飛行機のご予約やマイレージの管理など、JALの業務で使われるシステムは多岐にわたります。その多くが、専門のシステムエンジニアによる複雑で高度な専用設計。その一方で、現場のスタッフが独自に開発したシステムも生まれています。たとえば、空港での拾得物を管理するシステムで、お客さまのお手元に戻るまでの時間を飛躍的に短縮させることに成功しました。作ったのは、プログラミング知識を持たない空港スタッフでした。
画像: JAL空港スタッフがアプリ開発。拾得物へのお問い合わせの回答が、半日から1時間にできた理由

JALでは現在、基幹システムとは別に、専門知識を持たない現場スタッフでもアプリなどが作れる「kintone(キントーン)」を導入。約2年で300もの業務改善を果たしました。それらの影響は業務の効率化のみならず、お客さまにとっても有益な仕組みにつながっています。

JALの現場スタッフが自らデータベースを作る

浜岡「通常、JALで使うシステムは現場の要望などを受けて、グループ会社のJALインフォテックに依頼し、試作とテストを重ねて作り込んでいきます。しかしITの専門家でなくてもアプリを作れるノーコードツールなら、実際の運用に即した使い勝手のいいシステムが短期間でできるわけです」

画像1: JALの現場スタッフが自らデータベースを作る

こう語るのが、JALグループにおけるkintone開発をサポートするJALインフォテックの浜岡 学です。ノーコードツールとは、文字どおり専門的なプログラミング言語(コード)を使わずに、マウスの操作で部品を配置してアプリを作る開発手法です。

横田「国際線でお客さまの手荷物が届かない“ロストバゲッジ”に関するデータベースはもともとあったのですが、データベースの外に紙で管理する情報が残存しているといった課題があり、コロナ禍で新規開発も延期に。現場でシステムを作る方法はないかということで、ピッタリだったのが日本のサイボウズ社が提供するkintoneだったのです」

画像2: JALの現場スタッフが自らデータベースを作る

こう語る横田裕美は、JALスカイで羽田空港の手荷物業務に当たる空港オペレーションスタッフです。プログラミング知識やシステム開発の経験はまったくありませんでしたが、成田空港向けに先行して作られたkintoneの未着手荷物情報を管理するアプリを、羽田向けにカスタマイズする担当者に抜擢されました。

ゼロから開発にチャレンジ。わずか1年で全業務をシステム化

横田「不安だらけでしたが、チャレンジしたところ『意外とやれちゃうもんなんだな』という感覚でした。多少知識のあった前任者に聞きながら、『こういう使い方ができるかも』というアイデアを取り入れて作り、イメージと違ったら軌道修正して。kintoneに関する情報をネットから拾い集めて、常にアンテナを張って、できることをどんどん広げていきました」

画像1: ゼロから開発にチャレンジ。わずか1年で全業務をシステム化

未着の手荷物を管理する業務アプリとして2019年7月に開発がスタート。破損や拾得物、お引き取り忘れなど、手荷物に関連する業務にシステムを拡大していき、全アプリが完成したのが翌年の9月。現在、横田の業務を引き継ぐJALスカイの船戸愛実が、その使い勝手について語ります。

船戸「これまで、たとえばお客さまのお忘れ物は紙のカルテで管理されていて、膨大なお客さま情報からの抽出やお客さま対応を複数の社員が担当するため、担当者間の引き継ぎがスマートではありませんでした。しかしkintoneの拾得物管理アプリなら、タブレット端末で写真を撮って、忘れ物の特徴を入力するだけでデータベースに登録できます。忘れものを拾得した担当者が拾得したタイミングでデータベースに登録するため、タイムリーに拾得物情報と忘れ物の現在地の共有が可能となり、これまでお客さまからの拾得物お問い合わせの回答に半日から一日かかっていたものが、最短で1時間程度にまで短縮できるようになりました」

画像2: ゼロから開発にチャレンジ。わずか1年で全業務をシステム化

開発者のみならず、スタッフの誰もが直感的で扱いやすいシステムができあがりました。一般的なデータベースシステムは、一度完成して納品されると細かな改良に時間を要しますが、kintoneは自分で改良できるので、思い立ったらすぐに改良できます。お客さまのメリットになると判断できれば、現場判断で比較的自由に盛り込むことができます。

個人情報を扱う開発では、セキュリティ対策に万全を期します

船戸「今後も、どんどん業務アプリをkintoneに作って紙の業務を減らしたいと思っています。たとえば現在は手荷物の破損や未着などの賠償書類に関して、お客さまのご署名を郵送でやりとりしているのですが、郵送でのやりとりが煩雑で、お客さまへの負担が大きい。そこで電子的な方法で解決できないか、検討しています」

画像: 個人情報を扱う開発では、セキュリティ対策に万全を期します

このような現場の意志から開発がスタートしますが、それをサポートする浜岡は、代わりにアプリを作るのではなく、アプリの作り方を教える役割だといいます。

浜岡「たとえば現場の開発で電子サインを導入したいという声があると、高機能化による開発作業の増大や将来の維持費増加といった懸念が発生します。そこで我々サポートチームは、『お客さまのご了承の意思をサイン以外で示していただく方法はないのか?』という疑問を提示して、開発担当者が真に必要としているものを引き出し、最もシンプルで最大の効果が発揮できる作り方を提案しています。シンプルにすることでITのプロでない開発担当者であっても自分自身で作ることができるようになるのがポイントです」

なお、お客さまの個人情報を開発に盛り込む場合、JALが定めた情報セキュリティ対策基準を遵守することに加えて、第三者によるチェックや、個人情報取扱者向けの特別教育を行って万全を期しています。

「お客さまのためになること」が、JALのさまざまな現場で生まれています

今回ご紹介した事例は手荷物に関連するシステム開発ですが、現在はさまざまな部署でkintoneが導入されており、JALグループには約1,500名のkintoneユーザーが存在しています。

浜岡「kintoneのアプリ開発には、自ら業務改善をしようという志が大事です。JALフィロソフィには、『自ら燃える』という考え方があり、熱意を持って努力を続けることが結果につながります。我々サポート側が直接作れば早いのですが、あえて伴走しながらアドバイスを送るような指導にとどめます。そうすることで担当者のスキルが上がり自分自身でアプリを開発できるようになることで、より円滑にアプリ開発が進み、ひいては業務改善が促進されるのです」

画像: 「お客さまのためになること」が、JALのさまざまな現場で生まれています

こうしてJALでは、kintoneにより約300もの業務改善を達成しました。お客さまの目に届かないバックヤードで、担当者の創意工夫で日夜バラエティ豊かな業務アプリが誕生しているのです。これらのなかには、お客さまにとってメリットのあるものも少なくありません。kintoneの詳しい取り組みの背景は、こちらの記事でも詳しくご説明しております。ぜひご覧ください。

JALのフライトをご利用いただく際、以前と比べて「スムーズになった」「ストレスが減った」とお感じになることがあれば、その裏には現場担当者の熱意によって生まれた、kintoneによる業務改善があるかもしれません。

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