日本が世界に誇るデザインオフィスnendoとJALがコラボレーション。機内でご提供するブランケット、機内ウェア、寝具などのアメニティ類から、歯ブラシや耳栓などのパッケージ、国内線ファーストクラスの機内食用の食器、メニューカード、テーブルクロスやディナーナプキンなどのデザインを一新しました。その数は45品目に及び、JAL史上最大の機用品リニューアルになりました。JALのシンボルである赤い鶴を、平和や祈り、おもてなしの心を表す折り鶴として表現し、ミニマルで美しいデザインに再構築。デザインワークと製造の舞台裏をレポートします。
画像1: JAL機内アメニティが一新!デザインオフィスnendoとのコラボの舞台裏

岡澤「機用品デザインの前回の刷新は、2013年に国際線を対象に実施、搭乗クラス別のアイコンをモチーフとしたデザインを基本コンセプトとするものでした。当時の私は調達本部に在籍し、デザイン変更を側面からサポートする立場でしたが、それでも相当大変だったことを覚えています。今回は開発部門にて主導する立場で、想像以上に大掛かりなプロジェクトとなりました。対象とする機用品も国際線から国内線までより広範にわたり、品目数も多く、新たなコンセプトのもとでデザインを抜本的に変更することになったのです」

画像2: JAL機内アメニティが一新!デザインオフィスnendoとのコラボの舞台裏

こう語るのが、商品・サービス企画本部の岡澤賢哉です。プロジェクトがスタートしたのは2018年。国際線の主力航空機・ボーイング777のインテリア改修と、翌年の2019年に計画されていた新造機・エアバスA350国内線への就航にあわせて機用品デザインも一新し、お客さまに更なる新鮮さをご提供するために、プロジェクトがスタートしました。

世界的デザインオフィスnendoからのかつてない提案

岡澤「ご相談させていただくデザイナーさんの候補として、ご紹介いただいた方々のなかに、nendoの佐藤オオキさんがいらっしゃいました。JAL社内での新デザイン検討段階では、機内インテリアと調和しつつも、『実用品としてインテリアに埋もれることがあってはいけない』『多岐にわたる機用品に統一感を持たせたい』『かつJALらしさを出したい』という漠然とした思いを抱いていました。機能美を追求したシンプルなデザイン、そして幅広い領域に対応されている佐藤オオキさん率いるデザインオフィスnendoは、我々の思いを実現するに際しての最高のパートナーであると考えたのです」

画像1: 世界的デザインオフィスnendoからのかつてない提案

nendoは世界的に注目を集めるデザインオフィスです。2002年に設立され、そのデザインワークは建築からプロダクトまでさまざまな分野に及びます。代表である佐藤オオキさんは、2006年にNewsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれたこともある、デザイン界のビッグネームです。

岡澤「佐藤さんは、私たちからの相談を大変興味深く聞いてくださいました。実はこのとき、国内線ファーストクラスの食器の刷新については別プロジェクトが動き始めていたのですが、佐藤さんから『食器も一緒にやりましょうよ』と逆提案をいただいたのです」

こうして、デザイン提案の日を迎えます。

岡澤「佐藤さんは、4パターンのデザイン案をご用意くださいました。拝見してまず感じたのは、衝撃と、デザインの美しさへの陶酔感です。それらは予想を遥かに超えるまったく未知の世界でした。これまでの機用品はご使用いただくことが大切だと考えていましたが、『デザインを楽しんでいただく』という新たな価値を加えられることに気づかされました。ご提案を持ち帰り、社内で検討した結果、最初にご提案いただいた『お互いに干渉しない7種のグレーを搭乗クラス別に使い分け、差し色にJALカラーの赤を使う』というプランを採用させていただくことになりました」

それはトーンや色調の違うグレーに、アクセントとして“折り鶴”のモチーフを忍ばせるというアプローチです。それはシルエットをロゴに使うようなシンプルな手法ではなく、遊び心とロジックに彩られたプロの仕事。その狙いを、佐藤オオキさんはこう振り返ります。

画像2: 世界的デザインオフィスnendoからのかつてない提案

佐藤さん「JALさんのロゴである大空に羽ばたく赤い鶴は、平和や祈りのシンボルとして知られています。また、折り紙で作る折り鶴などでも馴染み深く、おもてなしの心を表す際にもよく使われることから、“赤い折り鶴”をコンセプトとしました」

表情豊かなグレーとおもてなしの赤が織りなす、プロダクトの数々

画像1: 表情豊かなグレーとおもてなしの赤が織りなす、プロダクトの数々

佐藤さん「カーディガンやアイマスク、スリッパ、カトラリーバンドといったアイテムには、折り鶴の“翼”をイメージしたタグを使用しました。また、ブランケットやテーブルクロス、ナプキンといった四角い布製のアイテムには、折り鶴の“頭”をイメージして、カドを折り返したディテールを採用しました」

画像2: 表情豊かなグレーとおもてなしの赤が織りなす、プロダクトの数々

佐藤さん「さらに、折り鶴の“展開図”をパターン化したものをポーチやメニューカードなどに取り入れています。フライトごとに異なる国内線ファーストクラスのメニューカードは、折り目の数と色を変え、客室乗務員の方が区別できるようにしました」

