年奈良県随一の人手を集める春日大社ですが、ぜひとも足を運んでみることをおすすめします。

春日大社
開門時間6:00〜18:00(4~9月)、6:30~17:00(10~3月)
定休日無休
住所奈良県奈良市春日野町160
webhttp://www.kasugataisha.or.jp/

熊野那智大社(和歌山県): 日本一の滝にちなんだ、巨大なおみくじ

画像: 熊野那智大社

熊野那智大社

熊野本宮大社、熊野速玉大社とともに熊野三山の一社に数えられる熊野那智大社。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」のひとつとしても知られ、和歌山県南部の南紀地方を訪れた際にはぜひとも訪れたい神社です。そんな熊野那智大社は、全長133㎝の巨大なおみくじが名物となっています。

画像: 全長133㎝の巨大なおみくじ

全長133㎝の巨大なおみくじ

このサイズは、神社のご神体として古くから人々の畏敬を集めてきた「那智の滝」の全長133メートルにちなんだもので、現在は日本で2番目に大きいおみくじの筒といわれています。(日本一は埼玉県北本市にある高尾氷川神社の200㎝のおみくじ。2016年に誕生)

画像: 那智の滝

那智の滝

ご神体である那智の滝は日本三大名滝の1つで、落差133m、滝壺の深さ10mと日本一の落差を誇ります。隣接する青岸渡寺の三重塔と、その背景に流れる那智の滝が調和する美しい姿は熊野を訪れる観光客から人気の絶景スポット。大晦日にはライトアップも行なわれるので、初詣に訪れた際には是非ともご覧ください。

熊野那智大社
開門時間8:00〜16:00
定休日無休
住所和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1
webhttp://kumanonachitaisha.or.jp/

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