札幌観光といえば、大自然を満喫したり、スイーツを始めとしたグルメを楽しんだり、あるいは冬であれば雪まつりなどのイメージが強いかもしれません。もう一つの顔として札幌は「音楽の街」でもあることをご存じでしょうか?クラシックの世界的なイベントが開催され、街のあちこちに音楽を楽しむ人気スポットが林立し、札幌は常に良質の音楽に溢れている街なのです。特に夏には、さまざまなジャンルの音楽イベントが一斉に行われ、札幌の街中が音楽に染まります。
札幌の音楽文化を語るうえで外せない、その拠点となる2つのホールを中心に、地元ライターが音楽を堪能できる旅をご提案します。

【Kitara】降り注ぐ美音に包まれる。公園の中のコンサートホール

札幌の音楽の中心地の一つが、繁華街の南側、緑豊かな中島公園の中にある「札幌コンサートホールKitara(キタラ)です。北海道初の音楽専用ホールとして1997年に建設され、大小2つのホールとリハーサル室、レストランやチケットセンターを備えています。

画像: ©船戸 俊一

©船戸 俊一

地下鉄中島公園駅から、菖蒲池や日本庭園などを眺めながら公園の中を7分ほど歩くと、音楽への心浮き立つアプローチが始まります。建物内外には、北海道美唄市出身の彫刻家である安田 侃さんの「相響」という3つの作品が配置され、その彫刻に誘われるようにエントランスへ。ガラスの壁面からは四季折々の公園の風景が見え、演奏を待つ間も癒されながら過ごすことができます。

画像1: 【Kitara】降り注ぐ美音に包まれる。公園の中のコンサートホール
画像2: 【Kitara】降り注ぐ美音に包まれる。公園の中のコンサートホール

大ホールは、ステージを取り囲むように客席が配置されたヴィンヤード(ぶどう畑)形式。北海道産の木材でつくられた曲線を帯びた壁、ステージの左右からせり出す客席の配置などは、2,008席すべてに厚みのある美しい音を届けるよう反射音まで計算されています。そして、さらなる秘密が、天井から吊り下げられた軽量コンクリート製の4枚の反射板。これがステージから発された音をやわらかく重厚に反響させ、演奏家からも評判の高いKitaraの音をつくり上げるのです。

画像3: 【Kitara】降り注ぐ美音に包まれる。公園の中のコンサートホール

「演奏したアーティストの方から『ここで演奏すると、まるで音が降ってくるようだ!』と喜びの言葉をいただいたことがあります」と話すのは、Kitaraを管理する(公財)札幌市芸術文化財団コンサートホール事業部の菅野沙弥佳さん。さらに、演奏家が良いコンディションで演奏できるような工夫もしているそうで、「リハーサルの時と、本番で音の反響に大きな差が出ないよう、空席時の座席にお客様が座っている時と同じ吸音効果を持たせているんですよ」と同事業部の佐々木綾子さんが教えてくれました。

画像: 左から(公財)札幌市芸術文化財団 コンサートホール事業部 管理課業務係長の佐々木 綾子さん、事業課営業係長の菅野 沙弥佳さん

左から(公財)札幌市芸術文化財団 コンサートホール事業部 管理課業務係長の佐々木 綾子さん、事業課営業係長の菅野 沙弥佳さん

大ホールは、オーケストラを中心としたクラシック音楽や合唱などの公演で使用されます。中でも必聴なのが、ホール正面に立つパイプオルガンのコンサート。フランスの名門、ストラスブール市のアルフレッド・ケルン社で2年かけて製作されたオルガンは、4,976本ものパイプを持ち多彩な音色を届けます。

画像: 北海道の針葉樹林をイメージしたデザインのオルガン

北海道の針葉樹林をイメージしたデザインのオルガン

画像: 札幌交響楽団 ©Y.Fujii

札幌交響楽団 ©Y.Fujii

Kitaraを活動拠点とするプロオーケストラが札幌交響楽団(札響)です。1961年に発足し、60年近い活動期間の中では幾度かの海外公演も成功させています。2019年現在75名の団員が在籍し、Kitaraでの定期演奏会を中心に、年間120回を超える公演を北海道内外で行っています。