画像3: 表情豊かなグレーとおもてなしの赤が織りなす、プロダクトの数々

国際線のブランケットには今回から新たにエコノミー、プレミアムエコノミーで肌触りのいいフリース素材を採用していますが、搭乗クラスごとに、また表と裏にも絶妙な色の差異を設けています。

画像4: 表情豊かなグレーとおもてなしの赤が織りなす、プロダクトの数々

佐藤さん「キーカラーは、赤がよく映えるグレーです。機用品はアイテムごとに取引先が異なり、また、製造や印刷を行う国や地域もそれぞれ異なることから、細かい色合わせがしにくい事情があると聞いていたため、7種類の異なるグレーを用意し、適材適所で組み合わせて使用しています」

画像5: 表情豊かなグレーとおもてなしの赤が織りなす、プロダクトの数々

高いクオリティを目指し、一流の作り手とコラボ

これらのデザインを実際の製品に落とし込むのは、各分野における一流の“作り手”です。

岡澤「海外の航空会社では、機用品全般を取り扱う企画製造会社と組み、たとえばファーストクラスを丸ごと特定のハイブランドに染めてしまうというアプローチがあります。しかしJALがそれをやらないのは、機用品のアイテムごとに、その分野で強みを持つ企業さんと組みたいと考えているからです。衣類、寝具、食器と、各分野に秀でた企業さんと組むことで、より高品質な製品をお客さまにご提供することができるのです」

画像1: 高いクオリティを目指し、一流の作り手とコラボ

たとえば、寝具はエアウィーヴ、食器はノリタケ、機内ウェアは高島屋、ブランケットはニッケや三井物産など、名だたる日本企業が手掛けています。デザインをnendoが行い、製品化は専門の各社に依頼するというアプローチで、実際のアイテムを具現化するプロセスが始まりました。

画像2: 高いクオリティを目指し、一流の作り手とコラボ

岡澤「まず、nendoさんに機用品ひとつひとつのデザインを起こしていただき、それを各機用品の取引先に持ち込んで、製品化を詰めていく流れです。製品化に際しての課題があればnendoさんにフィードバックしてデザインを修正していただき、逆にnendoさんのデザインを再現するために、機用品自体の仕様を見直すなどの工程を繰り返し行いました。想像以上に骨の折れる作業でしたが、取引先の皆さまには全面的にご協力をいただけましたので、大変助かりました。なかでも食器は、焼物であり微妙な色のコントロールに高度な技術を要することに加え、器ごとに窯元さんが異なるため、色を合わせたり、折り鶴の折れ線をモチーフにしたグレーのラインを表現したりすることは大変難しいものでした。しかし、ノリタケさんが試行錯誤を重ねて全て成し遂げてくださったのです」

画像3: 高いクオリティを目指し、一流の作り手とコラボ

佐藤さん「国内線ファーストクラスの機内食用の和・洋食器は、並べ方によって食器同士やトレーマットの柄がつながるようなデザインにしました。食器を並べたり重ねて使用したりすることで、折れ線が繋がって視覚的な一体感を生みつつ、メニューごとに変化が出しやすくなることを考えました。小さなトレーの上で一体感やさまざまな表情を楽しめることは、限られた空間である機内ならではのデザインなのではと思います」

久しぶりのフライトを、真新しいデザインとともにお楽しみください

佐藤さん「今回最も重要視していたのは、食器やブランケット、寝具など、用途や使用シーンがさまざまなアイテムを、機内というひとつの空間内に落とし込んだときに、デザインが統一されているか、という点です。まったく異なるアイテムに統一感を持たせるのは難しい部分もありましたが、食器を並べたり重ねて使用したりすることで、折れ線が繋がって視覚的な一体感を生みつつ、メニューごとに変化が出しやすいデザインになることを考えました。JALさんのこまやかなおもてなしを表現すべく、コンセプトとなる“赤い折り鶴”とグレーの配色をそれぞれのアイテムに丁寧に落とし込んでいくことを意識しました」

こうして作り込まれたのが、全45品目なのです。これらは順に製品化され、お客さまにご利用いただけるようになります。

画像: 久しぶりのフライトを、真新しいデザインとともにお楽しみください

岡澤「このようなデザインプロダクトの場合、販売する商品であれば、付加価値として販売価格に上乗せすることもできると思いますが、機用品は無償でのご提供が前提ですので、コスト管理も大きな課題でした。デザインや製造といった製品化までの過程やコスト管理など、苦労が多かった分、こうやってデビューさせられたことは感慨深いですね。そして何よりも、お客さまにJALの飛行機にお乗りいただく際の新たな楽しみにしていただけたら嬉しいです。ただ、コロナ禍により特に国際線のお客さまが激減し、一部の機用品については旧デザイン品の在庫が多数残っています。残念ながら新デザイン品への完全な切り替えはまだしばらく先になってしまいますが、その点はお許しください」

安心してフライトを楽しめるころには、こだわりぬいて作られたプロダクトが皆さまをお迎えできることでしょう。久々のフライトは、新たなデザインを交えて、新鮮な感動とともにお楽しみください。

JALの舞台裏

A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

This article is a sponsored article by
''.