画像1: 機内からザトウクジラが見えるかも!?

ボーイング767機長 永田

ようこそ旅コラムへお越しいただきました。ボーイング767機長の永田です。
日頃よりご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。今回は那覇に到着する機内からザトウクジラが見えるかも、というお話です。

ザトウクジラに魅せられて
ザトウクジラはとても知的な動物です。バブルネットフィーディングという手法で食事をします。これは、魚の大群に自らが吹く泡で網を張り、逃げ場を失った魚群を下方から海水ごと一気に飲み込み、ヒゲをうまく使って魚だけを濾し(こし)取るという手法です。
数頭から成るチームで食事をしますが、チームワークの良さ、そのシステムの完成度の高さを初めて知ったときはとても感動しました。動画検索「バブルネットフィーディング」でもその様子をご覧になれます。ぜひ一度ご覧ください。

画像2: 機内からザトウクジラが見えるかも!?

夏から秋にかけてアラスカやベーリング海、オホーツク海で食事を終えた彼らは繁殖活動、出産、子育てのため南方の海を目指します。代表的な場所が沖縄諸島や小笠原諸島、海外だとハワイ諸島です。沖縄諸島では彼らを2月~5月辺りに見かけます。その数約1,000頭。そして、毎年約5万人のお客さまが彼らを観に沖縄諸島へお越しになるそうです。

那覇空港のお話
那覇空港は南北に伸びる滑走路を使用し、南から風が吹いているときは南に向かって離着陸を行います。その場合、空域の関係で到着機のほとんどが1,000フィートの高さから最終進入を行います(1,000ft=約305m。ご参考までに、東京タワーが333m、大阪のあべのハルカスが300m、横浜のランドマークタワーが296mです)。

画像3: 機内からザトウクジラが見えるかも!?

図のMIXERというポイントを1,000フィートで着陸の約6分前に通過します。もちろん、安全運航に支障はありませんが、ほかの空港の着陸と比べるととても低い高度からの進入です。

さて、一般財団法人 沖縄美ら島財団の皆さんにご協力いただき、沖縄諸島でのザトウクジラの行動範囲を地図上にプロットしていただきました。

画像: ご協力ありがとうございます。到着時が緑色の線、北向きで出発時が青色の線です。

ご協力ありがとうございます。到着時が緑色の線、北向きで出発時が青色の線です。

この6分間が勝負
MIXERからURASOというポイントまで約4分間1,000フィートを維持し、URASOから降下して滑走路に着陸するまで約2分間。実はこの計6分間が左右窓側にお座りのお客さまにとって彼らを見かけるチャンスです。彼らはしばしばブリーチングという行動をとります。この間、低高度で飛行しているので、ブリーチングの様子を機内からご覧になれることがあります。私も着陸に伴う外部監視の際に数回拝見したことがあります。

画像4: 機内からザトウクジラが見えるかも!?

どうやって見つけるの?
名人の船長さん達はまずザトウクジラの潮吹きを見つけるそうです。船がいないのに煙らしいものが見えているところに彼らがいるかもしれません。

どんな感じで見えるの?
ザトウクジラは大人で約15メートルです。空港行きのリムジンバスが約12メートル。東京タワーの展望台から一般道を走るリムジンバスを見るくらいの規模感でしょうか。飛行機の近くでないとなかなか難しいかもしれません。夜のフライトだと見えません。

使用滑走路はどうやってわかるの?
那覇航空測候所ホームページの資料を拝見すると、南風の割合は2月~3月で約30%、4月で約40%、5月で約50%と推測できます。出発前の客室乗務員との打ち合わせで着陸使用滑走路を確認しますので、巡航中に御遠慮なくお問い合わせください(降下、着陸のための準備が始まるとお答えできなくなることもございます)。
本当は、アナウンスでお知らせできればと思うのですが、その時間帯の操縦室は大忙し。安全に着陸するために一生懸命力を合わせて奮闘中です。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

皆さまの貴重なお時間ありがとうございました。ザトウクジラにご興味を持ってくださった方はぜひ、沖縄にお越しの際は降下中に目を凝らしてみてください。飛行機の旅の別の楽しみ方ができるかもしれません。
重ねまして常日頃のご利用誠にありがとうございます。皆さまの御搭乗を心よりお待ちしております。

※旅コラムは、2019年2月8日時点の内容です。

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

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