画像4: 【Kitara】降り注ぐ美音に包まれる。公園の中のコンサートホール
画像5: 【Kitara】降り注ぐ美音に包まれる。公園の中のコンサートホール

また、訪れたらチェックしたいのがオリジナルグッズの数々。「ビールの街」でもある札幌らしいビアグラスや、エゾシカ革のパスケースなど、札幌旅行のお土産にもぴったりです。

札幌コンサートホールKitara
住所北海道札幌市中央区中島公園1-15
電話011-520-2000
公演チケットの問い合わせ011-520-1234 ※Kitaraチケットセンター(10:00-18:00、休館日除く)
営業時間公演日により異なる
定休日原則第1・第3月曜日、年末年始
webhttps://www.kitara-sapporo.or.jp/
2020年度の札幌コンサートホールKitara主催事業(一部抜粋)
5月3日〜5日Kitaraあ・ら・かると
https://www.kitara-sapporo.or.jp/event/eve_alacarte.html
7月4日Kitaraのバースデイ 札響 with 安永 徹&市野 あゆみ
8月22日ミケランジェロ弦楽四重奏団
8月23日第21代札幌コンサートホール専属オルガニスト アダム・タバイディ フェアウェルオルガンリサイタル
9月27日サー・サイモン・ラトル指揮 ロンドン交響楽団
10月11日アレクサンドル・クニャーゼフ オルガンリサイタル ほか

※札幌コンサートホールKitaraは、改修工事に伴い2020年11月2日~2021年6月30日(予定)まで全館休館となります。

【hitaru】最新の舞台演出と共に音を楽しむ。札幌の芸術基地

「札幌でオペラの公演を」。その思いから、2018年にオープンしたのが「札幌文化芸術劇場hitaru(ヒタル)」です。札幌の中心地に立つ高層ビル、さっぽろ創世スクエアの「札幌市民交流プラザ」にあり、4Fがエントランスで、9Fまでが劇場となっています。

画像1: 【hitaru】最新の舞台演出と共に音を楽しむ。札幌の芸術基地

hitaruの最大の特徴は、オペラやバレエなどの舞台芸術で、大掛かりな演出ができること。これは、主舞台のほかに複数の舞台空間を持つ北海道初の多面舞台を採用しているためです。舞台技術部長の伊藤久幸さんは「最新の舞台演出は、映像が重要な役割を果たします。hitaruでは舞台の奥行きやギャラリー(天井)の高さにも余裕をもたせて背面からの投影を可能とし、幅広い演出が可能になりました」と説明します。

画像: 舞台技術部長を務める、(公財)札幌市芸術文化財団市民交流プラザ事業部の伊藤久幸さん。hitaruをつくるため新国立劇場から招聘されました

舞台技術部長を務める、(公財)札幌市芸術文化財団市民交流プラザ事業部の伊藤久幸さん。hitaruをつくるため新国立劇場から招聘されました

画像2: 【hitaru】最新の舞台演出と共に音を楽しむ。札幌の芸術基地

最大2,302席の座席は、どこから見ても舞台を近く感じられるよう、3層のバルコニーを採用。1・2階席は、演者に近く臨場感があり、3・4階席は俯瞰して舞台演出が隅々まで見渡せます。座席は見え方のほかにも、公演によっては音の聞こえ方に違いが出ることもあるそう。「オーケストラピットは座席より低く設置されるので、演奏は低層よりも3・4階席の方が、直接音と反射音が両方届き深みのある音に感じられます」と伊藤さん。座席選びによって、異なる魅力の発見があるかもしれません。

画像3: 【hitaru】最新の舞台演出と共に音を楽しむ。札幌の芸術基地
画像: 客席には車椅子用のスペースもあり

客席には車椅子用のスペースもあり

オペラ、バレエや演劇などの公演のほかにも、音響反射板を設置することで、クラシックからポップス・演歌まで、幅広いジャンルのコンサートにも利用されています。イベント「サッポロ・シティ・ジャズ」のライブでは、広い舞台上にステージと観客席を設ける試みも。“創造型”の劇場として、北海道で芸術・音楽活動を行うさまざまな人たちに設備を利用してもらい、新たな舞台の可能性を模索するフラッグシップとしての役割も果たしています。

hitaru主催の公演では、札幌の人気喫茶店であり、市民交流プラザ1Fにもカフェを出店する「MORIHICO.」が運営するドリンクスタンドがホワイエに設けられます。ホール内は飲食禁止ですが、ドリンクスタンドが空いていない日は、1Fのカフェでコーヒーをテイクアウトして過ごすのもおすすめです。

