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訪日されたお客さまは、日本の公共交通機関の時刻の正確さを目の当たりにされ、しばしば驚かれるようです。日本のお客さまにとっての“当たり前”を、より確実かつさらに高い精度でご提供するため、JALでは日々サービスの改善を行っています。なかでも、現在特許出願中の新たな搭乗方法があります。
年々高まる搭乗率。スムーズなご搭乗は、喫緊の課題でした
布施「私たちの部署が行っているのは、お客さまにご提供するフライト体験の質を磨くことです。お客さまからいただいた評価の内容を分析し、何をすべきか打ち手を考えていきます。なかでも私たちふたりは、定時性に関わる施策の推進をしています。定時性とは、飛行機が定刻通りに運航すること。飛行機が遅延する理由は、空港の混雑や、管制からの指示、貨物の搭載の遅れなどさまざまありますが、搭乗方法の変更は大きなプロジェクトになりました」
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こう語るのが、カスタマー・エクスペリエンス本部 CX推進部の布施達矢です。同部署の藤井秀斗が続けます。
藤井「特に繁忙期のご搭乗は混雑することから、以前から課題に挙がっていました。近年はコロナ禍を挟んで搭乗率が高くなり、よりスムーズな搭乗が特に課題となりました。なんとかして解消しようと、プロジェクトがスタートしました」
それが2021年のことです。そもそもJAL国内線のワイドボディ機では、5つの搭乗グループに分け、客室後方から順番にご案内していました。プロジェクトチームはまず、これまでの搭乗方法に着目しました。
後ろから順に……この方法は正しいのか? 大学と連携して検証
藤井「果たしてこの順番が最もスムーズな方法なのだろうかという疑問が浮かびました。後ろからお座りいただければスムーズだろうという考えなのですが、数字的な根拠がありませんでした。そこで、学術的な知見に頼りたいと考えたのです」
2022年4月から本格的に検証がスタートしました。まずはタッグを組むパートナーとして、産学連携の実績があった東京工業大学(現・東京科学大学)に依頼することになりました。
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藤井「早速実機の検証をする流れとなり、精緻なデータの採取が求められました。そこで機内にカメラを設置し、お客さまの搭乗時の様子をデータ化することになったのです。それが大変で、動きの様子や歩行速度、通路の出入りなど、シミュレーションを作るまでに1年を要しました」
布施「中心となったのは、満席の羽田‐那覇便。お子さま連れのお客さまやお土産等のお手荷物が多く、ご搭乗に一番時間がかかる傾向にある路線なので、モデルコースとしては最適でした」
藤井「そのデータ採取がとにかく大変で。実は2回計測をしました。2回目は、定点のカメラだけではサンプリングが難しいと大学側から相談があり、私たちが手持ちのカメラを持って機内に入りました。お客さま同士の追い越しがどれくらい発生するのか、再度立ち上がるお客さまがどれだけいるか、満席の搭乗中の機内に入って許可をいただきながら撮影しました」
細心の注意を払いながら集めたデータは、プログラムのなかで動くシミュレーションに仕立てられました。
1000回のシミュレーションで最適解を検証。導き出されたのは、意外な方法でした
藤井「あらゆるパターンを検証するなかで、最適解が出たのは2024年2月でした。検証した12パターンのなかで、最速だったのは意外なご搭乗方法でした」
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まず、これまで通り、お手伝いが必要なお客さまと優先搭乗のお客さまをご案内し、その次に後方全てのお客さまと前方を含むすべての窓側のお客さまをご案内します。続いて前方すべてのお客さまをご案内するという流れが、新たな搭乗方法です。
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布施「搭乗に関わる各種条件を設定し、それぞれのシナリオに対して1000回シミュレーションを実施した結果、最もスムーズだったのがこの方法です。結果的に、ご搭乗のグループが5つから1つ減って4つとなり、スタッフとしても運用オペレーションが簡素化できるというメリットがありました」
藤井「これにより、シミュレーション上ではエアバスA350-900満席時には約50秒の短縮が見込めました。このシミュレーション結果を実際のオペレーションに反映すべく、各種準備を進め、2024年9月11日に無事に搭乗方法の変更を迎えました」
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布施「実はオペレーションのみならず、システム変更もあわせて実施しました。果たしてうまくいくか、システムに不具合は発生しないか、検証を重ねていたとはいえ心臓がバクバクしていました」
藤井「私たちは搭乗方法変更の初日、羽田空港で搭乗口の様子を確認しましたが、システムトラブルもなく、流れも想定していたとおりスムーズでした。A350-900満席時には、シミュレーションでの想定を上回る60秒強の短縮結果となり、心底胸をなで下ろしました」
新しい搭乗方法は特許出願中。
この新しい搭乗方法について、現在JALでは特許を出願しています。
布施「我々のベンチマークとして、世界中の航空会社の定時運航に関わる実績をモニタリングしています。海外の航空会社は斬新な搭乗方法を取り入れていることもあり、負けてはいられません」
また、スムーズな搭乗にはお客さまのご協力も不可欠です。
藤井「お手荷物の機内持ち込みは搭乗時の機内混雑に繋がります。JALでは手荷物預けのセルフサービスを各空港に順次拡大しており、そのうち基幹空港ではSelf Baggage Drop(自動手荷物預け機)を導入し、スムーズにお手荷物をお預けいただくことが可能です。引き続きスムーズな搭乗のために、機内持ち込み手荷物のルール順守をお願いいたします」
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今回の搭乗方法の見直しで短縮できた搭乗所要時間には、スタッフの情熱と協力者の存在があるのです。小さな積み重ねが、より早く便利なフライトになると信じて、新たなサービス改善の取り組みが、今日も続いています。
A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。
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