画像: MORIHICO.藝術劇場

MORIHICO.藝術劇場

画像: hitaru ホワイエ

hitaru ホワイエ

このほかにも、2Fのレストラン「DAFNE(ダフネ)」や、イベント・展示などが行われる「SCARTSモール」などの施設があり、公演前に早めに着いても、文化に浸る素敵な時間を過ごすことができそうです。

札幌文化芸術劇場hitaru
住所北海道札幌市中央区北1条西1丁目
電話011-271-1000
営業時間公演日により異なる
定休日公演日のみ開場
webhttps://www.sapporo-community-plaza.jp/
2020年度の札幌文化芸術劇場hitaru主催・共催事業予定
5月26日モーリス・ベジャール・バレエ団「バレエ・フォー・ライフ」
6月19日hitaruのひととき~華麗なるディーヴァの競演~(仮)
https://www.sapporo-community-plaza.jp/event.php?num=1081
7月3〜6日ミュージカル「ミス・サイゴン」
https://www.sapporo-community-plaza.jp/event.php?num=927
9月19日hitaruのひととき オーケストラ公演
11月14・15日新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」
11月23日hitaruのひととき 海外合唱団
12月13・15日オペラ公演

【PMF】若き才能が世界中から集結。“ひと夏限りのオーケストラ”

夏の札幌はクラシック、ジャズ、ロックと音楽イベントが目白押しです。中でも、毎年7~8月にかけて札幌を中心に行われ、長年札幌市民に愛されてきたクラシック音楽のビッグイベントが「国際教育音楽祭パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)」。世界的指揮者レナード・バーンスタインとロンドン交響楽団により札幌で創設され、2019年に30回目を迎えました。

画像: 【PMF】若き才能が世界中から集結。“ひと夏限りのオーケストラ”

PMFは世界の若手音楽家を育てる“世界三大教育音楽祭”の一つに数えられています。オーディションで選ばれた18~29歳までの若手音楽家を育成する「PMFアカデミー」という教育プログラムがあり、PMFの開催期間中はアカデミー生や教授陣がオーケストラやアンサンブルを組んだコンサートが行われます。長い時間たっぷりと音楽を楽しめるのがKitaraで行われる「PMF GALAコンサート」。ほかにも野外で自然を感じながらゆったりと音楽を楽しむことができる「ピクニックコンサート」も定番の人気コンサートです。

画像: PMF GALAコンサート(札幌コンサートホールKitara)

PMF GALAコンサート(札幌コンサートホールKitara)

画像: ピクニックコンサート(札幌芸術の森・野外ステージ)

ピクニックコンサート(札幌芸術の森・野外ステージ)

さらに、札幌市内の駅や商業施設など、誰でも立ち寄れる場所で「アウトリーチコンサート」が行われることも。旅の合間のひとときに、ふとどこからか素敵な音色が聞こえてくる……そんな体験ができるかもしれません。

PMF
開催期間2020年7月10日~8月3日
会場札幌コンサートホールKitara、札幌芸術の森・野外ステージ ほか
webhttps://www.pmf.or.jp/
2020年 PMF 主なコンサートスケジュール
7月10日PMF2020オープニング・コンサート(札幌コンサートホールKitara)
https://www.pmf.or.jp/jp/schedule/orchestra/2020-opening.html
7月18日ピクニックコンサート(札幌芸術の森・野外ステージ)
https://www.pmf.or.jp/jp/schedule/concert/2020-picnic.html
7月31日・8月2日歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(札幌文化芸術劇場hitaru)
8月1日PMF GALA コンサート(札幌コンサートホールKitara)ほか

※上記、7月10日から8月3日までの会期で開催を予定していたPMF2020は、新型コロナウイルスの影響により中止となりました。

開演待ちに、終演後に。立ち寄りたいグルメスポット

音楽を堪能するなら、その前後の時間も充実させたいもの。開演までの待ち時間や、公演後の余韻に浸りたい時にオススメのグルメスポットを紹介します。

musica hall café(ムジカホールカフェ)

Kitaraやhitaruからは少し離れていますが、ぜひおすすめしたいのが、地下鉄すすきの駅から歩いて5分の「musica hall café(ムジカホールカフェ)」。道内外のミュージシャンによるライブが店内で楽しめる、地元の音楽ファンに愛されるカフェです。店内のギャラリーではアートイベントやワークショップなど、音楽以外にもさまざまな催しが行われています。

画像1: musica hall café(ムジカホールカフェ)
画像2: musica hall café(ムジカホールカフェ)

ピザ、ドリアなどお腹を満たせる食事から、ケーキやパフェなどのスイーツまでメニューも充実。中でもおすすめは道産小麦を使用した自家製スコーンで、こんがり焼けた表面のサクサク感と中のしっとり感が絶妙です。

画像: 自家製スコーンセット ※お好みのスコーン2種+コーヒーor紅茶(710円)

自家製スコーンセット ※お好みのスコーン2種+コーヒーor紅茶(710円)

musica hall café(ムジカホールカフェ)
住所北海道札幌市中央区南3条西6丁目10-3 長栄ビル3F
電話011-261-1787
営業時間11:30〜21:00
定休日月曜(月祝の場合翌火曜)
webhttp://www.musica-hall-cafe.com/

Farm to Table TERRA(ファームトゥテーブルテラ)

Kitaraの最寄り駅である中島公園駅から 2分ほど歩くと、白樺の木に囲われた「Farm to Table TERRA(ファームトゥテーブルテラ)」が見えてきます。実はこの店、アウトドアブランド「スノーピーク」の空間監修による“室内グランピング”をコンセプトとしたレストランで、開放感のある吹き抜けの店内は、まるで森の中にいるような気分になります。

画像1: Farm to Table TERRA(ファームトゥテーブルテラ)

メニューもキャンプをモチーフに、肉・魚・野菜と種類豊富な料理が揃っているレストラン。色鮮やかでダイナミックな盛り付けに、思わず写真を撮りたくなります。モーニングからディナーまで営業時間が長いので、コンサート開演前はもちろん、夜公演の終演後にも利用できます。

画像2: Farm to Table TERRA(ファームトゥテーブルテラ)
Farm to Table TERRA Presented by snow peak ORBAN OUTDOOR(ファームトゥテーブルテラ プレゼンテッドバイ スノーピーク アーバンアウトドア)
住所北海道札幌市中央区南9条西2丁目2-10 ホテルマイステイズプレミア札幌パーク1F
電話011-512-3547
営業時間朝食7:00~10:00、ランチ11:30~14:00、カフェ 14:00~18:00、ディナー18:00~23:30(L.O.フード22:30、ドリンク23:00)
定休日無休
webhttps://sapporo-terra.com/

TO OV café(ト・オン・カフェ)

同じく中島公園駅から徒歩1〜2分の場所にある、カフェとアートギャラリーが併設された「TO OV café(ト・オン・カフェ )」。絵画や写真などの展覧会や、不定期で地元アーティストによる音楽ライブが開催されており、札幌のアートシーンに触れられるお店です。

画像: 店内ではマスターが好きなジャズが多く流れる

店内ではマスターが好きなジャズが多く流れる

お店こだわりのコーヒーである2種類のブレンドコーヒー(各540円)のほか、時季により種類を変え、豆本来の味を楽しめる「ストレートコーヒー」(650円)もおすすめ。開演前の腹ごしらえができるホットサンドやカレー、パスタといった食事メニューもあり、時間に余裕がある時にはぴったりのカフェです。

画像: ケーキセット(フランボワーズショコラ)(850円)

ケーキセット(フランボワーズショコラ)(850円)

TO OV café(ト・オン・カフェ)
住所北海道札幌市中央区南9条西3丁目2-1マジソンハイツ1F
電話011-299-6380
営業時間火~土 10:30~21:30(L.O.21:00)日・月 10:30~20:00(L.O.19:30)
定休日隔週月曜(月曜日が祝日の場合は火曜日)
webhttps://toovcafegallery.shopinfo.jp/

街の至る所に音楽が溢れる札幌は、いつもと違う旅がしたい、癒されたい、元気をもらいたいという時にもぴったりの場所なんです。グルメや自然もいいけれど、たまにはこんな、たっぷりと音楽に浸る旅はいかがでしょうか?

※2020年4月8日に一部内容を更新いたしました

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

This article is a sponsored article by
''.